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異世界への召喚

2019/03/17

あらすじにも書いてある通り、現在修正中です。

 地面と平行になるまで腕を上げる。標的を狙う。人差し指を曲げる。それだけで、金属の塊が音速に近い速さで飛び、生き物の命を取っていく。

 何度こんなことをしただろうか。薄暗い中を俺――京崎零(みやざきれい)はひたすら走りながらふとそう考える。


 もちろん考え事をしている暇などない。今は常に命の危険があるのだから……




 平日の最後の日。金曜日。

 皆、明日からの休日が楽しみで仕方がない。それは俺も同じだ。


「零は休日何をして過ごす予定だ?」

「何するって……新作の戦略系ゲームだと思う」

「お前そのゲーム好きだな!? あれか? 頭脳使うことが好きか!?」

「別に好きっていうことではない。あいつが戦略系ゲームが好きだから付き合っているだけだ」

「あいつって……(れん)か」


 机のまわりに集まり、休日は何をするかで友達とわいわいしている。俺には仲のいい友達がいる。みんないいやつだ。

 ただ、妹の怜が原因で少々付き合いが悪くなってしまっているが。



 話もひと段落したため、一緒に話をしていた友達と教室から出ようとする。その時、廊下や教室の窓際にいた生徒が騒ぎ出す。みんな空を指さしていた。中には怯えるように、体を震わせる生徒もいた。

 何があるのか気になったので急いで窓に駆け寄ると、隣に居る生徒の視線の先を追うように空を見る。


 見上げた先には赤い空が広がっていた。

 いや、()()()()()()()()が空を覆いつくしている。

 得も言われぬ恐怖で言葉を失う。


「っ……!?おい!何だよアレはっ!!」

「皆さん落ち着いて! 一度教室に戻りなさい!」


 恐怖で言葉を失う。隣で叫んでる生徒や友人の声は耳に入って来なくなっていた。


「魔法……陣……」


 隣に立っていた友達から絞り出た言葉はとても短いものだった。

 空を覆うそれはゲームでよく見る魔法陣に類似していた。

 目の前の非現実に俺は思考を放棄する。ただ唖然とその光景を眺めることしか出来なかった。


 突然魔法陣が赤く光を帯びた。それと同時に周囲が光に覆われる。何が起こったのか分からない。

 あまりにもまぶしくて腕で目を覆うが、光は漏れて入ってくる。


 ああ、畜生!




 光は数秒間降り注いだ後、何事もなかったように収まる。腕を退けて目を開けてみると、校舎の中なのに頭上には空が広がっていた。いや、()()()()()()

 その証拠に、木製の廊下だった地面には草が生えている。 


 辺りを見回して状況を確認しようと思ったが、それは叶わなかった。なぜなら俺の周りには同じ学校の奴らがいたからだ。見た感じ、生徒全員が集められているのだろう。

 密度は、何とか手を広げることができるほどだろう。

 密集しているために、満足に周囲が確認できない。


 先程まで学校の校舎内で友達と話していたり、運動場で部活動の準備をしていたのに、光により視力が失われている間に、見知らぬ草原にいる。もちろんこんな不可解なことが起きて平然としている方がおかしいだろう。置かれている状況に気が付いた生徒が一斉に騒ぎ出す。


 するとどこからか分からないが、大砲のような大きな音が聞こえてくる。その音に驚き、一瞬にして話声が無くなる。どこから音がしたか分からないため、生徒たちは一斉にきょろきょろと見渡す。



「異世界の皆さんこんにちは。突然の事で困惑しているかもしれませんが聞いて下さい。私達の国に皆様のお力をお借りしたく、転移の魔法陣を使い、この場所へと『召喚』致しました」


 そんなとき、女性の声が聞こえてきた。方向は大きな街らしき場所の方向からだ。あまりにも大きい声だったので、拡声器か何かを使ったのだろうか。


 言われたことがあまりにも衝撃的で、理解できなかったのだろう。少しだけだが無音の時間ができた。風の音が聞こえるほどだ。


 もちろん理解できなかったのは、俺も同じ。確かに声は耳から入ってきた。しかし脳に届いた言葉を理解するまでかなりの時間がかかった。



 理解した瞬間、「ふざけるな!」「おうちに返して!」などの悲鳴に似た声があちこちで上がる。

 どうやって此処に飛ばされたのか等考える余裕など無い。俺達はただ、今俺達に語り掛けている人物に拉致されたという事に混乱の矛先を向ける他ない。


 俺も現状の理解は出来たが。置かれている現状を理解すればするほど非現実的が現実味を帯び始め、自分の中の常識が壊れていく感覚に気分が悪くなる。

 召喚? よくネット小説である、あの召喚だと?




