表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/83

第31話 温泉の街

書き溜めの分が進まない……


こうなったら夏休み頑張ろう……

 結局、カナと話すことがなくなり、車内には無言の空間ができた中、ひたすら軽装甲機動車は進んでいった。


 夕方になってようやく街が見え始める。そのころにはすでに寝ていた4人は起きた。のどが渇いたらしく、俺がインベントリから出した飲み物を飲んでいた。


 軽装甲機動車で移動したため、前にいた街からここの街まで1日できた。途中、王都行きの道に行っていたので、半日ほどで街についたことになるだろう。馬車で移動していたら、5日はかかるところ、出発したその日についたのは、かなり大きい。



 街が近くなってきたので、軽装甲機動車から降りてインベントリに仕舞う。

 さすがに軽装甲機動車に乗ったまま、街に近づくのは騒ぎの原因になると思ったからだ。


 門まで徒歩で向かう。夕方だけあって、冒険者が戻ってきたのだろう。街に入るために、冒険者がそこそこ並んでいた。

 順番側待ってくると、冒険者であることを示すプレートを兵士に渡して確認をしてもらう。冒険者だけあって、検査は問題なく通過した。


 もちろんカナの分は、プレートがないので身分証明書を見せる。

 カナの身分証明書を見せた際、かなり怪しまれた。



 カナの分がなぜか怪しまれたが、全員の身分がきちんと確認されたので無事に街に入ることができた。


 門をくぐって街の中に入る。

 門番に聞いた通りここは温泉が湧く街のため、あちこちから湯気が上がっていた。日本人としてきちんとした温泉に入れるのでうれしい。


 街の名前は【コロノ】

 ここは温泉が湧くため、アルール王国内ではかなり有名な街のようだ。 



「大変です! レイさん、大変です! 火事が起きています!」

「落ち着け。あれは煙じゃない。湯気だ」


 周りを見ていたメルクールが、あたふたしながら大きな声で言ってくるので訂正する。

 周りには思いっきり聞こえていたようで、微笑みを向けられた。

 確か小さいとき、温泉街に行ったときに、周りの光景を見た怜も同じことを言っていたな……


「湯気が上がっているということは、この辺りにはがあるのでしょうか?」


 ヴェーヌはそう言いながら周りをキョロキョロと見ている。今までの街と違って温泉街のため、外見からして、所々に銭湯のような建物がある。


外見で分かった理由は、入り口に『湯』と書かれた暖簾があったから――




ではなく、ちょっとした煙突のようなものがあり、そこから湯気が出ているから。

普通の店や民家にも煙突はあるが、湯気が出ていない。


「今日は温泉のある宿に泊まりませんか?」

「そうするか。残りの4人はそれでいいか?」


 ヴェーヌが提案をしてくるので、俺は賛成することを伝える。カナを含む4人にもそれで良いか尋ねる。

カナ以外の3人は、それぞれ賛成することを伝えてくる。カナは賛成も反対もしないで、こちらを見るだけだった。



 ギルドに、おすすめの宿を尋ねるために向かう。

 ギルドに入った時、椅子に座っていた冒険者全員が見てきた。

 俺を見てすぐに会話に戻った者もいるが、俺の後ろから入ってきたシュティア達を凝視する人がいた。


 おすすめの宿は、残念ながら教えてはもらえなかった。特定の宿を教えると他の宿に人が行かなくなり、儲からないためだそうだ。しかし温泉に入るためにここに来る人は多い。そのため大半の宿は泊まっても満足できると説明された。


 ギルドを訪れたついでに、採取の依頼されている魔物の部位を納めて冒険者ランクを上げるためのポイントを少し稼いでおく。

 納めたのはオークの皮だった。オークの皮は加工がしやすいうえに、そこそこ丈夫なため、装備にも使われる。ついでに魔石を売ってお金を稼いだ。


 自重はしたのだが、出した量が多かったようで、受付の人が軽く引いていた。

 もちろんお金はすべてインベントリにしまった。



 時刻が夕方と言っても夕食までには時間があるので、いろいろな宿を見て回った。

 日が暮れてきたころで、とある1つの宿に決めた。宿の大きさは、かなり大きい。うれしいことに、温泉もあるようだ。


 ちょうど5人部屋があったのでそれを頼んだ。5人部屋を頼んだ理由は、人攫いに攫われるようなことがないようにするため。


 カナも合わせると6人になるが、カナもメルクールも小さいので、2人同じベッドで寝ても問題ないと判断し、5人部屋を選んだ。


 ここは熱湯がどこでも湧くような場所のため、ほとんどの宿で温泉が作られている。

 ちなみに今日泊まるところには、混浴なんてものはない。



 買い物に行こうと思ったが、あたりが暗くなってきたので諦めた。買うものは服だ。シュティアの生活魔法により同じ服を着ていても問題なかったのだが、みんなの服があまりないのだ。

 お金は俺しか持っていないので、明日の朝に4人に渡して好きなものを勝手に買って来て貰うつもりだ。好きなものを勝手に買ってきてもらう理由は、買い物に付き合っていたら長くなりそうだから。


