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新たな連れ

馬に被害が行かないように歩いていると、かなり近づいた。


「ファングドッグの集団です。数はおよそ20匹」

「なんだそれ?」

「ファングドッグはファングドッグです。魔物です」


メルクールから聞いたことのない魔物の名前が出てきたため尋ね返すが、説明になっていない回答が帰ってきた。

まあいい。ともかく倒せばいいと言うことは分かった。


 ファングドッグの襲撃を迎え撃つための俺の掛け声に2人は答える。そしてそれぞれ行動に移った。


 メルクールはダガーを鞘から抜くと俺を超えるスピードで走っていく。馬に乗った2人の女性とすれ違ってファングドッグに接敵した瞬間、敵を切っていく。まるで踊っているように見える。ファングドッグの噛みつく攻撃に当たらないことはもちろんのこと、ファングドッグを切った時の返り血に当たっていないためさらにすごい。


 シュティアの方は俺と同じ位置から、ファイヤーボールを撃って外側から敵を倒して行っている。シュティアが魔法を放つと、魔法は赤い尾を引いて飛んでいく。

 それが魔物に当たった瞬間、ファイヤーボールは爆発して当たった魔物だけではなく、近くにいる魔物を巻きこむ。


 俺の方はインベントリから出した銃を使う。貫通力があるので時々だが一直線に並んでいた3匹ほどの敵が倒れていく。

 しかしボルトアクション式のため攻撃のスピードは遅い。その上メルクールが1か所での攻撃ではなく、行ったり来たりするので当たらないように気を付けて撃たなければならない。



 敵の数が少なかったと言うこともあるのか、戦闘が開始されてから少しするとすべての敵を倒し終えた。あたりは血の海という言葉の通りになっている。このままでは血の匂いに釣られて、別の魔物が森から出てきそうだったので、ファングドッグに追いかけられてきた2人の女性と少し離れた所まで移動する。


ちなみにだが、ファングドッグはドーベルマンに似た魔物だった。ただ背中からは2本の真っ黒な触手のような物が生えている。ただし触手は飾りのような物らしく、それでの攻撃はしないとシュティアから説明された。




 女性2人のそれぞれの見た目はトカゲのしっぽのようなものが生えた少女と、耳が長い大人の女性。耳が長い女性はエルフの女性だと予想が付く。しかし気になることがあった。

 トカゲのようなしっぽのようなものが生えた少女って何族だろう。


 ちなみにトカゲのしっぽのようなものが生えた少女は武器を持っていないため。エルフの女性は気を失っているために、戦闘中は2人とも後ろで待機していた。


 トカゲのしっぽのようなものが生えた少女は髪と目は両方とも茶色。目は少したれ目で、美少女まではいかないが優しそうな表情だった。髪は腰ぐらいの長さだろう。


 エルフの女性の髪は薄緑色で、腰まではありそうな髪はすごくきれいだった。顔はエルフというイメージ通り、整っており美人だった。目は閉じていたのでわからない。

 エルフと分かったのは、耳からだ。耳の先は尖っていた。


「すみません。ご迷惑をお掛けしました」

「大丈夫だ。別に問題はない」


 少女がお礼を言ってくるので大丈夫と伝える。馬は移動するときに、すでに連れてきているのですぐにでも出発できる。というよりすぐ出発したい。

 すぐに出発しようとした理由は「ついていっていいですか?」と尋ねてくるパターンが来そうだったから逃げるためだ。決して「来ないな」なんて思わない。思った瞬間フラグがたちそうだから。


