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外伝話 勇者視点2

今日は2話投稿予定です。夜にでも2話目を投稿します。


サブタイトルから分かる通り、主人公視点ではありません。

夜に投稿予定の話も同じく、主人公視点ではありません。来週は主人公視点に戻します。

「どうした? 修太」

「大丈夫だ、悟志。なんでもない」

「いや。なにかあるな。恋の悩みか?」

「ばかを言うな。別の悩みだ」


 レールン王国の城内にある廊下を2人の少年が歩いていた。背が180に届くのではないかと思える少年は、職業が剣士の大野悟志。

 大野悟志(おおのさとし)よりせが少しだけ低い少年は職業が勇者の小林修太(こばやししゅうた)

 2人とも日本からこの世界に呼ばれた日本人だ。


「結局、悩みあるじゃねえか」

「そりゃ人間生きていれば悩みの1つ2つぐらいあるだろ」


 2人はそんなことを言いながら城の廊下を歩く。窓の外は赤く染まっている。時刻は夕方だ。


 訓練はすでに終了している。基本的な訓練はここにきて1か月ほどで終了。いまはレベル上げを行っているところだ。

 修太のレベルは50。対する悟志のレベルは48。まだ低いように思われるが、2人のレベルはすでに人類最高に達しようとしている。


 RPGでもあるように、レベルが上がれば上がるほど次のレベルまでの必要経験値が増え、上がりにくくなる。

 レベルが高く、強いと言われる騎士団の団員でもレベルは40。

 40歳を過ぎたであろう団長でもレベルは45。

 そこから考えると、どれほど上がりにくいかが分かるだろう。


 にもかかわらず、召喚されて2か月ほどしかたっていない2のレベルが団長を追い越したのは、召喚者であると言うことが関係している。

 召喚者は、なぜだかわからないがレベルが上がりやすい。といっても個人差ならぬ、職業差がある。そのなかでも勇者は特に伸びやすいと言われている。だがそれでもレベルが40を過ぎると急激に伸びが悪くなった。


