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第29話 移動

サブタイトルの適当感が……

いいものが思いつかなかったので、今後考えて直します

 「レイさん! お腹すいたので起きてくーださーい!」


 誰かが腹部の上に乗りながら、そんなことを言ってくる。

 眠たい目を開けながら、誰が乗っているか見てみるとメルクールだった。


 メルクールは体が小さいうえに軽い。そのため上に乗られてもあまり苦しくない。

 苦しくなかったので寝ることに関しては問題なかった。メルクールの声を子守歌にして、再び寝るために目を閉じる。


「寝たらだめでしょ!」


 ピチピチと頬を叩かれたので再び目を開く。鼻と鼻が触れ合いそうな距離でメルクールが顔を覗き込みながら、俺の頬を叩いていた。

 地味に痛いから、やめろ。


「……レイ……お腹、すいた」

「本当ですよ。いつまで寝ているのですか?」

「レイ君。私お腹空いたわ」


 周りを見ると、他の3人も起きており、お腹を押さえながらこちらを見ていた。カナもベッドの端に座って、こちらを見ているだけだ。ただ、カナは食べ物を食べる必要がないので、お腹が空いたようなそぶりは見せていなかった。

 カナ以外の4人はお腹を空かせているようだが、そりゃ昨日の夜に枕投げをしたんだからカロリーを消費するのは当たり前。



 顔を窓の外を見ると、太陽はすでに昇っており、とっくに明るくなっていた。思っていたより寝過ごしたらしい。


「ほらほら! 他のみんなお腹がすいたと言っているんですから、早く起きてください!」

「まずは、お前が降りろ。そうしないと俺が起きることが出来ない」


 メルクールがお腹の上で座り続けているので降りろという。メルクールは素直に従って、お腹の上から降りたので、俺は起き上がった。


 ここでようやく気が付いたが、4人ともすでに着替え終わっていた。ここで気が付いたのだが、カナも服を着替えており、白いワンピース姿だった。基本はヴェーヌが服装を決めるが、残りの3人も交じるためカナが着せ替え人形状態になることがある。



「先に行って、何か注文しておいてくれ。俺は着替えたら向かうから」

「2度寝はしちゃだめですよ?」


 4人の中で一番しっかりしているヴェーヌにお金を渡すと、部屋から追い出す。理由は着替えるためだ。

 お腹を空かせた4人はカナを連れて、食堂に向かっていった。

 部屋から出ていくときに、ヴェーヌに注意されるが、2度寝をするつもりはない。



 俺は5人を追い出した後、服を着替えた。昨日来ていた服はインベントリに入れている。

 着替え終わったら、部屋から出て鍵を閉める。そして5人がいる食堂に向かった。5人のところにつくと、すでに朝食の注文を済ませていたようだった。どうやら俺の分も注文してくれていたようで、4人の分が来るときに一緒に俺の分も出てきた。


 出てきたのはパンにベーコンのような物、サラダに果物ジュースと、この世界では定番の朝食だった。

 腹ペコ4人組は追加でベーコンを頼んでいた。朝からどんだけ食うんだよ……

 もちろんカナの分はなかった。ただ、魔石を砕いて粉にしたものを特殊な処理をしたのちに方法で固めて、お菓子のようにしたものを食べていた。魔力を補給するためだ。


 魔石を粉にした場合、取り扱いには気を付けないといけない。うまく使えば、魔道具を動かすための燃料のようなものになったり、軽装甲機動車やドローンの燃料になる。

 間違った使い方をすれば、自分が言葉の通り粉々になる。



 間違った運用方法とは、何も処理をしないで魔力を通すことだ。もし魔力を通したら、火薬のように爆発する。その被害の規模は、火薬を爆発させたぐらいになるだろう。

 きちんと処理をしていれば、魔道具であったり、ポーションの材料になる。


 魔石の粉を安定させる処理だが、これは砕いた魔石に、複数の植物を乾燥させて粉にした安定剤を混ぜればいい。

 ただ、魔石を砕く際に魔力を流してしまって爆発したり、安定剤となる植物が希少で手に入りにくかったりする。そのため魔道具を使う際は、使用者の魔力を使用するのが普通。


 だが俺の場合は魔力を流すのが苦手で上手に流せない。なので自作した仮面に搭載している変声器を使用する場合は魔石を砕いて安定剤を混ぜたものが、わずかに発する魔力を使用している。頬辺りについている容器はそのためのものだ。


