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第44話 アルール王国国王へ謁見

このタイミングで本当に国王への謁見が必要だったのだろうかと思う今日この頃。

先に言っておきますが、この話は消すつもりはないです。ご安心ください(ただし過去に話を割り込ませた経歴あり)

「本当に済まなかった!」

「申し訳ない」

「お、王様! 次期国王様! 顔を上げてください!」


 時間は少し過ぎ、今は国王の執務室の近くにある部屋に来ている。

 そして現在、国王と次期国王が2人そろって頭を下げており、ヴェーヌが頭を上げるように言っているところだ。


 なぜ2人が頭を下げている状況であるかと言うと、それは幼い王女が関係している。そしてすべての原因である王女は、俺の膝の上にいる。

 俺もどうにかしたいが、どうすることもできない。なぜかというと――


「あの、王女さま? そろそろ降りて貰っても……」

「やだ!」


 俺がお願いすると王女は顔を、ぷいっとなりそうな感じで逸らす。それがここ数分続いている。

 なぜだか分からないが、俺は気に入られている。することは可愛いが、はっきり言ってものすごく困っている。


 本当は、ここに王女がいるはずではなかった。

 廊下で出会ったメイドに、王女を引き渡そうとした時から、王女は俺から離れようとしない。広間に行くはずだったのだが、俺の足にしがみついて離れようとしなかったのだ。


 困った結果、副団長は国王に相談しに行った。たまたま近くに国王の執務室があり、そこに国王がいると言うことで、残された俺たちは近くの部屋で待機することに。


 その時から王女は俺の膝の上を陣取っている。そしてそれを見た2人は、座るや否や謝罪した。そして今に至る。


 部屋には国王と次期国国王のほかに、数人のメイドと数名の騎士団もいる。

 俺達の案内を行っていた副団長はもちろんのこと、何かしらのことがない限り、常に国王の護衛を行っている騎士団団長もいる。団長の名前はテレンスとのこと。


 俺の横にはシュティアがいるが、ものすごく王女を見ている。嫉妬しているのだろう。

 小さな子に嫉妬する恋人って……


「エマ。降りてこちらに来なさい!」

「やだ!」

「迷惑をかけるでない!」

「やだ!」


 国王と次期国国王2人がそう言うが、幼い王女様は拒否する。

 さすがに2人が大変そうなので、俺は援護することにした。はたしてこれが援護なのかは分からないが。


「国王様。別にいいですよ。このままでいいです」

「王女が本当にすまない……」


 その横で、次期国国王も頭を下げる。

 さすがにこの状況では広間ですることが出来ないので、結局この場で話を進めることにした。


 先に挨拶を行った。現国王の名前はコルバードで、次期国国王の名前はエルノルデ。どうやらこの2人は親子のようだ。そして幼い王女の名前はエマだそうだ。

 まさかだが、国王から見て王女は孫に当たるのか?


もちろん相手が名乗ったので、こちらも名乗る。

シュティアは人族だし、メルクールとヴェーヌの種族も人里離れたところで暮らしているが、人間とは案外接することが多いので見慣れているようだった。

 ただ、エルフは基本的に森の中で生活しているうえに、人族とはあまり関わろうとしない。そのため、エルフが仲間であると伝えると、少し驚かれていた。



 互いの挨拶が終わると、すぐに指輪の件について話がシフトした。すでに話が通っていたらしく、確認のような流れで会話が進む。

 どこで指輪を見つけたのか。誰が指輪を盗んでいたのか。


 俺が盗賊のところで見つけたことと、盗賊の名前を言うと、団長が驚いていた。

 国王が団長のかを置見ると、団長は説明を行った。


 「国王様。我々が捕まえた盗賊も『黒狼』となのる集団でした。ただ、何者かが捕縛した後でしたが……」


 どうやら、俺達と入れ違いできたようだ。

 知られても問題なさそうだが、一応黙っておくことにする。


 「父上。そろそろ本題に入らなければ……」

 「そうだな。それでは本題に入ろう」


 再び話が脱線しそうになったので、次期国国王が国王に声をかける。


 本題に入ろうと言ったところで、俺達が入ってきた扉と同じ扉が静かに開いた。それと同時に、まるで待っていましたと言わんばかりに、男性が入ってくる。手には何かが入っているためか、パンパンになった袋が握られている。

