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第38話 仲間

暇だったので投稿します。


え? 毎週日曜投稿だったのでは? って?

趣味で投稿しているので、多少のズレはいいのです(オイ!)

 ある程度は狙っていたが、まさかここまでタイミングが正確に合うとは思ってもいなかった。


 俺が蜘蛛に引きずられて入ってきた入り口付近はかなり大変なことになっていた。

 ある蜘蛛は火に飲まれて苦しそうに鳴き、ある蜘蛛は火から少しでも離れようと押し合い他の蜘蛛とぶつかる。


 それをアラクネは驚きのあまり、ただただ呆然と見ていた。周囲の蜘蛛もアラクネと同じようにじっと見ているだけだった。


「おんどりゃ!」


 少女らしくない声と共に、誰かが火の中から飛び出てきた。手には2本のダガーが握られていた。


 火を飛び越えてきたと言う方が正しいだろうが、俺からは、火の中から飛び出てきたようにしか見えなかった。


 そしてその少女は、髪は綺麗なクリーム色をしており、頭には獣人の証である犬――狼の耳が生えていた。

 俺は狼の耳が生えている、尚且つ綺麗なクリーム色をした少女を1人しか知らない。


「遅いじゃねえか。()()()()()


 地面に着地すると同時に、付近にいた蜘蛛を物凄いスピードで切りつけていく少女――メルクールに向かって、俺は呟いた。もちろん距離が遠いので聞こえるわけがない。

 言った後で、俺は自分の言った言葉に気が付いた。これじゃあまるで、最初から待っていたような言い方だなと。


 だが、最後の1歩を踏み出せないため、どうしても仲間だと認められない。俺はそんな自分が嫌になった。


「……ファイヤーボール!」

「アイスジャベリン!」


 炎の向こうから2人の女性の声が聞こえた。シュティアにウーラだ。

 シュティアに関しては、本来は詠唱しないでも魔法を使えるはずだが、魔法名を言葉に出している。


 もちろん、俺だけ何もしないで待っているだけというのは、やってはいけないだろう。

 俺はアラクネを正面から見る。


「どうやら連れが迎えに来てくれたようだ」

「チッ……ヤツラヲコロシ、エサニシロ」


 アラクネは炎の方を見ながら叫ぶ。それを聞いたホワイトスモールタラトが一斉に駆け出した。遅れてホワイトタラトも動き出す。

 だが俺を囲んでいた蜘蛛は動かない。


「オマエモ、エサニナッテモラウ」

「すまんが、それは無理だな」


 アラクネがそう言ってきたので、俺は答えると走り出した。

 向かうのはもちろん、シュティア達の方だ。


「コロセ」


 アラクネがそういうと、蜘蛛が近づいてきた。

 蜘蛛が一面にいるので、シュティア達のところまで行くには、倒しながら行かなければならない。

 ただし、普通の人の場合ならだ。


 俺は身体強化を使うと、斜め上にジャンプする。

 入り口まではかなりの距離がある。もちろん届くはずがない。


 徐々に落ちてきた。

 俺の着地地点であろう位置にいる蜘蛛がこちらに顔を上げて口を開けている。2メートルはあるであろうホワイトタラトの口には頑丈な牙が生えており、噛まれれば腕の1本は簡単に持って行かれそうだ。


 もちろん俺も腕をくれてやるつもりはない。蜘蛛の頭に照準を合わせ、撃つ。


 バババッ!


 頭を打ちぬかれたホワイトタラトは絶命し、その巨体を地面に落とした。


 俺はその体に着地する――と同時に、すぐに走り出した。

 周囲は蜘蛛であふれかえっている。すぐに走り出さなければ、這いあがってきた蜘蛛に捕まり殺される。


 走り出した先にいる蜘蛛に照準を合わせ、再び打つ。


 バババッ! バババッ!