 もちろん強い魔物を倒せばその分経験値は貰えるが、死亡するリスクは増えるうえに1回当たりの戦闘が長引く。結果、1日当たりの銭湯数が少なくなる。



「で、今悩んでいることはなんだ?」

「いわなきゃだめか?」

「あたりまえだろ? 同じ勇者パーティーなんだから」


 2人は話しながらも歩き続ける。城だけあって、内部は広く複雑に入り組んでいる。だが2か月もすれば行きたいとこをに行けるほどには、道を覚えた。



 道をしっかり覚えようと思う原因になったのは、とある事件。

 1人の生徒が道に迷って捜索が行われた。迷子だ。見つかったのは2日後。地下通路で見つかった。

 空腹で今にも倒れそうになっていた。


 城の内部で道に迷い、空腹で死んだ。そのような愚かなことになりたくないため、生徒や教職員は城の道を思える勉強を必死に行ったのは、ほんの1か月前の話。




「悩んでいたのは、魔王討伐についてだ」

「それの何について悩んでいたんだ?」

「俺たちはすでにレベル50に近い。そのため魔王討伐に行きたいと女王に言った」


 2人は足を止めずに、ひたすら歩く。

 召喚者に課せられた仕事は魔王討伐。それを行わないと日本には帰れない。そのため、召喚者は必死に日々のレベル上げを頑張っている。


「で、どうだった?」

「結果はまだ行くな。理由は分からないが、何かあるのだろう」


 勇者組の6人のレベルは高く、すでにこの世界でもトップクラスのレベルだ。そのためよっぽどのことがない限り死亡事故は起きない。

 そのため魔王討伐に行こうとするのだが、女王に止められていると言うのが、現在置かれている状況だ。


 2人の会話はそれで終わった。それぞれ何かを考える表情をする。

 次に言葉を出したのは、悟志だった。


「許可が下りそうな言い訳は思いついたか?」

「いや。今それを考えているが、いい物が思いつかない」


 2人はすぐに黙って、歩き続ける。

 着いた場所は、召喚者が普段寝起きする建物。


 以前までは満員だったが、相次ぐ失踪とダンジョンでの死亡により勇者組をはじめとするトップ組は1人部屋を割り当てられるようになった。

 1人部屋を割り当てられて喜ぶ生徒もいるが、大半は同じ学校の生徒の失踪や死亡を悲しんでいる。


「じゃあな。あまり考えこみすぎるなよ?」

「ああ。わかってるよ。またあとで」


 1人部屋を割り当てられている2人は、別々の部屋に分かれると部屋に入った。入浴の時間は決まっている。入浴時間にはまだ早いので、こうして部屋に戻ってきたと言うわけだ。



(さて、どうするか)


 部屋に入った修太は、心の中でそうつぶやくと、窓際にある椅子に座り込む。窓の外はちょっとした庭になっており、そのすぐ向こうが城壁だ。3階ということもあって、わずかだが街の様子が見える。行きかう人はいろいろ。鎧をつけている人もいれば、荷物を運んでいる人もいる。

 歩いている人もいれば、急いでいるのか走っている人もいる。


(どうすれば魔王を倒しに行くために、ここを出ていくことができるか……)


 外の景色を眺めながら、そんなことを考える。

 ここ2か月ほどで、自分の好き勝手に生きたいという勝手な理由で城を抜け出した者が後を絶たない。そして大半のものは遺体となって帰ってきている。もちろん遺体となって帰ってきていないものもいるが、その場合は情報となって届く。


 両方とも違う場合は、生きている可能性が高いと言うことだ。そして真っ先に抜け出した零は、未だに情報として伝わっていない。


 勇者組の修太もここを出ていこうとしている。もちろん魔王を倒すために。そのために女王を説得するための案を考えるが何も思いつかない。


 結局なにも思いつかず、入浴の時間になったために大浴場に向かう。




 風呂から上がり、部屋の戻るとベッドに倒れ込み再び考える。天井の一点を見ながらひたすら考える。だが一向にいい考えが思い浮かばない。


「小林君。起きている?」


 突然扉がノックされる。修太は上半身を起こして扉の方を見る。声からして同じ勇者組の池本綾香(いけもとあやか)だ。

 修太と綾香は幼馴染。家は近所で、小さいころからよく一緒に遊ぶなど、物語で出てくる主人公と幼馴染の関係を描いた通りだ。そのため周りは、そのまま付き合うのではないかと裏で話しては盛り上がっている。

 だが実際、2人は苗字で呼び合っているので、付き合うと言うことがなさそうなのが現実だ。


「池本か。起きているが、どうした?」

「ちょっと気になったことがあって……」

「そうか。入っていいぞ」


 こんな夜に女子が男子の部屋を訪れるところを誰かに見られるとまずいと思い、修太は招き入れる。


 男子と女子では部屋の階が違う。にもかかわらず、男子の部屋に女子が来たのを見られたとなれば、翌朝は質問の嵐。一度他の男子が朝食の席でその友達に質問され、運悪く先生に聞かれた。結果注意を受けた。

 それ以降、男女両方とも威勢の部屋を訪れるときは気を付けるようになった。



 綾香も風呂に入ってきたようで、寝るときに来ているであろう服に着替えている。髪は乾いているので、魔道具でも使って乾かしたのだろう。


「おじゃまします」

「ああ。そこの椅子に座ってくれ」


 さすがにベッドに座らせるのはまずいと思って椅子をすすめる。もちろん修太はベッドに座っている。

 髪が渇いていると言っても、お風呂に入ったのには変わらない。そのため女子特有の風呂上がりの匂いがした。男子には別の意味で少々厳しい匂いだ。


 修太は意識しないよに気をつけつつ、話を振ろうとしたが、何を話していいかわからないので黙ったまま。その雰囲気が相手にも伝染したようで、同じように黙った。お互い黙ったままのまま時間が過ぎる。


