表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/83

第40話 戦利品と魚料理

後書きに修正した場所の詳細を書いておいたので、良ければ確認しておいてください。

【タラッタ】は海の近くにあるだけあって、大きな街だった。

 大通りは海岸まで続いているため、わずかだが船が見える。遠いため船の作りは分からないが、かなりの大きさがあるように見える。


「やはり、海の近くの街だけあって、賑わっていますね」


 街の雰囲気を見ながらヴェーヌがそんなことを言う。

 ヴェーヌの言う通り、人通りも多い。といっても王都ほどではないだろう。だが海上網があるのか、いろいろな人が通りを歩いている。


 海上網があると言っても、海にも魔物は住んでいるだろう。それに対してどのように対策しているかが気になるところだ。


「……戦利品、どうするの?」

「戦利品って、盗賊のところから持ってきた宝石か?」

「……うん」


 大通りを歩いていると、シュティアが聞いてきた。

 シュティアの言う通り、いつまでも持っておくわけにはいかないだろう。


「じゃあ、先にギルドに行って返金してくるか」


 俺がそういうと、シュティア達5人は頷いて賛成の意志を示した。

 そこでギルドに向かうことにした。


 街がにぎわっていると言うこともあり、ここのギルドは今までのギルドより少し大きかった。

 王都のギルドを見たことがないので、大きさは比べられない。



 入った時に、冒険者の視線が集まったのは安定だった。

 だがすぐに興味をなくしたようで、一緒に座っていた仲間と話し始めていた。


 時間が時間のためか、冒険者はあまりいなかった。

 俺はシュティア達5人に、座って待つように指示を出すと、受付に向かう。


「ようこそ、冒険者ギルド、アルール王国タラッタ支部へ。本日はどのようなご王権でしょうか?」


 受付の若い女性が笑顔で尋ねてきた。後ろでは、数人のギルド職員が資料などを整理しているのが見える。


「戦利品の返金を頼みます」

「戦利品と言うことは、盗賊から取ってきたと判断してもよろしいでしょうか? 盗賊は討伐されたとはんだんしてよろしいでしょうか?」

「戦利品は盗賊から取ってきたと判断してもらって構いません。ただ、盗賊は生きています。ロープで縛って置いてきましたが」


 盗賊は縛って置いてきたと言う言葉を聞いて、受付の女性は少し驚いた後、近くにいた別の受付の人にどうすればよいか尋ねていた。

 聞き耳を立てていたようで、隣の受付の女性には説明をせずとも、伝わっていた。


 俺の担当になった受付の女性と、隣にいた受付の女性が少し話をした後、対応が決まったようで、隣にいた受付の女性は裏に行ったのち、戻ってくると階段に向かい、2階に上がっていった。


「すみません。詳しいことをお尋ねしたいので、上にある会議室に向かって貰ってもいいでしょうか?」

「ええ。大丈夫です」


 俺の回答を聞いた受付の人はカウンターの端っこまで移動する。俺はどうしてよいか分からなかったので、ついていく。


「どうしたのですか?」


 ヴェーヌが後ろから声をかけてきた。俺が移動するのを見てついてきたのだろう。残りの4人もついてきている。


「戦利品のことで話があるようで、会議室に向かうらしい。何か飲んで待ていてくれ」

「わかりました」


 俺はヴェーヌにそう言うと、ポケットから――正しくはインベントリから出したお金を渡して、待っているように伝える。

 ヴェーヌは少し心配そうな表情をするが、大丈夫だと判断したらしく、他の4人を連れて戻っていった。


「お連れの方もご一緒でなくて大丈夫ですか?」

「大丈夫です」


 受付の女性が聞いてきたので答えておく。

 俺が答えると納得したようで、階段を上り始めた。俺はその後ろをついていく。


 案内されたのは小さな部屋だった。壁際には本棚が置かれており、奥の窓際には花が飾られていた。部屋の中央にはテーブルを挟んで2人掛けの椅子が向かい合うように2つ置かれている。