 2体倒す。その体の上を走って助走すると、再びジャンプする。



 それを数回すると、メルクールが戦っているところまできた。

 俺はメルクールの横に着地する。


「レイさん、大丈夫ですか!?」

「ああ。おかげさまでな。ありがとう。助かった」

「仲間じゃないですか! 気にしないでください!」


 俺は蜘蛛を銃で倒しながら答える。

 メルクールは俺のお礼を聞くと、嬉しそうに、はにかんだ。

 その間も蜘蛛を1匹倒しているので、凄いと心の底から思ってしまう。


「……ウィンドジャベリン!」

「ファイヤーボール!」


 後ろから声が聞こえたかと思うと、魔法での援護が来た。


「仲間か……」

「ん? 何か言いましたか?」

「いや、何でもない。それより、この後はどうする?」


 俺のつぶやきが聞こえたらしく、メルクールは聞き返してくる。そのあいだに蜘蛛を再び1匹倒している。

 俺は何もないと言うと、話をそらすために聞き替えす。

 別に聞かれてマズイことではないが、聞かれて欲しくなかった。


「全部倒す?」

「無茶言うな! 多すぎるだろ!」

「だって、レイさんを助けにくるのが目的だったので、そのあとの事なんて考えていませんよ!」

「ミイラ取りがミイラになるじゃねえか!」

「ミイラ取り……すみません。もう一度お願いします!」

「もういい!」


 俺は心の中でうなだれた。まさか作戦なしで突っ込んでくるなんて思わなかったのだ。

 そうこうしていと、炎が上がっている方向から誰かが合流した。

 ヴェーヌだった。


「零さん、大丈夫でしたか?」


 ヴェーヌはそう言いつつ、蜘蛛を槍で突き刺して倒す。レベルが上がっているためなのか、戦闘自体はあまり苦労はしていなさそうだった。


「ああ。見ての通りさ。ありがとな」

「いえいえ。それより撤退しますよ」

「了解」


 撤退を伝えられる。

 メルクールとヴェーヌと協力しつつ、炎が上がっている方向――洞窟の出口に繋がっている通路に向けて、蜘蛛を倒しながら移動する。


 道を作るのは、メルクールとヴェーヌに任せた。銃を使っては、流れ弾により、シュティアとウーラが怪我をするかもしれないのでやめた。

 その代わり、メルクールとヴェーヌの背後は俺が守る形をとった。


 少しづつだが、入り口に近づく。

 途中、すぐ近くまで蜘蛛が来てしまい、銃が使えず、蹴って遠ざける場面が数回あったが、無事に入り口にたどり着いた。


「……レイ……お帰り」

「レイくん。無事で何よりだわ」

「2人とも心配をかけたな。それにカナも来てくれてありがとう」

「役に立てませんでした。すみません」


 入り口はシュティアとウーラの2人が魔法で守っていた。お礼をきちんと言っておく。

 カナも来ていたが、役に立たなかったと落ち込んでいた。


「確かに、ドローンや他のものは俺が持っているからな……」

「……作戦は……カナちゃんが提案。……いい案だった」

「ええ。まさかシュティアちゃんと私で入り口を守るなんて、聞いたときには驚いたけれど、案外行けるものだったわよ?」


 シュティアとウーラはそう言いつつ、魔法で攻撃を続ける。話ながら魔法を撃つって、器用すぎるだろ……

 もちろん俺も手は止めないで、撃ち続ける。途中でマガジンを交換する。空マガジンはインベントリにしまった。


 どうやら俺を助けるための作戦は、カナが立案したようだ。

 だがまさか、入り口を魔法使い2人で守っているなんて思わなかった。だが2人なら問題はないだろう。それを考慮して、作戦を立てたと思われる。

 カナは案外できる子なのか?


「零さんを助けることが出来ましたし、そろそろ撤退しませんか?」

「……賛成」


 ヴェーヌが下がりつつ、少し苦しそうに言い、シュティアが賛成の意志を示す。

 他の3人も撤退したそうに俺を見てくる。

 なぜ俺を見るのだ?


