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輪廻転生

毎日同じ事の繰り返し。

いつもいつもルーチンワークであるかのように、パソコンの前に座ってインターネットを使って過ごしている。

あるサイトで画像を探したり、あるサイトで色々な動画を見たり、あるサイトで気になる情報をチェックしたり。

その時その時は満ち足り、充足する。満足出来る。

が、刹那的なものであり、すぐに嫌気がさす。

同じ事の繰り返しだという事に、それしか出来ない環境や現状に、それしか行えないでいる自分に対して。

だが、そんな状態から、今日で脱出する事が出来るかもしれない。

あくまでもかもしれないというだけなのだが、それでも可能性は十分にあると信じる事が出来るだろう。

ハロワとはまた別の場所だが、引きこもりである自分を脱却する為の場所があるらしい。

要は、其処へと出向いて、話を訊いたりして、自分に合った仕事を見つけて貰うという事だ。

結局のところ他人任せや自分で動いていないという事になるかもしれないが、それでも前に進む事が出来るだろう。

自分に合った仕事が見つから無かったとしても、それでも前進したという事に変わりは無い筈だ。

パソコンの電源を落とし、部屋の片付けや身だしなみを整え、重く閉ざしていた扉を開き、家の外へと出る。

「…………」

ずっと引きこもっていた訳では無いが、それでも外に出ると色々な、知りたくも無い情報が入り込んで来る。

また、近所の人たちから見られているような錯覚も覚え、思わず家の中へと逃げ出したくなる。

が、どうにか踏みとどまり、自分の自転車を押し、乗り、漕ぐ。

天気は快晴とでもいう事が出来るだろう程であり、太陽がとても眩しい。

それは、この先には成功が待ってくれているのではと思わせるかのようだ。

当然それは思い込みや過度な期待というだけだという事は理解しているが、それでも前向きに行動する事が出来るというだけでも十分だろうと自身に言い聞かせ、目的の場所へと急ぐ。