「……で。気になることってなんだ?」

「え? あ。えっと……」


 なんとか言葉を絞り出した。絞り出せた。相手も合わそうと、必死に考える。だが思い出せないようで、目が泳いでいるしている。


「そ、そうだ。思い出した。小林君ってここ出ていくつもりなの?」

「ああ。そのことか。そろそろ出ていきたいが、女王の許可が下りなくてな」


 修太は今の状況を説明した。レベルが高くなったために魔王を倒しに行こうとしていること。そのため城を出ようと思っていること。女王にそのことを説明したこと。そして許可が下りなかったこと。


 修太の説明中、綾香は一言もしゃべらないでひたすら聞いてくれた。修太の説明が終わると、何かを考える。


「じゃあ、こっそり抜け出すのはどう?」

「だめだ。それじゃあ他に抜け出した人と同じだ。きちんと許可を貰ったうえでここを出ていきたい」


 綾香が尋ねてくるが却下する。修太はきちんと許可を貰ったうえで出ていきたい。それは譲れないのだ。


「ねえ? 気になったことがあるのだけれど?」

「なんだ?」

「相手が、なぜ許可を出さないのかは聞いた?」

「いや。なぜだ?」


 綾香が尋ねてきた。修太は意図が分からず聞き返す。なぜか綾香はあきれ顔をした後、ジト目で見てきた。修太は混乱する。何を考えているのか全く分からないのだ。

 修太の顔を見て綾香は溜め息をついて、説明をする。


「相手の考えを聞かないで提案するのは良くないよ。相手の考えを聞いて、そしてこちらが提案しないと」

「そういうことか。明日試してみるよ。ありがとう」

「どういたしまして」


 綾香の言葉を聞いて修太は納得する。今まで、修太は向こうの考えを聞かず、一方的に考えを押し付けてきたのだ。

 修太がお礼を言うと、綾香は笑顔で答える。その表情にドキリとしたのはなぜだか分からなかった。


「じゃあ、私は部屋に戻るね?」

「ああ。気をつけろよ?」

「わかっているよ」


 修太の言った気をつけろと言う言葉は、誰にも見つかるなよという意味を持っているのは、綾香も理解している。


「そういえば、小林君は行ったの?」

「え? 女王のところにか?」


 扉から出ていこうとした綾香が振り向きざまにそんなことを聞いてきた。

 修太は訳が分からず聞き返したが、女王のところに行ったことは綾香に伝えたことに気が付く。


「そ、その。他の男子が行っているようなところに……」

「……は?」


 出てきた言葉に唖然とする。何を言っているのかが分かたなかったのだ。

 他の男子が行っているところはたくさんある。訓練所であったりダンジョンであったり、風呂場であったり……


「あ。もしかして娼館のことか?」

「女子の前で、よくサラッと言えるね……」

「ご、ごめん」

「まあ、正解だけれど」


 場所が思いついたので行ってみると、修太は綾香に思いっきりジト目を向けられた。正解は正解だったようだ。


 修太は他の男子生徒は、女王から貰ったお金やダンジョンで稼いだお金を娼館で使っていると聞いたことがある。もちろん修太は行っていない。

 興味がないと言うわけではないが、そこまで行きたいと言うわけではないのだ。


 ここの王都にも娼館があることは聞いている。そして王都である故に、規模は大きいそうだ。そのため男子は良く通っている。もちろん女王は知っているが、何も言わない。

 先生も知っており、全校生徒に一度注意はしたのだが、通う男子が後が立たない。それどころか以前より増えた。娼館があると言うことが分かったためだ。


「行っていないが、なぜだ?」

「気になっただけ。じゃあおやすみ」

「ああ。おやすみ」


 行っていないことを伝えて、なぜ質問してきたかを綾香に聞くが、綾香は答えなかった。

 扉の方に振り向く間際に、綾香がうれしそうに微笑んだのを修太は見逃さなかったが、それがなぜかは分からなかった。