「下がるぞ。先に行け!」


 いかにもフラグっぽい言葉を言って、4人を先に行かす。俺は4人全員が通路に入るまで、その場にとどまり撃ち続けた。全員が入ったのを確認して、俺も撃ちながら下がる。


 先頭はヴェーヌとメルクールが行き、そのあとをカナが付いて行く。シュティアとウーラは俺の後ろで魔法で攻撃をしながら下がる。


 通路はそこまで広くないので、前の蜘蛛がやられれば、後ろの蜘蛛がつっかえている。


「シュティア! 天井を崩せ!」

「……わかった。離れて」


 シュティアに指示を出すと、俺は撃つのをやめて下がる。

 俺が下がったことを確認したシュティアが、ファイヤーボールを放った。


 ファイヤーボールは天井に当たると爆発し、当たった場所の天井が崩落した。

 そのため通路は塞がった。蜘蛛の魔物は来れなくなった。


「なんとか逃げ切れましたね」

「ええ。一時はどうなるかと思ったわ」


 ため息をついた後、ヴェーヌは崩れ落ちた天井を見ながらそんなことをぽつりと言った。ウーラもそれに続くように言う。

 シュティアとメルクールも崩れ落ちた天井を見ている。



 時間にして数分だっただろう。俺は4人に声をかける。


「それじゃあ、洞窟の外に向かうか?」

「……うん」


 シュティアが返事をする。それを合図にするかのように、俺達は洞窟の外に向かう。

 俺は気になったことがあったので尋ねることにした。


「そういえば、なぜ助けに来たんだ? 俺は大丈夫だと言ったはずだが?」

「例え零さんが違うと言っても、私たちは大事な『仲間』です」

「……うん。レイが、仲間だと思っていなくても……私たちは、『仲間』」

「そうですよ! カナちゃん含め、6人全員がそろって1つのチーム――『仲間』です!」

「『仲間』だから助けに来たのよ」

「そうか。ともかく助けに来てくれてありがとな」


 それぞれが思いを伝える。俺はそれを聞くと再びお礼を言って歩き出す。




 途中、落としたはずのハンドガンを探しながら洞窟の外に向かったが、結局見つからなかった。

 何を探しているのかとヴェーヌに聞かれたときに、アサルトライフルとハンドガンを落としたと伝える。


 するとウーラが思い出したかのように、身に着けていた指輪型のアイテムバッグから、ブルパップ式のアサルトライフルを取り出すと返してきた。


 どうやら、俺が蜘蛛に捕まって引っ張られていったときに、シュティア達を呼びに戻る際、回収したらしい。


 期待を込めて、ウーラにハンドガンも拾わなかったかと聞いたが、拾っていないと言われた。




「やはり外の空気はおいしいです!」


 途中、洞窟の通路に横たわる盗賊をよけ、洞窟から真っ先に出たメルクールがそんなことを言う。

 メルクールに続いて、シュティア、カナ、ウーラ、俺、ヴェーヌという順番で洞窟から出た。

 時刻は昼をちょっと過ぎたぐらいだろう。


「お昼にしますか?」

「……お腹……空いた」

「あたしもお腹ペコペコです」

「何か貰おうかしら?」


 ヴェーヌの言葉を筆頭に、3人が空腹を訴えてくる。そこで昼食を食べることにした。


 その前に、盗賊2人を洞窟内に入れる。入り口近くなら魔物に襲われるかもしれないと言うことで、少し進んだところまで連れて行った。


 さすがに臭いがすると言うこともあり、俺1人で2人の盗賊を運ぶ。

 もちろん終わった後は、シュティアの魔法に頼った。

 ――というより、俺が2人の盗賊を運び終えて洞窟を出るなり、シュティアが問答無用で生活魔法をかけてきた。俺としても掛けて欲しかった助かった。


 昼食はサンドイッチを作る。俺がサンドイッチを作っている間に、ヴェーヌはスープを作るのを頼んだ。ウーラもスープを作るのを手伝っている。

 シュティアとメルクールだが、料理ができないことが分かっているので、待っててもらっている。


