第26話 武道大会
基本的に、1話分は6000文字から8000文字で収めようと思っているのですが、きりが悪かったので長くなりました。
投稿ペース遅いから1万文字の方がいいのだろうか……
武道大会にエントリーした次の日は、朝食を少しだが食べてから、武道大会の会場に向かう。
会場の近くは、かなりの人で賑わっていた。
武道大会は毎年行われているが、訪れる人の量は減少しないらしい。逆に少しづつ増えているとか。
訪れる人の量が増えているという情報は宿の従業員の男性に聞いた。
その時に、稼ぐ量が毎年のように増えてうれしいと言って笑っていた。ただその男性の目の下にはクマができており、大変であるということがうかがえる。
話は変わるが、昨日の夜はシュティア達4人は俺の部屋に侵入してこなかった。なのでぐっすり眠ることができた。
会場の近くには屋台がたくさんあったのでいろいろ買ってみた。朝食を少なくした理由はこれだ。
屋台の中には、クレープのようなものを売っていたところもあった。
この世界で砂糖は貴重なため、魔物からとれる砂糖のようなものを使っていると説明された。それでも味は良かった。
食べ終わったときに、シュティア達4人が期待する目線を向けてきた。今度作れとでも訴えかけてきているのだろう。
機会があったらその時にでも作る。その時に4人がいたら味見をさせてやる。
途中、対戦表を見るため寄り道してから席に向かう。やはり、かなりの数の組がエントリーしていた。
幸いなことに対戦相手は1組だった。相手が2組にならなかったので良かった。
場所によっては1対1対1の、3組同時に試合を行うところもあった。3組が同じリングで戦うとなると、すぐに決着がつきそうだ。
会場の中は、1年に1度だけの行事だけあって、席はほぼ埋まっていた。リングの近くである前の方は取ることができなかったので、後ろの方に座る。
席が後ろだから見にくいと言うことは無かったので良かった。ただ、選手の顔を一人広地確認できない。それは仕方がない。
『さて! 今年もやって来ました武道大会! 皆さん盛り上がっていますかー!』
「「「「「「「うぉーーーーー!」」」」」」」
『元気ないですよー!』
「「「「「「「うぉーーーーー!」」」」」」」
『聞こえませーん!』
「「「「「「「うぉーーーーー!」」」」」」」
『観客も盛り上がってきたので、今年も武道会を開催しまーす!』
「「「「「「「うぉーーーーー!」」」」」」」
司会を行う女性の人が進行する。かなりひどい進み方だが、観客は突っ込んでいないのでいつものことなのだろう。
最初はそこまで大きくなかったが、司会の人の言葉で、だんだんと観客の声の大きさが大きくなる。ここのコロシアムが崩れてしまうかと思った。
『本当は始めたいのですが、ここで運営委員の委員長挨拶が入ります』
女性がそう言うと、会場からいろいろと声が上がった。いろいろあって聞き取れなかったが、大半はブーイングだろう。
『本当は自己紹介から入りたいのですが、私だって早く見たいのですよ! なので簡単にまとめます! これより武道大会を始めます! 以上!』
男性が簡単に挨拶を行う。本当に簡単だったので、先ほどブーイングしていた会場のお客さんから拍手が起こる。よっぽど早く見たいらしい。
というより、挨拶がそんなものでいいのか! ここの運営委員大丈夫かよ!