 修太は、女王にどのように聞こうか考えるより、綾香がなぜ微笑んだのかが気になって、眠ることができなかった。そのため眠ったのは深夜をすでに過ぎた時間帯だった。




 翌朝、朝食をとった修太は女王のいる部屋に向かった。朝食の時に、近くにいたメイドを通じて向かうことはすでに伝えている。

 修太は、メイドは伝えておくと言っていたので大丈夫のはずと考えている。


 迷路のような道順で、女王がいる執務室に到着した。外には兵士が2人、扉の両脇に立って警備している。

 両方とも立派な鎧を着ている。何度も見たことがある鎧だ。

 すぐに騎士団に所属していることが分かった。


「小林修太です。女王に謁見するために来ました」

「わかった。少し待っていてくれ」


 兵士の1人がそういうと、扉を開けて入っていった。修太はその間、扉の前で待っていた。


 数分後部屋の中に入っていった兵士が戻ってきた。兵士は修太を見ると頷く。

 許可が下りたようだ。


 修太もうなずき、分かったことを伝える。かなりの回数来ているので、どのようにすればいいか分かっている。兵士も説明しなくてもいいことを理解しているようで、何も言わずに修太を通した。


「失礼します」


 修太は扉と部屋の堺でそう言いうと一礼して女王の執務室に入る。

 王都を出て魔王を倒しに向かいたいと伝えるために、何度も訪れた部屋だが、いまだになれない。


 部屋の壁には絵が飾られている。見た限り風景画だ。

 棚には本がぎっしりと詰められている。背表紙には何も書かれていないので、どの本に何が書かれているかわからない。だが、ここにある本が仕事上必要なものであることは予想できる。


「いらっしゃい。今日はどうしたの?」


 女王は何やら書き込んでいたのを止めて顔を上げた。修太がかなり頻繫に来ていたこともあって、女王はかなりフレンドリーに話すようになった。

 修太もフレンドリーに話すように女王に言われたが、さすがに女王相手にフレンドリーに接しようとは思えなかった。


「きっとわかっていらっしゃると思いますが、魔王討伐のことに関して相談させていただこうと思ってきました」

「それで?」


 修太はいつもどおりに話し始める。女王も予想はついていたようで、椅子の背もたれにもたれかかり微笑みながら修太の様子をうかがう。

 修太は女王がするこの微笑みが、何かを隠しているように見え好きになれないでいる。


「なぜ俺達が魔王を倒しに行くことを拒むか教えてもらえないでしょうか?」


 今までは、早く魔王を倒して日本に帰ろうと思い自分の意見を押し通そうとしていた。しかし修太は今回は綾香の意見の通り、最初に女王が何を考えているのか聞き出すことにした。


 修太の言葉を聞いて、女王は一瞬だが顔を下げた。だがすぐに修太の方へと顔を向ける。


「こちらの考えを聞いてくるとは意外ですね。誰かに言われたのでしょうか?」

「友達に言われました。女王陛下の意見を先に聞いてはどうかと」


 別に嘘をつく必要がないと感じた修太は正直に答える。女王は椅子の背もたれにもたれかかって微笑んだまま、修太をじっと見る。なにを考えているのかは修太には分からなかった。

 女王は少し間を置くと、机の上に腕を載せた。そして体を少し前のめりにする。


「魔王討伐のためには、さらに力が必要です。レベルでいうと80はいると思ってください。もちろんあなた方が移動中も各地のダンジョンでレベルを上げようとしているのは理解しています」


 女王はそこで言葉をいったん止める。その時に修太は言葉を挟みそうになった。知っているならなぜゴーサインを出さないのか。だが、言いそうになったのを思いとどまる。


 女王は、勇者組のレベルを上げつつ魔王討伐に向かうことは知っている。にもかかわらず向かわせてくれないのには他の理由が存在する可能性があるから。修太はそのように予想を立てて女王の次の言葉を待つ。