 それを机の上に置くと、下がっていった。


 「これは君が受け取る報酬だ。だがその前に指輪を出してもらいたい」


 どうやら、報酬が入っているようだ。かなり大事なものらしいので、中身はすべて金貨だと思ってもいいのだろうか。

 国王に指輪を出すよう言われたので、ポケットから出したように振る舞って、インベントリから指輪を出す。ついでに綺麗な白い布も取り出し、机の上に布を畳んだ状態で置く。その上に指輪を載せた。



 国王はすぐさま指輪を手に取ると、内側の文字を確認するように観察する。

 指輪を確認する間、部屋は無音に近い状態になる。誰も音を立てず、国王の言葉を待っている。


 無音の時間は1、2分と言うところだろうか。だがものすごく長く感じた。

 国王は無言で指輪を布の上に戻す。誰かが生唾を飲み込む音が聞こえた。


 2人のギルド長がすでに確認しているが、持ち主本人の確認でないと分からないこともあるので、油断はできない。もし違ったらどうなるのだろうか。


 国王が下した判定の結果は――


 「本物だ。本物で間違いない」


 その瞬間、不安で押しつぶれそうな部屋の空気が、一気に変わった。

 次期国国王の表情は明らかに、安堵したものだった。よく、国王は感情を表に出してはいけないと言われているが、今回ばかりは抑えられなかったのだろう。


 全員がほっとしている中、国王が次の言葉を発した。その瞬間、空気は最初のように緊張したものに戻った。ただ、先ほどよりは柔らかいものだ。


 「さて。指輪が本物だったと言うことは、報酬を渡さなければならない。受け取ってくれ」


 国王が俺に袋を差し出す。俺はそれを受け取った。本当は何か言わなければならないと思うが、何を言っていいか分からないので、無言で受け取るような形になってしまった。ただ、会釈はしたので大丈夫だと思う。


 受け取って分かったのだが、かなりずっしりしている。ここで確認するのはさすがに失礼だと思い、ウーラに預けた。俺が持っておくのもよかったのだが、膝の上には王女がいるので無理だ。



