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第27話 人攫い(1)

友達に聞いたところ、誤字がかなり多いそうです。

月曜日から直していこうと思います。(あれ? 前もそんなこと言っていたような……)


 前日は試合がありかなり疲れていたた。もちろん戦い自体は楽で、体は疲れていない。

 しかし大勢の前で戦ったことから、緊張が原因の精神的疲れがあった。


 幸いにも、翌朝はきちんと起きることができた。

 着替えるため、カナに部屋から退出してもらう。ロボットはロボットでも、カナの出来は高すぎるので人と思ってしまい、着替えを見られると落ち着かない。


 カナには、部屋からの退出のついでに4人の様子を見てきてもらうことにした。昨日のうちに部屋の位置は教えているので、大丈夫であろうと思ったためだ。


「カナ。すまないが、4人を見てきてくれないか?」

「分かりました、お兄ちゃん。4人を見てきます」


 俺が頼むと、カナは扉を開けると部屋から出ていった。この間に俺はさっと着替える。今日は上から下まで黒っぽい色の服だ。

 シュティアの服を初めて買った時に、一緒に買った服である。


 今までインベントリの肥やしになっていたが、ふと思い出したたついでに、今日着てみることにした。

 見た目は少し怪しいが、問題ないだろう。

 今日の日差しは、雲がうっすらと出ているため、そこまで強くないだろう。そのため厚くはないと思う。


 着替え終えると同時に、カナが走ってくる音が聞こえた。4人を起こし終えたのだろうか。

 待っていると、カナがすごい勢いで扉を開く。壊れそうだったので注意しようとした時――


「お兄ちゃん! 大変です! 4人がいません!」

「え? 4人がいない?」


 カナが焦った顔をして、4人がいないことを伝えてきた。普段は無表情なのに、ここまで表情が出ていることには驚くが、こちらに驚いている暇はなかった。


 あまりの言葉に、一瞬脳の処理が追い付かなくなる。頭の回転のスピードを上げて、カナが言ったことの意味を理解する。


「どういうことだ!?」

「説明よりも、実際に見てください!」


 さらに情報が欲しかったのでどういうことか尋ねると、カナは俺の手をつかんで走り出す。俺は引っ張られるようにして、4人が泊まっている部屋に向かった。扉はぎりぎり占めることができたが、カギは駈けることができなかった。例え部屋の中をあさられても何もないが。



 部屋に着いた時、カナの言っていたことが本当であることを知る。そこには4人ともいなかった。


 掛け布団はぐちゃぐちゃのままで、落ちかけているものもあった。荷物は、俺が指輪型のマジックバッグを4人に渡しており、個人で保管させるようにしている。しかし容量は決まっているため、メルクールとヴィーヌの武器は常に出して持ち歩く。そのため普段からインベントリの外に出しているのだ。


 そして2人の武器は部屋の中にあった。メルクールの短剣は窓際の机の上に。ヴィーヌの槍はベッドの近くの壁にもたれさせていた。窓は閉じたままだ。部屋の鍵も窓際の机に置かれていた。



 俺はその様子を見て考えを巡らせる。4人が俺から離れたという可能性はある。しかし4人ともお金はない。さらに4人が俺から離れるとしたら、何かしら言ってくるだろう。


 例え言わないで出て行ったとしても、メルクールとヴィーヌは常に武器を身に着けているにもかかわらず、俺から離れるときに限って武器を持って行かないのはおかしい。


「カナ。この部屋に来た時には、扉の鍵は閉まっていたか?」

「いいえ。開いていました」


 カナに扉の鍵の事を尋ねる。俺は4人に、寝るときは必ず鍵を閉めるように言う。

 しかしカナの言葉通りでは、カナが来たときは閉まっていなかったことになる。


 俺はカナが言ったその言葉で、1つの可能性を考え出す。誰かに捕まってどこかに連れていかれたと言うことを――


 もしかしたら、俺についてくるのを止めて4人で旅をするために出ていったと思った。しかし武器は置いたままなので、その線はすぐに消えた。結果、連れていかれたという考えが浮かんだのだ。