「ではこちらにお座りください」


 俺は促されるまま、片一方の椅子に座る。反対側の椅子に受付の人が座った。

 いつの間にか、受付の人の手にはメモが握りしめられていた。


「ではさっそくお尋ねしますが、本当に盗賊を縛って置いてきたのでしょうか?」

「はい。しっかり()()()()()()ので、逃げられる心配はないと思います」

「縛られていた?」


 俺の言った言葉に、女性は疑問を持ったようだ。

 俺は、自分が捕まえたとは伝えないことにした。俺の持っている情報では、『黒狼』はかなりの強さがある。それを捕まえたとなれば、俺の強さが広まるはずだ。もちろん、Sランク冒険者のように国中に広まると言うことはないと思うが、周辺の街には広ま蝋だろう。そうなれば、今後厄介ごとに巻き込まれる恐れがある。


 それに、俺が強くなった理由は、エルフの郷に置かれていた兵器を譲り受けるため。自分の強さを他の奴に見せつけるためではない。

 そのため俺は自分の強さを黙っているためにも、誰かが捕まえていたと言うことにしたのだ。


「捕まえられていた盗賊は、どのグループか分かりますか?」

「わかりません」


 グループを聞かれたが、俺は嘘をついた。

 知ってはいるが、ここで言うと厄介なことになりそうだったので言わないことにした。


「人数はどうでした?」

「いろいろなところに放置されていたので、詳しい人数は分かりませんが、多いと思います」



 盗賊のいた詳しい場所など、その後もいくつか質問される。

 そして俺が答える間、女性は俺の回答をひたすらメモしていた。


 途中、盗賊はどうするのか尋ねた。

 女性は方針を伝えてくれた。どうやらギルドから人を派遣して、盗賊の確認に向かうらしい。もちろん、募集をかけて冒険者に護衛をして貰うそうだ。


「最後に尋ねますが、戦利品は残っていたものを持ってきたのですね?」

「ええ。盗賊を捕えた人が持って行ったのか、すでに少なくなっていました。その中から貰ってきたものを売ろうと思っています」


 俺は、何者かが盗賊を捕まえて立ち去った所に、たまたま来てしまった。そして、すでに取られたようで、少なくなっていた宝の中から価値がありそうなものを貰ってきた。という設定にした。

 ただ、速攻で作った設定なので、矛盾が生じているかもしれないので怖い。


「以上で質問を終えますが、他に何か気になることはありましたか?」

「特にはないですね」

「わかりました。では、今から、売ろうと思っている物を出して貰ってもよろしいでしょうか?」

「分かりました」


 女性は机の上にメモを置いて、戦利品の確認に移ると伝えてきた。

 俺は足元に、宝石の入った木箱をインベントリから取り出した。受付の人はそれを見ても驚いていなかったので、見慣れているのだろうか。


 木箱を開けて指輪を取り出す。盗賊の所では少しだけ中身を見ただけで、木箱ごとインベントリに仕舞ったので、何が入っているかわかっていない。適当に取り出して机の上に置く。

 机の上に置いたのは指輪だ。特に価値はなさそうなものだ。ただ、内側には名前のようなものが彫られていた。


「指輪ですか。これは買戻しをしたい方が来るかもしれませんので、そのまま持っておいてください」


 女性は指輪を見ながらそう言うと、机の上に戻した。

 俺は別の戦利品を見せていく。大半は指輪や金の杯などの小物系だ。


 そしていくつか見せた後、宝石の間から気になるものが顔を覗かせていた。それは指輪だった。

 単なる指輪なら気にならなかったが、その指輪はいかにも高そうな装飾がされていた。指輪自体は白いためミスリス製だ。

 中央には青色の宝石が嵌め込められており、その周りを囲むように小さな宝石がちりばめられていた。内側には何やら文字が書かれていたが、書かれている文字が多い上に、文字が小さいので何を書いているかが分からなかった。