「さて。しなければならないことは終わった。本当は帰りたいと思うが……」


 俺が報酬を受け取ったのを確認し、国王が発言するが、途中で言葉を止める。


 国王の言う通り、しなければならないことはすんだ。そして早く国王都を出ていくために帰りたい。だが、王女が下りないので、立とうにも立てない。


 「エマ。こっちへ来なさい」

 「やだ!」


 国王が何度言っても、王女の答えは変わらなかった。それを聞いて、国王がため息をついた。


 「まさかこれほど手がかかるとはな……」

 「失礼ですが、いつもこうですか?」


 国王がポツリと呟く。本当は良くないと思うが、俺は気になったので尋ねる。

 俺の質問を聞き、全員が首をゆっくり縦に振った。


 国王は疲れて説明する気力がないのか、黙っていると、団長が説明をしてくれた。


 「王女様が逃げ出し始めた日から今日までずっと大変です」

 「逃げ出し始めた?」

 「詳しくは言えませんが、王女様はとあるスキルを身につけてからというもの、よく逃げ出すのです」


 俺は全員の顔を見ると、かなり疲れた表情をしていた。問題を起こしている王女は、何も知らないのか、シュティアと見つめ合っている。



 「にいに?」

 「に、にいに!?」


 国王側全員が日頃の出来事を回想しているのか、ものすごく静かな中、突如王女が俺に向かってそんなことを言ってくる。俺は驚きすぎて声が裏返った。

 それはこの場にいる全員が目を見開いて、王女を見る。見られているという自覚があるのかないのか分からないが、幼い王女は俺に頼みごとをしてきた。


 「にいに、変なやつ見せて?」

 「へ、変なやつとはどのような物でしょうか?」


 王女の言いたいことが分からず、俺は聞き返す。

 確かに俺は、この世界の人から見れば、変な物をたくさん持っている。だが何を指しているかわからない。そもそも俺は、今日初めて会った王女に何も見せていない。


 「エマ? 変なものとはなんだ? その人たちは何も持ていないぞ?」

 「持ってるの! 見たの!」

 「見たって、いつ見たのだ?」

 「前見たの!」

 「前とはいつじゃ?」

 「前!」


 国王と王女がそんな会話をする。

 その裏で俺は思考をフル回転させる。


 ここでようやく、1つ思いだした。

 つい最近、王族が乗っているであろう馬車を襲っている盗賊を倒したことがあるが、その時に銃を使った。この世界では変なものに見えるだろう。

 だが、かなり離れたところからの援護だった。もし馬車に王女が乗っていたとしても、馬車の扉は閉

まっていた。見えるはずがない。


 俺が考えていると、視線を感じた。副団長が何かを考えながら俺を見ていた。そしてその視線はシュティアに行き、メルクールに行く。そしてヴェーヌに行き、最後にウーラへと向く。


 その時に何かの考えに行きついたようで、目を見開いた。何かをつぶやいていたが、あまりにも小さかったうえに、幼い王女と現国王が「いつだ! 前!」と会話をしていたこともあり、一切聞こえなかった。


 「国王様。可能性はあまりにも低いですが、私の考えを聞いて貰えるでしょうか?」

 「なんだ? 申してみよ」

 「はっ!」


 副団長が国王様に意見を言う。

 その意見の内容は、俺の予想もしないものだった。


 「王女様の言っていた人物が、この人たちではないでしょうか?」

 「まさか!」


 副団長の言葉を聞き、国王と団長が俺達を見てくる。

 何を思って俺達を見ているか、一切分からない。


 だがここで再び、予想もしない質問を、国王がしてきた。


 「お主は、国王族の馬車を盗賊から守ったことがあるか?」


 俺は表情を変えなかったが、内心ではかなり驚いた。なぜ知っているのかと。

 だがここで、はいとは言わない。俺の持っている物は、この世界を大きく変えてしまう。それは避けなければならない。つまり、俺の回答はすでに決まっている。


 「いいえ。ありません」


 俺はそう答える。国王につく嘘は犯罪だろう。だが嘘をついた。もちろん、罰を受ける覚悟はしている。まあ、捕まる前に逃げれば大丈夫だ。逃げることなど簡単だから。


 だが、国王の視線は俺ではなく、シュティアの方を見ていた。


 嫌な予感がしたので、俺はシュティアを見る。目を見開いて、思いっきり驚いた表情をしていた。

 シュティアだけではない。メルクールとヴェーヌ、それに普段、滅多にを表に見せないウーラまで驚いていた。


 どうやら俺の仲間は、唐突に起きた出来事に対して、表情を隠すのが下手なようだ。

 全員の目が俺に向く。俺はため息をついた。


 「確かに俺は、国王族の馬車が盗賊に襲われているところを援護しました」

 「やはりそうだったか」


 俺が白状すると、副団長がつぶやいた。

 突然、国王と次期国王が頭を下げた。突然すぎる。


 「王妃と娘を守ってくれ、感謝する」

 「あ、頭を上げてください!」

 「いや、無理だ。この恩は大きすぎる!」


 ヴェーヌが頭を上げるように言うが、2人は頭を上げようとしない。

 今度は国王が驚きの発言をする。


 「この分の報酬を払いたい! なんでも言ってくれ!」


 かなり重たい発言が来た。全員が目を見開いて驚いている。

 ここで自重せずに欲しいものを言っても、止められることはないだろう。だが欲しい物なんてない。だが何か言わなければ、2人は頭を上げそうにない。

 困った。


 俺が考えていると、視線を感じた。王女からだ。

 俺は王女を見ると、目が合った。王女の目は純粋で、きれいだった。そこで俺は良いことを思いついた。


 「では国王様。1つお願いがあります」

 「何でも言ってくれ!」

 