 だが、できればそれはあって欲しくなかった。


 例え4人を信用できていなかったとしても、今は大事な旅の連れだ。4人に何かあったら俺はとても困る。



 俺は焦る気持ちを押さえつつ、布団を触ってみる。まだ温かいか確かめるためだ。

 結果は冷たかった。もし本当に連れ出されたとしたら、それなりに時間が経っているのだろう。


「カナ。すまないが、インベントリに入っていてくれないか?」

「これから探しに行くのですね?」

「ああ」

「分かりました。気を付けてください」


 カナは考えていることをすぐに理解してくれて、インベントリに入ることを了承してくれた。俺はカナの頭に触れてインベントリにしまう。インベントリにしまう際に、謝罪の意味を込めて頭を少しなでる。


 カナの見た目は普通の人だが、ロボットのためインベントリにしまうことが出来る。普段はカナが悲しむので外に出しているが、緊急の時はしまう許可をカナから貰っている。




 カナをインベントリに入れたことを確認して、俺は宿の外に出ることにした。宿を出る際、俺が泊まっていた部屋と4人が泊まっていた部屋の鍵を閉める。メルクールとヴィーヌの武器はインベントリに回収して、鍵は受付に返した。いつ戻ってくるか分からないからだ。


 ついでに受付の女性に、4人を知らないか聞くことにした。


「すみません。4人の少女が宿から出ていく所を見ませんでした?」

「お客様の、お連れの方ですね? すみませんが見ておりません」

「分かりました。ありがとうございます」

「どうされたのですか?」


 受付の人に聞くが、見なかったそうだ。

 俺は4人がいなくなったことを言う。そして、考えすぎの可能性があると、前置きを言ってから、連れ去られたかもしれないことを伝えると、受付の人は驚いていた。その後、すぐに何かを考え始めた。


「関係ないと思いますが、数人の男性が袋を4つ持って出て行くところは目撃しました」

「男性が数人、袋を持って出ていったのですか?」


 女性は、袋を持った男性が数人宿を出ていくところを見たと言ってくれた。俺は確認の意味も込めて言葉を繰り返す。かなり役立ちそうな情報が入った。


「ええ。袋の大きさからして、その中に4人が入っていたかもしれません。もし気が付いていれば……」

「気にしないでください。俺だって袋の中に人が入っているなんて思いもしませんから。それより何時頃ですか?」

「真夜中あたりだったと思います……」


 女性は顎に手を添えながら、男性たちが宿から出ていった時間を言ってくれる。どうやら4人は袋に入れて、連れ出されたようだ。そのうえ、連れ出されてからかなりの時間が経つ。

 俺はお礼を言ってから宿をあとにする。


 

 真っ先に向かったのは朝市だ。買い物をするわけではない。聞き込みを行うためだ。ここには人が多いのでいろいろと聞き出せそうだった。


 朝市が開かれているところは、宿からあまり離れていないので移動が楽だった。朝市は多くの人で賑わっていた。


 俺は何人かの人に話を聞こうとするが、何をどのように聞いていいか分からないことに気が付く。見ず知らずの人に、突然少女4人を知らないか、なんて聞かれたら驚くだろう。

 自分でもわかっていなかったが、かなり焦っているようだ。一度近くにあった長椅子に座って、インベントリから飲み物を取り出して飲むと、自分の気持ちを落ち着かせる。


 シュティア達4人のことは、多少は信用しているが仲間ではないと心の中では思っている。しかし俺のせいで何かしらのトラブルに巻き込まれているのなら、助けに行かない訳にもいかない。


 落ち着いてきたので、何を聞くべきかを考える。

 まず知らなければいけないのは4人の居場所だ。だが、連れ出されたであろう時間は深夜。そのうえ、4人は袋に入れられて運ばれているため誰も見ていないだろう。


 では袋を運んでいる人を見たかと聞くのはどうだろう。

 それも間違っている。現に、目の前を人が入れそうな袋を担いで歩いている男性がいるのだ。


 袋の中に4人のうちの誰かが、入っているのではと疑ってしまう。

 深呼吸してもう一度心を落ち着かせる。いくら焦っても見つからないことは分かっている。




 落ち着きを取り戻し、いろいろと考える。

 考えた結果、人攫いの仕事をしている人を探すのがいいのではと思った。人を攫うプロだからだ。

 