とんでもない始まり方をし、とんでもない短い挨拶が終わると、さっそく試合が始まった。
トップバッターは両方とも6人で、前衛、中衛、後衛が2人ずつの基本的なパーティーだった。第1試合のため、強いチーム同士の戦いはまだない。そのため見どころはなかったが、いい試合だったので、他の観客にとっては面白かったようで、盛り上がっている。
その後も次々と決まっていく。途中かなり強いチームがいたので、その時には会場が盛り上がった。
時には1対1対1の試合もあった。1チームだけに集中していてはいけないので、両方に注意を向ける必要がある。
結果、なかなか試合が進展しなかったが、突然1つのチームが動き出してからは一気に決着がついた。あまりにも早すぎたために何が起きたかは分からなかった。
ただ、様子見にしびれを切らした1チームの前衛が、別の1チームに走り出した瞬間がきっかけになったのは分かった。
そして試合はさらに進んで、ついに――
「ついに試合か」
「ええ。試合を見る側と、試合を行う側では全然違いますね」
「うーっ……無理です……あたし、こういう目立つこと苦手なんです!」
「あら。思ったより人がたくさんいるわね?」
時刻はお昼前だろう。現在、リング上にいる。
前衛は俺とメルクールが。ヴェーヌが中衛。シュティアとウーラが後衛だ。並びは、俺の右にメルクール。俺とメルクールの間の後ろにヴェーヌ。俺の後ろにシュティア。メルクールの後ろにウーラがいる。
サイコロの5の目のような並びをしているといった方が簡単だろう。
始まってからずっと観客は盛り上がっているが疲れないのだろうか。
ちなみに、カナは控室で待機している。控室に入るとき、警備員にカナが参加者かどうか尋ねられたが違うと答えた。拉致されたら大変だから、控室で待機させるだけと伝えておいた。
ヴェーヌは冷静だった。対してメルクールはおどおどしている。ウーラは周りからの目線が気になるようで、きょろきょろしてばかりだ。
「おい、メルクール。しっかりしろ。シュティアを見習え。静かにしているぞ」
シュティアが静かだったので、俺は前を見ながらメルクールに見るよう促す。
メルクールは後ろを振り返って、シュティアの方を見る。
「ほんとだ! ……って、完全に固まっているじゃないですか! シュティアさん完全に固まっているじゃないですか!」
シュティアを見たメルクールは顔を引きつらせた。しかも驚きすぎたために、声が低くなっている。おっさんかよと思った。おっさんの声までは言いすぎだが。
それほどひどいのかと思いシュティアを見ると、固まっていた。体だけではなく、表情も固まっている。
シュティアは見られていることに気が付くと、苦笑いを返してきた。
あ。これダメな奴だ。本番にすごく弱いタイプだ。
そうこうしていると、相手チームの準備が終わる。前衛が剣士4人、後衛が魔法使い2人の計6人パーティーだった。こちらは5人だったので、やや不利だと他の観客にそのように見えたのだろう。一部の観客は、かわいそうにという顔をしている。
「作戦はありますか?」
「特にない。あえて言うなら油断するな」
ヴェーヌが後ろから尋ねてきたので、前を向きながら答えておく。初戦ならまだ大丈夫だと思うが、油断は禁物だ。もちろんこの5人には、この注意は不要だと思うが、一応伝えておく。全員が頷いたのが後ろからの雰囲気で分かった。
『両チームとも準備できたので、これより試合を開始します! では、始め!』
チームの紹介は、競技場に入ってくるときにすでに言っていた。そのため司会の女性はスタートの合図をした。それを聞いて、会場が盛り上がる。
さすがに銃を使うと、殺す恐れがあるのでこの試合では使わない。この大会では剣で挑むつもりだ。
相手チームの前衛4人が剣を抜いて走ってくる。4人ともそれぞれ片手剣に盾を構えている。後衛の魔法使いらしい2人は、詠唱を始めていた。ただし周りがうるさいため、何の魔法を放ってくるか分からない。
「悪い、抜け駆けする」
「えっ! ちょっと!」
そう言うと、ヴェーヌは止めようとするが、その前に走り出す。今は身体強化は使わない。
相手4人はこの行動に驚いたらしく、一瞬動揺するがすぐに気持ちを切り替え、一気に迫ってくる。さすが冒険者だ。
相手の攻撃範囲に入った瞬間、真ん中の男性冒険者が真横から剣を叩きつけてくるが、エルフの郷で身に着けた身体強化を使ってギリギリでかわす。
ステータスと身体強化が合わさって、俺の姿はぶれたように見えただろう、
前衛の人が振った剣は、何もない空中を切り裂いた。
避けるタイミングを狙っていたかのように、避けた先にいた男性冒険者が剣を斜めに振り下ろそうとする。