 だが女性は、これが何なのかが分かったようだ。俺が机の上に出した瞬間、目を見開いて驚いた。

 そして指輪を手に取ると、裏の文字を確認する。顔色は青白く、何かに恐れていると思われる。

 俺が見ていることに気が付いたらしく、表情を営業スマイルに戻す。だがどこか不自然な営業スマイルだ。


「すみません。少しお待ちください」


 女性はそう言うと指輪を机の上に置いて立ち上がると、少し慌てて出て行った。

 俺は待つ。


 机の上には指輪が置かれたままなので、俺は指輪を手に取って、眺めてみる。女性はどこを見て恐れたのかが分からない。

 指輪の裏には、何やら呪文のような物が書かれているだけだ。もしかして、これを唱えれば日本に帰れるような大規模な転移魔法が使えたり――は絶対ないな。

 俺は机の上に指輪を戻す。



 しばらくすると、ノックが聞こえた。俺は扉を見る。部屋に入ってきたのは白髪の男性だった。見た限り歳は50代60代当たりだと思うが、体は衰えているようには見えない。


「突然来てしまってすまない。私はここのギルド長のアルスだ。早速だが、指輪について話そうと思う」


 そう言いつつ、ギルド長は向かいの椅子に座った。

 それと同時に、先ほどまで話していた女性が飲み物を俺とギルド長の前に置く。置き終わると一礼して部屋から出て行った。


「それじゃあ、指輪について話そうか」


 ギルド長はそこで飲み物を一口飲むと話始めた。


「君の見つけた指輪だが、王族の指輪が含まれていた。そしてその指輪がそれだ」


 ギルド長は机の上に置かれている指輪を見ながらそんなことを言う。俺も指輪を見る。

 王族の指輪。いかにも厄介ごとを持ち込みそうなものだ。俺は指輪から目を話してギルド長を見る。ギルド長も指輪から目を話した。


「その指輪を見せてもらってもいいだろうか?」

「ええ」


 尋ねてきたので俺は短く答える。

 それを聞いたギルド長が指輪を手に取って、彫刻を見たり裏に彫られている字を見る。


「この指輪は、王の指示であることを示すために使者に持たせるものだ。各街のギルドに通達があったが、まさか盗賊が持っていたとはな。ただ盗賊は、どうしていか分からずに持っていたのだろうな」


 ギルド長はそう言うと指輪を机の上に戻した。そして再び飲み物を一口飲んだ。

 俺も飲み物を一口飲む。水だったが、わずかに柑橘系の味がしたので、汁を入れているのだろう。


「それでだ君には王都に行ってもらう。それも今すぐにだ」

「どういうことですか?」


 突然のことだったので、俺は聞き返す。今日着いたのに、今すぐ王都に行けと言うのはさすがにしんどい。


「王がギルドに指示を出したのだ。もし指輪を持ってきたものがいれば、王都に呼ぶようにと。それが例え、たまたま盗賊が捕まえられているところの洞窟に入って、たまたまその指輪を見つけた人であっても。これは予想だが、王本人が直々に礼をするのだろうな」