 この世界には人攫いがいるのは本で確認済み。

 人攫いはもちろん犯罪だ。しかし過去にはそれを見て見ぬふりをしていた領主がいたそうだ。

 さらには、金を払って雇っていたという証拠も出てきている。


 そこから考えると、人攫いはそこそこ稼ぎがいいのだ。もちろんそんな人攫いは、ほんの一握りになるだろう。大半の人攫いは、攫った人を闇の奴隷賞で売って稼ぐぐらいだ。


 今はそんな人攫いを探すのだが、問題が1つあった。どこに人攫いの仕事をしている人がいるかだ。



 俺はさらに考えを巡らせる。どうやら難しい顔をしていたようで、通り過ぎる人がこちらを見るが、気にしない。


 人攫いは基本的に汚れ仕事として扱われる。また、危険が伴うので普通の人は行わない仕事だ。お金稼ぎの際のリスクが高すぎる。犯罪のため見つかったら即牢屋行。よっぽど生活が厳しくないと、手を出そうとはしないだろう。また人攫いの仕事は裏の仕事だ。


 普通の人は行わない仕事で、お金を得る際のリスクが高い。そしてそんなことをしなければならないほど生活が厳しい人はだれかというと……

 そこまで考えると、行き先は大体絞ることが出来る。




 目的地付近につくと、路地裏に入る。インベントリから自作の仮面を取り出す。

 作る際に遊び心を入れてみようと思い、考えているうちに骸骨のような仮面になった。


 材質は全てミスリルでできているので、すごく白い。周りから見たら本当に骸骨をかぶっているように見える。かなり不気味だ。

 しかも目に当たる部分が、とある理由で赤のため一層不気味に見える。



 だが、仮面の表面の白い部分――ミスリルは軽いため、長時間付けていたとしても、首が痛くならないのでとてもいい。


 目の部分は、エルフの郷の地下にある部屋の床に散らばっている物の中に、よさそうなものを見つけたのでそれを使った。形は丸く赤いメガネのレンズのような物だった。


 前に調べてみると、目の部分に使った赤いものは、とある鉱石を精錬したら出てくる金属だった。知らない金属だったので本で調べてみると、エリジアという金属ということが分かった。鉄よりも強く、ミスリルなどの貴金属には劣る金属であることが分かった。


 この金属は特殊で、一定の条件を満たすとマジックミラーのような効果が出るらしい。条件とは、コンタクトレンズのように表面を丸くすること。


 凸にすることにより、覗く方向によっては赤く見える。平たいままなら透き通って見える。使い方によっては犯罪になるものだ。

 しかし加工が難しいものなので、基本はいらないものと扱われる。


 目元だけが赤いのっぺりとした仮面になった。カッコ悪かったので、直していくうちにいつのまにか、口の部分だけガスマスクをつけた骸骨のようなものができたのだ。


 出来た日の夜に、メルクールの部屋を仮面をつけて訪れたのだが、メルクールが怖がりすぎて窓から飛び降りて逃げていった。

 場所が2階で、驚かされた影響があったのだが、見事な着地だった。


 そのあとメルクールに無茶苦茶怒られた。二度としないように言われた。

 泣きかけだったので、もうやらない。さすがに泣かしてまでやりたいとは思わない。


 そんな変わった仮面をつけ、昔にシュティアと行った店で買ったフード付きコートを着る。怪しすぎるが、今から行くところは危険なので、顔を見られるわけにはいかない。フードも付けて、目的地に向かう。




俺はボロボロの家が立ち並び、貧困の者が多くいる場所――『スラム』に来ている。そこで、見るからに悪い奴に話しかけた。体には切り傷の後が数多くある男性だ。俺が近づくと男性はギョッとした。男性の目線は俺の顔――仮面に向けられていた。よっぽど異様なのだろう。