 出来上がると、みんなで分けて食べる。カナは魔石を砕いて加工し、固めたものを食べている。魔力補給用のものだ。


 片づけは簡単だ。インベントリにしまうだけ。

 と言っても、シュティアが魔法で水を出し、それを使ってきちんと洗った後に仕舞った。



 本当は出発したかったのだが、片づけているほんのちょっとの間に、メルクールとヴェーヌが寝てしまった。カナはそんな2人の抱き枕になっていた。


 仕方なく起きるまで待つことにしたが、気が付けばシュティアとウーラまで眠ってしまっていた。

 まあ、食事した後のうえ、日がいい具合の強さで暖かいので、眠たくなったのだろう。


 俺は苦笑いを浮かべると、インベントリから本を取り出し読む。


 4人が起きたのは、2時間ほどした時。

 4人の意識がしっかりしたのち、山を下る。




「村にはいかないのですか?」

「ん? ああ。行かなくても別にいいかなと思って」


 時間がある上に、寝てしまった4人が夜に寝れなくなると困るので。草原をのんびりと歩きながら街に向かう。

 向かう街は、昨日までいた街である【コロノ】。

 一度そこに寄ってから、次の街に向かおうと考えている。


「暇ですね……」


 後ろにいたメルクールがそんなことを言う。確かにただ単に歩いているだけでは暇だ。

 俺の後ろにはカナを含む5人が話ながら歩いている。


「いいこと思いついたわ」

「ん? 何を思いついたのですか?」

「まあ見てて」


 同じく後ろにいたウーラの言葉を聞き、メルクールが期待を込めて聞く。ウーラが何かするのは分からないが、あまり興味がなかったので振り向かない。

 多分だがつまらないことだろう。


「ねえ。レイくん、レイくん」

「なんだ?」


 ウーラが俺の名前を呼びながら右の肩を叩く。俺は返事をしながら振り向く。すると――


 ぷにっ


 ウーラは、俺の頬の横に指を置いており、俺が振り向いたときに指先が刺さるようにしていた。よくあるイタズラだ。そしてやった本人のウーラは少し驚いていた。


「あら? 案外簡単に引っかかったわね? あなたなら避けたと思ったのだけれど」


 ちょっとイラッとした。だが避けれなかった俺も俺だ。

 行き場のないイライラが溜まる。

 俺は前を向いて再び歩き出す。



「零さん?」

「なんだ?」


 あまり時間を置かずに、今度は反対側である左肩を叩かれた。声からしてヴェーヌだ。

 俺はイライラしていたので、何も考えずに振り向く。それが間違っていた。


 ぷにっ


 ヴェーヌまでもが、俺の頬の横に指を置いており、俺が振り向いたときに指先が頬に刺さるようにしていた。

 まさか10秒もたたずに2回も引っかかるとは思わなかった。


「零さん……単純すぎですよ……」


 ヴェーヌがあきれ顔で言ってきた。

 無茶苦茶イラッと来た。もしかしたら、こめかみに青筋が立っているかもしれない。

 単純な俺も原因なので、我慢する。


 俺は再び前を向いて歩き出す。



「……レイ?」


 今度はシュティアが左肩を叩いてきた。俺は振り向こうとして寸前で止めた。

 予想だが、シュティアも同じことをやってくると読んだからだ。だから俺は裏をかくことにした。


「ん?」


 俺は叩かれた方とは反対の方の右側に振り向く。最初にウーラがやり、続いてヴェーヌがやってきた。さすがに3回目にやってくるシュティアには引っかからない。結果は――


 ぷにっ


 シュティアは俺の予想を読んできていたらしく、叩いた肩とは反対の右に指を置いていた。本当にキレそうになった。


「……レイの考えることは、お見通し」


 肩を叩かれた方に振り向き直すと、シュティアは得意顔でそんなことを言う。イラッとする気持ちより、やられたと思う気持ちの方が上になった。

 やはり、4人の中で1番長くいるから、こういうのは分かるのだろうか?