 つまり、魔石を砕いて安定剤を混ぜたものは、きちんと扱えば自分にとってプラスになり、間違った扱い方をすれば自分にとってマイナスになる。




 朝食後は宿を出ていく準備をする。と言っても荷物はインベントリに入れているため、そこまで準備が大変ということではない。


 鍵を返し、受付にいた人にお礼を言って宿を出る。その際にまたよって欲しいと言われた

 宿を出ると、直接王都方面の道がある門に向かう。食べ物などの準備はしなくていい。まだインベントリに残っているからだ。


 門はとっくに開いており、多少だが冒険者が出入りしていた。朝早すぎると門が開いていないことがあるのだ。門の境に兵士がいたので、身分証明書を見せて門をくぐる。


 出入りは少数のため、すんなり通ることができた。もしこれがもう少し遅かったりでもしたら、出ていく人が多くなる。結果、1時間は待つことになるだろう。




「で、いつ車に乗るのですか?」

「ここじゃ他の人から見えるから、もう少し進んでから乗る」


 門をくぐって、歩いていると、ヴェーヌが車に早く乗りたいらしく尋ねてきた。ここで乗ると、門番であったり街の外に出てきた冒険者に見られるかもしれない。そのためもう少し進んだところで乗ることを伝える。 

 他の3人も嫌そうな顔をした。歩くのがつかれたのだろう。早すぎる。

 カナはひたすら俺の横をついてきている。


「歩くのが嫌なら、別に来なくていいぞ?」


 俺が後ろをついてきている4人にそう言うと、4人は首をぶんぶんと横に振った。



 その後は誰1人弱音を吐かず、ひたすら進んだ。4人は少しでも疲れを意識しないように雑談をしていた。おもにカナの服装に議論していた。

服だけでなく、ネックレスなどのアクセサリーもつけてはどうかと話している。カナが完全に着せ替え人形状態だ。


 そろそろだろうと思い後ろを振り返ると、壁が遠くに見えるようになった。と言ってもそこまではなれていない。壁の上から見られても、何が置かれているか分からないであろう距離まで来た。そこで俺は足を止める。すると、4人はきょとんとした後、期待を込めた目で見てきた。


 そんな4人を横目で見つつ、インベントリから軽装甲機動車を取り出す。すると、4人が嬉しそうに喜んだ。歩くのが嫌いなのかよ、とついつい思ってしまった。確かにこれに乗ってしまえば、歩くどころか、馬車でさえ乗るのが嫌になるだろう。




 全員が乗り込んだことを確認して、エンジンを起動させる。助手席はヴェーヌが座っている。後ろの並びは助手席の後ろの席からメルクール、シュティア、ウーラと並んでいる。カナはヴェーヌが太ももの上に乗せて居る。なんだか親子に見えるのは仕方がないのだろうか……


 今日の気温は、熱くもなく寒くもないので、窓を開けて走る。慣れてきたのか、メルクールが窓から身を乗り出して気持ちよさそうに目を細めている。落ちそうだったが、時速40キロほどしか出していないので、落ちても大丈夫だろう。ただし落ちても大丈夫っぽいのは獣人に限る。


 シュティアも窓から乗り出したそうだが、残念ながら真ん中の席には窓は無い。あまりにも悲しそうにしていたのがバックミラーで見えたので、1つ教えることにした。


「シュティア。上の丸い部分を、上に力いっぱい押せ」

「……?」


 運転中のため、後ろを見ることが出来ないが、シュティアが俺の言った通りに、屋根の所を押すところがバックミラーで見えた。少し手こずっていたが、上の部分を開いたのが見えた。