俺はそれを無視して尋ねる。


「さらってほしい奴がいるのだが、お前は人攫いか?」


 俺は尋ねたが、男性は俺を睨む。どうやら怪しんでいるのだろう。

 まあ、こんな姿なら怪しまれても仕方がないか。


「お前は兵士か?」

「質問しているのは俺だ。答えろ」

「そこの建物に入りな。そこにいるやつが人攫いの仕事をしている」

 

 残念ながら男性は人攫いではなかったが、どうやらそのアジトを知っていたらしく、欠損している指でさして教えてくれた。

 指をさしてくれた方を見ると、周りより少し大きい建物があった。周りの建物より少し大きいだけで、外見はボロボロだ。


「そうか。わかった。これはお礼だ。受け取れ」

「おお! わかっているじゃないか!」


 お礼のかわりに銀貨を2枚投げて渡す。男性はうれしそうに投げた銀貨を受け取った。スラムに住む人は、なかなか収入がないので、銀貨数枚で喜んでくれるようだ。


 俺は言われた建物の前に立つと、少し考え事をする。助け出すための案を考えるのだ。

 時間的に、もう大会には出られないだろう。だが4人を助け出すことが出来れば、それだけでいい。

 それより問題は、ここに4人が本当にいるかだ。どのように聞き出すか考えていない。


 結局いい案が思い浮かばなかったので、行き当たりばったりの、場合により力押しで行く案を考えた。

 俺は意を決して建物の中に入っていく。


「なんだお前? 何勝手に入ってきているのだ?」

「やめろ。ここは人攫いのいるところだと聞いて、仕事を頼みに来ただけだ」


 俺が入るなり、首元に剣を突きつけられた。俺は剣の根元を指でつかむと、鉱石干渉で剣を根元から折る。剣を首元につきつけていた男性は、ギョッとした表情になっていた。手の力だけで折ったと思ったのだろう。


「どうした。騒がしいぞ」


剣を突きつけてきた男性が次の行動を起こす前に、奥から男性が1人出て来た。スキンヘッドの大男で、左目に傷がある男性だ。感じからして、間違いなくここを仕切っているリーダーだ。


「仕事を頼みに来た」


 俺が仕事を頼みに来たと言うと、男性はこちらを見てきた。威圧を掛けているように見えるが、俺に効果は全くない。

 逆に俺が威圧を軽く掛けると、大男は驚いた顔で半歩後ろに下がった。それだけだったのは褒めることが出来る。先程剣を突きつけてきた男性は、腰を抜かしている。


 俺が威圧をやめると、大男はニカッっと笑った。どこか子供っぽかったが、それを言葉にして出したりはしない。


「強そうな奴じゃねえか! どうだ? 俺たちの仲間にならないか?」

「いや、やめておく。それより仕事は受けるのか? 受けないのか?」

「気が向いたら仲間になってくれ。それよりこっちに来い。誰を攫って欲しいか聞こうじゃないか」


 大男が勧誘してくるが、入らないことを言う。大男は少し残念そうな顔をするが、俺を手招きし、奥の部屋に案内する。俺の後ろには、先ほど剣を首元につきつけてきた男が付いてきている。いつの間にか、腰には新たな剣をぶら下げていた。

 どこから持ってきたんだよ……



 入口の所の部屋は、いかにもスラムにある家という感じの汚い部屋だったが、奥の部屋は驚くほど綺麗だった。ソファーや机など、家具がきちんと置かれていた。


 大男がソファーに座ったので、俺は向かいのソファーに座る。後ろからついてきていた男は、俺の後ろに護衛のように立つ。だが護衛ではなく、いつでも殺せるように構えていると言った方がいいだろう。


 どこからもなく女性が飲み物を運んできて、俺と大男の前に飲み物の入ったコップを置く。珈琲カップのようなそれは木でできており、中には珈琲のように真っ黒な液体が入っていた。

 女性は普通の人間で、やや汚れていたが、十分綺麗だった。ただ、顔は暗かった。首には首輪をつけており、奴隷であることを表している。女性は飲み物を置き終わると、一礼して扉の1つから出ていった。