もう少しで横断歩道だというところで、俺は少しばかりよそ見をしてしまう。太陽の光がカーブミラー等に反射して眩しかったのだ。

が、それが悪かったのだろう。

よそ見をしたその瞬間、小さなトラックがこちらへと向かって来るのが見える。

「――っ!?」

大慌てでハンドルを切り、ブレーキを踏み、どうにかして避けようとする。

ガラス越しではあるが、トラックの運転手もまた同じようにどうにか衝突を避けようとしているのが判る。

が、判断は出来ても行動が遅かったのか、俺の身体は小さなトラックに轢かれてしまう。

トラックは急ブレーキによるものだろう大きく短い断続的な音を立てながら、俺の身体と自転車へと勢い良くぶつかってしまう。

トラックはそれほど大きくは無く、スピードを出してはい無かった筈だが、それでもかなりのパワーがあったのだろう。

ぶつかった事で、俺の身体は掴んでいた筈のハンドルから手を離してしまい、自転車から大きく飛ばされてしまう。

大きく飛んだ俺の身体は、宙で、そして地面へと落ちてからも数回ほど回転をする。

そして、俺の身体は固いアスファルトに強くぶつかり、全身を強く殴打してしまう。

トラックは停止し、運転手であろう男性の人が慌て混乱した様子を見せながら運転席から降り、俺の方へと急ぎ足で向かって来るのが見える。

が、その様子をハッキリと視る事が出来ない事に俺は気づく。

痛みを感じるのは当然だが、身体全体がやけに重い。そして、まぶたもまた重いのだ。

「…………」

運転手の男性、周囲から集まって来た人達からかけられているだろう声もまた遠くから聞こえて来るように感じられる。

なぜかその時、俺は自分の事よりも、運転手の男性の事の方が心配になっていた。







「…………」

自身の中にある何か、その決定的な何かが崩壊し、消滅するのがなぜだか感じ取る事が出来る。

鎖のような何か、魂や肉体やらを結び付ける為の何かが失われる事を。

そして、自身のその身体から、身体が別れるのもまた感じ取れる。

正確に表現をする事は難しく、俺はただ、自身に起こっているその不可思議な現象を受け入れる事しか出来ない。

「……え?」

目を開くと、目の前で俺の身体が何かの上に横たわっているのが見えた。

それは紛れも無く俺の身体であり、そうだったモノだ。

死んでしまった。

そんな大事な事を、「呆気ない」と思いながら感じ取り、見る事しか出来ない。

「皆は……?」

自身が死んだという事を理解し、受け入れる事は出来た。

が、生きている家族や友達などの知り合いの事が気になり、俺は皆がいるだろう場所を探し、歩き出す。

そうしていると、俺が死んでしまった場所だろう横断歩道近くの道路に、綺麗な花等が添えられているのが見える。

そして、その場に、また俺と同じ姿をした何かがいる事にも気付く。

「……あれも、俺なのか?」

そこにいる俺に似た何かはとても薄い、半透明だとでも表現出来る見た目をしている。

其の身体は酷くグラついており、ぶれ、今にも消滅してしまいそうだという事が一目で判る。

「そうか……」

また自然と、なぜか、目の前で消えそうになっているそれも自分であるという事を理解する。

だが、それと同時に、周囲の人々や行き交う人々が気付かずに歩いている事、ぶつかりそうになっても通り抜けてしまっている事などに気付く。

「…………」

そうして、俺は否応なしに、理解していた筈のそれを、より鮮明に、ハッキリと理解させられてしまう。

自分が死んでしまったという事に。

誰とも会話する事も触れ合う事も出来ず、誰にも気付かれず、ただ日々を過ごす事しか出来ないだろう事に。

「ま、仕方ない、よな……」

落ち込んでいるばかりでは何も出来ないだろうと思い、俺は地面へと向けていた顔を空へと向ける。

向けたところで、何をどうすれば良いのかなんて事を簡単に見付けられる筈も無い。

が、それでも、下を向いてばかりでは、見付かる筈のモノも見付からないだろう。

「……? あれは……」

空へと視線を向けたと同時に、俺は空に何かがある事に気付き、目を凝らす。

そこには、薄っすらとではあるが、階段のような何かがあるのが視える。

かなり離れた場所にあり、それでも薄っすらと視る事が出来るそれは、とても大きなモノだろう。

そして、それは地上から空へと向かう為のモノだろうという事もまた自然と理解する事が出来る。

「逝くか……」

あの階段を登っても、すぐに何かが変わるという事は無いだろうと感じ、俺はその階段を目指し歩く。

歩いていると、生前によく行っていた店などの前を通る。

歩いていると、生前によく遊んでいた場所の近くを通る。

歩いていると、親友だった者とすれ違う。

歩いていると、家族だった者とすれ違う。

誰も俺に気付かず、過ぎ去って行く。

その事に、俺は憤り等を感じはしないが、それでも寂しさや物悲しさなどを強く感じてしまう。

皆、泣いてくれていた。悲しんでくれていた。

が、それだけでは無く、しっかりと前を向き、歩いているのが判る。

だからこそ、必要以上に歪んだ感情を抱かずにすんでいるのかもしれない。







しばらく歩いていると、漸く階段だろうモノの麓とでも言えるだろう場所へと到着する。

が、その階段のような何かはやはり半透明であり、薄っすらとしている。

だがそれ以上に、険しい。高低差が激しく、まるで整備されていない獣道のよう。

「……これを登る必要があるのか」

山登りでもするかのように、俺は足場に気を配りながら、その階段と似たモノを登り始める。

とてもではないが、その道程は険しく、大変なモノの筈だ。

が、なぜか特にこれといった苦労をする事も無く登る事が出来ている。

「これは……」

生前のそれよりも、身体は軽く、力に溢れ、そして疲れる事が無い。

重い何かを脱ぎ捨てて来た事、そうなっているのだろうとさえ思えてしまう。

肉体が、拘束着のような何かだったのではとさえ思えてしまうほどだ。

「……あの人達は? それに、ここは?」

暫く登り続けると、そこには真っ平らな空間が広がっているのが見える。

そして、視線の先の方には、川と岸、舟。

順番待ちをしているかのように並んでいる人達。そして、並ばずに談笑をしている人達など、色々な人達がいるのが見える。

川の向こう側を視ようと目を凝らすのだが、なぜかハッキリと視る事が出来ない。

まるで無があるかのようであり、向こう側に何かがあるとは思えないのだ。

対するこちら側の岸。そこから少し離れた場所には大きな街のような何かが広がっているのが見える。

「…………」