 以前、シュティアと服を買いにいた時は長くて大変だったことは覚えている。



 夕飯はいつも通り、宿の食堂で食べた。シュティア達4人は外で食べたいと言っていたが、疲れているので宿の食堂で我慢してもらった。明日の昼は、どこか店を探して食べると言ったらしぶしぶ許してくれた。


 ここの宿の食堂は人が良く泊まるためか食堂は広い。さらにはメニューも豊富だった。メニューを見て4人は機嫌を直してくれたので良かった。


 俺が選んだものは、オークキングのステーキだ。味は豚肉に近かったが、美味しさは明らかに違った。メルクールも同じものを選んでおり、すごく喜んでいた。他の3人もそれぞれお思い思いのものを食べて、その美味しさから喜んでいた。

 怪しまれないようにカナの分も適当に頼んだが、みんなで分けて食べた。



 寝る前には温泉に入った。エルフの郷ではお風呂に入ったが、日本人なら温泉の方が落ち着いた。温泉の中は銭湯を思い浮かべると早いだろう。


 体を洗い、湯船に浸かると体の隅々までゆっくりと温めた。体を洗うといっても、石鹸なんて貴族が使うぐらいなので、石鹸の代わりとなる葉っぱを磨り潰した物で体をこすった。完全に磨り潰しているので、痛くはなかった。


 体の隅々まで温まったので、温泉から上がる。きれいな布で体を拭いて、服を着ると部屋に戻る。すでにみんな部屋に戻っていた。さすがにカナを1人で部屋に置いて行くのはよくないと思ったことと、洗うためにヴェーヌが温泉に入れた。


 部屋の扉を開いて、ヴェーヌはこちらに気が付いた。

 シュティアとメルクールはベッドの上で大の字で並んで、ぐったりとしていた。どうやらのぼせたようだ。

 その横でヴェーヌは椅子に座って布で2人を煽いでいる。そしてウーラは近くの椅子に座って、机にぐったりと突っ伏していた。

 あれ? 大丈夫なのはヴェーヌとカナだけか?


「温泉はどうでしたか?」

「よかった。ヴェーヌはどうだった?」

「2人がのぼせたので、ちょっと大変でした」


 大体の予想はついたが、俺が尋ねる。ヴェーヌは苦笑いしながら答える。どうやらゆっくりできなかったようだ。


「2人は俺が見ておくから、もう一度入ってきたらどうだ?」

「いえ。大丈夫ですよ」


 提案をするが、ヴェーヌが大丈夫だと言って断る。そして再び2人を煽ぎ始める。相変わらずシュティアとメルクールの2人はベッドの上で倒れている。そんな姿を見て、ついため息を付いてしまう

 なぜそこまで長湯したのだ……


「2人ともそこまで長湯出来ないわけではないのですよ」

「そうなのか?」


 どうやら俺の考えていることが分かったようで、ヴェーヌが2人は長湯できないのではないことを教えてくれた。


「じゃあどうしたんだ?」

「詮索はだめですよ?」


 俺が尋ねると、ヴェーヌは詮索はするなと言ってくる。心なしか、ヴェーヌの顔がほんの少し赤くなったような……



 俺はヴェーヌ、メルクール、シュティアのためにインベントリからコップ4つと水筒を取り出して、コップにジュースを注ぐ。それをヴェーヌと倒れているシュティアとメルクールにあげる。ヴェーヌは受け取ると、煽ぐ作業を中断してジュースを飲み始めた。

 シュティアとメルクールは体をゆっくり起こして、互いに背中合わせになるとジュースを飲み始めた。


 ウーラの分は、頭の近くにコップを置く。するとウーラは飲み物が置かれたと気付いたらしく、ゆっくりと体を起こすと、喉を鳴らしながら凄いスピードで飲み始めた。

 そんなに喉が渇いていたのなら、食堂でなにか飲んできたらよかったのに……



 4人がジュースを飲んでいるところを見ていたら、自分も飲みたくなってきたので、コップをインベントリから取り出す。そしてコップから溢れるのではないかというほど入れると、喉を鳴らしながら一気に飲み干す。


 その間に4人は飲み終わって、お代わりを入れて飲んでいた。よっぽどおいしかったようだ。

 カナはその様子を見るだけだった。食べ物を食べているときも思ったが、みんなと同じものを食べることが出来なくて、少しかわいそうだと思ったのは言うまでもない。



 全員が飲み終わったのを確認して、コップを回収してインベントリにしまう。もちろん、そのままでは衛生的でないので、コップは時間があるときに洗う。


 水筒とコップを仕舞い終わるときには、カナを含む5人は寝る準備を始めていた。

 なぜかベッドをくっつけ始めるのだ……


 俺は仕方なく端っこで寝ることにした。

 ヴェーヌとカナは反対側の端っこで寝ることにしたらしい。もちろんカナがベッドから落ちないようにヴェーヌは端っこで寝ている。カナの横ではウーラが横になっている。

 この3人は寝る前に暴れないよな。


 問題はシュティアとメルクールの2人だ。俺が横になると、シュティアがすかさず俺の隣を陣取る。メルクールはというと、シュティアの上にダイブする。もちろん、そんなことをすればシュティアが重さでつぶれそうになる。



 結局俺が1つズレて、シュティアとメルクールに挟まれて寝ることになった。しかし2人が両側から抱き着くように寝るので、熱くて仕方がない。


 結局寝ることが出来そうになかった。すでに眠っている2人を振りほどくと起き上がる。ウーラとカナ、ヴェーヌもすでに寝ていた。

 カナの場合、寝るであっているのだろうか?