 女王はそれを見て一層微笑んだ。白い歯がわずかだが見える。


「口を挟まないとは想定外でしたね」


 女王の言葉を聞いて、修太は少し驚く。まさか試されるとは思ってもいなかったのだ。

 修太の驚いた様子を見て、女王は何かに満足したような表情になった。前のめりにしていた体を後ろに倒して、背もたれにもたれかかる。


「では、なぜ魔王討伐へ出発させないか教えましょう。理由は2つあります。1つめの理由は、魔王討伐のために通過する2つの国に関係しています」


 女王は話始めた。修太は気持ちを切り替えて話に集中する。


 魔王討伐のために通過する2つの国。

 1つ目の国はアルール王国。これはレールン王国と接している国。

 そしてもう1つの国が帝国である【アストア帝国】。


 修太はいまいち理解できなかった。なぜこの2国が、魔王討伐のために修太たち勇者組が出発できないかに関係しているかわからない。


「実は、この2国ですが魔王と手を結んでいるのではないかという情報が、私の放った密偵から届けられました。特に魔族領に近い帝国が怪しいそうです」

「え?」


 女王の言った言葉に、修太の思考が付いてこなかった。まさか敵対しているはずの魔族と人間が手を結んでいる。いくらなんでも考えられなかった。

 女王は女王で、悲しむような表情をしている。


「もしこの情報が本当ならば、魔王の敵である勇者はこの2つの国のどちらかに入ると、間違いなく相手国に殺されるでしょう。それも誰に殺されるかさえわかりません」


 魔王の敵である勇者は間違いなく相手国に殺される。それはつまり人間が人間によって殺される。

 修太は納得できなかった。なぜ同じ人間同士協力できないのかと。

 女王は言葉をつづけた。


「そしてもう一つの理由は、最初の理由と関係しています」

「……それは、どのような理由ですか?」


 修太は恐る恐る尋ねる。大体だが予想がついたのだ。

 修太は時々だが頭がよく回る。そのため気が付きたくない時に気が付くことが多い。そして今、それが発揮されて嫌な予想をしてしまった。


 女王は、2国が魔王と手を結んでいると言ったときより、一層悲しそうな表情をする。

 そして、修太の恐れていたことを言った。


「私は、2()()()()()()()()()()()と思っています」


 修太は目の前が真っ暗になるような気がした。

 当たってほしくない予想が当たったから当たり前だ。


「もちろん本当はこんなことをしたくはありませんが仕方がありません。といっても今はまだ偵察している状態なので、近々結論が出ると思います。あなた方を戦争に巻き込みたくないので、ここにとどめようと思っているのです」


 修太は目の前が真っ暗になっている間も、女王は言葉を続ける。そのため女王の言ったことは、修太の耳には入るが、頭の中で整理できないでいた。


「もちろんあなた方、召喚者には戦争には強制的に参加はさせません。参加したいと言うのであれば、対価は払う予定ですが。あと、このことは誰にも言わないでくださいね?」

「そう……ですか。わかり……ました……」

「聞きたいことはないですか? さすがの私でも、この後仕事があるので」

「わかりました。失礼します……」


 修太は少しふらふらしつつ、扉に向かう。出ていく際に一礼をして部屋をあとにする。




「お! 修太じゃねえか! ってどうした!? 死にそうな表情じゃないか!」

「修太、大丈夫か?」


 修太は部屋の前の廊下で同じ勇者組の大野悟志と桐野孝仁(きりのたかひと)にあった。孝仁は背が低い。悟志は身長180に届きそうなやつだが、孝仁は身長が160ほどしかない。本人曰く、身長は165はあるそうだ。