だが剣先は少しぶれていた。表情も驚いたものだった。どうやら俺の速さに驚いたようだ。
もちろん、当たるのを待つわけはない。右足を軸にして左足で蹴る。身体強化をしているため威力が強く、男性冒険者は後ろに盛大に吹き飛んだ。あまりにも飛びすぎたため、後ろにいた女性魔術師を巻き込んで倒れた。
そんなものでは死なないと思うが、怪我は絶対しているだろう。
「うそだろ……」
最初に攻撃をしてきた男性が、飛ばされた男性を見て驚いていた。
一度体勢を立て直すため、相手選手から離れる。足に身体強化をかけているので、3メートルは後ろに跳んだ。だがこの時に後ろの確認を怠った。メルクールを巻き込む可能性があったからするべきだったのだ。
俺が後ろに跳んだ時、相手側の後ろから前衛の3人の頭上を飛び越え、魔法が飛んできた。飛んできたのはウォーターバレットだ。死にはしないが、当たり所に悪かったら、大けがはするだろう。
当たりそうになった時、俺をかすめるように後ろから火の玉――ファイヤーボールが飛んできた。ファイヤーボールの方が威力が強かったらしく、ウォーターバレットを蒸発させ、そのまま相手側の魔術師に当たる。
魔術師は盾の魔法を発動させていた。しかしその盾の魔法はすべての威力を防ぐことはできなかったようで砕け散る。その爆風で魔術師は後ろに飛んで行って、一段下がている砂地へと消えて行った。
後ろを見ると、シュティアがどや顔をしていた。ときどきだがシュティアは、雰囲気からしてやらないであろう表情をするので面白い。
俺はうなずくと、シュティアははにかんだ。
そうこうしている間に、追いついたメルクールとヴェーヌが戦闘を始める。男性3人は1人と2人に分かれていた。1人はヴェーヌへ、2人はメルクールに攻撃を仕掛けた。俺は大丈夫だと思ったので、観戦する。
相手3人は最初、何とか攻撃を防いでいたが、メルクールの持ち前のスピードと、ヴェーヌの鋭い突きであっという間に倒される。
『勝者は、どこが愉快かわからない、『愉快な人達』に決定いたしました!』
「すごい! このチーム、今回の優勝候補になってもおかしくないぞ!」
「今回の大会は、一段と面白くなるぞ!」
観戦者が先程の戦いを見て盛り上がる。
それを聞きながら、俺はリングに出てきた入口へと戻っていく。その後ろをシュティアたち4人が付いてきた。
「皆さん、おつかれさまでした」
「ああ。おつかれさま」
控室に戻り外に出る支度をする。と言っても、鎧などの装備を外すぐらいで、対してすることは無い。支度をしている最中にヴェーヌが声を掛けてきたので、返事をする。
「ウーラ以外よかったぞ」
「あら。シュティアちゃんに出番持っていかれただけなのだけれど?」
「じゃあ、明日に期待する」
「またレイ君が抜け駆けして、シュティアちゃんが魔法を撃って、メルクールちゃんとヴェーヌちゃんが残党狩りするんでしょ?」
俺の言ったことに不満を持ったらしいウーラが膨れる。いつもはクールだが、時々子供っぽくなる所があるので面白い。
「はいはい。明日はウーラも頑張りましょうね。はい、おやつ」
「そうやって、私をすぐ子ども扱いするんだから。お菓子は貰うけど……」
いい子いい子と頭を撫でた後、作ったクッキーを与えると、ウーラは膨れながらもクッキーは受け取った。もはやどちらが大人か分からない。その様子をシュティア、メルクール、ヴェーヌがなぜか羨ましそうに見ていたが、放っておく。
支度が終わったのでカナをつれて、闘技場の外に出る。
お昼ごろのため、屋台はどこもかしこも混雑していた。インベントリから銀貨と銅貨を数枚ずつ出して4人に渡し、それぞれ好きなものを買うように言う。4人は嬉しそうに、思い思いの方向に駆け出して行った。
その様子を見てから、近くのベンチに腰掛ける。そしてインベントリから、先に買っておいた食べ物を出して食べ始める。買っておいたのは、パンにソースを絡めた麺を挟んでいる焼きそばパンのようなものだ。おいしそうだったので、今度試しに同じようなものを作ってみようと思った。
カナは俺の隣で座っている。コップに入れた飲み物を渡している。
飲まないのは分かっているが、他の人から見たら大人だけ食事をして、子供の意は何も与えていないように見えるからだ。
先程試合に出ていたので、時々こちらを見る人はいるが、声はかけてこなかった。
ゆっくり味を楽しみながら食べていると、シュティアたちが食べ物を買って戻ってきた。シュティアとヴェーヌはクレープのようなもの。メルクールは肉を串にさしてタレで焼いたもの。ウーラはサンドイッチもどきを買ってきていた。
太ると文句言っていたヴェーヌが、次の日にはクレープを食べている。どうなっても知らない。