 俺が言うと、国王はものすごい勢いで食いついてきた。ただ、なんでもという言葉を言うのはやめた方がいいのではと思った。

 後ろで、騎士団のメンバーとメイドが目を見開いて驚いている。


 「今後、城に自由に出入りできるようにして貰いたいです」

 「何!?」


 想定外の願いだったのだろう。全員が目を見開いて俺を見てくる。

 ここで変な疑いをもたれると困るので、俺は先に説明することにした。


 「王女様に気にいられたようなので、時々遊びに来てあげようかと思いまして」


 どのくらいの頻度で来れるかなんてわからない。もしかしたら2度と来ないかもしれない。

 なぜなら、俺は魔王討伐のために、魔族領へ向かっている。地図で言うと、魔族領はここから下に向かう。つまり、2度と来ないかもしれない。

 だから、この願いでも問題ないと思った。


 国王は数秒間考えたのち、返事を言った。


 「いいだろう」

 「こ、国王様!?」

 「なんでもと言ったんだ。今更無理ですなんて言えない。それよりも、こんな願い安いものだ」


 無事に了解を得た。騎士団は少し動揺しているが、国王の言ったことだ。納得するはず。




 ここでめでたしめでたしなら良かったのだが、俺は気になることが1つあった。

 なぜ俺ではないかと予想がついたのが分からない。

 そこで俺は尋ねることにした。


 「もし願いをもう1つ叶えられるなら、1つ答えていただきたいことがあります。なぜ、俺達が助けたと予想がついたのですか? 教えてください」


 俺が尋ねると、国王はため息をついた。

 それを見て、団長と副団長。それに次期国国王が視線を国王へと向ける。


 「メイドと、団長と副団長以外の騎士団は下がれ」


 国王の言葉を聞くと、速やかにメイドと、団長と副団長以外の騎士団が下がった。

 これから言うことは、他の人には言えないことなのだろう。

 この場に残った3人は知っているか、信用してよい人と見ていいのだろう。


 「これから話すことは、この国の将来にかかわると言ってよい。お主は……レイと言ったな。他の奴に情報を流しそうなものがいるのなら、席を外すよう言ってくれ」


 国の将来に関わることと来た。スケールがデカいな。

 もちろん、俺は全員信じている。だから誰にも席を外すように言わない。

 俺が黙っていると、国王が確認を取るように俺を見てきた。俺は頷き返す。


 「では話そう。王女のスキルについて」


 そう言って国王は、王女が持つスキルについて話し始めた。



 王女のスキルの中に、【千里眼】と言うものが存在するそうだ。

 【千里眼】とは、簡単に言えば魔力を使って遠くにある物を見るスキル。魔力の消費は、自分からの距離で決まり、それに見ている時間を掛けた分だそうだ。

 王女の魔力は平均より少し高いため、短時間と言えど、俺を確認する時間があったんではないかとのこと。


 そのスキルだが、盗賊に襲われた時に身に着けたと思われるらしい。理由は、身の危険を感じたため。そうでもしないと、【千里眼】というスキルを獲得した証明が出来ない。もちろん、身の危険を感じて千里眼を習得したこと自体、国が誕生してから初めてなのではないかと言われている。


 そしてその千里眼により、丘に俺たちがいることを王女が確認したそうだ。

 人が2人に獣人が1人。蜥蜴人が1人にエルフが1人いたと。


 俺が丘から去ろうとした時に感じた視線はその時のものだろう。


 もちろん、この場に残った人たちが、王女が【千里眼】のスキルを手に入れたと知ったのは、少し立ってからだそうだ。


 

 国王は説明を終えると、息を吐いた。

 国王の説明を引き継ぐかのように、今度は次期国国王が説明を続ける。



 最初は、女国王をどのように守るかということに頭を悩ませていたようだ。

 【千里眼】は魔力が多い人が使えば、相手の国を盗み見ることだってできる。それは相手国からしたら、邪魔者でしかない。そうなれば刺客を送ってくる。そのためどのように守るか考えていたそうだ。