 俺は再び歩き出す。この状況なら、メルクールもやってくるはず。その時はどちらに振り向くべきか。俺は考えた。


「レイさん、レイさん」


 ほどなくして、メルクールが肩を叩いてきた。俺は考える。


 ウーラは叩いたときの方向に指を置いていた。

 ヴェーヌもウーラと同じ。この時は冷静な判断が出来ず、引っかかった。

 シュティアの時は、俺は冷静な判断をした。そしてそれを読んだシュティアが叩いた肩とは反対側に指を置いていた。


 そして今の俺は冷静に判断できる。そのような状況なら、メルクールはシュティアのように反対側に置くはずだ。

 だが、冷静に判断できているからこそ、メルクールは俺がこのように読むと予想しているはずだ。だから俺は叩かれた方を向くことにした。

 結果は――


 ぷにっ


 なぜだ! なぜ引っかかった!

 あ。そう言えば、メルクールは単純だ。だから何も考えずに叩いた肩の方に指を置く。失念していた。


「わーい! 引っかかったー!」


 メルクールが無茶苦茶嬉しそうに喜ぶ。

 俺はせめても思い、反対側をむく。


 ぷにっ


 メルクールは反対側にも指を置いていた。1人に対し、2回も引っかかった。


「ぷっ、ふふっ、ふふっ。零さん。それっ……けほっ、ふふふっ。自滅じゃないっ、ですかっ……ふふふっ」

「レ、レイくん。それは……いくらなんでも……ふふっ。だめっ、お腹がっ……ふふっ」

「……レ、レイ。それっ……クスッ。ほんと……だめっ、クスッ」

「レイさんっ……自滅しているじゃないですか! アハハハハッ!」

「お、お兄ちゃん……かわいそう……クスッ」


 後ろでシュティア達4人が懸命に笑いをこらえている。カナまでも笑っている。

 俺は後ろに振り返る。


「なあ、おめえら。俺で遊ぶのがそんなに楽しいか?」


 俺はそう言いつつ、すぐ近くにいたメルクールの頭をわしづかみにする。

 そのため、最初に気が付いたのはメルクール。俺の顔を見た瞬間、表情が一瞬凍り付いたかと思うと、すぅーっと笑顔が消えていった。

 遅れて残りの4人も気が付く。もちろん俺の表情を見た瞬間、メルクールと同じようになった。


 シュティアとヴェーヌ、ウーラも同じく、表情が一瞬凍り付いた後、すぅーっと笑顔が消えていった。

 カナは一瞬で無表情に戻った。芸術的と言っていいほど綺麗に、一瞬で無表情に戻ったのだ。


「えーっと……レイさん? その手を除けて貰ってもいいでしょうか? いえ、除けてください。お願いします」

「なぜだ?」


 メルクールが冷や汗を流しながら俺に頼んでくる。俺は笑顔で聞き返す。そう。笑顔で。


 その笑顔を見たからなのだろう。メルクールの後ろの4人は1歩引いた。

 後ろに下がりたくても下がることのできない――許されないメルクールは、涙目で俺を見上げる。


「そ、それは……あたしの命が掛かっているからです!」


 メルクールは、今にも泣きそうな目で、訴えてくる。

 だが俺は離さない。


 そんな中、勇敢な1人が行動を起こした。メルクールを助けるためか、1人が行動を起こした。そしてその1人は俺の隣に来たので声をかける。


「カナ? どこに行くのだ?」

「ッ!?」


 カナは、メルクールを助けようとしたのではなく、他人のふりをして、俺とメルクールの横を通り過ぎようとしていた。俺はカナの方を一切見ないで、メルクールの方を見ながら尋ねる。

 カナはビクッとして止まった。遠くから見たら、まるで石像のように見えるかもしれないほど、一切動かない。


「どこに行くのだ?」


 今度はカナの方を見ながら、俺は再び尋ねる。カナは壊れたロボットのように、首だけでこちらを見ると、恐る恐る答える。


「え、えっと……先に街に行っていますね? お兄ちゃん?」

「そうか。先に行ってもいいぞ、カナ? だが後でお話ししような?」


 先に行っていいと言いたカナが一瞬力を抜いたが、続いた言葉を聞いて、再び固まった。

 人ではないので流れていないが、人なら頬を冷や汗が伝っているだろう。


「お兄ちゃん。一言だけ言います。……さようなら!」


 そう言うな否や、カナは全力で逃げて行った。思っていたより、ものすごく早い。


「おい、待て! って、お前らも待て!」


 カナが逃げ出すと同時に、メルクールを除く3人も逃げ出した。全員全力ダッシュ。ヴェーヌは分からないでもないが、魔法使いの2人もかなり早い。身体強化でも使っているのだろう。


