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別視点 人攫い(メルクール視点)

人攫いの時の、メルクール視点です。

 あたしが捕まったのは深夜でした。部屋で寝ていると、扉の前から何かの物音がしました。獣人のあたしでないと、分からない音でしたね。つまりシュティアさん、ヴェーヌさん、ウーラさんは気が付かない音です。その証拠に3人はスヤスヤと眠っていますよ。


 あれ? シュティアさんはどんな夢を見ているのでしょうか? 満面の笑みを浮かべています。

 ヴェーヌさんは少しつらそうな表情をしていますね。何か嫌な夢を見ているのでしょうか?

 ウーラさんは微笑んでいます。美女って寝顔も綺麗なのですね……



 それよりもあたしはかなり困っています。3人を起こすべきか、起こさないで1人でどうにかするべきか……


 考えた結果、ここで3人を起こすと外の人たちに気付かれそうなので、起こさないで1人でどうにかすることにしました。



 あたしはダガーを枕の下から取り出して、鞘から抜きました。寝る時にはいつも枕の下にダガーを置いています。それは小さいときの名残と言っていいです。

 なぜならあたしが小さいとき、寝ていたときに親が攻撃してくるのです。親は訓練だといっていました。結局それが本当かどうかは分からないままですが……


 ともかくあたしは、そのまま足音を出さないよう、ゆっくりと床に足をつくと、1歩ずつ慎重に足を進めて扉の前に移動します。


 不思議に思ったのですが、寝る前には嗅がなかった甘い匂いが部屋の中に充満していました。

 後に後悔することになったのですが、どうやら睡眠薬を作るときに使う魔物の体液を魔法で沸騰させ、空気のような物にして、部扉の隙間から送り込んできていたみたいです。



 その時は、そんなことをあたしが思うはずもありません。つまり普通に吸い込んでしまいました。それもたっぷりと……


 結果、突然あたしの全身に力が入らなくなり、前に倒れこみました。

 意識を失うほんの少しの間に、誰かが扉を静かに開けて入ってくるのが分かりました。1人は大男でした。その後ろを数人の男の人が入ってきました。そして、どこからか袋を取り出すと、こちらを見ました。


 あたしはそこで意識を失いました。




 次に気が付いたのは、どこかの地下室の牢屋で倒れているときです。湿っぽくて、かび臭く、おまけに暗いです。獣人のあたしは昼間ほどではないですが、暗くてもある程度は見えます。


 見回すと、シュティアさん、ヴェーヌさん、ウーラさんの3人も同じ牢屋にいました。3人はすでに起きており、あたしが起きたことに気が付いていました。3人とも、何が起きたのか分かっていないようで、すごく不安そうでした。さらに情報を集めるため、再び地下室を見渡します。


 それで分かったことは、見える限りでは階段は1つだけ。階段から通路が伸びて、あたしたちのいる牢屋の前を横切り、奥に続いています。

 牢屋は通路を挟んで、両側にそれぞれ5つ。計10の牢屋があることです。驚いたことに、あたしたちのほかに、12人が捕まっていました。6人ずつに分けられており、全員寝ているのか、横になっています。


 ここであたしは座ろうと思い、体を動かしました。すると手錠がされていることに気が付きました。こんなことをするのは、人攫いしかいません。そしてここで冒頭に戻ります。




 あたしは手錠を観察します。色は白色。色からするとミスリルでしょうか?

 腕輪と腕輪の間は鎖でつながれているので、多少は自由が利きます。足も鎖が付けられているので少し動きにくいです。


 シュティアさんが座ったまま、器用にあたしも近くまで移動してきました。


「……それは、ミスリル製。……魔法も、使えないように……されている」

「分かりました」


 あたしの耳元で、囁いてきました。いつも声が小さいですが、今の声はさらに小さいです。ですが、それでもこの地下室に響いたような感じがしました。


 あたしはきちんと返事をすると、シュティアさんはあたしと背中合わせになり、座りました。


 あたしは逃げることを諦めました。ミスリル製の手錠はいくら獣人のあたしでも壊せないし、どんな魔法でも使えるシュティアさんも魔法をそれを封じられてしまうと、どうすることもできません。


 頼みの綱はレイさんです。ですが、レイさんは、抜けたいのなら勝手に抜けろと言っていました。きっとあたしたちが勝手に抜けたと思って、探さないと思います。


 3人も同じことを思っているらしく、落ち込んでいます。本来ならあたしが盛り上げるところでしょうが、この状態ではさすがに無理です。




 どれほど立ったでしょうか? ごそごそと、12人の人たちが動き始めました。そのうちの1人がこちらに気が付きました。その1人が近くの人の肩をトントンと叩き、こちらを指さしました。叩かれた人がこちらを見て、驚いた表情になります。それに気が付いた周りの人たちがこちらを見てきます。中にはなぜか、希望の眼差しを向けてくる人もいます。