 だが別の問題が起きた。

 スキルと習得した女国王は、次第に使い方をマスターし始めた。

 最初ははしゃぎ過ぎ、魔力の使い過ぎたために倒れていたが、魔力を扱う訓練により、次第に魔力を増やした。さらに慣れ始めたためか、今では連続で十数秒という短い時間なら、城の端っこから端っこを見ることができるとか。そのため、いろいろと起こすようになったようだ。

 

 今日の出来事――王女の逃走劇も問題の1つ。【千里眼】を使って人の位置を把握しては、毎日と言っていいほど逃げる。もちろん世話係のメイドは毎日追いかけるが、王女はメイドの位置を完全に把握しているので、捕まえられない。


 話を考えながら俺は考えた。例えるなら鬼ごっこ鬼役の人にGPSを持たせて、それを確認しながら逃げているようなだろうと。

 確かに無理だ……

 

 他にも、見つからずに調理場に侵入し、盗み食いをする。国王が執務室や他の部屋で仕事をしていると、やってきて来ては、遊ぼうという。仕事をする部屋を変えても、居場所がバレているので、普通に来る。

 小さい子が使えばかなり可愛く見えると思うが、被害を受けている人たちは、毎日疲れるようだ。 


 そこで、次期国国王は喉を潤すためか、一度飲み物を口に含む。

 コップを置くと、再びこちらを見てきた。



 「エマのスキルについては話した。今度は、レイ君がどのように騎士団の人を――エマと国王妃を守ったのかを教えてもらいたい」


 交換条件か。というより、聞いてしまったからには話せというように持ち込んだのだろう。

 本当は言いたくはないが、言わないと帰してくれなさそうなので話す。


 俺は説明をした。もちろん、他言無用であると。また、銃の作り方は教えられないと。バランスを崩すからだ。



 俺が一通り話し終えると、国王達は目を見開いて驚いていた。

 

 「まさか、本来の銃はそこまで長距離攻撃を行うことができるとは……」

 「先ほども言いましたが、俺が作った銃がイレギュラーなだけです」

 「だが、それでもだ。作り方を教えて欲しいが……」

 「いくら国王様が相手であるとはいえ、言えません」


 国王が作り方を教えてくれと言うが、もちろん断る。

 それを聞いた国王達4人は明らかに落胆していた。


 俺の作った銃があれば、この世界を丸ごと統一することだって可能だ。

 だが作り方を聞けないのでは、作れないし、兵に持たせることだってできない。


 しかし、銃の凄さを聞いたと言うことは、今日からでも研究を始めるかもしれない。そうなれば、あっという間に完成しそうだ。




 「おっと。もうこんな時間か。時間が経つのが早いな」

 

 次期国王が窓を見てつぶやく。俺は釣られて窓を見ると、すでに日が沈みかけて、あたりは赤く染まり始めていた。


 「エマや。レイ君たちが帰る。いい加減、こっちに来なさい」


 国王がそう言う。王女は一瞬、何も言わなかったので、現国王の指示に従うと、誰もが思った。

 だが、それは一瞬で砕かれることになった。


 「じいじ嫌い!」


 ここで特大の爆弾が落とされた。

 国王の心にクリティカルヒットしたらしく、国王は机の上に手をついてうなだれる。もし普通に立っていたら、見事なorzの体勢になっていただろう。

 マンガならば、国王から負のオーラがあふれ出ているように見えたはずだ。


 言った本人は顔を、ぷいと背けている。


 「エマ! なんてこと言うんだ! 父上に謝りなさい!」


 焦った次期国王は王女を叱る。次期国王の後ろでは、団長と副団長がものすごく焦っており、扉を開けてメイドや部下を部屋に入れていた。


 ここで王女が謝ればよかったのだが、さらに爆弾を投下。標的は――


「ぱぱ嫌い!」


 ぷいと背けつつ、次期国王に言う。

 次期国王も見事、心にクリティカルヒットしたらしく、国王と同じく机の上に手をついてうなだれる。さすが親子だ。形がそっくり。

 いや、そうじゃない!