 どこからともなく、再び爆発音が放たれた。音の出処を探ろうとしたが、やはりこの人混みでは難しい。その爆発音により周囲は再び静まり返った。

 俺の思考も止まったが、新たな情報が欲しかったために耳を傾ける。


「話はまだ終わっていませんよ。安心して下さい。仕事が終われば皆さんは向こうの世界に送り返しましょう。こんなところで立ち話と言うのもなんですし、城に案内致します。荷馬車をご用意しておりますので、そちらに乗ってください。もし暴れる様でしたら、少しの乱暴もやむを得ませんが……」


 女性の声が聞こえてくる。次にうるさくするとどうなるか分からないため、ここにいる人は全員、黙って従ってついていくしかなかった。言っていた通り、荷馬車を用意していたようで、順に街の方に近い人がぞろぞろと荷馬車に向かっていくのが分かった。


 次々と荷馬車に乗っていく。荷馬車には屋根なんてなかった。


 俺たちを人ではなく物扱いしている。


 俺はそんな風に思った。

 中には同じように思っている他の奴らもいると思うが、誰も文句は言わない。言える立場でないことを知っているからだ。



 誰かが数人の兵士に守るように連れられ、豪華な馬車に乗るのが遠目にだが見えた。いたるところに飾りがあるので、それが偉い人の乗る馬車であることは一目瞭然だ。その周りを、これまた立派な鎧を着こんだ人が護衛するように移動を始めた。マントを付けていたので見てみると、絵が描かれていた。多分だが国の紋章だろう。(わし)のようなものが描かれていた。


 ついに荷馬車に乗る順番が回ってきた。荷馬車を引く馬を操る人は鎧を着ていた。どうやら兵士らしい。


 荷馬車に乗ると、腰を下ろす。そして改めて周囲を確認する。ここで気が付いた。周囲は何十人もの兵士に囲まれている。

 もし逃げ出したりでもしたら、間違いなく殺されていただろう。俺は逃げ出したときのことを考えて、ゾッとした。



 全員が乗り込んだらしく豪華な馬車の後ろをついていく形で、荷馬車も動き出す。向かうのは壁に囲まれた街だ。距離はそれなりにあるので、時間がかかるだろう。




 ゆっくりとだが城壁が近づいてくる。近づくことにより、その大きさが分かる。

 高い。壁の高さはざっと6メートル。所々ツタが生えているだけで、表面は何も装飾されていなかった。壁の上には大砲のようなものが備え付けられており、その周りには何人もの兵士が草原を見ている。


 荷馬車は城壁の門をくぐって都市に入っていく。検問はないのだろうか。

 荷馬車は止まらないで、そのまま大通りらしい場所を進み、城の前まで向かって行く。大通りは賑わっている。



 城の前の広場で荷馬車から降りた後は、そのまま城の中に入っていく。城はやはり大きかった。部屋の数なんて考えることはできない。


 荷馬車から降りた場所から城の入口までは、兵士らしき人が全員、装飾に凝った重そうな甲冑で武装して俺たちを挟み込むように立っていた。ここまで逃げることを考えていたが、逃げ出すことは許されないな。


 馬車から降りると、生徒はひたすら前の生徒についていく。


 外は兵士に出迎えられたが、城の内部では執事やメイドが一列に並んで出迎えをしてくれてくれた。男子生徒は初めて目にする本物のメイドに目を奪われている。対する女子生徒たちの方は、うっとりした表情で城の内部を見上げている。


 そういう俺もメイドの方へ視線を向けてしまうのは、男の性だな。


 そんなことを考えている間に、前の生徒が歩き続けるので俺も続いて歩く。

 どこかの場所へと真っすぐに向かっているのは分かるが、それがどこなのかは分からない。


 だがそれもすぐにわかることとなった。向かった先は大広間だった。

 さすが城だ。建物だけでなく大広間も大きい。うちの学校の先生と生徒が全員入ったのでかなり驚いた。大きさは、600人が入ってもまだ余裕があるほど。


 長机と長椅子があったので前から順に座っていく。各学年5組まであるが、全員が座るのには十分な列が用意されていたので、全校集会の並びで座る。こちらから見て、右から1年2年3年と固まって並ぶ。


 俺はここの大広間に入ったのは最後の方だったので、後ろの方に座ることになった。



 何が始まるのだろうかと、全員がざわついていたが、お姫様らしき人がドアから入ってきた。その瞬間、あまりの美しさに誰もが言葉を失った。


 お姫様と思ったのはその服装からだ。純白のドレスに身を包み、頭には黄金の冠をつけている。顔立ちは幼さが残っているがかなりの美形だ。小説などの物語で出てくるエルフであると言っても、信じる者がいるだろう。髪の色は綺麗な金色で年は10代前半に見える。


 思春期である男子生徒たちは凝視とまではいかないが、見入っている。女子生徒も同じく見入っている。


「皆様、こんにちは。私はレールン王国の女王、アリーシュアです。そしてここの街は王都のクリノスと言います。皆様には草原でも言った通り、この国を……この世界を救ってもらうために来て頂いました」


 俺がお姫様だと思っていた人――王女が話を始めたので、情報を得ようと全員が聞き入る。

 俺も、少しでもいいので情報を集めようと集中する。


「この国は今までも召喚を行ってきており、今回も勇者のみを召喚する予定でした。しかし召喚の術の規模を少し誤り、関係のない人たちをも巻き込んでしまいました。申し訳ございません」


 女王はここで一度、言葉を止める。申し訳ございませんとは言ったものの、頭を下げようとはしなかった。本当に済まないと思っているのか?