俺はふと、何も見えない川の向こうより、確かな何かが在る街のような場所へと向けて、自然と足を動かしていた。







「凄い……」

街のような場所。

そこには、色々なものがある。

ものが満ち溢れている。

生前のそれよりも遥かに満ちたそれらを前に、俺はただ圧倒され、驚く事しか出来ない。

そこには緑が、自然が溢れている。

そこでは多種多様な建物が建っている。

そこでは、色々な人達が笑い合っている。

だが、彼等は言葉を口にする事をしてい無い。その代わり、テレパシーのような何かを行っているのだ。

実際に、遠くで談笑している集団の会話がハッキリと聞こえて来る。

更に、ここにいる人達は皆顔立ちを始め、優れた容姿をしている。

俺はふと、近くの水溜りへと向かい、顔を覗かせる。

水面を鏡にして映った自分の顔は、生前のそれよりも若々しく整ったモノになっている事に気付く。

「……そうか……」

驚く事はあっても、疑う事はせず、自然とそれらを受け入れてしまっている。

だがそこで、俺はどこからか、誰かの苦しんでいるだろう声を耳にする。

その声のする方へと、少しずつだが足を向け、歩いて行く。

「――!? あの人達は……」

俺が登って来た階段とは全くの別方向にある場所。

そこには、先程のあれだけ美しかった光景が嘘であるかのように思わせるモノがあった。

底が全く視え無い場所。

そして、底の方からだろう。目視出来ないそこから苦しそうな声を上げながら、四肢に何か異常を抱えながら登って来ている人達がいた。

他にも、色々な人達が。

底の方からどうにか登って来ているのだが、体勢を崩すか何かで再び底の方へと堕ちてしまう人達も。

「…………」

俺は、その光景を前にして絶句し、圧倒されるしかない。

そして、チラリと視線を背けると、苦しそうにしながら登って来ているそんな人達に対して手を差し伸べ、力を貸している人達も数人いるのが見える。

だが、如何せん、登って来ている人達の数は圧倒的であり、手を差し伸ばしている人達の数はあまりにも少ない。

「……っ……」

俺は、居ても立っても居られず、登って来ている人達へと手を差し出す。

登って来ている人達の容姿は、先程の街にいた人達と比べると、生前のそれと同じなのか整ってい無い。

差し出した俺の手を掴み返す人。

俺は、手や腕に力を込め、彼等をどうにか引き上げる。

そうして引き上げられた人達は、俺へと顔を向け、口を開き、そして俺が最初に到着した場所である川や舟のある場所へと向かい出す。

その口から出た言葉。

テレパシーとしてのモノと実際の肉声での言葉。

それは感謝の言葉であり、俺はそれを受けて暖かな気持ちになる。

そうして更に何人かを引き上げていると、どこからともなく、誰かの声が、何人もの、何十人もの、何百何千人、それ以上もの何かを一心に呟く声が聞こえて来る。

そうしてまた他の人達を引き上げていると、俺が到着した時には既にいた人達が俺の方へと顔を向け、言葉を口にする。

その言葉を受けて、なぜか俺は首肯き、この場を後にするように足を動かし、最初に来た川と舟のある場所へと到着していた。







「…………」

俺は、先程の光景やそこでまだ登って来ている人達、そして彼等を引き上げようと手助けをしている人達の事を想いながら、長蛇の列に加わり、順番を待つ。

暫くして、自身の番となり、俺は今着ている服を脱ぎ、近くの木の枝へと掛ける。

その枝は少しばかり下へと向き、そして俺は掛けていた服を回収して再び着る。

そして、船頭がいる舟へと向かい、その舟へと乗り、舟は漕ぎ出す。

ゆっくりと前に進み出す舟の上で、揺られながら、なぜか最初に感じた感情は消え失せていた。

川の向こうに対しての恐怖等は既に無く、ユラユラと揺られながら、俺の身体から、また別の何かが抜け落ちた事を感じ取る。

だが、どうする事も出来ず、どうにかしようという気持ちや欲が出る事も無い。

ただ、俺はふと後ろを振り返る。

振り返った先、元いた岸の方ではもう1人の俺がいるのが見える。

もう1人の俺は、どうやら俺を見送ってくれているようだ。

暫くして、川の向こうに岸が、陸が見え始める。

そして、到着し、上陸。

また長蛇の列が出来ており、俺はその最後尾へとつく。

ゆっくりとゆっくりと、前へと進むが、人数が多い為にジリジリとしか進まない。

だが、決して苛立ちなどを覚えるという訳では無く、前を見据える。

時間は有限ではあるが、まだまだ余裕はあるのだ。

「…………」

暫くして、前の方の誰かに、ここで働いているのかもしれない何者かに声を掛けられ、列から抜け、他の人達よりも速く前へと歩いて行くのが見えた。

そして、俺もまた何者かに声を掛けられ、列から抜けて、前を向いて歩く。

歩いた先にあるのは、裁判でもする為にあるかのような場所。

実際に、裁判じみた事をしているのだろう。

長蛇の列の前の人が、被告人であるかのように扱われているのが見える。

俺はそれを傍目に、先導してくれている何者かの後ろを、見失わないように、逸れないように気を付けながら歩く。

そうしていると、気が付けば、俺の目の前には2つの扉。

俗に言う天国や地獄。そこへと繋がる扉だろう。

俺は何者かの言葉を受け、光に満ち溢れた方の扉を開き、その向こうへと進む。







扉の先。

死後に階段を登り、到着した先にあった大きな街のような場所と似た場所だ。

生前のそれと同じような建物、溢れる緑、笑顔。

そしてまた、離れた場所では長蛇の列があり、人々はそこで何かの順番を待っている。

俺もその列へと加わる為に足を動かす。

そうして歩きながら、生前の事へと思いを馳せようとする。

が、なぜか思い出す事が出来ない。

悲しかった事、辛かった事。

あれだけ忘れずにいた事を思い出す事が出来ない。

どのようにして過ごしていたのか、どのような人達と過ごしていたのか。

だがなぜか、それが当たり前であり、気にする事では無いと感じる。

真っさらな状態で、俺は列へと加わり、そして地上へとダイヴした。

そこで出逢う何か、そこで手にする何か、そこで待ってくれているだろう人々の事などへと想いを馳せながら。


「サトロシー・ヴェアトロス」の加筆修正を後回しにして、自身の中で抱くいている“転生”のイメージを文章にしてみた。

ただそれだけなので、中身が無く、そして1万文字に到達せず5,000文字程度だ。

自身の中の“転生”の流れを、次の話で記載するつもりだ。

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