「おい! お前たちも捕まったのか!?」

「え、ええ……」


 男性の一人が小声で尋ねてきたので、ヴェーヌさんが答えます。こういうやり取りは、ヴェーヌさんが1番上手なので、あたしとシュティアさん、ウーラさんは黙っています。

 名前を名乗らないことに関しては、何も言いません


「そうか。お前たちを助けに来てくれそうな人はいるか?」


 男性がさらに質問をしてきました。一瞬なぜそのような質問をしてくるか分かりませんでした。しかしあたしたちの助けが来ると、男性たち12人も助かると思ったのでしょう。


 ヴェーヌさんが少し下を向いて、言葉を考えています。あたしは余計なことを言わないように、黙っています。


「いますが……」

「いるのか!?」


 少しすると、ヴェーヌさんが顔を上げて、言葉を出します。あたしは、それがレイさんであることが分かりました。しかしヴェーヌさんは言葉を止めました。その意味はもちろん分かっています。

 男性が声を出します。希望が出たのか、少し声が大きくなります。他の12人も希望を持った表情になります。

 再びヴェーヌさんが口を開けました。その様子を見て、12人は黙って言葉を聞こうと集中しました。


「ですが、来ないかもしれません」

「こ、来ないって、なぜだ!」


 ヴェーヌさんの言葉を聞いて、別の男性が声を出しました。あたしだって、訳を知らなければ聞いてしまいます。


 ヴェーヌさんは理由を分かりやすく、説明し始めました。内容はレイさんが、なぜ来ないかもしれないのか。


 もちろんレイさんの名前は出していません。名前を出したら今後面倒になるかもしれないからです。言わなくても、ヴェーヌさんはそのあたり分かっているらしく、言いませんでした。さすがヴェーヌさんです。「てんせい」というものでこちらに来ただけあって、精神年齢が高いだけあります!


 あれ? 今、ヴェーヌさんの後ろに、頭から長い角を生やし、口を大きく開けた、怖い女性の姿が見えたような……



 ヴェーヌさんが話したことを簡単にまとめますと、レイさんが前の仲間――友達に裏切られたこと。それにより仲間を持つことが怖くなり、不要と思うようになったこと。あたしたちはついて行っているが、レイさんはいつでも離れて行っていいと言っていること。

 そして、もしかしたらレイさんが、あたしたちが離れたと思っているかもしれないことです。


 そこまで聞いて、男性は落ち込んでいました。もちろん残りの人たちも落ち込んでいるのが分かりました。当たり前です。あたしも相手の立場なら、助かるかもしれない希望が消えたため落ち込んでしまうでしょう。


 そうこうしている間に、階段の上にある扉が開きました。そこから細身の男性と、その後ろから女性が1人下りてきました。女性は茶色い色の布でできた袋を持っていました。匂いからすると、パンでしょうか?


 男性が階段横の柱にもたれかかるとあたしたちを監視し始めました。女性はあたしたちがいる牢屋の前までくると、袋の中からパンを4つ出して、パンを4つ渡してきました。ヴェーヌさんがそれを受け取ると、あたしとシュティアさん、ウーラさんに1つずつ渡しました。


 それを確認すると、女性は通路を進んで奥の牢屋に行きました。そしてそれぞれの牢屋にいる人数分のパンを取りだすと、あたしたちの時のように渡していきます。


 渡し終えると、その人は再びあたしたちの牢屋の前を通って、階段を上がっていきました。男性は残ったままです。監視しているのでしょうか?



「お前たちの今後を先に教えといてやる」


 あたしたちがパンを食べているのを見ながら、柱にもたれている男性は静かに言いました。


「お前たちはこの後、全員奴隷として売られる。男どもは炭鉱へ。女どもは娼館へ売ってやる。エルフと獣人は貴族の所行きだな。まあ、女どもとエルフは売る前に、俺たちが少し使うが」


 男性はそう言うと、下品な目で見てきました。あたしはゾッとしました。


 男性は何に満足したらしく、降りてきた階段を上がっていきました。見えなくなって少しすると、ドアが閉まる音がしました。音がしたのと同時に、あたりは再び暗闇と静寂に包まれました。




 どのくらいたったでしょうか? 上から物音がしてきました。例えドアを閉めていても隙間から音が漏れているので、声が聞こえます。

 話をしているのは男性と……


 これは人でしょうか? 声がまるでこの世の声とは思えない、異質な声です。感情なんて、一切感じることができません。

 そもそも話しているのは人なのでしょうか? 種族によっては、人の言葉をしゃべりはするが、発音がおかしな種族がいるので、その人かもしれません。


 突然、男性の声がどこか嬉しそうなものに変わりました。そして3人分の足音がしました。どうやら移動するみたいです。


 その移動先は、どうやら地下のようです。扉が開く音がして、階段を下りる足音が3人分します。




「この4人がそうです」


 3人の男性が、あたしたちの入っている牢屋まで降りてきました。1人は大男。1人は女性がパンを持ってきたときにいた男。

 そしてもう1人はフードをかぶって、顔に骸骨を思わせる白く目の部分が赤い仮面を付けた人は顔がわからないので、性別がわかりません。服は買ったばかりらしく、匂いが強いため、体の匂いで誰なのかを判別できません。