 そんな2人が会話していたが、修太を見ると、一気に心配した表情になって近づいてきた。

 修太は2人に軽く手を挙げて、大丈夫であると伝えると部屋に入った。一瞬2人はついて来ようとしたが、ついては来なかった。



 修太は部屋に入ると、ベッドにうつ伏せで倒れ込む。枕に顔を埋めて、さっき聞いたことを頭の中で整理する。


 まさか女王が戦争を仕掛けようとしているとは思わなかった。あったとしても、警告だと思った。

 納得しようとすれば納得できる。魔王と手を結べば、人類の敵になったものと同じ。そうなれば滅ぼそうとするだろう。

 だが話し合いはできないのだろうか。例え魔王と手を結んだとしても、相手は人間。まだ話し合いのは可能だ。それからでも遅くはないと思う。それが修太の考えだ。



「ねえ、小林君。起きている? 入って大丈夫?」

「ああ」


 扉がノックされる。どうやら綾香が来たようだ。修太は顔を枕に埋めたまま返事をする。声はくぐもっていたが、綾香には聞こえたようで部屋に入ってくるのを修太は感じだ。


「だ、大丈夫?」

「ああ。大丈夫だ」


 修太は顔を上げてベッドに座ると綾香の方を見る。綾香の表情は修太のことを心配しているのがはっきりとわかるものだった。


「どうだった? 許可は下りた?」

「いや。それよりも問題ごとが起きた」

「え? 小林君、一体何をしたの?」


 修太の言葉を聞いて、綾香が尋ねてきた。修太は一瞬話そうかとしたが、女王の言った「誰にも言わないで」という言葉を聞いて、口を紡ぐ。


「別に言わなくていいよ。何かしらの理由がありそうだし」

「すまない」


 それを見た綾香は問いただそうとするのをやめた。いくら幼馴染でも限度というものは存在する。

 修太の方も言えないことはわかっているので謝る。


「ともかく、まだ魔王討伐に出ることはできなさそうなんだね?」

「ああ」


 綾香の質問に短く答える。それで会話が終わってしまった。綾香はもう少しここにいたいようで、話す内容を必死に考えているようだ。そんな姿が面白く、心の中で笑ってしまう修太だった。


 修太は仕方がないと思い、話題を出すことにした。


「そういえば、池本ってやけに魔王討伐に積極的だよな?」

「ん? なんでそう思うの?」

「女子なら、こういう転移ものにはあまり積極的じゃなさそうだから」

「確かに。こういうのって男子が楽しんでいそうだよね」


 修太の話題にすぐさま食いついた綾香は答える。実際、一緒に来た学校の仲間達のなかで乗り気なのは男子。

 女子の方は、どちらかというとあまり乗り気ではない。少しでも早く日本に帰ることができるようにと、しぶしぶ動いているのが大半。中には綾香のように積極的に動いている者もいるが、数少ない。


 ちなみに修太が通っている学校の男女比はおよそ1対1。およそなので完全ではない。男子の方が数名多い程度。


「で、なぜそこまで積極的なんだ?」

「だって、小説であるような異世界での話みたいに自分が来たのだから少しでも楽しみたいし、早く日本に帰れるように頑張ろうと思っているから」


 どうやら綾香は楽しんでいるようだ。修太はそんな言葉を聞いて、すこし羨ましく思った。

 修太は、勇者である自分がみんなのために、みんなより努力するのは当たり前だと思って行動していた。そのため女王へ、魔王討伐のために早く王都を発ちたいと言っていたのだ。


「俺も少しは楽しまないといけないのかな……」

「突然どうしたの?」

「いや、池本のことが羨ましく思ってな」

「なにそれ、気持ち悪い……」

「おい! 俺はいたって普通のことを思っただけだぞ!」

「わかっているよ。そんなこと」

「ほんとかよ……」


 その後も修太と綾香は仲良く会話した。

 修太の男友達の、悟志と孝仁の2人が部屋に訪れて騒ぎ出すまでは――

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