「まあ、あいつらはいいや。先にお前を――」


 別にシュティア達4人は後で話し合いをすればいい。だから今は捕まえているメルクールをどうにかする。

 俺はメルクールの方に向き直る。だが、そこにはさっきまでいたはずのメルクールが影も形もなかった。


 俺はシュティア達の方を振り返る。


「待ってください! あたしを置いていかないで!」


 逃げ出したメルクールが全力でシュティア達の後を追いかけて走って行っていた。


「てめえら! 待ちやがれ!」


 俺はそう叫ぶや否や、5人を追いかけてダッシュする。ステータス的に、俺の方が上なので捕まえることができるはずだが、なぜか捕まえられなかった。

 きっと、怖い物から逃げようとして、本来の体が出せる力がすべて出し切れているのだろう。


 もちろんその怖い奴ってのが、俺なのだが……



 結局、かなりダッシュしたのち、何とか捕まえることができた。そして5人を正座で座らせ、少しばかり説教をした。


 そのため日が傾き始める。軽装甲機動車に乗って街に行こうと思ったのだが、門が開いていないと判断し、野宿することになった。これは想定外だった。


 本当はこれで1日が終わればよかったのだが、終わらないのが世の常だ。




 夕食を食べたあと、見張りをする。時刻は深夜を回ているだろう。

 当たりは一面真っ暗のため、夜空に浮かぶ星がものすごく綺麗だ。

 俺はそのような夜空を、寝転びながら眺める。


 夜露で背中が濡れるのが嫌なので、獣の毛皮を引いている。確か狼のような魔物の毛皮だったはずだ。ふかふかして気持ちいい。

 大きさもそこそこあり、生きていた時の大きさが想像できる。


 他の奴は全員眠っている。昼寝をしたにもかかわらずぐっすりなのは、俺に追いかけまわされた挙句、説教を食らったからだろう。カナもデータ整理のためか、眠りのような状態になっている。