 手を机の上についてうなだれている2人の後ろを見ると、部屋に入ってきた騎士団とメイド、全員が顔を引きつらせていた。

 驚きすぎて何も行動を起こさないと言うことは、対応の仕方が分からないと見てよさそうだ。


 シュティア達を見ると、4人とも王女を見て顔を引きつらせている。



 どうすることもできなくなった場で、声を出す人がいた。主導権を握った王女だ。


 「にいに! あれ食べる!」


 王女が俺の方を見ながら、小さな指で指しているのは、お茶請けのお菓子。

 本当はここで、先に降りるように言っても許されるだろう。だが目の前の状況を見ると、今度は「にいに嫌い!」なんて言われそう。絶対落ち込む。

 現に、娘もしくは孫に、そんな風に言われ、この世の終わりをまじかにしたように落ち込んでいる2人がいるのだから。


 俺は左腕で、王女が膝の上から落ちないように支えながら、指の指している先にあるクッキーを右手で1枚取ると、王女がつかめるように手の近くに持って行く。

 だが王女はクッキーをつかまずに、俺が持ったままの状態でまかぶりつく。

 王女はおいしそうに咀嚼している。


 それを見て俺の5人の仲間は、俺にハイライトが一切ない、完全なジト目を向けてくる。

 俺だって、まさか直接食べるなんて思ってもいなかったのだから、悪くない!

 


 現在この場は、嫌いと言われて落ち込んだ国王と時期国王。嫌いと言われないように必死にお菓子をあげている俺。それをおいしそうに食べている幼い王女。そして俺にジト目を向けてくる5人の仲間。どうしていいか分からず、右往左往している騎士団の団長と副団長に部下、それにメイドがいる。


 はっきり言う。

 かなりカオスな状況だ。手が付けられない。



 俺は幼い王女にお菓子を食べさせながら、将来裏の権力者になるかもなと思うのであった……





 何とか国王と次期国王が復活。一応、言葉はしゃべることができるほど回復はした。だがダメージがあまりにも大きく、表情が暗い。

 夜中に廊下で見たら、間違いなく悲鳴を上げるレベル。当たりが真っ暗になるまでに回復するよう願う。身の世話をする人たちのためにも……




 だが最後の最後まで気を抜くのは良くなかった。


 別れ際に、国王の膝の上に座っている王女が、今日一番の爆弾を投下。


「エマ、にいにと結婚する!」


 一瞬で空気が凍り付いた。シュティア達5人は再びジト目を向けてくる。そして国王の方は、団長に剣を渡すよう指示。そしてその団長はと言うと、すぐさま剣を国王に渡した。

 国王は鞘から剣を抜きだすと俺を切ろうと迫ってきた。


 俺は何とか場の空気を戻そうと奮闘する。はっきり言って、あまりにも驚きすぎて、何を言ったか覚えていない。



 その後は来た時同様に、馬車に乗ってギルドに戻る。ただ、来る時とは違って誰だか分からない騎士団の人が馬車を操る。顔を見た感じ、話の場にはいなかった人だ。

 本当は歩いて帰りたかったが、どうしてもと騎士団の団長が譲ってくれなかったので、言葉に甘えることにした。


 もちろん宿まで送っていこうか聞かれたが、ただでさえギルドで目立ったのに、立派な馬車で宿まで戻れば、さらに目立つことになる。考えた結果、泊まる予定の宿の近くを指定しておろしてもらい、そこから少し歩くことを伝えた。


 馬車に乗ったのは良いが、送ってもらう間、馬車の中の空気は絶対零度なのではないかと言うほど、5人からの視線はあまりにも冷たかったのだった……

ここで少し報告。

実はあと4話(そのうち1話はものすごく短い。登場人物紹介は数えないと3話)で第2章が終わります。

第3章はすでに手を付け始めています。なかなか進んでいませんが……

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