「召喚の術には対となる送り返す術はありません。しかし戻ることのできる可能性がある方法が存在します」


 女王は一気に話した。送り返す術がないといったときに、周囲が僅かにざわついたが、戻る方法があると聞いた瞬間ざわつきはすぐに収まった。


「唯一の戻ることが出来るであろう方法は、魔王を倒すことです。今まで召喚された人たちは成し遂げてきて、無事に元の世界に戻っています。もちろん簡単な事ではありません」


 魔王か。ゲームで良く出てくるボスキャラだったな。


「魔王の軍勢はかなりの数です。少なくとも十万になると言われています。そのため勇者1人では大変なので、勇者でない他の人にも手伝ってもらいたいと考えています。幸い、異世界から来た人たちは、中には弱い人もいますが、大半は強い人がいます」


 魔王の軍勢の数を聞いて、この場の空気が絶望に包まれるのが分かった。

 敵の軍勢があまりにも多い。それを学校の人たち、600人近くで倒すだと? 無謀にもほどがあるぞ。


 そんな風に思っていると、女王は話を続けるので、聞き逃さないように聞く。

 ここで情報を逃すと今後が大変そうだ。


「魔族には大きく分けて3種類、上級魔族、中級魔族、下級魔族が存在しており、上に行くほど強くなります。もちろん魔族のほかにも脅威となる魔物が存在しています。魔族は魔法にたけていますが、身体能力が低いと言うわけではありません。相手によっては、勇者でも油断をすると負けてしまいます。そして魔族を束ねるのが魔王です」


 相手の魔族によっては、勇者さえも負けてしまう。その言葉を聞き、この場の空気が重たくなる。

 さらには魔王までいると聞いたので、もはや空気の重さはどん底だ。


 女王はお構いなしに説明を続けた。


「何度も言いますが、魔族は数が多く、それぞれの個体が強いため、単純な力だけでは決して勝てません。手持ちのスキルなどを完璧に使いこなせないと、まず勝てないでしょう。そこで我が国が誇る騎士団に、あなたたちを鍛えてもらいます。期間は設けて居ませんが、行けると判断した時、一気に魔王討伐へ向かって貰います」


 騎士団の人に鍛えてもらう。それは強くなることができるという意味だった。その言葉を聞いて、周囲の空気は一気に明るくなる。


 日本に帰るために、全員が必死になった瞬間だ。


 ただ間違いなく死人は出るな。


「私からは以上です。これより、騎士団の人に任せるので、話をきちんと聞いてください」


 生徒が静かになり始めると、女王は長い説明を終える。一礼すると、女王はすぐに壁際の小さい扉から出ていった。やはり国のトップはどの時代でも忙しいのだろう。


 女王が部屋から出ていき、扉が閉まる。周りが、再び一気に騒がしくなる。あちこちで先程聞いた話の内容のことを話し始めたのだろう。耳を澄ませて聞いていると、ハーレムや逆ハーレムを築きたいという話が上がっていた。


 少しすると、前に校長先生が出て来た。それを見た生徒が徐々に静かになっていく。校長先生は静まるのを待って話し始めた。


「皆さんの大半は、何が起きたのか分からないでしょう。もちろん中には理解した人もいると思いますが。現在、先生方も理解したことを整理している状態です」


 校長先生の言葉で、大半の生徒が一斉に先生方の方を見る。すると、先生方は円になって必死に話し合いを行っていた。ときどき怒鳴り声が聞こえてくる。相当混乱しているようだった。


 もちろん俺は理解した。小説にはありがちな設定とほぼ変わらなかったからだ。

 今後起きるであろう、パターンを考える。いろいろな小説を読んでいる為、それぞれの話で出て来たいろいろとパターンから推測するのだ。職業が勇者になるパターン、使徒になるパターン、そして国王に奴隷として使われるパターンなどだ。


「現在先生たちは必死になって、今後の事について話し合っています。明日には意見がまとまり、皆さんに伝えることができると思います。その後、皆さんにはそれぞれ行動してもらう予定です。それを覚えておいてください」


 そう言うと、校長先生は他の先生方のところに戻り、話し合いに交じった。

 先生とは反対側にいる騎士団の人たちを見ると、校長先生の方を見ていた。そのうちの1人――明らかに隊長格の人が、あごに手を置いて何やら考えていた。


 もちろん表情から何を考えているか読み取るなんて無理だった。

ご覧いただきありがとうございます。

何分初めてでしたので、少々不慣れですが、自分なりに頑張りますので、宜しくお願い致します。



2019/03/17

前書きの通り、現在修正中です。

サブタイトルに『第○○話』という物が付いていると未修正となります。修正前と修正後の話がかみ合いませんが、ご了承ください。

修正前と修正後の話の大きな流れは変わりません。


修正箇所の詳細は、最終的に活動報告の方に書かせていただきます。

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