 ギルド長はなぜか細く微笑んだ。これが何を意味するのかは分からなかった。というより分かりたくなかった。嫌な予感しかしない。


 ギルド長の言葉を聞いて、俺はうなだれた。

 貴族や王族からの厄介ごとを避けるために王都にはいかなかったにもかかわらず、まさか王都に行く羽目になるとは思ってもいなかった。


「言っておくが、拒否権はないぞ」

「わかっていますよ。相手は王なのですから……」


 俺の表情から、何を考えているのかを読み取ったのだろう。ギルド長は苦笑いを浮かべながら俺にそう言ってきたので、力なく答える。


「それじゃあ、さっそく王都に行ってもらいたいのだが、その前に1つ気になることがあるのでそちらを聞いておこう」

「何ですか?」


 俺が尋ね返すと、ギルド長は体を前に傾けて近づいてきた。


「君が討伐した盗賊はなんと言う盗賊だ?」

「名前は分かりません。それに俺は討伐はしていませんよ?」

「嘘だろ? お前の答えを聞いていると、矛盾しか見つからなかったぞ。正直に話せ」


 俺が尋ねると、ギルド長は真面目な顔をして言ってきた。俺はため息をついた。

 どうやら矛盾があったようだ。だがどこに矛盾があったか分からない。

 俺は諦めて正直に話すことにした。バレた相手に嘘は通じない。


「多分ですが、黒狼ですね」

「黒狼……だと……」


 盗賊の名前を聞いたギルド長は目を見開いて驚いていた。かなり有名な盗賊の集団なのだろう。

 ギルド長は何やら考えているのか、下を向いてぶつくさ言っている。身体強化を使えば聞こえると思うが、不要だと思って聞いていない。

 俺が飲み物を飲んで待っていると、ギルド長が顔を上げた。


「黒狼の団員はどうした? 捕縛したと聞いたが」

「放置してきました」

「なに!?」


 俺の説明を聞いたギルド長は目を見開いて驚いていた。放置はまずいと思ったが、捕縛したのはまずかったのだろうか。


「何がまずかったですか?」

「なぜ討伐しなかった! 奴らは危険だぞ!」

「そんなに危険なのですか?」


 ギルド長がどなるように俺に言ってきたので、俺は尋ね返す。

 危険と言われても、どれほど危険か分からない。


「奴らは頭を含む数名がかなり強い。また、規模もデカいため、たくさんの護衛をつけている商人の馬車でさえ襲う。それほど危険だ!」


 説明されてもいまいち危険性が分からなかった。

 ここで気になることがあったので、俺は尋ねてみることにした。


「話は変わるが、王族の馬車を襲ったと言う話は聞きましたか?」

「王族の馬車を襲っただと?」


 俺の話を聞いて、ギルド長は目を見開いて、まさかという顔をした。

 どうやら知らないようなので、俺は説明することにした。


「盗賊の目的は分からないが、つい最近、盗賊が王族の馬車を襲ったようです。当たり前ですが、盗賊の被害は大きかった。そして騎士団の方も被害が出たようですよ。これが意味することは分かりますよね?」

「王の命令で、騎士団が動き出すのだな?」


 俺の説明を聞いたギルド長は難しそうな表情をしながら、声に出して確認するかのようにつぶやいた。

 言ったものの、俺は確証を持てなかったので、頷かない。


 ギルド長は再び何かを考えているようで、下を向いている。

 俺は飲み物を飲みながら待つ。だが中身がほとんど残っていなかったためか、すぐになくなった。い方がないので、俺はギルド長の方を見て待つ。


「まあいい。今はお前さんのことだな」


 ギルド長は顔を上げて俺の方を見ながらそうつぶやいた。

 俺のことと言うことは、俺が王都に行くことだろう。このままではすぐに出発と言うことになりそうだったので、先手を打つことにした。


「さすがに、すぐさま出発するのは大変なので、2日か3日ほど休んでから出発していいでしょうか?」

「すぐにはだめか? こちらにも色々と事情があるのだが」

「少なくとも1日は欲しいです」

「せめて明日出発じゃだめか?」


 俺の提案を聞いたギルド長が明日の朝出発を提案してくる。本当は少なくとも1日は欲しい。

 その後もいろいろと案を出すが、ギルド長は明日出発するように言われる。今すぐよりはましだと思って、明日の朝出発することにした。


 明日の朝に出発する馬車に乗れるよう手配してくれると言ったが、俺は断った。軽装甲機動の方が早く、座っていて疲れないのでそちらで行くつもりだ。

 もちろん軽装甲機動のことは話していないので、馬車に乗るよう言われたが、早く移動する手段があると言うと、渋々だが納得してくれた。詳しく聞かせと迫ってこなかったので助かった。軽装甲機動の説明のしようがない。



