第25話 冒険者登録と仕事
エントリーしたついでに冒険者ギルドに向かう。理由は冒険者登録をするためだ。
といっても目的は、魔石や魔物の部位を売った時に価格を普通より少し上げるためだ。
前の街、ウィーンで登録してもよかったが、いろいろあったため登録できないでいた。ヴェーヌが乗りきだったことも、今回登録するきっかけにもなった。
本人曰く、異世界に来たのなら冒険者登録はしたいとのこと。今まで何をしていたのか聞くと、目をそらされた。嫌な思い出も含まれているみたいだったので、深くは追及しない。
「すみません。登録お願いします」
冒険者ギルドのカウンターに向かい、女性職員に話す。武道大会と同じように、名前を紙に書き返す。カナの分はさすがにしなかった。やったとしても止められただろう。
女性は少しお待ちくださいと言うと奥に向かう。どうやらそこでいろいろと手続きをしているようだ。少し待っていると手続きを終わらせたようで、木の板を5枚持ってきた。
「これがEランクであるという証拠のプレートです」
女性はそういうと、プレート――木の板を渡してきた。木には何やら番号が書いていた。
「この数字などは何ですか?」
「これはどこのギルドで、いつ登録されたかを表す数字です。他の地域に行ったとき、向かった先のギルドで、手続きが簡単にできるように、配慮されて刻んであります」
気になって聞いたところ、ここの支部の番号であり、いつ登録したかを表しているようだ。さらに受付の女性は説明を行う。木が汚れたり腐ったりしそうだったが、魔法がかかっているらしく心配はいらないとのこと。
魔法便利すぎ……
また、板はランクによって素材が変わっていくようだ。素材の話より、まずはランクについて。
ランクにはS・A・B・C・D・E・Fの6つがある。このランクは、商業ギルドなどの他のギルドでも同じように6つあり、S~Fまであるのは同じだが、システムは少し違う。唯一同じところは、信用度ととらえることができると言うことだ。例えどれほどいい成績を残しても、信用がなければ上げてもらえないのはどこでも同じ。
冒険者ギルドではランクによってできる依頼が違う。
E・F・Gランクは下級ランクと言われる。仕事は基本的に薬草や、ゴブリンやスライムなどを狩るなどの簡単な依頼。Gランクは薬草や掃除、荷物運びがメインになる。よっぽどの事がないかぎり死ぬことは無い。よっぽどの事があって死んだ人はいるそうだ。例えば、ゴブリンを狩っているときに誤ってがけから転落したとか。
魔物を狩っている最中の転落死とか悲しすぎるだろ……
B・C・Dランクは中級ランクと言われる。仕事は、Dランクから護衛の仕事が可能になる。と言ってもDランクの冒険者はB・Cランクの冒険者と一緒でないと護衛はできない。また、Bランクになる際は試験を受けなければならないらしい。
S・Aランクは上級ランクと言われる。仕事はスタンビートと呼ばれる魔物の暴走が起きた際に、強制的に街の防衛を行わなければならない。またランクが上がる際はBランクになるときとは比べることができないほどの難しい試験を受ける必要がある。出てくる課題は様々で、中には無理だ! と叫ばずにはいられないような課題があったりする。
討伐系の依頼を受けた際、魔物の部位などを持ってくる必要がある。ギルドカードに記録されるという優しい機能はない。
また、冒険者はランクにより次の依頼を受けなければならない期間の長さが決められている。Sランクなら6か月は受けなくてよい。期限が迫ると警告が行われ、過ぎれば凍結になる。解除するためには、専用の依頼を受ける必要がある。
そして年齢によって、どのランクまでしか行けないかが決まっている。Fランクになれるのは、どんなに頑張っても10歳から。また、Gランクに関しては、依頼を受けなければいけない期限が設けられていない。理由としては、小さい子がGランクにいるからだ。
場所は変わって、現在はレストランのような所で昼食をとっている。武道大会のエントリーと、冒険者登録で午前は終わった。昼食はそれぞれ思い思いの物を食べている。
俺はハンバーグのようなもの。ソースがポン酢のようなもので、ソースだと思って注文したが失敗だった。
シュティアはサンドイッチ。どうやらエルフの郷で作ったものが気に入ったらしく、ここでも食べることにしたみたいだ。
ウーラは赤いソースのかかったパスタ。見た感じミートスパゲティーだろう。色がやや薄いが、気にしないみたいだ。
メルクールとヴェーヌはステーキを食べている。
カナはジュースとデザートを頼んだ。もちろんこれは偽造のためだ。何も頼んでいなかったら怪しまれるから頼んだ。後で誰かが食べることになっている。
「どうした、シュティア?」
「……交換して」
「なぜ?」
「……思ったのと違う」
シュティアは難しい顔をしながら、サンドイッチの乗ったお皿を押し付けてきた。ため息を付きつつ、交換する。食べていたハンバーグはまだかなり残っていたので、シュティアなら、満腹になるだろう。