「ほら飲め。この飲み物はうまいぞ!」

「ああ。ありがとう」


 大男が飲み物を進めてくる。お礼を言うが飲まない。飲むためには仮面を外さなくてはならないからだ。


「で、誰を攫ってきて欲しい?」

「とある女4人だ」

「女か。どんな奴だ?」


 大男が本題に入る。誰をさらってきて欲しいか聞いてきたので、女性4人であることを伝え、4人の姿を説明する。


 1人は薄い紫色の髪の人族の少女。1人はクリーム色の髪をした獣人の少女。1人は茶色の髪をした蜥蜴人の少女。一人は薄緑色の髪をしたエルフの女性。シュティア、メルクール、ヴェーヌ、ウーラの見た目だ。


「不思議なこともあるものだな」

「どういうことだ?」


 説明し終わると、大男がニヤッとしながら言葉を発したので、俺は尋ねる。


「昨日の夕方頃だったかな? 客の個人情報は言えないが、お前の言ったような4人を攫えと頼んできた奴がいたんだ……」

「そうか」


 どうやら、4人を攫えと頼んできた奴がいたようだ。俺は詳しい事を聞くため質問する。

 その際、気を付けないといけないのは、俺が4人と一緒にいた男子であると、ばれないようにしないといけないことだ。俺は言葉に注意して、質問する。


「その客は、何のために攫えと言ったのだ?」

「なぜおまえが気にするのだ?」


 俺の言葉を聞いて、男性が体を前に乗り出してくる。そして何かを探る様に俺の顔を見る。俺は極力怪しまれないように言葉を続けた。


「なんとなく気になっただけだ」

「そういうお前はなぜ俺達に頼んできたのだ?」

「今、武道大会を行っているだろ? その大会で勝つためだ」


 俺は理由をいう。ここで踏み込みすぎると、危ないと思ったからだ。しかし、大男は逃がしてはくれなかった。そこで俺は適当に答える。

 大男がポカンとすると、笑った。その声がうるさくて、耳が痛かったが、大男はお構いなしだ。しばらく笑うと、男性は先程までの探るような目をやめた。


「まさか全く同じ理由で来るとはな。もしや若旦那様ですか? 安心して下さいよ。無事4人は捕まえたのですから」


 どうやら俺を、4人を攫えと頼んだ本人と勘違いしているようだ。俺はその勘違いを少し利用することにした。


「すまないが俺は若旦那様ではない。使者だ」

「使者の方でしたか。すんません」


 本当は頼んだらしい若旦那に成りすますのが一番いいのだが、間違ったことを言ったりして、ばれては元も子もないので、使者としてここに来たことにする。大男はペコペコしながら俺に謝ってきた。


「どうしても心配だったから来たのだ。悪かったな」

「いえいえ。滅相もございません。大金を貰ったのですから、失敗なんてできませんよ」


 どうやら大男は勘違いをしたままらしい。俺はそのまま続けることにした。もしばれたら、ばれた時にどうにかする。


「できたらその4人を見せてくれ。報告しないといけない」

「ええ。もちろん! ぜひ見ていってください」


 俺がイチかバチかで頼むと、大男はすんなりと了承してくれた。大男と俺は席を立つと、部屋の隅にあった扉を開いて階段を下りる。どうやら地下に4人を入れているようだ。俺の後ろから、先ほど大男の後ろにいた男がついてくる。


 階段を降りると、牢屋になっていた。廊下が1本まっすぐに奥まで続いており、廊下を挟むように左右にそれぞれ5つ。計10の牢屋がいくつかあった。そのうちいくつかには人が入っていて、さらにそのうちの1つの牢屋に4人は入っていた。4人がいた場所は、階段を下りて右側の手前から3つ目の牢屋だった。


「この4人がそうです」


 大男が4人の入っていた牢屋の前まで移動すると、俺の方に向いて報告する。


 シュティア、メルクール、ヴィーヌ、ウーラは体に傷はないものの、こちらを見ておびえていた。手と足には手錠のようなものを付けられていた。色は白色だったので、ミスリルだろう。