 シュティア開けたのは、銃座の部分だ。もちろん今は銃を設置していない。



 シュティアはそこから恐る恐る頭を出した。残念ながら表情は分からないが、戻ってこないことから満足していることが分かる。


「あー! ずるいです! シュティアさんだけずるいです! あたしにもそこを使わせてください!」

「……ダメ……ここは、私の席」


 後ろで言い合いが始まった。バックミラーでウーラが頑張って止めようとしているのが分かったが、無理そうだった。


 運転をしていないヴェーヌは、後ろを向くことが出来たので、そんな様子を見てクスクス笑う。横を見ると、ヴェーヌの方を見ると目が合った。運転中のため、あまりよそ見はいけないが、ここは異世界なので問題ない。


「後ろの席での言い合いを見ていると、家族で車を乗っていた頃を思い出します」

「そうか?」

「零さんは思わないのですか?」

「俺はおとなしく座っていたから分からないな……」


 ヴェーヌが尋ねてきたので、適当に返す。その後は運転に集中する。ここは日本の道路と違って、飛び出してくる人はいない。だが道路は舗装されていないので、急にハンドルが取られることがある。


 そして移動中は何度かハンドルが取られた。そのため急に右に動いたり左に動いたりした。といってもそこまでひどくはなかったので、シュティアが落ちるということはない。



 走っていると、ついに左側に分かれ道が来た。道の端に看板は無かったが、道中分岐は無かったので、これが王都に行くか、隣にある町に向かう道だ。一度軽装甲機動者を道の端に寄せて止めると、エンジンを切る。


「零さん、どうしたのですか?」

「王都に行くか隣の街に行くかをみんなで相談しようと思ったから止めた」


 エンジンを切ると、助手席に座っていたヴェーヌが不思議そうに尋ねてきたので答える。それほど一気にスピードは落としていないが、前のめりで落ちそうになったらしく、シュティアは膨れながら席についた。話し合いをするため、メルクールとウーラも席につく。


「さっきも言ったように、王都と隣の街どちらに行くかだけど、どちらがいい?」


 王都と近隣の町のどちらに行くかを尋ねると、4人は一斉に考え出す。カナは基本、意見を言わないので数に入れない。4人がうんうんと唸り始めてから5分ほどすると、ヴェーヌが最初に顔を上げる。


「決まったか?」

「いいえ。それより質問なのですが、零さんは魔王の所に早く向かいたいのですよね?」

「そうなるな」


 決まったと思ったら、質問だった。ヴェーヌが聞いてきたので答える。エルフの郷から出てきた時に魔族と遭遇し、その時に早く行くと言ってしまったので、早く向かうつもりだ。魔王を早く倒せばその分、早く日本に帰ることが出来る。そのためには極力寄り道しないで、まっすぐ向かうべきだ。


