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なかなか書く時間がなく、遅くなってしまって申し訳ありません。ペースをあげるように頑張ります!


ヘーベルは、その夜。

枕から出ると村から少し離れた拓けた場所に行く。夜の風は、朝の日射しの強さから生まれる夏のような暑さとは違い。秋を知らせるかのように肌を突き刺す。そんな中でのヘーベルの服装は、とても薄着で桃色であしらわれたベビードールのような格好をしている。これもヘーベルが好んで着ているわけではなく、メディカの趣味である。

「寒い……でも、運動すれば温かくなるよね?」

ヘーベルは、深呼吸すると中段に構え、拳を使って素振りをする。手始めは、軽めに一撃一撃を確認するように目の前の空間に打ち込む。

(やっぱり、一撃は軽くなってる気がする。これは、やっぱり鍛え直さないと)

一撃の重さを徐々に上げていくのを意識しながらヘーベルは打ち込んでいく。体の捻りや使い方もしっかり確認している。

何発も何発も打っていると額から汗をにじませる。目に汗が垂れるのも気にせず、ヘーベルはひたすら打ち込んでいると誰かの気配を感じ、その方向へと振り向く。

「ふわぁ~、まさかこんな可愛い子がこんな時間にこんなキツそうな鍛練してるなんてな」

「えっと……その、貴方は?」

その声の主は、赤茶けたこの村の民族衣装に身を包んだ男だった。髪は、ぼさぼさとしており身なりから清潔さは感じられないが、顔立ちは良くその整容の悪さを隠している。

腰には、二振りの刀が携えられている。どちらも独特の反りのある形状をしており、ヘーベルのもといた世界では日本刀と呼ばれていた刀だ。

「俺の名前は、ハバキっていうんだ。君がこの村に流れてきたっていう子?」

「えっ……えぇ、そうです。私は、その。ヘーベルっていいます。これからよろしくお願いしますね」

にこりとヘーベルの中では最高の笑顔を持って、ハバキという男に接する。

するとハバキも笑顔を浮かべて近づき、鼻が触れてしまうほど――息が相手の肌に触れるほど顔を近づける。

(な、なんだ……この男……)

「ふっ、これからよろしくな! あと、その格好お前の趣味か? 恥ずかしくないのか?」

「なっ!? わ、私だってこの格好恥ずかしいって思ってます! で、でもメディカさんが着てほしいって言うから!」

頬を赤らめ、涙目で見つめてくるヘーベルに少し困ってるようにハバキは頭を掻いている。

その時、遠くの方から土をまるでドリルで抉っているような音が近づいてくる。その音の主は、すぐに分かった。

「ハバキィィィイ!! 貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっ、えっ。アリス誤解だっ!」

「問答無用ぉぉぉぉぉ!!」

彼の弁論を聞かぬまま、アリスはハバキの顔を本気で殴り抜ける。アリスに殴られたハバキは、六回転も空中で回転し、地面へと転がり落ちる。

「だ、大丈夫!? ハバキになんかされなかった!?」

「大丈夫だよ……お姉ちゃん。でもあのハバキさんは……まずいんじゃ……」

ピクピクと痙攣けいれんし、起き上がる様子が全くない。

「大丈夫、あいつはあんなんじゃ死なないから。ほら、寒いから帰りましょ」

「う、うん……」

ヘーベルは、少し心配したがすぐにアリスの言葉を信じて、メディカの家へと帰っていた。




朝は、規則正しく朝日とともに目を覚まし、にわとりや家畜の世話をする。

「ヘーベル~。そっちが終わったらご飯食べよ~」

「は、はい。お姉ちゃん」

飼っている家畜に餌をあげるとヘーベル達は、朝食を向かえる。食べ物は、みそ汁に焼き魚、漬け物にご飯と和食と言われるものだ。

「あっ、そういえばアリス。今日は、森で狩りをするんでしょ?」

「はい、お姉様。最近は、オーグが森でよく見られているらしいので、あいつらが森に近寄らないようにしてきます」

「あっ、あの。お姉ちゃん、私も着いていっていい?」

アリスは、箸を止めて。少し間を置いてはっきりと答える。

「駄目、駄目よ。絶対に駄目。何を言われても駄目」

「そ、そんなに駄目? で、でも私みんなの役に立ちたいし。それに私、少しだけ力には自信があるの」

「だとしても駄目。ヘーベルは、まだここで生活を初めて一日目よ。いきなりそんな危険なことさせられないわ」

(ちっ。仕方ない……すみませんが、俺のことを思う気持ちを利用させてもらいます)

