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なかなか、更新する時間が決まっておらず申し訳ありません。定まった時間に出来るように徐々に調整していきたいと思います。
二人は、ヘーベルを押さえつけながら身体中の場所を図っている。
「むっ、妹。なかなか触り心地のある柔らかいものを持っているな」
鷲掴みするように後ろから手を回し、その柔らかなものを最初は優しく。だが、段々と力を入れて揉みしだく。
「なっ、や。やめて……ひゃん!」
体を小刻みに震わせながら、勘弁してと涙を目に浮かべて懇願するが二人は、楽しそうにヘーベルを弄ぶ。
「そうね、ヘーベル。肌がすべすべ」
アリスは、腕や腹を優しく手を滑らせているとぞわっと何かを感じるヘーベルはぴくんと体を一瞬大きく震わせた。
ヘーベルは、目を力強く閉じ。顔を真っ赤に染めて計測という名の二人からの軽いセクハラに耐える。これが、間違いなく男であったらヘーベルは跡形もなくその男を消していたであろう。
「師匠~、ヘーベルさんの計測終わったすか~?」
「えっ!?」
ノックもなく、クロは部屋に入ってくる。三人からの重苦しい空気に全く気づくことなく、クロはまだ計測中だったことにあっ、すんませんと普通に出ていこうとする。
だが、三人が許すはずもなく。
「馬鹿弟子がぁぁ! ノックしろっ!」
「クロ、貴様ぁぁぁぁ!」
「はぁ……」
冷静そうにため息をついたヘーベルは、クロに笑顔で近づいていき二人には見えないように悪魔の。いや、鬼でもその表情には涙を浮かべて懇願する。そんな表情を浮かべた。
「クロさん、すみません。人って何発殴れば記憶消えると思います?」
「えっ、えっと。ヘーベルさん、怒ってます?」
「怒る? 違いますよ、私は至って冷静なんです。あと質問に答えてください」
クロは、ガタガタと子供のように身を震わせながらその答えを誤魔化した。
「さ、さぁ……分かりません」
「正解は……」
凄まじい速さで、左右の側頭部を殴打し意識を奪う。すると、クロはそのままその場で仁王立ちして動かなくなった。
「お~、アリス。妹は、なかなか武術ができるんだな」
「えぇ、私も初めて知った。凄いじゃない、ヘーベル」
後ろから抱きつかれ、身に纏っているのがサラシに褌というほとんど素肌を晒している姿のためかアリスの柔らかい膨らみの感触がよく伝わる。
「あ、あの。お姉ちゃん、とりあえずクロさんを」
「あぁ、それは私に任せな」
仁王立ちしているクロをメイルは抱えると、何の迷いもなく部屋の窓からゴミでも捨てるかのように捨て去った。クロが地面に落ちた姿は、窓から見ることはしないが。クロの悲鳴が聞こえて、ひとまず無事なことにヘーベルは安堵の息を漏らした。
「それじゃ、邪魔も入って妹いじ……こほん。計測も中途半端になったが、何となく分かったから生産する。少し待ってて」
ヘーベルは、一瞬言いかけた言葉が気になったが。とりあえずは、作れるということだったので。急いで服を着る。
それから、数時間が経過する。
その間もアリスからの可愛がりに耐えながら待っているとやっとメイルは、出来上がった鎧を持ってきた。
「出来たぞ、とりあえずは試着だ。」
何の迷いもなく、言われるがまま着たヘーベルだったが着てからあることに気がつく。
「メイルさん、あの。これ、防具というよりは鎧だと思います」
「妹、何を言っているんだ? 鎧だって防具だ」
その鎧は、西洋で使われていたプレートアーマーと言われる全身に装甲を施した甲冑だ。黒く染め上げられたその甲冑は、確かにヘーベルの体にはフィットしたが。今のヘーベルには、少し重く感じ。彼女が得意とする素手での戦闘に欠陥を与えてしまう恐れがあった。
「あ、あの……。これ重いんですけど」
「そりゃそうだ、私だってそんな重たくて暑苦しいもの着たくない」
(おいおい……そんなもの着させるなよ)
「だが、アリスの要望では、敵の攻撃を一切受け付けず、どんな方向どんな敵からも守れると言われた。そのため、敏捷性より強固な鎧としたんだ」
「だけど、メイル。これじゃヘーベルが可哀想」
ふむとメイルは、何かを考え始めると。ならこれを着てみろと言われ、とりあえず次の鎧を試着する。
「あの、メイルさん……これ、防具じゃないです」
「ふむ。コンセプトは、エロスだからな。だが、その衣類に見えるのはなかなか頑丈で防刃仕様なんだぞ?」
その姿は、南アジアの踊り子を思わせるオレンジ色に染まった格好をしている。だが、一般的な踊り子よりは極端に布地の数が少なく。素肌やヘーベルの女性としての膨らみを強調としているような格好だ。コンセプトは、エロスというメイルの言葉は確かに一切間違ってはいない。