「……ついて、来ない」


 シュティアがつぶやいた言葉を聞き取る。あまりにも小さいため、近くにいた俺しか聞こえなかっただろう。だが無視しておく。いろいろ突っ込みたかったが無視だ。


「これからどこに向かうのですか?」

「ウィーンに向かう予定だ」

「本当ですか!? 実は私たちもそこに向かう途中でした。ついて行ってもいいでしょうか? う――こちらのエルフさんがいつ目を覚ますか分からなくて困っていまして」


 俺がシュティアを見ると、シュティアは微笑んでいた。俺も作り笑顔になると、ゆっくりと手をシュティアの頭の上に持って行き乗せると、頭を握りつぶそうと指に力を入れる。

 痛さのためか涙目になりながら、腕をタップして降参の意思を示してくるシュティア。


 こんなことをしていても仕方ないので、ため息を付いて諦める。少女の方を見ると顔が引きつっていた。


「俺を信用していいのか?」

「どういうことですか?」


 俺が少女に尋ねると、逆に尋ね返された。そのままの意味だったのだが、伝わらなかったようだ。


「お前たちを売る可能性や、暴行する可能性を考えなかったのかと聞いている」

「だって、2人の少女がすでにいるのに私たちにそんなことするとは思いませんから」


 ため息を付きそうになった。だがこらえる。確かに少女が2人いたら少しは安心するだろう。


「じゃあ、もしこの2人も売る予定だったら?」

「……レイ……そんなこと、するの?」

「やっぱり人って最低ですね」


 俺が後ろに立っているシュティアとメルクールを指さしながらそう言う。するとシュティアはすごく悲しそうな、メルクールは軽蔑するような視線を向けてきた。

 なぜこんなに罪悪感を感じるのだろうか。


「……売らないから安心しろ」


 2人に売らないことを伝えるが、少女の方が疑問を持ったような顔をする。


「気にしないでくれ。それより街まで一緒に行くなら行くか」

「ありがとうございます」


 ため息を付いて渋々了承すると、蜥蜴人の少女はやや納得しないような表情だが、お礼を言った。また増えてしまった連れを見ながら俺はため息を付く。

 これ以上ついてくる人を増やしたくない。



「そういえば名前は?」

「私の名前はヴェーヌです。種族は蜥蜴人族です。こちらのエルフはウーラさんです。よろしくお願いします」


 一緒に行く間に名前を呼ぶときに困るといけないので名前を聞くと、少女はあっさりと教えてくれた。さらには種族まで教えてくれた。どうやら俺の目がしっぽに行っていたようだ。

 さすがに聞きっぱなしにするのは良くないと思ったので、こちらも名乗ることにした。


「俺は零。こっちはシュティア。……でこっちがメルクール」

「……よろ……しく」

「よ、よろしくお願いしまひゅ!」


 俺はそれぞれ指をさしながら紹介する。二人とも静かだと思っていたら、人と話すのが苦手なようだったようだ。シュティアは消えそうな声で自己紹介し、メルクールは挨拶のときに噛んだ。

 俺の名前を聞いた時、ヴェーヌが少し驚いた表情をしたのは気のせいだろうか?



「ところでヴェーヌ。武器はどうした?」

「落としちゃいました……」


 武器がなかったので武器はどうしたのか聞くと、ヴェーヌが困った表情を浮かべた。今はどうしようもないので諦める。インベントリにある鉱石を使って簡単なものは作れるが、作る際にスキルを見せることになるのでやりたくはない。


「ちなみにですが、ウーラさんは魔法を使うので武器は持っていませんよ?」

「だろうな。エルフは基本、魔法を使うからな」


 ヴェーヌが一応だが、ウーラは魔法を使うということを伝えてくれた。

 もちろんエルフの中では、前衛をするものがいることがある。また弓を使った攻撃を行うものもいる。


 なんやかんやで2人追加で入ったが、まさかこのまま最後まで付いて行くとか言わないだろうな……




 挨拶が一通り終わったので、馬に乗って移動を開始する。ここまで一緒に移動する人が多くなったら、馬車が欲しいと思ってしまう。


 ちなみに、エルフの女性は意識を失ったままだ。どうやら魔力を使い果たしてしまったようだ。エルフは魔力が人や亜人、魔族の中では一番多いと言われている。もちろん個人差はある。

 にもかかわらず、意識を失うのはかなりの量に追われていたことを指す。会った時にはファングドッグは少なかったので、かなり減らしたのだろう。


 意識を失っているエルフがいるため、あまりスピードは出せなかった。そのため無茶な進み方はせず野宿する。


 テントに関しては、人数分はないが交代で警戒をするため問題はない。

 見張りは4交代制。最初は俺。2番目はヴェーヌ。3番目にメルクール。最後がシュティアだ。ウーラは意識が戻らないのでパス。

 順番は話し合って決めた。相談した結果、しっかりとした時間が分からないので、交代は星を見て判断することに。


 いろいろと準備が終わったので、夕食をインベントリから出すと、ヴェーヌが驚いていた。そういえば、シュティアも最初見た時に驚いていたな……


食事中はたわいもない話をしていた。好きな食べ物であったり好きな服であったりと。結構盛り上がったようで、シュティアとメルクールとヴェーヌは仲良くなっていた。




 最初の見張りは俺と言うことで、すぐに3人は寝た。さすがに何もしないと眠ってしまいそうなので手を動かすため銃づくりをする。フルオートで撃てる銃を作れていないため、それの製作をする。もちろん仕組みはわかっている。

 しかし動作部分が難しく、なかなか思うようにいかない。作っては試し、作っては試しの繰り返しをしている。


 焚火の火だけでは暗いため手もとが見えづらく、結局作業を断念することになった。また今度続きをしよう。



 道具をインベントリにしまっていると、暗闇から何かが近づいてくる。暗いため何が近づいてくるかは分からない。ホルスターから銃を取り出して構える。待つ時間が長く感じる。