 一通り質問が終わったので、今度は俺が質問することにした。


「1つ質問させてください。俺の答えのどこに矛盾があったのですか?」

「矛盾なんて、どこにもなかったぞ」

「何?」


 衝撃的なことを聞かされた。

 その時に俺はようやく気が付いた。嵌められたのだと。


「嵌められたのですね……」

「ああ。これでお前が盗賊を捕まえた本人であるとわかった。じゃあなぜ嘘をついたのか教えてもらおうか」


 ギルド長はニヤニヤしながら俺に迫ってきた。

 俺は完全に諦め、すべて説明した。盗賊が『黒狼』のため、捕まえれば俺の力がバレる。そうなれば、今後厄介ごとに巻き込まれる。それを防ぐためにも嘘をついて黙ろうとしたこと。


 俺が説明しているとき、ギルド長は言葉を挟まないで真剣に聞いた。そのため俺も真剣に話した。

 もちろん最後には、俺のことは誰にも言わず、女性に説明した通り俺は偶然にも盗賊がいたところについてしまったことにするよう、お願いをした。


「そういうことか。わかった。本当に必要な時には誰かに説明するが、それ以外は黙っているようにする。もちろん、説明する人は俺が判断する。それでいいか?」

「わかりました。それでお願いします」


 必要な時には誰かに言うが、それ以外は誰にも言わない。少し心配だが、俺のことを黙ってもらう以上はここが下げられる限界の条件だろう。



 その後は、俺とギルド長で説明する際にどのように答えるかを合わせた。2人の答えが食い違うと、怪しまれるからだ。

 俺が即席で作った嘘におかしいところがあれば、その都度ギルド長は提案をして、偽造用の答えを考えていく。


「では今日の朝、出発する前にもう一度ギルドに来てくれ。王都のギルドに持って行ってもらう手紙を渡す」


 ある程度考えた後、ギルド長が最後にそう言うと、今度は買い取りの宝石の話になった。

 さすがに買い取りたいと言う人が来るかもしれないため持って行くわけにはいかない。そのためギルドで買い取ってもらうことになった。

 もし買取の人が来た時には、ギルドが買い取りの人に売るような形になるようだ。もちろん俺が売った金額で売るそうだ。買い取りの分で利益を取ろうとは思わないらしい。


 話がまとまった所で、宝石を渡してお金を受け取ると、部屋を後にした。かなりの額がたまった。

 もちろん王族の指輪は預けた。俺が持っていても問題ないと思うが、ギルドとしては個人に渡しておくのは良くないと判断して、渡すように言われた。



「戻ってきたと言うことは、話が終わったと言うことですね?」


 階段を下りると5人が固まって座っているのが見えた。そのため5人に近づくと、俺に気が付いてヴェーヌが真っ先に声をかけてきた。遅れて4人も気が付く。


「何もなかったようだな」

「……問題、無し」


 俺が確認するために聞くと、シュティアが小さく頷きながら問題がなかったことを伝えてくる。


 シュティアは問題はなかったと言うが、それはどうやら起きなかっただけのようだ。

 俺が来た瞬間、周りにいた男性冒険者が俺を睨んでいるのを視界の端でとらえた。シュティア達をパーティーか何かに勧誘しようとしていたために、俺が邪魔だと思っているのだろう。相手が俺に攻撃を仕掛けてこない間はこちらから手を出さないつもりなので、無視しておく。


 問題はなかったと言うことは、男性冒険者が最初に誰が声をかけるかを互いに牽制していたために、シュティア達5人に声をかけられなかったと考えられる。


「結局、話し合いはどうなったのですか?」

「それに関しては、宿で話そうと思っているから、とりあえず宿に行くぞ」


 俺はそう言うと、ギルドの出口へと向かう。そのあとをシュティア達5人が付いてくるのが分かった。


 物語では、ここで声をかけてくる奴がいるだろうが、幸いにも声をかけてくるものがいなかった。そのため、すぐにギルドを後にすることができた。ただ、ものすごく睨まれてる感じはした。