 俺はふと、今日のことを思い出す。

 4人が助けに来てくれたことだ。


 俺は蜘蛛に連れ去られる直前、絶対に来るなと言った。1人でも大丈夫だと判断したからだ。

 4人なら、俺のことを知っているので、俺1人でも大丈夫だと判断できたはずだ。


 捕まった時は1匹だけだと思っていたが、想定通りにはいかないで、洞窟の奥には巣があり、危うく戻ってこれなくなりそうだったが。


 ホワイトスモールタラトは単体だとランクがC。つまり冒険者6人がCランクだと倒せる強さ。

 だが集団になると、危険度は一気に上がる。Aランクの冒険者でも、油断をすれば壊滅するほどには。


 そのような危険な相手にもかかわらず、助けに来てくれた。強さを知らなかった訳ではないはず。


 シュティア達の気配を感じた時、少しでも時間を稼ごうとした。シュティア達に頼ったのだ。

 悪いように利用するために頼ったのではない。シュティア達を『仲間』として頼ったのだ。それも無自覚に。


 そしてシュティア達4人は、死ぬかもしれないのに俺を助けに来てくれた。俺が大切な『仲間』という理由、ただそれだけ。


 だがいざ冷静になると、命を懸けてまで俺を助けに来てくれたのに、シュティア4人を仲間と認めようとしない。

 ――いや、認めようと()()()()()()のだ。


 危なくなれば4人を『仲間』として頼る。だが何もないときは、『ただの連れ』として接している。そんな自分を、俺は許せない。



 ふと、隣に誰かが座るのが分かった。横を見るとシュティアがいた。

 毛皮の上に乗ってはいるが、俺が中央にいるため、毛皮の端っこにぎりぎり乗っている。


「どうした? 寝ていたんじゃないのか?」

「……目が覚めた」


 俺はシュティアの方を見ながら尋ねる。ついでに端によって、シュティアがきちんと座れるようにした。

 シュティアは夜空を眺めながらつぶやいた。俺は視線を夜空に戻して黙る。



 長い沈黙が続いた。沈黙を破ったのはシュティアの方だった。

 シュティアが俺に尋ねれてくる。


「……今日ので、分かったでしょ?」

「何をだ?」

「……私たちはあなたを見捨てない、裏切らないということ」


 俺を蜘蛛から助けに来た時のことを言っているのが分かった。

 俺は夜空を見ながら答える。


「ああ」

「……じゃあ、私たちの事……信じてくれる?」

「……すまんが……無理そうだ」

「……どうして?」


 俺の答えを聞いたシュティアが、俺を見ながら尋ね返してくる。

 俺は答えることにした。


「俺は怖い。シュティア達が仲間であると言葉にすれば、その時点で関係が決まってしまう。そうなっては、4人に裏切られたときが怖い。だから、シュティア達を仲間と認めようという決断ができない。踏み出せないでいる」


 俺はぽつりぽつりと話し始めた。シュティアは俺の方を黙って見ているだけ。

 俺はシュティア達と本当の仲間になりたい。だが裏切られたときが怖く、踏み出せないでいる。

 俺はつづけた。


「俺は王都で学んだ。仲間などいらない。信用する者など不要だと。仲間という縛りがあれば、逃げられないかもしれない。それに捨てられないだろう。そうなれば、シュティア達が俺に何をするかわからない。あいつらみたいに――王都にいる学校の奴らのように俺に攻撃するかもしれない。俺はそれが嫌だ」


 王都では悲惨だった。徐々にエスカレートし、ついには毒を盛られ、殺されかけた。

 今の俺は強くなったと言っても、シュティア達4人も強い。

 もし、俺対シュティア達4人になった時、王都にいた時の俺対学校の奴らと何も変わらない。


 俺は話しを続ける。


「関係があいまいなら、どうとでもできる。だが、関係が決まってしまったあとに、捨てられるのが怖い。だから、どうしても仲間と認められなかった。何かあれば、俺はシュテイア達を簡単に捨ていることができるから」


 俺はそこで言葉を終えた。心の中にあるものをすべて吐き出した感じがした。


 俺はシュティア達が大事だ。その気持ちは、シュティア達が人攫いに捕まった時に分かった。

 だからこそ、4人に捨てられた時のことを思うと怖い。


 シュティアは俺の話を黙って聞いていたが、何かを考えている。

 少し経つと、シュティアは俺の方を向いて口を開いた。


「……今までの、接し方を見て……捨てるとでも、思っているの?」


 シュティアは話すのが苦手だ。だがそれでも一生懸命、俺に思いを伝えようとしている。そして俺がシュティア達4人を仲間と認めれるよう、1歩を踏み出させようと頑張っていることが伝わった。

 俺はシュティアをじっと見る。


「それはわかっている。だがどうしても怖い」

「……でも、仲間だと……信じたいの、でしょ?」

「ああ。信じたい。仲間だと信じたい。仲間だと信じたいが、捨てられた時の情景が頭をよぎり、怖い。だから仲間だと信じたくない」


 シュティアは、俺が4人を仲間と認めれるように頑張っているのに、俺はまるで子供の駄々っ子だ。俺は心の中で自分をあざ笑う。

 シュティアが一生懸命に話す。


「……捨てるわけが、ない。今日の……出来事を、思い出して。レイが、連れていかれた時……私たちは、助けに行った。それは、これからも……かわらない。必ず、レイに……ついていく。どこまでも。絶対に……見捨てない」

