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003話

 淀みないキータッチとマウス捌きで、画面内からMOBが消えていく。バフが切れる寸前、ファンクションキーを素早くタッチ……しようとした指が止まる。視線は右上、キャラクターの所持アイテムの重量パーセントに注がれている。赤字で点滅している数値は89%となっている。90%になればキャラクターの移動速度が30%低下、100%を超えるとスキルが使えなくなり、120%を超えると、ジャンプモーション制限及び、移動速度が70%低下する。定点狩りであれば98%までは耐えるのだが、今、ツカサが行っているのは、ルート狩りと呼ばれる、一定ルートを周回しながら狩る手法だ。この方法では、移動速度が効率に直結する。


「重量そろそろ限界なんで、戻りたいんだけど~」


 ヘッドセットのマイクを通じ、ギルドメンバーでもある、パーティーメンバーに声をかける。


『あー、じゃあ。俺もそろそろ限界かも』

『私もアイテムあふれちゃうぅ』

『野太い声出すな、キメ―よ』


 最初に同意したのがムロマチ。野太い声でシナを作ったのがAllia。いつものノリで笑いながら、けれど手を止めることなく周囲の敵を滅殺していく。リポップまでの間に生まれる空白地帯。それを作るのが目的だ。


『皆狩りすぎ。ポタ出すから集まって』


 白い魔導服を身にまとった銀髪の少女が注目を集めようとぴょんぴょん跳ねている。声の主は現役女子高生のルナ。すぐに感情的になるのが面白く、皆のイジられ役となっている。

 静止の声を聞かずに、ツカサは愛槍を振るう。地面に槍を突き刺すようなモーションと共に、周囲のMOBが文字通り消し飛んでいった。


「安全圏は広めにっと。前回ルナちゃんこれで死んでるし」

『今回は大丈夫です!』

「それ、フラグだから。ほら、親突(オヤトツ)あるかもしんないじゃん?」

『ないですって!! その件はもう忘れて下さいってば!』


 響き渡る甲高い悲鳴に、ブフッと吹き出す音がヘッドセットから漏れ出る。

 ルナのいう『その件』というのは、昔、ルナが親に風呂を急かされ、MOBがわらわらいる中でポータル――街までの転送魔法――を使おうとして、ダウン攻撃からの連続攻撃を喰らい死亡。デスペナルティーとして失う経験値に叫び声が響き、同時にしびれを切らした親が乱入。ヘッドセットの向こうがカオスと化した一件は皆の語り草である。

 見た目重視の派手な技を出し、巫山戯初めたメンバーに、ルナはジャンプモーションに杖を振るうモーションも追加し騒ぎたてる。


『いいから集まって!! ほら、最初に狩った奴がリポップしてる!!』

『ならば、さらに狩るまでッ!』


 うって変わって渋い声を響かせて、大剣をAlliaが振り下ろす。


『ポタだすよ! 置いてくよ!?』

 

 騒ぎ立てるルナを無視する形で、悪ふざけは続き、結局、重量は93%を越えた辺りで茶番は終わった。ポータルの白い輪が開き、一人、また一人その中に消えていくのを見送って、最後にツカサが輪の中に踏み入れる。

 一番重装甲で、職性能的にも防御が厚いツカサが最後というのは、もう約束事のようで、誰も確認なんてしない。最初の頃は、リポップした敵の露払いをしている間にポータルが消えてしまい。街まで走って戻るなんて事もあったが――ポータルはダンジョンから街への一方通行である――今ではそんな事もない。

 槍を一度振り、ポータルに踏み入れる。


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