「で、どうなったんですか?」

「どうなったって、何がだ?」


 宿についたため、5人部屋を頼んで鍵を渡された。夕食には早いので、部屋に一度向かう。そして最後に部屋に入ったヴェーヌ扉が閉めた瞬間に、メルクールがものすごくワクワクした表情で尋ねてきた。

 俺は何を言っているか分からなかったが、メルクールは話し合いのことを聞いてきていることにすぐに気が付いたので説明することにした。


 詳しく話すと少し長くなりそうだったので、王族の指輪が混ざっており王都に行かなければならないこと。そして王に合うかもしれないことを話した。


 聞き終わった後、シュティアとヴェーヌ、ウーラが苦笑いを浮かべていた。多分だが、王族に合うことになるとは思ってもいなかったのだろう。

 メルクールはと言うと――


「戦利品の中に、王族の指輪が入っていたなんて、すごいですね!」


 少しずれていた。ちなみにだが、王に合わないといけないかもしれないと話しているときには椅子に座っていた。そしてそれぞれが座っている前には、飲み物を入れたコップが置かれている。カナはウーラの上に座って、話を聞いている。部屋が5人部屋のため、椅子が1つ足らないのだ。


 メルクールは、指輪を見たそうにしていたが、ギルドに指輪を預けてきたので残念ながら見せることはできない。


「……メルクール。そこじゃ……ない」


 シュティアは苦笑いを浮かべたまま、メルクールにそんなことを言うが、本人はいまいち理解していないようで、ぽかんとしている。きっと、指輪に気を取られて王に合うと言うところを聞いていなかったのだろう。隣にいたヴェーヌが説明している。