 そのうちの大男が、仮面をつけた人に話しかけました。明らかに大男の方が強そうです。しかし大男は仮面をつけた人に、丁寧に接しています。まるで貴族の人に接しているようです。


 仮面をつけた人がこちらを見てきました。その視線がまるで今にも殺そうとしてきているようなもので、怖くなったため怯えてしましました。明らかにレイさんではありません。


 レイさんはあたしたちを必要としていません。それほどレイさんは強いです。あたしたちがレイさんの隣にいるためにはレイさんと同じぐらい強くなければいけません。そしてその強さを持っているのであれば、今、目の前に立っている人に怯えた姿を見せてはいけません。


 ですが、明らかにあたしたち以上の力を持っているのが雰囲気で分かります。それほど目の前にいる人の態度が堂々としているのです。


「どうですか? きちんと攫って来ているでしょう? もちろん暗かったので、攫ったことはばれていません」

「確かに確認した」

「きちんと若旦那様に報告してくださいよ? 今後ともお役に立てるよう頑張りますので」


 大男は手をこねながら、仮面をつけた男性に話しかけている。どうやらこの人があたしたちを攫うように指示した人の部下らしいです。


「ああ。きちんと報告しておくよ。4人を返してもらったらな」


 仮面をつけた男性は大男にそう言いました。しかしこの後の行動に驚きました。なんと仮面をつけた人が大男を蹴ったのです。そして大男は跳ぶと、奥の壁にぶつかり、壁にひびが入った。そして大男はそのまま前に倒れこんで動かなくなりました。


 あまりの力に驚きました。しかし不思議です。なぜこんなことをしたのでしょうか?


「な、何をしている!」

「邪魔だ。寝ていろ!」


 大男でない方の男性が剣を抜きながら、叫びます。驚いたことに、男性が剣を抜ききる前に、仮面をかぶった人は大男と同じように蹴りました。回し蹴りに近かったと思います。男性は階段側に飛んでいき、階段の近くにあった柱にぶつかって、そのまま床に崩れ落ちました。柱には少しですがひびが入っています。そこから、どれほどけった力が強いかがわかりました。


 仮面をかぶった人は、2人の男性が倒れたのを確認すると同時に、鉄格子に触れました。力を使ってこじ開けるのでしょうか。


 あたしはこの後どうなるのかが心配になりました。殺されるのでしょうか? 奴隷にされるのでしょうか? それともここで犯されるのでしょうか?


 驚いたことに、鉄格子がまるで粘土のように柔らかくなっりました。仮面をかぶった人が、それをすべて千切って、インベントリにしまいます。


 あたしは気が付きました。これは、鉱石干渉のスキルです。このスキルを持っているのは、世界中のなかで、指で数えるくらいしかいません。そしてあたしが知っている、このスキルを持っている人は1人しかいません。


 あたしはそれに気がつき、つい笑顔になりました。どうやら他の3人も同じように気が付いたらしく、笑顔になりました。


「すまん。待たせたな」


 仮面をつけた人は仮面を少しずらしました。驚いたことにレイさんじゃないですか!

 捕まっていた私たち4人を見たレイさんの表情は、どこか安心していたものでした。


 安心したことと、助けに来てくれたことへの感謝で、あたしはレイさんに飛びつきました。それは他の2人――シュティアさんとヴェーヌさんも同じだたらしく、同時に飛びつきました。


ウーラさんは飛びつきませんでした。大人です。


 さすがにステータが高くても、突然3人も飛びついてきたら支えきれなかったようで、レイさんは後ろに倒れこみました。しかしあたしたちは離れませんでした。


「おい。離れろ。起きられない」

「いやです! 離れません!」

「離れろ! 敵が来る!」


 レイさんが離れろと言いましたが、あたしは離れませんでした。レイさんが再び離れろと言って、あたしの頭にチョップを入れてきました。かなり痛かったので、あたしは床を転げ回ります。その様子を見て、残りの2人はすぐに離れました。


 何もされていないのに、頭を押さえながら――



 その後は無事に脱出。逃げる際に、他に捕まっていた方も一緒に逃げ出しました。さすがに、外に出た後は別々の方向に走っていきましたが……

 

 もちろん手錠はレイさんがスキルを使って外してくれました。


ですが、かなり便利ですよね。

零さんの使う鉱石干渉のスキル……

どうしよう。第2章を終わらせることができそうな場所が見つからない……

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