 俺はその様子を見て、少しだがホッとする。おびえてはいるが、それ以外は大丈夫そうだからだ。本当は声を掛けたいが、今の姿を見ても俺だと思えないだろうし、何より大男に助けに来たと思われると困るので見るだけにしておく。


 4人がシュティア達であることを確認したので、後はここから連れ出して逃げるだけだ。


 今の所、敵は俺の近くにいる2人だけだが、きっと騒ぎが起きると飛んでくるだろう。

 俺は4人を見ながら、逃げる方法を考えるのだった。


「どうですか? きちんと攫って来ているでしょう? もちろん暗かったので、攫ったことはばれていません」

「確かに確認した」

「きちんと若旦那様に報告してくださいよ? 今後ともお役に立てるよう頑張りますので」


 俺が4人を見ながら脱出の方法を考えていると、顔の確認をしていると思ったのだろう。大男が尋ねてきたので、俺は確認したことを伝える。それを聞くと、大男は手をこねながら、俺に今後とも頑張ると言ってきた。もちろん俺は使者ではないので、頑張られても意味がない。


 俺は芝居をやめて4人を助け出すことにした。牢屋はスキルを使えばどうにかなるだろう。


「ああ。きちんと報告しておくよ。4人を返してもらったらな」


 俺は大男にそう言うと同時に、蹴りを放つ。完全な本気ではないので死んではいないだろう。大男は俺の右側にいたので、後ろ向きに飛んで行き、奥の壁にぶつかる。壁にひびが入った。大男はそのまま前に倒れこんで動かない。


「な、何をしている!」

「邪魔だ。寝ていろ!」


 俺の左側にいた男が剣を抜きながら、叫ぶ。もちろん剣を抜ききる前に、大男と同じように蹴りを放つ。男は階段側に飛んでいき、階段の近くにあった柱にぶつかって、床に崩れ落ちる。柱には少しだがヒビが入ったが、問題ないだろう。上の階の様子は分からないが、声が聞こえていると想定した方がいいだろう。


 俺は2人の男が倒れたのを確認すると同時に、鉄格子に触れる。スキルの鉱石干渉を使用すると、まるで粘土のように柔らかくなったので、それをすべて千切って、インベントリにしまう。こういう資源はきちんと回収していかないと、すぐに枯渇するのだ。


 俺が2人を蹴り飛ばしたためなのか、4人はきょとんとしていたが、俺がスキルを使うと顔に笑顔が戻った。どうやら俺の事が分かったようだ。


「すまん。待たせたな」


 俺はそう言いながら、仮面を少しずらす。奥の牢屋には人が入っているのでその人たちに顔が見えないように気を付けた。


 俺の顔を見たシュティアとメルクールは飛びついてきた。驚いたことにヴェーヌも飛びついてきた。さすがにステータが高くても、突然3人も飛びついてきたら支えきれない。俺は後ろに倒れこむ。ウーラは微笑みながら涙を流していた。うれし涙なのだろう。

 


「おい。離れろ。起きられない」

「いやです! 離れません!」

「離れろ! 敵が来る!」


 いつまでたっても、俺に飛びついてきたシュティアとメルクール、ヴェーヌの3人は離れてくれなさそうだったので離れろと言う。

 しかしメルクールが離れないと言うので、再び離れろと言いながらメルクールの頭にチョップを入れる。痛かったようでメルクールは床を転げまわる。その様子を見て、残りの2人はすぐに離れた。何もしていないのに、頭を押さえながら――


「さっさとここから出るぞ」

「待ってくれ!」


 4人に向かって伝えると、どこからか男性の声が聞こえてきた。

 俺はその方向を向く。

まずい。第2章の終わらせ方を考えていない……

国を跨いだら章を変えようと思っているのですが、書き溜めの分(第34話)を書いている今でもなかなか国を跨ぎそうにないです。

どこで第2章を終わらせようか……(こんな状況で、この先大丈夫かよ)

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