「まさか、強制的に貴族がらみの面倒ごとに巻き込まれそうになるなんて思ってもいなかったわ」


 ウーラが言った言葉に、シュティアが頷いた。俺も同様の考えだ。

 ヴェーヌの説明を聞いたメルクールが、置かれている状況にようやく気が付いたらしく、遅れて慌てている。


「いつ行くのですか!?」


 メルクールの質問に、シュティア達4人が俺の方を見てきた。どこか心配そうな表情だったが、なぜなのかは分からない。

 そう言えば、休みは貰えなかったため、明日の朝出発と言っていなかった。


「本当はすぐにでも行かないといけないが、ここに着いたのがすぐであったと言ったら、明日の朝出発になった。」


 1泊だけだが休みがあると聞いて、4人は少しほっとした表情をしている。どうやらすぐに行かなければならないと思っていたようだ。

 カナは何も思っていないらしく、無表情だった。


「でも、明日には出発するのですよね? この街に来た意味ないじゃないですか」


 メルクールが膨れつつ文句を言う。遊びたかったのだろう。俺もここの街を少しは楽しみたかった。

 シュティアとヴェーヌは文句を言わなかったが、表情には不満が出ている。ウーラは不満そうな表情をしていないが、目が不満であると訴えている。

 俺も不満なので、提案することにした。


「王都での用が片付いたら、真っ先にこの街に戻ってきて休もう」

「やったー!」


 俺の言葉を聞いたメルクールが飛び跳ねながら喜んでいる。シュティアとヴェーヌは飛び跳ねてはいないが、表情を見る限りものすごく喜んでいることが分かる。

 ウーラは微笑んでいるだけだが、内心ものすごく喜んでいるのが分かった。


「出発は明日よね? 今日は休むことが一番なのは知っているわ。でもせっかくこの街にきたのだから、私は食べ物ぐらいは楽しみたいのだけれど、どうかしら?」


 ウーラの提案を聞いて、文句は誰も言わなかった。

 ギルドで足止めを食らい、シュティア達に状況の説明をしたと言うこともあり、少し早いが時刻が夕食の時間帯に近づいていた。そこで新鮮な魚を食べに街に出ることにした。




「時間帯が原因なのでしょうか? かなりの人でにぎわっていますね」


 ヴェーヌの言う通り、外はかなりの人でにぎわっていた。海に近いので、あちこちから魚を焼く匂いがする。もちろん魚だけでなく、肉も焼いているのが分かった。


「やはり日本人なら、刺身が食べたいですね」

「……刺身?」


 ヴェーヌが屋台を見ながらつぶやくと、シュティアが首をひねりながら尋ねてきた。そんなシュティアに、ヴェーヌが説明する。しかし顔は苦笑いだ。

 それもそのはず。現在、シュティアは俺の腕をがっちりとホールドしている。まるで恋人ですと言っているかのように。それに関しては間違ってはいない。ただ、周りの男性からの目線がものすごく痛い。


「あんにゃろ! あんなに可愛い彼女がいるくせに、周りに4人も美女がいるぞ!」

「俺にも1人くれよ!」

「あんな小さな子まで手にかけてやがる。許さん!」


 酒に酔っているのか、大声でわめいている。中にはカナを見て大声を上げている男性も数人いる。


「……レイ。刺身食べよう」

「……食べれるのか?」


 シュティアが興味ありと言っているような目をしながら俺に訴えかけてきた。ヴェーヌの説明を聞いて興味を持ったのだろう。シュティアは小さく頷く。大丈夫なのだろう。


 ヴェーヌは問題ないとして、メルクールとウーラがどう思うかだ。外国人の中には、生魚はおいしくないっと感じる人もいると聞いたことがある。それがメルクールとウーラに当てはまる恐れがあった。もし以前に食べたことがあり、その時においしくないと思っていれば、もう食べないだろう。


 俺はメルクールとウーラを見て、確認を取る。


「あたしも食べてみたいです!」

「私も食べてみたいわね」

「メルクールはともかく、ウーラ。食べてみたいって、食べたことがないのか?」

「ええ。かなり前に海辺を移動したとこがあるけれど、刺身なんて見たことがなかったわ。最近伝わったのでしょうね」


 驚いたことにウーラは食べたことがないようだ。ウーラのかなり前とは、数百年単位のかなり前だろう。そしてウーラの最近とは、数十年単位をさすと思われる。それほどエルフと人間とでは感覚が違う。そのあたりを分かったうえで考えないといけないので少し面倒に感じる。



 食べるものが決まったので、刺身を売っていそうな店を探しながら回る。大半の店は屋台だが、大通りを少し移動すればいろいろな店がある。

 その中で1件、魚料理を出しているところがあった。外の看板に、明らかに魚と思われる絵が描かれていたのだ。ただ、その店は通りの端の方にあった。宿からはかなり遠い。


 全員が顔を見合わせる。カナを除いて全員が心配そうな表情をしている。


 俺を先頭に、入っていく。

 内装も外見からも想像がついた通り、居酒屋のような雰囲気だ。


 6人用の席につくとメニュー表を見る。見た限りでは、刺身はないように見える。刺身という商品名ではないのだろう。それ以前に、どれが魚料理か分からない。それっぽいものはあるが、本当に魚料理なのかが分からない。


 結局、注文するときに店員に尋ねてから注文した。驚いたことに、刺身があった。だが店のメニュー表には載っていなかった。理由を聞くと、裏メニューのようなものであるため。普通の人は刺身を食べない。食べるのは漁師か変わり者ぐらいだそうだ。


 刺身のほかに、魚と野菜を煮込んだものと、魚とエビのようなものをバターと一緒にオーブンで焼いたものを頼んだ。刺身が食べられなかったとしても、他の料理は食べられるだろう。


 待っていると料理が出てきた。どれもおいしそうな匂いがしている。

 刺身は大皿に白身魚と赤身魚が半々ほど乗っている。醬油なんてついてこなかった。かわりに、別皿にドレッシングが添えられている。ドレッシングの色は白色だが、黒く小さな破片が入っている。胡椒か何かだろう。