2人ほど、昼食ではなくお菓子類に入りそうなものを食べている人がいたが、特にこれといったことがなくもなく昼食を取り終えた。
午後も他のグループの試合が次々と行われる。その様子を観客席から見る。圧倒的な強さを持つグループはいくつかあった。優勝を狙うとすると、これらのグループと当たるので、負けることは無いと思うが気を付けておきたいと思った。
こうして大会初日は終わった。大会は3日間行われるため、その間ずっと街は賑わっている。何事もなく予定通り進めば1日目が第1試合、2日目が第2・3試合、3日目が準決勝と決勝戦が行われるそうだ。
武道会初日の夜は早く寝て次の日に備えることにした。慣れないことのため、4人ともかなり疲れていそうだったからだ。
俺は、疲れていなかったので、インベントリから本を取り出して読み始める。これはエルフの郷から貰ってきたものだ。エルフの郷では、本はそれほど貴重なものではない。紙はあるうえに、本を写す人――エルフなんてたくさんいる。
エルフは長生きをする。そのため、どうしても暇になってくるので、暇つぶしで本の内容を手で写す人がいるのだ。
そしてそのようなものをヴェーヌが貰い、「少しでもいいので、知っておいてください」とすべて俺に押し付けてきた。よく見ると1冊1冊がかなり分厚い。そして重たい。そんなものが20冊。
エルフは、よくこんなものを書いたなと思った。
貰うときに、ヴェーヌは読まないのかと尋ねると、思いっきり目をそらされた。ヴェーヌはどうやら本を読むのが苦手のようだ。
貰った本は、全てかなりのページがあり、押し受けてきたのがエルフの郷を出る少し前だったので、読む時間がなく、ページがほとんど進んでいない。
持ってきた本のうち、今読んでいる本は、各国の特徴やこれまで行われてきたことを詳細に書いている本だ。
そして今読んでいるページは、アルール王国についてのことが書かれている。アルール王国は召喚者支援国家ではない。理由としては、南に存在する帝国が関係している。
簡単に言うと、圧力をかけられているそう。詳しく言うと、最終まで鍛え上げられた召喚者よりは弱いが、初期の召喚者より強い人が何住人もいるため、守ってもらえるようにしているといった方がいいだろう。
アルール王国は、南に存在する帝国の影響を受けており、強ければ亜人でも歓迎されるそうだ。だがそれはすべての人には浸透していない。一部、王を変えろと言っているものがいるほどだ。
もちろんそんな者は殺されるが、人数が人数のため放置されている。
「今日はこの辺でいいか……」
眠気が来たので、本を読むのをやめることにした。多分だが、今度読むときもこの辺りを読まなければならないだろう。頭に入ってこなかったからだ。
本に紙で作ったしおりを挟み、インベントリにしまう。
カナの方を見ると、すでに寝ていた。正しくは寝ているのに近い状態だ。というのも、電源が落ちているわけではない。人と同じ様に、今日一日で得た情報を整理しているのだ。
俺は本を読むために発動させていた暗視のスキルを切り、布団に入る。
次の日。朝起きると、俺の部屋には誰も来ていなかった。部屋を見に行くと、よほど疲れているらしく寝ていた。本日の試合はお昼頃からなので、寝かせておくことにした。
4人が起きるまでこの部屋にいてもいいのだが、4人が起きると騒ぎそうなので、部屋に戻ることにした。
特にシュティアが騒ぎそうだ。
4人が起きたことがわかるようにカナを残して、俺は寝ていた部屋に戻り昨日読んでいた本の続きを読む。
「お兄ちゃん。4人が起きましたよ」
「わかった。ありがとう」
いつの間にか、カナが部屋に戻ってきており、こちらを見て声を掛けてきた。呼びに来てくれたことにお礼を言っておく。
驚いたことにカナの服装が変わっていた。黒いワンピースにカチューシャをしている。ロリコンというわけではないが、無茶苦茶かわいい。どうやらヴェーヌが着替えさせたようだ。
「カナ。似合っているぞ」
「ありがとうございます。お兄ちゃん」
カナが嬉しそうにお礼を言う。しかしその表情は相変わらずの無表情だ。今は感情がきちんとないのだろう。きちんと話して、少しでも感情豊かになるようにしたい。
朝食をとるため、カナと一緒に4人を呼びに行くことにした。といっても、お昼に近いため、朝食ではなく昼食と言った方が正しいだろうか。
「朝食を食べに行くぞ」
「少し待ってください」
ドア越しに朝食を食べに行くことを伝えると、返事が返ってきた。声の感じからヴィーヌだろう。待ってと言われたので、2人並んでドアの正面の壁にもたれて待つことにした。
「お待たせしました」
「ずいぶん時間かかったな」
待っていると、ヴィーヌを先頭に部屋から4人が出て来た。シュティアとウーラは目を擦りながら出て来たが、髪や服装はきちんと整っているので、ヴィーヌが手伝ったのだろう。メルクールはきちんと起きており、顔がすっきりしていた。