ヘーベルは、腕にしがみつき上目遣いの涙目で小動物のように見る。

「私、お姉ちゃんといたいの。駄目……お姉ちゃん……?」

ぷるぷるとアリスは震え、自分の中の何かと戦っているようだ。だが負けたのか、ため息をつく。

「分かった、私から離れるなよヘーベル」

「わ~い、お姉ちゃん大好き!」

「あらあら、ふふっ。アリスもヘーベルちゃんには、弱いのね」

「なっ! う、うぅ………」

朝の会話を終え、アリスはヘーベルを連れて武具屋へと連れていく。武具屋には、『アマヤドリ』と木の看板に刻まれていた。店に入ると、ヘーベルと同じくらいの男が店を軽く掃除していた。

「あっ、姐さん! どうも~」

「相変わらずやる気なさそうだな、クロ」

「ははっ、だって師匠が工房にいれてくんないすもん」

「それは、お前が飲み込み悪くて仕事が進まないからだろ? お前が悪い」

「え~、俺の味方してくださいよ」

ははっと二人が笑いあっているとクロの視線が、ヘーベルへと向けられる。ヘーベルは、それを感じ軽く会釈をした。

「誰すか、この美人は?」

「ふふ~、聞いて驚くな」

「あっ、もしや姐さんのむすぐばぁっ!!」

クロの言葉を最後まで聞かぬうちに彼女の手がクロの顔を殴っていた。

「私の妹だ、手を出したり変なことを仕込んだら分かってるな?」

「ふぁ、ふぁい」

「えっと、その大丈夫ですかクロさん?」

クロに近づき、心配そうに苦笑いを浮かべながら殴られた頬を撫でる。

「て、天使や。姐さんに似てないぐらい天……すんません。今のなしです」

「とりあえずあいつ、メイルはいるのか?」

「はい、今呼んできます」

クロが、奥へと入っていくこと数分後。吹き飛ばされドアをぶち破って戻ってくる。

「全く馬鹿弟子が。工房には入るなと言っているのに入りやがって」

「相変わらず工房に籠りっきりか、メイル?」

ドアから出てきたのは、両腕を義手にしていた黒髪の女性だった。

「全く、あんな馬鹿弟子が入るならお前が直接呼びに来い、アリス」

二人は、ふふっと笑いあう。様子を見る限りでは、とても仲がいいことが伺える。

「それでその子は?」

「聞いて驚くな……遂に私にも妹ができたの!」

「ひゃあっ!? お、お姉ちゃん!」

アリスは、急にヘーベルに抱きつきながら頭を撫でる。

「妹? メディカさんの子か?」

「違う違う。昨日、ここに流れ着いた子。お姉様が、面倒見るっていうから一緒に住むことになった」

ふむとメイルは、真剣な面持ちで顔を近づけ数秒睨みあうとにこりと笑みを浮かべる。

「なるほど、アリス。お前と違って可愛い子じゃないか」

「なっ、お前までそんなこと。ヘーベルが可愛いことは、分かるけど。私だって……」

少し拗ねた素振りを見せるとそうじゃなかったとすぐさま我にかえる。

「メイル、今回は仕事のお願いだ」

「ほう、仕事ね。仕事は、なに?」

「この子の防具を作ってあげて!」

「えっ! 防具!? わ、私の?」

ヘーベルは、てっきりアリスの武器か若しくは、みんなの武器を貰いにきたのかと思っていた。だが、本当は妹のために防具を買いに来たのだ。

「そうよ、防具ないと危ないでしょ」

「そ、そうですけど……」

それを聞くとメイルは、首をこきこきと鳴らしてまたニヤリと笑った。その笑みには、ヘーベルは覚えがある。

「じゃあ、妹。服を脱げ。脱がない場合は、私が脱がそう」

「えっ、えっと。どちらも無しで作れないんですか?」

「素肌ごと図った方が作りやすい。さぁ脱げ、脱がなければ本当に脱がす」

「はは……、あのお姉ちゃん。私の気のせいじゃなければ何か拘束が強くなってないですか?」

顔を後ろに向けると笑顔に潜んだヘーベルには悪魔のような顔がそこにはあった。

「はい、ヘーベル。ぬぎぬぎ……しましょうね」

「時間切れ、アリス。脱がすよ」

二人の悪魔に詰め寄られ、ヘーベルは抵抗するのをやめた。

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