「その物騒なものを下ろしてくれ。攻撃はしない」


 そう声が聞こえてきたと同時に近づいてきた人が見える。フードをかぶっていたため顔がしっかり見えなかったが、声からして若い男性だろう。もう1人の方は判断できない。

 こんな暗闇の中、たいまつを点けないでよく歩け多と思う。


「驚かしてすまない。少し道に迷ってうろうろしていたのだ」

「そりゃこんな暗い所でうろうろしていたら迷いますよ」

「大丈夫だ。我々の目はいいから」


 どうやら2人は魔法か何かで視力を強化しているのだろう。もちろん俺はそんなことできない。するとしてもシュティアの協力が必要だ。


「我々はこれで失礼する。少し急いでいるので」

「そうですか。ですが気を付けてくださいね」

「人間よりは強いから大丈夫だ」

「人間……より……?」

「すまん。何でもない。それじゃあこれで失礼する」

「あ、ああ。気を付けて」


 そういうと2人はレールン王国の方向に向かって歩き出した。どうやら歩いて向かうようだが大丈夫だろうか。



「零さん。交代の時間ですよ」

「すまん。頼む」


 どうやら、交代の時間が来たようだった。起こしに行かなくてよかったので助かった。


 俺はヴェーヌと交代すると、テントの中に入った。布団にもぐると、あっという間に睡魔が襲って深い闇の中に入っていった。




「……レイ。起きて。……朝」

「もう少し寝させろ……」

「……起きないと……レイが私の、朝ごはんに……なる」

「起きます!」


 気持ちよく寝ていると、耳元でシュティアが吐息交じりでとんでもないことを言ってくる。そのため俺はあわてて起きることになった。きちんと動き出した思考で、先程シュティアが言った言葉を思い出し、シュティアをにらむ。シュティアは首を傾げた

 まわりを見ると、メルクール・ヴェーヌ・ウーラはまだ寝ていた。


「なあ、シュティア。お前さっきの言葉が言いたかったから、最後に回してと言ったのか?」

「……何の、こと?」


 シュティアはそう言いながら、俺に向かって嬉しそうに微笑むだけだった。それを見てため息を付く。

 今度からシュティアの順番は早めにしよう。


 メルクールとヴェーヌを起こして朝食にする。

 幸いなことに、ウーラも起きた。見た限り問題はなさそうだ。


 

「ご迷惑をお掛けしました」

「気にしなくていいですよ。ゴブリンに遭遇していたら倒したと思いますし」


 朝食をとっているときにウーラが誤ってきたので、大丈夫であることを伝えておく。ウーラは迷惑をかけたと思っており、かなり落ち込んでいた。


「それより大丈夫ですか? ケガはないですか?」

「大丈夫です。どこも問題はありません」

「それはよかったです」


 メルクールがたずねると、ウーラは微笑みながら答える。

 昨日のうちに体の傷はシュティアが治した。魔力は寝ている間に回復したのだろう。ちなみに魔力が枯渇すると意識を失う。


「そういえば、なぜファングドッグに追いかけられていた? 言いたくなかったら言わなくていいが」

「それは……とある場所に行く途中で遭遇したためです」

「とある場所? ウィーンとは違うのか?」


 俺の質問にヴェーヌが答える。とある場所を聞きたかったのでさらに質問すると、シュティアがジト目を向けてくる。本当は深く追求するのはマナー違反だが、どうしても気になったため尋ねる。


「ウィーンは途中で立ち寄るために行くだけで、目的地は違う場所です。詳しくは言えませんが」

「すまん。悪かった」

「気にしないでください」


 質問したが、やはり教えてはくれなかった。

 

「ファングドッグの集団には、ウィーンに立ち寄るため向かっている時に遭遇してしまいました。本来なら簡単に倒せますが、数が異常でウーラが魔法で攻撃して倒してもキリがありませんでした」

「で、逃げた先で私たちに会ったと」


 ヴェーヌがなぜ遭遇し、ウーラが意識を失うことになったのかを説明し、メルクールが話を引き継ぐ。そのことがあっていたようでヴェーヌが首を縦に振り肯定する。

 話は朝食を取り終える頃に終わった。大体の事はわかったので良かった。


 その後、俺は片づけをしている。自分1人で大丈夫と伝えているので、4人は話をしていた。シュティアが手伝いたいと言ってきたが、俺は大丈夫といい頭を撫でながら断っておく。シュティアが悲しそうな顔をしたからだ。我ながら甘くなってきている。

 信用するようには言われたが、離れるときに悲しむことがないよう深くかかわらない方がいいことは理解している。


 準備が終わったので馬に乗る。馬は4頭。人数は5人のため馬が1頭足らない。結局シュティアを俺の馬に乗せることにした。シュティアはどうも馬に乗ることが苦手らしく馬と息が合わない。メルクールとヴェーヌとウーラはかなり上手だった。3人ともそこそこ長い経験があるようだ。


 

 新たに増えた連れと一層にウィーンに向かう。道中は特に問題なかった。

 さらに馬に乗って移動しているということもあってか、昼前にはウィーンの門の入口が見えてきた。

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