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エルフの郷

エイプリルフールのネタだと思った方、すみません。普通の話です。


エイプリルフールの話など、特別な話はもう少し進んでから出したいと思っています。

魔法陣が再び地面に何事もなかったかのように消えていく中、誰かが入口から入ってくるのが分かった。


「誰だ!」


 そう言いながら入ってきたのは、男性を先頭に男性3人女性3人だ。全員装備をしているが皮装備。

 魔法陣はエルフの郷につながっている。そのためそこにいる6人は必然的にエルフとなる。


 言わなくてもいいが、洞窟に入ってきた奴は全員エルフで「どこのアニメだ!」と言いたくなるぐらいの美形である。やっぱりエルフって男性も女性も美形しかいないなと思ってしまう。


「私よ」


 ウーラがそう言い進み出る。その姿を見た男性の1人が驚きの表情をする。その後すぐに怒りの表情になった。


「ウーラ! なぜ人間を連れてきた!」

「あら? だってこの人が郷に用があるって言っていたわよ? てっきり伝わっていると思ったのだけれど」

「そんなこと聞いてないぞ!」

「おかしいわね……」


 二人が言い争いを始めた。

 俺は話の内容を聞いて不自然に思う。本当ならとっくの前に獣人からエルフに、俺が郷に向かうことを伝えられているはずだからだ。


「ともかくこの人間は来た以上、この場で殺す!」


 先程の男性がそういった瞬間、エルフが戦闘態勢に入る。あるものは術式を唱える準備に入り、あるものは弓を構える。こちらもあっさりと殺されるつもりはないので、俺とメルクール、シュティアも戦闘態勢に入る。

 シュティアは魔法を使う準備を行い、メルクールは鞘からダガーを取り出した。俺はインベントリから大口径のリボルバーを取り出す。

 リボルバー型の銃は獣人の所で作ったものだ。ハンドガンよりはまだ作りやすかった。


 ウーラは必死に止めようと、ヴェーヌはどうしていいか分からエルフの方と俺の方を交互に見ている。


 後はどちらかが戦闘を仕掛けるだけとなった時、入口から1人のエルフが走ってきた。若い男性だ。

 こいつも美形かよ! それよりもまた敵が増えた。


「待ってください隊長! 長老会の方々がその人間を呼んでいます!」

「なに? 長老会の方々が?」


 俺が心の中で新たに洞窟内に入ってきたエルフに怒鳴っていると、報告を聞いた隊長が驚いた顔をする。長老会とはそのままの意味で、エルフの中でトップに近いエルフが集まっているのだろう。

 長老会と聞いたら、村の年よりの集まりを思ってしまう。


「ええ。なにやら大事なことを確認するとか……」

「こんな人間に、一体何を?」

「ともかく、長老会の方々が連れてこいとおっしゃっているので連れていきましょう」

「仕方ない」


 1人で会話した後、隊長と呼ばれた方がこちらを見ると、ついてこいという合図を送ってきたのでついていくことにした。しかしいつ攻撃されてもいいように、銃は俺取り出したままだ。


「2人は待っていろ」


 シュティアとメルクールにいうと、シュティアがやや不満そうな顔をするが納得したようだ。

 ヴェーヌとウーラはここで残るらしく、その場から動かない。



 外に出ると、いかにもエルフの郷である感が漂っていた。大きな木をぐるりと取り囲むように木製の家が建てられていた。真ん中の木は世界樹とかそんなものだろう。


 大きな木の近くに行くと、その木の大きさが分かった。大きいでは言い表せない。それほど大きかった。

 その木の根元にある大きな扉をくぐる。中は城の内部のようなものだった。木を外壁にし、その中を活用したのだろう。




「これから、長老会に顔を出してもらう。くれぐれも粗相の無いように」


 大きな木の内部にある迷路のような通路をどんどん進み、大きな扉の前で隊長と言われていたエルフは止まると注意をしてきた。

 俺はうなずく。それを確認した隊長と言われていたエルフは扉を開く。


 内部は大きい部屋になっており、中心部にはテーブルと椅子に座った9人のエルフがいた。外見は他のエルフとあまり変わらない。しかし、そこにいたエルフはここに来るまでに会ったエルフとは違う。表現するなら、そこに座っているエルフはとてつもないオーラを出していた。長い年月を生きたものしか出せないようなオーラだ。


「エリーヤ、ただいま外から来た者を連れてまいりました!」


 隊長――エリーヤさんが大きな声で報告する。しかし、その声には明らかに相手への恐縮な気持ちが入っていた。さらに体が少し震えていた。


「ありがとうございます、エリーヤ。下がっていいですよ」

「はっ! 失礼します!」


 真ん中に座っていた女性のエルフがそういうと、一礼して下がっていった。


「あなたがレイさんですね?」

「はい。俺が零です」


 落ち着きのある声で尋ねてきたので答える。周りのエルフから出ている雰囲気で、つぶれそうだった。

 ここに長時間いるなんて、冗談じゃない!