「朝食だが、食堂はもう使えないだろう。外に食べに行くぞ」
「わかりました。ほら、シュティアさんとウーラさん行きますよ」
外で食べると言うことを伝えると、ヴェーヌがシュティアとウーラの手を引いてついてくる。メルクールはきちんと1人で俺の後ろをついて来ていた。
街に出ると、もう2日目の試合が始まっているらしく、賑わっていた。また、昨日と同じく露店がたくさん出ていた。さすがに朝食として露店の食べ物では物足りないので、武道会の会場近くにある店に入る。
ベーコンのような薄いお肉を焼いたものに野菜のサラダ、パンにコーヒーのような物を飲んだ。コーヒーのような物は黒色で、この世界では砂糖が貴重なため、入れていなかった。そのため苦かったが、おいしかった。
シュティアとメルクール、ヴィーヌには苦すぎたようで飲むのをやめていた。ウーラにとってはおいしかったようで、3人の分を飲んでいた。
腹を壊しても知らない。
食べ終わった後は、武道大会の会場へ向かう。ついた時には、とっくに試合が始まっていた。2回戦目だけあって、それなりに強いチーム同士の戦いだった。どちらも前衛、中衛、後衛が2人ずついるバランスのいいチーム編成だった。もちろん、俺が本気を出せばすぐに壊滅するのは間違いない。
10分近くたってようやく決着がつく。ここに来る前から試合を行っていたため、もっとかかっているだろう。
その次の試合は残念ながら、片一方のチームが棄権してきていなかったため、試合が行われなかった。観戦者はブーイングを行っていたが、仕方ない。
棄権を行ったチームは何かしらの理由があったのだろう。不戦勝側はどこかの貴族だった。騎士団に入るつもりで参加しているのだろう。
そしてついに俺たちの試合の番になった。もちろんカナは準備室で静かに待って貰っている。
「今回はウーラもきちんと参加しろよ」
「あら? 出番がなかっただけなのだけれど」
「はいはい、そうだな」
通路を進みながらウーラとそんな会話をする。適当に返したため、ウーラは頬をお餅みたいに膨らましている。ついつい押したくなるが、それをしてしまうと本当に怒らせてしまうので、やめておく。
シュティアは人前が苦手なので、相変わらず固まっている。
リングに出ると、盛り上がっていた。先程は片一方のチームが棄権になって試合が無くなったが、この試合はきちんと行われるため、観客はうれしいのだろう。
毎試合の通り、両チームの簡単な説明が終わったので試合が始まった。相手は剣士2人、拳闘士2人、魔法使い2人の全員男性のチームだった。結論を言うと、こちらが勝った。
相手チームは1回戦を突破しただけあって強かったが、こちらは力がおかしい人の集まりなので勝ってしまった。
俺は4人に仕事をあげるため、試合中は後衛付近から観戦していた。もう少し上の試合になれば、それなりに強い相手が出てくると思ったのもある。メルクールとヴェーヌは相変わらず強かった。1人で2人を相手にしていた。もちろん俺が本気を出せば前衛の4人が同時でも簡単に倒すことができる。
はずだ……
「ファイヤーボール!」
ウーラは器用に魔法使い2人の相手を行っていた。ウーラはシュティアと同じように何も言わずに魔法を撃つことができるそうだ。しかし気合を入れるためと、少しでも威力を上げるためにきちんと魔法の名前は言うようだ。シュティアとは違う。
魔法使いの戦い方は、魔法の打ち合いというとても地味なものだ。だが、後ろから見たら綺麗な魔法が飛んでいるように見える。
以前シュティアとウーラにそのことを言うと、魔法使いを舐めるなとだいぶ怒られた。その時に時間があれば、本気を見せて貰えるよう頼んでおいたので楽しみだ。
ちなみに、こちらは3人で相手6人と戦っている。こちらが3人ということは、俺以外に1人余っているということだ。その余りの人がシュティアだ。
シュティアが戦うとウーラの出番がなくなるので待機してもらっている。そのためシュティアは、ただ戦いを見ているだけだ。あまりにも暇そうだった。
そう思いながらシュティアの方を見ていると、不意に目が合った。気が付いたシュティアは、こちらに近づいてきたかと思うと、腕を絡めてきて体をくっつけてきた。試合中のためシュティアの頭にチョップを入れる。
痛かったようで、シュティアは頭を抱えてその場にうずくまる。
なぜだか知らないが、相手からの攻撃が一気に激しくなった。よく見ると、相手の男性6人は、すごく怒った顔でこちらを睨んでいた。メルクールとヴェーヌが一瞬押されたが、すぐに立て直した。
俺は何もしていないはずだ。いや、何もしていない!!