「……ぷにぷに、してる」


 メルクールと共に、シュティアがフォクで魚をつつきながらそんなことをいう。

 生魚なんだから当たり前のような気がするが……


 ウーラは刺身よりも先に、魚とエビのようなものをバターと一緒にオーブンで焼いたものに手を付けようとしていたが、エビをみて少し躊躇しているように見えた。


 俺の視線を感じたのか、ウーラは俺の方を見て微笑む。ウーラの表情で、微笑んでいるか驚いている表情以外見たことがないような気がする。


「それはエビだ。この世界のエビはどうか分からないが、旨いと思うぞ」


 俺の言葉を聞いたウーラがエビを一口食べた。表情からしておいしくないと言うことはないようだ。


 ヴェーヌは先に刺身を食べている。ドレッシングをつけて食べてはいるが、いまいちという表情をしている。

 俺もフォークに刺身をさし、ドレッシングをつけて食べてみる。日本人としては、箸でつかんで食べたい。


 刺身は普通においしい。もしかしたら日本で食べたものよりおいしいかもしれない。ただ、ドレッシングが少し合わない。味が少し薄いのだろうか?


 俺が少し顔をしかめていると、クスクス笑う声が聞こえた。そちらを見ると、ヴェーヌが俺を見て笑っていた。俺がしかめた顔を見て笑ったと言うことは、俺と同じことを思ったのだろう。


「醤油がいいな」

「同じ意見です」


 外見は蜥蜴人だが中身は日本のヴェーヌは、俺と同じ考えのようで頷いた。

 気が付けばシュティアとメルクール、ウーラも刺身を食べていた。ただ、口に合わなかったようで、一口だけ食べてそれ以降は食べなかった。仕方がないので、俺とヴェーヌですべて食べた。


 刺身でお腹がいっぱいになりかけたので、他の料理はほとんど食べることができなかった。




 会計を済ませると、宿に向かう。

 途中に銭湯に似た施設があったので、寄っていく。


 宿に戻ると、明日には出発と言うことで寝ることにした。いつも通りベッドを横につなげて寝る。シュティアはもちろん俺の横で寝ている。


「ねえ、レイ君?」

「なんだ?」


 電気を消して寝ようと思ったとき、ウーラが声をかけてきた。俺は返事をする。


「今日はさすがに、女性のお化けは出ないわよね?」

「当たり前だろ……」


 暗闇の中、ウーラが微笑みながらそんなことを聞いてきた。俺は顔が引きつるのが分かった。さすがにそれはない。

 もちろん俺が言ったように、夜中に女性のお化けが出るようなことはなく、王都に向かって出発する日になった。




 だだ、お化けが出るようなことはなかったと言うより、お化けが出ないよう、夜中にシュティアと2人で攻防を繰り広げたと言った方が正しいだろう……

言っていた修正点です。


メルクールの一人称がヴェーヌと被るため、『私』から『あたし』に変更。


零が人を殺した時に、あまりにも殺し慣れているように見えたので、そのあとに少し反動を越させた。

反動としては、冷静になった時に嘔吐する。 ()内は詳しい追記場所です。

15話 召喚者の襲撃  (馬での移動中)

16話 新たな国    (宿で寝ているとき)

22話 エルフの郷を出発(最初の方)


騎士団団長がこの場にいると、時系列的に矛盾が生じるために、Sランク冒険者のドルトに変更。変わったのは名前だけ。

第33話 温泉街を堪能(2)


王妃と王女の説明の変更。少し大雑把だったので少し詳しく記載。また、説明が入るタイミングが遅かったので、それも変更。

別視点 アルール王国騎士団 副団長視点


各話の誤字脱字の訂正。ただし、完璧には治せていないかもしれません。



頻繁に変更を行い、すみません。

作者も頑張っているのですが、いろいろと試しながらやっているので……


これからもご迷惑をおかけするかもしれませんが、少しでも面白い作品にできるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