波の色
感情は波
そして色
全ての景色は感情へアピールしている
好きな色を聞かれるたびに
違う色を答える
ある日は
鮮やかな紫陽花の青だった
しとしと雨に濡れていた
古刹の庭は土の匂いで満ちていた
ある日は
目に痛いほどの銀だった
賑わっている色とりどりの
眩しい海は水の中が見えなかった
ある日は
LED電燈の白色だった
もうすっかり電子の光になって
暗い廊下の明滅も無くなった
ある日の夏は
緑の華やかな熱の色だった
蝉が繰り返していた
もうすぐだ もうすぐだ と
いつだって
感情は波の色だった
踊って揺られる海月のような
満ちてひたひた濡れる堤防のような
もう来ない誰かを待ってる午後のような
何処か昏い透明な波の色だった