「メイル、これではモンスターどころか仲間の男共にまで危険を晒すことになる。却下だ」
「分かってる。ただ、昔作ったはいいが。着る奴がいないから着せたまでだ」
やれやれと更に作った鎧を持ってきたメイルは、これが実は本命だと言い、それをヘーベルに着るように伝えた。ヘーベルは、自分が軽く着せ替え人形になっていることに気づくが。とりあえずは、黙ってその鎧に身を包み込んだ。
「ふむ。私の目に狂いはなかったな。似合ってる」
「確かにそうね、これなら」
二人が認めたその鎧。いや、衣装は下はジーンズのようなものの繊維で作られた短パンに、上はシャツと籠手が一体感したような不思議な格好をしている。手にはグローブを着けられており、いくらか手を守っている。
だが、その格好はわざとヘソ出しされておりそれに短パンがギリギリまで短くされているので、どこか色香を匂わせる格好だ。
「あのこれただの服装なんじゃ?」
「そんなことはない、試してやろう」
近くにあった剣を取り、何の躊躇いもなく肩へと斬りかかる。だが、その衣服には確かに防刃の性能があり、肩に刃の痛さはなく重さのみが伝わってくる。
「これ。これがいいです!」
「決まったわね、それじゃメイル。料金は?」
「代金なら既に貰っている。妹の体を触らせてもらった。それで充分、満足」
「はは……」
まさにヘーベルは、自分の防具を体で払ったということだ。お金を払おうとしたアリスには、申し訳なさを感じたヘーベルだったが。もう、騙されて体で払うのはこれっきりにしたいとヘーベルは心底思った。
「ふっ、全く。本当だったら、私の妹の体に触れたんだ。反対にこっちが金を払ってもらいたい!」
「むっ。ふふっ、アリス。よっぽど妹が可愛いんだな」
「ええ。ヘーベルは……何か分からないけど、昔から知っているような……家族みたいな大切な存在……そんな感じがするの」
「ふむ、もしや……前世では恋人とかだったりな」
その言葉を聞いて、ヘーベルはぴくっと眉を動かす。的確な所をついてくる人だとヘーベルは思った。
「ははははっ、だったら幸せかも。いじめがいがあって、可愛いし」
ポンポンとヘーベルの頭に手を置く。その言葉にヘーベルの心はほんのりと温まっていき、心の熱さは頬へとうつる。
「妹? 顔が赤いぞ、大丈夫か?」
「えっ? ははっ、大丈夫です。はい、ははっ」
こんな言葉が聞けて良かった。
転生して良かったとヘーベルは、心から思った。
「そういえば、オーグ退治行かなくていいのか?」
「あっ、そうだった。ヘーベル行こっ!」
笑顔で手を差し出され、ヘーベルはその手を掴みとる。
この笑顔を守りたい。
彼女とは、結ばれなくても彼女が幸せになる道を作っていきたい。
そんな強い思いを持って、彼女の手を握って向かっていった。
メイルは、二人を見送ると彼女しかいない空間で一人言のように呟く。
「あの子なかなか、こっちの世界でやっていけそうじゃないか。カロン」
「えへへ、やっぱり私は間違ってなかったじゃん」
天井の空間が黒く歪み、その部分から逆さまに胸のあたりまで姿を現わす。
「いやぁ~、ちょっとしたイタズラ心で女の子にしちゃったけど。うん、上手く女の子になってきてる」
「まったく。お前は、あの子。彼女と結ばれたいから転生したのに……これじゃあ、あの子は」
「う~ん、まぁ私はいい人じゃないし。それに今は、彼は女。なら、男として幸せが駄目だったんだから。女として幸せになってほしいな~って思うの」
メイルは眉をひそめて、カロンを見る。
「どういうことだ?」
「幸せは、一つじゃないってこと。悲劇の英雄さんにだって、私だって幸せの一つは掴んでほしいし」
「お前は、優しいんだか。そうじゃないんだか」
ふふんと小さく笑みをカロンは、見せる。
「とりあえず、私が面白ければいいの。死者を送るだけっての飽きたし~」
「むむっ決めた、お前は最低だ」
あはははっと笑い声を残して、カロンは姿を消した。天井は、まるで何事もないように戻っている。自分の右手を見ると何かを確かめるようにしっかりと右手を握る。
「し、師匠ぉ~。気づいたら、家の外に居たんすけど~」
「むっ、馬鹿弟子。少し汗をかいた、風呂に入りたいから湯を沸かしてくれ」
「へぇーい、それで外にいた」
「いいからさっさと沸かせ」
ゴンッと頭を軽く殴り、軽く泣きながらクロは風呂の湯を沸かしにいった。
「さて、悲劇の英雄様はこの世界を変えるのか。それともこの日常に埋もれていくのか。先達者として見守るとしよう」
メイルは、窓から青く澄み渡った空を眺めながら、軽く笑みを浮かべていた。