シュティアの食べていたサンドイッチは、確かに思っていたのと違う。原因はソースだろう。ソースがあまりおいしくなかった。そのため全体の味が落ちていた。ソースが違っていたらおいしかっただろう。
と言っても食べることができないほどひどくはなかったので、完食する。
交換したため、ハンバーグを食べているシュティアの方はかなり満足していた。よほどおいしかったのだろう。
「うーっ……絶対にまた太ります……」
食べ終わり、外に出て歩いていると、ヴェーヌがおなかを押さえながら唸っていた。どうやら減量のため食事制限をしているにもかかわらず、ついつい食べ過ぎてしまったそうだ。見た目は太っていない。
しかし本人は気にしているらしく、落ち込んでいる。外見は蜥蜴人だが、中身は人間の少女。そのため外見には意識してしまうのだろう。
「で、なぜ俺が原因だ」
「零さんが、エルフの郷であんなにおいしいお菓子作ったからです!」
会話の途中で「零さんが原因で太った」と言い出したので尋ねた。俺に原因があるとは思わない。
「訳が分からん。俺は食べたいから作った。お前に食べてもらうために作ったわけではない」
俺は自分で食べるために作ったことを伝える。ツンデレ交じりのような気がしたが、きにしない。
「だったら、私がいない時に食べてください!」
「いつも俺が食べているときに、お前が来ているのだが……」
「じゃ、じゃあ隠してください!」
「匂いで分かるだろ。わかったらわかったで、食べさせてと言うと思うが?」
「うっ……」
俺の言葉にヴェーヌが顔を引きつらせる。どうやら正解らしい。
ヴェーヌは放っておいてシュティアを見てみると、やや落ち込んでいた。昼食のサンドイッチもどきの事をいまだに後悔しているようだった。
「今度、気が向いたら作ってやるから落ち込むな」
「……! 本当!?」
「そんなに気に入っているならな」
そう言うと、シュティアは嬉しそうに微笑んだ。
ヴェーヌとウーラの方を見ると、二人とも幸せそうな顔をしていた。それぞれ食べたものがよっぽどおいしかったのだろう。カナは無言でひたすらついてくるだけだった。
午後は暇だったため、冒険者ギルドによって依頼を受ける。朝と夕方は帰ってきた冒険者であふれかえるそうだが、今はかなりすいている。
椅子に座ってこちらを見てくる冒険者もいるが、気にしない。
現在はGランクのため、簡単な依頼しか受けることができない。シュティアとメルクール、ウーラは近くのテーブルに座って話をしている。カナもそこに一緒にいる。
依頼を見ているのは俺とヴェーヌだ。シュティアに任せるとどんな依頼を受けるかわからないし、メルクールならしょっぱなからドラゴンを倒しに行こうと言いそうだ。ウーラはどうなるかわからない。カナは依頼を持ってこなさそう。
結果、俺とヴェーヌが選ぶことになった。
「これなんてどうですか?」
「薬草を集める仕事か」
依頼を張っている掲示板を見ながら何を受けるか相談中。そしてヴェーヌがよさそうなものを見つけたのでそれを見てみる。内容は薬草集め。主に治療に使われる薬草を集めるみたいだ。
そして生えている場所は空き地や森。空き地にあるということは、街の中で安全に、かつ簡単に集めることができるということだ。そしてこれは常に依頼されており、決められた薬草を決められた量だけ持ってくれば、それだけでお金がもらえる。
だが俺はためらった。なぜなら――
「だめだ。これは小さな子が安全にお金を稼ぐことのできる仕事だからしない」
俺はそう言って新たな仕事を探す。目線が気になったので、横を見るとヴェーヌが驚いた顔でこちらを見ていた。
「なぜそんな顔をしている」
「まさか零さんが、そんなことを言うなんて思いもしなかったので」
「どういうことだ?」
尋ねると、ヴェーヌは驚いた顔のままそんなことを言う。
「零さんなら、『早くランクを上げることを優先する』なんていうと思ったので……」
「確かにそんなことを思っているが、俺は小さい子の仕事を残すことを優先する」
ヴェーヌの考えを訂正して、再び掲示板を見る。
しかし数秒もしないうちに再び視線を感じた。しかも先ほどとは比べ物にならないほどの……
うしろを振り返ってみると、ギルドにいる受付の人や冒険者たちに見られていた。しかも微笑まれていた。どうやら新人のパーティーが気になって意識をこちらに集中していたようで、俺の言ったことが聞こえていみたいだ。
「……ゴブリンを狩りにいくぞ」
あまりにも恥ずかしくなったので、冷静にそういうとギルドから出て行った。その後ろを笑顔の4人と無表情のカナが付いてくる。
街を出て森に入ると、ゴブリンを狩る。ここには6人で来ている。さすがにカナだけ街に置いてくるのはどうかと思ったからだ。
ギルドで味わったことを脳内から消すために蹂躙する。見えたゴブリンを倒していく。このままではこの森からゴブリンが1匹もいなくなりそうな勢いで。
バンッ! バンッ!