「では、近隣の町に向かった方がいいのでは?」

「なぜだ?」

「王都より、近隣の町の方が人は少ないです」

「それで?」


 ヴェーヌが言葉を止めるので、先を促す。シュティア、メルクール、ウーラも考えるのをやめて話を聞いている。


「人が少ないということは、問題ごとが起こりにくいのでは? だったらその分早く通過できますよね?」

「確かにそうですね! わたしも近隣の町にします!」


 ヴェーヌの説明で近隣の町を提案する理由が分かったらしく、メルクールが賛成する。シュティアとウーラの方を見ると、2人は考えていた。


「……王都を、通った方が……近いかも」

「確かに王都を通った方が、魔族領までの距離は短いかもしれないわね」


 シュティアとウーラが王都の方がいいという意見を出す。なぜか魔王を倒しに行く前提で話が進んでいる。倒しに行くことは間違っていないが、そこまで急ぎはしないつもりだ。


 4人の意見を聞いてどちらに行くか考える。俺の意見で決まってしまうから、しっかり考えないといけない。4人がこちらを見ているので、プレッシャーを感じる。


 近隣の町の利点は問題ごとに巻き込まれない可能性が王都より低い。欠点は王都より魔族領のところまで遠い。

 王都の利点は魔族領までの距離が近隣の町より近い。欠点は問題ごとに巻き込まれる可能性が高いということだろう。


「王都の方に行くか」


 利点と欠点をしっかり比べて考えた結果、王都に行くことにした。やはり魔族領までの距離が近い方がいい。もし問題ごとに巻き込まれたら、いそいで逃げればいいだけだ。



 ヴェーヌとメルクールの方を見るが、悲しそうな表情はしていなかった。どちらでもよかったようだ。シュティアとウーラも喜んでいなかった。4人とも向かう先が決まってほっとした表情をしている。


「もし王都に行く途中で、厄介ごとに巻き込まれることが分かったら、向かう場所を近隣の町に変えるが、いいか?」

「……いいよ」

「いいですよ!」

「厄介ごとに巻き込まれると分かっているのに、向かうわけにはいきませんからね」

「ええ。問題ないわ」


 途中で向かう方向を変えるかもしれないことを伝えると、了承してくれた。なんだか」フラグに聞こえるが、気にしない。


 そこでなぜだかわからないが、ヴェーヌが何かを考える。


「どうした?」

「なぜ零さんは、向かう先をみんなに聞くのかなと思っただけです」

「なぜそう思った?」


 尋ねると、ヴェーヌが何を思ったのかを言う。なぜそう思ったのかが分からなかったので質問すると、ヴェーヌは言葉を選んでいるようで、顎に手を添える


「えーっと……零さんは、私たちが付いて行くのは勝手にしろって言っていましたよね?」

「言ったな」

「それなのになぜ、1人で向かう先を勝手に決めないのですか?」


 ヴェーヌが何に対して、疑問に思ったのかが分かった。他の3人も、そういえばそうかという表情をする。カナはただ単にこちらを見ているだけだ。何も思っていない。


 答えなければいけないと思ったので、考える。思っていることを正確に伝える必要があると思ったので、言葉をしっかりと選ぶ。


「確かに俺は、勝手についてこいと言った。抜けたいときは勝手に抜けろと言った。それは言葉の通りだ」


 俺はそこで言葉を止める。4人は頷いた。きちんと覚えているようだ。


「しかしなぜ1人で行き先を決めないか。それは1人で決めると、利点と欠点がすべては出ないからだ。考える時、1人ならば1つの事にとらわれて、別の視点から見ることが出来ない。しかしみんなで考えると、別の視点の考えが出てくるかもしれない。だから4人の意見も聞いたんだ」


 理由を説明すると、4人は納得した表情になる。カナは相変わらず無表情。

 俺はさらに言葉を続ける。


「それに、勝手に1人で決めても面白くない。みんなで話し合って決めた方が面白い」


 4人は一瞬、俺が何を言っているか分からなかったようだが、すぐに理解して嬉しそうに微笑んだ。


 なぜか恥ずかしくなったので、エンジンをかけて王都方面に軽装甲機動車を走らせる。シュティアがすぐに銃座について、外の景色を楽しみ始めた。だがメルクールはシュティアと言い争いはしていない。なぜなら……


「レイさんが照れている~!」

「レイ君? 後ろ見てくれるかしら?」


 ウーラと一緒に俺をからかい始めたからだ。

 ウザイ。かなりウザイ。特にメルクール。バックミラー越しで見ると、完全に馬鹿にした顔をしている。


 一瞬だが、一気にスピードを上げようかと思ったが、そんなことをすればシュティアが落ちそうなので思いとどまった。


勇者の名前を変更し、零の友達が勇者であると言う設定に直しました。そのため勇者視点の話を訂正しましたが、訂正箇所が名前の変更ぐらいなので、読み返してもらわなくても大丈夫です。

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