「獣人たちからはすべて聞いています。獣人達から聞いた通り、兵器を渡すために力をつけてもらいます」

「はい。獣人の長老方から、こちらで訓練を受けるよう言われました」

「知っているのなら話は早いです。早速、明日から訓練を受けてもらいます」

「分かりました」


 明日から訓練するようだ。俺は返事をしておく。

 洞窟でエリーヤさんが聞いていないと言っていたが、やはり獣人の方から連絡はあったみたいだ。うまく伝わっていなかったようだが、そこは触れないでおく。

 1つ気になることがあったので質問してみることにした。


「訓練の期間はどのくらいでしょうか?」


 そう、訓練の期間だ。俺は少しでも早く日本に帰りたいのだ。にもかかわらず、ここにいつまでも留まっているわけにはいかない。


「それは、あなたの努力次第です」

「分かりました。失望させないよう、努力いたします」


 エルフの女性は、まるで考えていたかのように答える。そりゃ強くならないと兵器を貰えないか……

 俺は返事をする。相手のオーラにやられて、ついつい丁寧に言ってしまったが、気にしない。

 下手をすれば一生でることができないかもしれないので、そんなことが起きないように頑張ろうと思った。


「いい結果が出るよう心から願っています。部屋から退出してください」

「失礼します」


 エルフの女性から退出の許可が出たので、一礼して扉に向かう。

 エルフの女性のまわりにいたエルフたちは一切しゃべらなかったが、たいして問題にはならないので気にしない。


 ドアに近づくと、外にいたエルフが扉を開く。外にいたエルフの雰囲気が礼をして出ろ!と言っていたので、退出時にもう一度礼をする。


「あーっ……疲れた」


 扉が閉まるとついついそんな言葉を出してしまう。そんな姿を見たエルフたちが苦笑いをしている。そんな時、エリーヤさんが近づいてくる。


「くくくっ。疲れたか」

「さっきまでの態度はどうしたのですか?」


 さっきまでの態度をやめ、気軽に接してくるエリーヤさん。

 逆に俺が警戒してしまう。


「さっきまでは知らない奴だったからな。だが獣人たちの知り合いで、尚且つハイエルフ様たちが信用した者だ。我々も信じる」

「さっきの方々がハイエルフ様か……」


 やはり、雰囲気が違ったのはハイエルフだったかららしい。もう二度と会いたくない。


「おっ! お前わかったのか?」

「ああ。明らかに雰囲気が違う。いつまでもあそこにいるのは無理だ」

「同感だ。雰囲気に耐えきれない」


 そんな会話をしながら、外に出る。移動中に聞いた話ではエルフの場合、みんな家族という意識があるらしく、仲がいいらしい。だからと言って上下関係が完全にないわけではないようだな。



 近くにあった店のようなところで昼食をとろうとした時、シュティアとメルクールと合流した。そのため3人で食事をする。食べたものは肉料理。きちんと肉料理もあってよかった。野菜だけとか絶対無理。


 午後はいろいろと見て回った。これからお世話になる場所なので、どこに何があるか大雑把にだが知る必要があるとのこと。

 やはりエルフの郷は広かった。


 1番驚いたことは、地下があること。どうやら地表の家はダミーらしく、基本的には地下の居住スペースで暮らしているらしい。地上はイメージ通り木製の家が多かったが、地下にある家は日本にあるような現代風の家が多い。

 聞いたところ、昔ここに来た日本人が発案して、地上に観光のためのダミーを作ったそうだ。

 なにしている日本人……



 エルフは魔法が得意というイメージがあるが、魔法で身体強化を行い、体術で敵を倒すこともあるそうだ。そのため、地下には住居スペースだけでなく、若いエルフを育てるための訓練施設もあった。


 また訓練施設の中には、内部が迷路のようになっている建物があり、その中にはいろいろなトラップがあるそうだ。ダンジョンのトラップを真似ているらしい。

 どうやらそれにもお世話になるらしいので、楽しみつつ技術を付けようと思う。



 その後もいろいろと見て回った。途中、兄弟のエルフが楽しそうに遊んでいるところを見た。その姿を見て、ついつい双子の怜の事を考えてしまって、悲しくなった。



 やはり地下の居住スペースは規模が大きかったので、途中までしか見ることができなかった。



 夕食は昼間とは違う店で食べた。その時には転移してきた時に、別行動をとったヴェーヌとウーラも一緒だった。ウーラは郷に残りヴェーヌはある程度滞在した後に郷を出ていくそうだ。