 ベッドから出ると、窓を開ける。もちろん理由は窓際で涼むため――

 ではなく、窓の外に出るためだ。別に飛び降り自殺をするわけではない。隣の屋根に飛び移るだけだ。ここは最上階に近いうえに、隣と建物が隣接しているので、隣の屋根の上に飛び移るぐらい簡単なのだ。


 窓の淵に足を掛けて飛び移る。飛び移る際に、足だけに身体強化を付けて飛んだので、らくらく向かいの屋根の上に行くことが出来た。


 屋根の一部が崩れて家の中に入るというハプニングは無く、屋根の真ん中あたりまで歩いて行くことができた。


 深夜近くのためだろう。道路には人影がなく、屋根に人が上っていると気付かれない。

 そのため安心して涼むことが出来る。


 俺は滑り落ちないように気を付けつつ、屋根の上に寝転ぶと、夜空を見上げる。俺の住んでいるところは田舎だが、夜空の星が見えないぐらいは周りが明るい。しかしここは夜になると、あたりが真っ暗になる。所々建物から光が漏れているが、夜空の星を見えなくするほどではない。



 そんな星を見ながら俺は考え事をする。これからの事や、日本の事ではない。シュティア達4人を信用していいのかという事だ。


 今、俺がこのようなことを考えるきっかけになったのは、武道大会のときに4人が人攫いに捕まったからだろう。


 同じ学校の奴に裏切られ、レールンの王都を出た時の俺なら、きっと攫われた奴が悪いと言って放っておいただろう。助けにはいかないだろう。見捨てて次の町に行ったはずだ。そして1人になり、自分の好きなように日本に戻る方法を探していたはずだ。


 しかし4人が攫われた時の俺は、4人が無事かどうか。どこにいるのか。早く助けに行かなければと焦っていたのだ。それも自分で抑えなければならない程に。


 そして俺は気が付いたのだ。2か月間エルフの郷で共に過ごして、4人を信用し、大事な仲間と意識しているのではないかと。


 しかしやはり、再び裏切られ、切り捨てられるのではないか怖いのだ。次に裏切られると、俺はどうなるか分からない。

 レールンを出た時の俺は強くはなかった。銃だって、大したものは持っていなかった。

 しかし今の俺は力を付け、1国ぐらい簡単に落とすことが出来る物も持っている。悲しみや怒りのあまり、それを使うかもしれない。


 その際、学校の奴を巻き込んで殺したとしても、俺にとってはどうでもいい。だが、悲しみや怒りで変わり果てた自分の姿を想像すると、怖くなる。

 そうならないようにするためにも、シュティアたち4人を信用するわけにはいかない。


 カナに関しては今の状態から考えると、俺を止めようとはせず、むしろ俺にひたすらついてくるだけだろう。そして俺の指示に従い、ドローンを飛ばして町を破壊する。さらには俺の作った、とある兵器を雨のように街に落とすだろう。

 それほど、何事に関しても無関心なのだ。


 そこから考えると、俺はシュティアたち4人を信じていいのか分からない。

 その答えは向こうからやってくるか、自分から決めなければならないのかはわからない。

 しかし、その答えを出さなければいけないのが、すぐそこまで来ているのは、なんとなくだが分かった。



 星を見ながら考えるていたが、体が冷えてきたので部屋に戻る。戻り方は簡単に言うと、先程とは逆だ。屋根から泊まっている部屋の窓の淵に足が付くように飛び移る。飛び移った時に、手が少し滑って、地面に落ちそうになった。


 ここは地面から離れているが、別に落ちても死にはしない。このぐらいの高さならエルフの郷の大木と比べると低い。

 もちろん、エルフの郷にあった大木から落ちたというわけではない。落とされたのだ。



 部屋に戻ると、内側から鍵を掛けてベッドに潜り込む。もぐりこんだ場所は、先ほど俺が寝ていたメルクールとシュティアの間だ。

 俺が布団にもぐりこむと、シュティアが抱き枕に抱き着くように、俺に腕を絡めてきた。その時に布団がずれたので掛け直してやる。


 きちんと布団がかかったかを確認して俺は目を閉じた。


 4人を信じるか信じないかは、今は決めない。きっと答えはすぐわかると思ったから……

零がギルドに魔物の部位を納める時に、常時依頼されている魔物と書いていましたが、説明不足なうえに討伐していないにもかかわらず、討伐を証明する部位を渡すのは不正であると思ったため、採取の依頼をされている魔物の部位を納めたことに変更しました。

また、その後ろに説明を少し入れました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