いろいろあったが無事に勝った。退場するときにブーイングが起きたが気にしない。世の中気にしたら負けの事もあるのだ。
「零さんとシュティアさん、そこに正座して下さい」
顔は笑っているが、目は笑っていないヴェーヌに言われ、俺とシュティアは待機室の床に正座していた。ウーラとメルクールはヴェーヌの後ろで怒っていた。俺とシュティアのせいで押されかけたためらしい。
カナは備えつられている椅子に、ちょこんと座って、こちらを見ているだけである。安定の無表情で。
「俺は何もしていない」
「……私も、何も、していない」
「二人ともしていましたよね? 試合中にもかかわらず、イチャイチャしていましたよね?」
俺とシュティアの言葉でヴェーヌはこめかみにしわを付けながら笑う。目は相変わらず笑っていない。いや、むしろ怒っていた。背後に般若が見えた。
「……悪いのは、レイ。こっちを見てきたから」
「お前が近づいてきたのが悪いのだろ!」
「2人は子供ですか……」
シュティアが俺に罪を擦り付けてきたので、擦り付け返す。その様子をヴィーヌはあきれた顔で見ていた。そして、メルクールとウーラは頭を抱えながら俺とシュティアを見ていた。
いろいろあったが、結局許してもらえたので待機室を出る。暇だったので、試合を少し見ていくことにした。なかなかおもしろかった。
俺たちの次の試合は、本来なら今日だったが、運営側の予想より一試合の時間が長くなり、予定が遅れたため明日になった。このようなことは毎度の事らしい。ついでに調べたが、明日の試合で当たるチームは、貴族のお嬢様や坊ちゃんで構成されたチームだ。前衛中衛後衛それぞれ2人ずつのバランスのいいチームだった。
2日目の大会も終わり、夕食をとるため良さそうな店に入る。明日は早い時間帯に試合があるため、4人にはお酒を飲ませない。
食べたものは、カルボナーラもどきだった。この世界にしかない素材を使っていたので、地球のカルボナーラとは違った味でおいしかった。時間があるときに作ってみようと思った。ただ、材料が何か全く分からないので、その辺は似たもので試しながら作るしかない。
夕食を食べ終わったので宿に戻る。いつ大会が終わるか分からないので、毎日お金を払うようにしている。
シュティア達の泊まる部屋に戻って、いつも通りシュティアに魔法で綺麗にしてもらった。お湯を使って体を綺麗にするのもいいが、面倒なのでやめておく。
部屋はカナと俺の2人部屋と、シュティア達4人組の4人部屋に分けているので、シュティアの魔法できれいにしてもらった後は、カナとの2人部屋に戻る。
今日はさすがに疲れていたので、部屋に戻るなり、すぐに布団に入る。
もちろんカナが布団に入ったのを確認してから電気を消した。
電気は枕元にある、ホテルなどにあるようなキノコ型の照明だ。
魔道具のつまみを回したら消える仕組みになっていたので、つまみを回して電気を消す。
俺は目を閉じるとすぐに眠ってしまった。
凄く今さら感が出ていますが、もしよろしければ感想や誤字脱字の報告をよろしくお願いします。