 夕食は昼食と同様で美味しかった。エルフは長い間生きるため、食事の美味しさは追及するそうだ。その後はこれと言ってすることがなかったため、地下の居住スペースにある家のうち、割り当てられた家に行く。割り当てられた建物は、一戸建ての建物だ。ここを出るまでお世話になる。


 驚いたことに、家にはお風呂があった。日本にあったお風呂と大して変わらなかった。お湯の温度を設定するとその温度になる。きっと、ここに来た日本人とエルフが協力して作ったのだろう。温めるのは魔法道具で行うようだ。


 この世界に来てからお風呂に入ったと言えば、レールン王国の王宮にあったお風呂ぐらいだ。その後は、体を拭くだけか魔法で済ませている。獣人の所にもお風呂はあったのだが、お風呂というより水浴び場と言った方が正しい。


 


 家に備え付けられていたお風呂から上がる。久しぶりのお風呂だったので、ゆっくりお湯につかっていたら遅くなった。

 長風呂することは想定していたため、先にシュティアとメルクールには入ってもらっていた。だが、ここまで長湯をするとは思わなかった。


 リビングにあった冷蔵庫の中からジュースを取り出して飲み、寝る準備をする。寝室は1人1つあった。寝室は2階にある。ちなみにリビングやお風呂は1階にある。

 感覚的に日本の住居と変わりないので、リラックスできる。


 シュティアとメルクールは慣れないようだったが。


 階段を上り寝室のうちの1つに入る。事前に相談して決めたので間違いはない。部屋の中は椅子と机、ベッド、本棚、収納棚という簡単な内装。


 ベッドに座って明日からの事を考える。気分は合宿で泊まる日だ。だがきっと言葉通り、明日からは地獄の特訓になるだろう。


「……レイ。起きている?」


 明日の事を考えていると、ノックが聞こえる。その後シュティアが顔をのぞかせ、尋ねてきた。もう寝たと思っていたが寝ていなかったようだ。


「どうした?」

「……レイ、途中、おかしかった。……だから、見に来た」


 シュティアが少し考えてから言葉を出す。俺のことで何か気が付いたのだろうか。もしかしたらあのことかもしれない。

 俺は予想をしながら、尋ねることにした。


「どういう意味だ?」

「……エルフの兄弟が、楽しそうに遊んでいるところを、見た時……悲しそうな表情だった」

「そうか?」

「……メルクールに会う前の、馬車の中にいた兄弟を……見ているときもそう」


 俺が尋ねると、珍しくシュテイアが一気に言葉を出す。何事もなかったようにふるまうが、2回ともばれていたことが分かった。ここまでばれていたら説明するしかなかったので、俺はなぜ悲しそうな表情をしたか説明することにした。


「俺には妹がいる。名前は怜だ。俺がここに来た時、怜は風邪をひいて家で寝込んでいた。そのためここには来なかった」


 ここの世界に召喚された日の事を思い出しながら、説明する。それなりに日は経っているはずだが、つい昨日の事かのように思い出す。シスコンというわけではない。お互い依存しているという言葉の方が正しいだろうか。


 どちらかが不得意なことはどちらかが得意。その逆もある。2人で1人と言っても不思議ではない。同じ学校の奴らも、それは思っていた。先生まで納得するほどだった。

 そのため、いざ離れ離れになると、相手の事を心配してしまう。


「……レイ。泣きたいときは、泣いていいよ」

「え……?」


 隣に座っていたシュティアが言葉を掛けてくる。

 説明しているときは気が付かなかったが、言われて初めて頬を涙が伝っていることに気が付いた。


 服の袖や手の甲で拭ったが、一向に涙は止まらない。女子の前で泣いている自分がバカらしく感じ、無理やり笑おうとしたが、涙は止まりそうになかった。再び服の袖で拭うが、一向に収まる気配がない。



 そんな時、シュティアがさらに近づくように座り直し、俺の頭を自分の胸に抱き寄せる。そして、母親のようにやさしく、静かに頭を撫でた。


 それが限界だった。俺はまるで小さい子供のように泣いた。泣き続けた。


 どのくらいたったか分からないが、泣いて疲れたのか眠気が襲ってきた。俺はシュティアに抱かれたまま目を閉じた。意識が無くなる直前、シュティアが何かを言っていたが、俺の耳には届かなかった。




 そして次に気が付いた時には朝で、シュティアを抱き枕のようにして寝ていた。


 朝食を食べているときにシュティアは、俺が一緒に寝ようと言ったため一緒に寝たと自慢してメルクールとケンカになっていた。


 一緒に寝たと言うより、俺がシュティアを抱き枕のようにして、シュティアが自分の部屋に戻れなかっただけなのだが……

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