「シュティアを……信じて、いいのか?」

「……信じて、いい」

「メルクールもヴェーヌも、ウーラも信じていいのだな?」

「……信じて、いい」

「そうか……信じて、いいのか」


 俺は最後にそう言うと、目を閉じた。そしてシュティアの言った先ほどの言葉を、声に出さずに、心の中で繰り返して言う。


 必ず俺についていく。どこまでも。絶対に見捨てない。

 信じていい。


 俺は心の中で何度も繰り返す。そうしていると、シュティア達に見捨てられるのではないかと言う恐怖が薄まっていく。


 時間にして2分ほど。だが俺にしてはものすごく長く感じた。そして俺はついに決心がついた。


 俺は顔をシュティアの方に向けると目を開けた。そして俺の決心したことをシュティアに伝える。


「なあ、シュティア。俺、決心がついた」

「……ん?」


 シュティアは短く返事をするが、俺が何を言いたいのかわかっているのだろう。わずかにだが微笑んでいる。


「シュティア。俺の仲間になってくれ。いつまでも、俺の隣にいてくれ」

「……もちろん。他の3人も仲間?」

「ああ。仲間だ。俺の大事な仲間だ。だから何かあれば、必ず俺が4人を守る」


 俺はシュティアに伝えた。だが半分は、俺自身への言葉であり、誓いのようなものだった。

 シュティア達4人は俺の大事な仲間。何かあれば俺が助けに行く。

 人攫いに攫われたときに俺がしたように。そして今日、シュティア達が俺を助けに来てくれた時のように、4人に何かあれば俺は行動する。



 俺は決心をしてシュティアにそう言うと、視線を夜空に移す。


 ――しかし


「あれ? 星空は?」


 まるで雲に覆われたように、星空が消えていた。

 いや。()()()()()()()()()()()()のだ。それが原因で見えない。


 俺は上半身を起こすと、夜空の方に手を上げる。

 すると何かに触れた。それはとてもすべすべして、ひんやりしていた。


「これはなんだ?」


 俺と夜空の間に存在する、すべすべとしたものを触りながらつぶやく。


「……私が、魔法で……作りだした」


 俺のつぶやきが聞こえたらしいシュティアが答える。

 俺は疑問に思った。なぜこんなことをするのか。


 俺はものすごく嫌な予感がした。周囲を見ると、完全に囲まれていた。360度、全方向を。それに、そこまで広くない。半径が1.5メートルあればいい広さだ。


 「なぜこんなことをしている?」


 俺は聞かずにいられなかった。なぜならそこに疑問があるから。

 俺の質問を聞いたシュティアが微笑む。俺の見間違いが原因なのかは分からないが、ものすごく妖艶に見えた。


「……今は、仲間だと……信じてくれた。それに……いつまでも隣にいてと言った。それは告白」

「あの……シュティアさん? 告白のつもりでは言っていませんよ? それになぜ、ゆっくり近づいてくるのですか?」


 シュティアは答えつつ、俺に四つん這いで近づいてくる。

 立つことができないため、俺は座ったまま後ろに下がるが、すぐに下がれる限界に来てしまった。そこまで広くはないので当たり前だ。

 すでに全方向囲まれているので、逃げ場はない。


 気が付けば、すぐ近くまで来ていた。シュティアは俺の耳元に口を持ってくると、耳に吐息をかけつつ、静かにつぶやいた。


「……魔法で、音も漏れないようにした。もう……逃げられないよ? 覚悟……」


 完全に油断していた。

 最近、シュティアは俺に積極的にアプローチしてきていなかった。だから俺は、もう大丈夫だと心の中で安心していた。油断していたのだ。


 そう言えば、エルフの郷で俺に戦い方を教えてくれていた獣人が言っていたっけ?


 油断しているときが一番危ないと。



 俺は最後に1言つぶやいた。


「さっきまでの会話、全部台無しじゃねえか……」




 その後いろいろあったが、そこらへんは察して欲しい。

 こうしてまた、非現実的な異世界での1日が過ぎていったのだった。

最後の方の場面ですが、夜のテンションで書いたので、こうなりました。

まあ、元から書こうと思っていたので問題はないですが……

零とシュティアの会話が少し気になるので、もしかしたら少し手を加えるかもしれません。


次話についてですが、別の視点での話を予定しています。ひと段落したので。

章については、この国を出るまで変わりません。(国ごとに変わる予定)

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