「零さん……。無表情で敵を倒さないでください……」
「笑顔だが?」
「どのみち怖いです!」
ヴェーヌが横でうるさいが放っておく。そして倒したゴブリンも放っておく。俺にはしなければならないことがあるのだ。俺の記憶から、先ほど生暖かく見られた光景を消すという作業が。
狩っているうちに森の深くまで来てしまった。今はメルクールと俺の2人きりだ。残りの3人――カナを含めた4人は少し戻ったところで待機している。シュティアとウーラは疲れたと言って休憩しており、ヴェーヌはカナを見ておくために残った。
木と木の間にゴブリンの集落が見えた。
「どうします? やっちゃいますか?」
メルクールが俺の方を真顔で見ながら訪ねてきた。しかし目はきらきら光っていた。よっぽど体を動かしたいようだ。
俺は苦笑いする。
「別にいいぞ」
俺の方は良かったので、メルクールに譲ることにした。俺の言葉を聞くや否や、駆け出して行った。そのあとはゴブリンの悲鳴しか聞こえなかった。
さすがにそのままにはできないので、シュティアを連れてきて、魔法で家やゴブリンの亡骸を言葉の通り灰にした。
焼き払った理由としては、そのに新たな魔物が済まないようにするためだ。
その後、街に戻って冒険者ギルドに向かう。かなり倒していたために、あまりにも長くかかりすぎた。
「ずいぶんかかりましたね? 大丈夫でしたか?」
「少しですが、いろいろあったので」
「これで手こずっていたら、今後が大変ですよ?」
「頑張ります……」
案の定、受付の女性の人に心配された。俺は苦笑いしつつ答える。森の中でゴブリンを80匹近く買ってきたなんて言えない。
その後も早くランクを上げるため、猛スピードで仕事の依頼を行いに行ったり報告しに来たりする。1番下のランクなので、とても簡単な仕事だった。
荷物の運搬などは行っていない。すべて魔物を倒す仕事をした。
頑張った結果、半日でFランクに上がった。受付の人が少し驚いていた。半日でGからFに上がるのは珍しいようだ。
「明日から大会があるが、どうする?」
「どうするって、どういうことですか?」
「観戦するかどうかだ」
現在は夕食を取り終えたので、部屋で明日の事について相談している。出場する時間帯は、遅いためそれまでどうするかという会議だ。尋ねたが言葉足らずだったため、ヴェーヌが尋ねてきたので言葉を追加する。
「もちろんしますよ。相手の力を知るためにも」
「力を知らなくても、ここにいる奴は全員大丈夫だと思うが……」
ヴェーヌが答えてきたので、俺は思っていることを言う。ここにいるメンバーを見る。使えない魔法がないのではと思ってしまいそうなシュティア。圧倒的なスピードを使い近接で攻める獣人のメルクール。槍を自由自在に操り、敵を薙ぎ払う蜥蜴人のヴェーヌ。魔法のプロと言っていいエルフのウーラ。獣人とエルフ達に魔改造された俺。はたして負けるだろうか?
同じことを思ったらしく、4人も苦笑いする。カナは話の内容についてきていないようで、きょとんとしている。
「せ、せっかくなので見ましょうよ!」
場の空気に耐え切れずメルクールが言葉を発する。
本当なら出場時間までギルドで依頼を受けて、ランクを上げようかと思っていたが、途中で他の人の動きを見たいという意見が出てきたので見ることになった。
最終的に、観光のような意味合いもかねて見ると言う意見で決まった。どのような試合を見れるか楽しみであると4人が話し始め、俺はその様子を静かに見ていた。
話がひと段落したので、いつも通りに俺とカナ、シュティア達の4人の2部屋に分けているので解散する。
部屋に戻った俺は、寝る準備をおこなって、部屋の電気を消すと布団に入った。カナはすでに布団に入っていた。
もちろん俺は今夜4人が来ないように対策を――
することができないので来ないように祈りながら眠った。
修正作業が終わったので、投稿を開始します。
修正内容は、話を2つに分けた。新たな話を割り込み。説明の追加。登場人物紹介での追加。誤字脱字の訂正です。
詳しいことは活動報告の方に乗せさせていただきました。
この度はご迷惑をおかけしました。申し訳ございません。今後はもう少し気をつけながら投稿したいと思います。ですが、再びこのようなことをするかもしれないので、その時はどうかよろしくお願いします。
早速、ゴブリンを倒しているところを変更しそうな感じですが……




