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残り一日となった四人は、各々の仕事をやり尽くし、エルフに助力を求めたブラドは、いくらかのエルフの精鋭を集めて、都に潜入していた。
「ねぇ、ヘイロン。何で人達は、こんな夜更けにも歩き回ってるのかしら?」
「各々の仕事があるんじゃろ。それに仕事が終わったとしても、夜遅く終わればこの時間に遊ぶしかないじゃろ」
「人って大変ね。労働する時間も各々違って、お互いを支えあっている。これが、発展した末路か」
「様々な技術が出るということは、その分専門の仕事も増える。そういうのが、増えていけば日中夜問わず、働く者が増えるじゃろうよ」
少し夜空をスクルドは、見るとため息を深くつく。
「ふぅ~ん、エルフは国民全員が家族みたいなものだから、分からないわ」
「人は、個人戦なんじゃよ。お主らと違っての」
「黒龍様、人のことは分かりました。それより、ホテルというのは、どこに?」
「ふむ、もう少しじゃアルバよ」
ブラド達が歩いていると、目の前に髪を染めた男二人が立ち、話しかけてくる。
「へぇ~、珍しいね~。エルフがいるよ、こりゃ上物だ!!」
「だな。あんちゃん、俺達はついている」
「なんじゃ、主ら?」
背後からも若い男達が現れ、ブラド達を囲む。ブラドは、そっと後ろを振り返るとため息をついた。
「なんじゃ、主ら。遊んでほしいのか?」
「あぁ、一緒に遊ぼうぜ!!」
ナイフをブラドに突き立てようとした時、ブラドは男の手を掴むと男は空中を回転し、地面に倒れた。特別な技を使ったわけではない。
ブラドが元々備わっている力――筋力を使って投げただけだ。
「て、てめぇ!!」
「ふむ、お主もか? いいぞ、ほら」
もう一人の男も投げられ、二人を握ったその手は、握りしめたままだ。ニカッとブラドは笑うと、壁に向かって二人は投げられ、叩きつけられる。
そこに、ローブを着て、顔を隠していたエルフが弓矢を取り、躊躇いなく射る。矢には、魔力が籠められており、壁にドンッと突き刺さり、男達の動きを止めるように衣服の端を繋ぎ止める。
「く、くそ! な、何だこれは!!」
「う、動けないぞ!!」
「可愛くない……」
スクルドは、ブラドを手で後ろに下がらせて、そう言った。スクルドの目には、光がなくなり月明かりに顔が照らされ、不気味といえる。
スクルドは、腰に携えていた鞭を手に取り、にこっと笑う。
「な、なにを……」
「大丈夫ですよ、女の子に手を挙げられない優しい子に調教してあげますから」
「お、おい!! 俺らを助けろ…!!」
背後にいた男達が助けに行こうとするが、一際高い身長をしたエルフがそれをせき止める。
「邪魔だ!! どきやがれ!」
「ん~……うちの姫様に手出させるわけないじゃん」
「レングス、任せていいか?」
「アルバ。うん、任せなさ~い!!」
ローブを剥ぎ取った先には、白く綺麗なその顔には不似合いな一筋の傷があり、体は少し筋肉質で腹筋が引き締まっている。まさにエルフの戦士という姿がそこにはあった。
「エルフといえど、女一人だ!! やっちまえ!!」
「うおぉぉぉ!!」
向かってくる男の顔をレングスは打ち抜き、その勢いを活かしてクルリと回転すると、別の男二人の顔を肘で顎を横に払う。
まず三人を沈め、残り二人。
独特な足技を使う男の両足を掴み、背後に投げ、もう一人を足刀でなぎ倒す。
背後の男が、身を翻して向かってくるのが分かると、ストンとその場に腰をつき、支えている手を払い、空中に上げると拳を空に高く上げる。
すると拳は腹を打ち抜き、男はぐったりと力なく倒れた。
「はい、いっちょあがり」
「ありがと、レングス。助かったわ」
「ひ、姫様に誉められた!! いぇーい!!」
「じゃあ……あとは、貴方達だけね。大丈夫、最初はちょっと痛いけど……すぐに痛くなくなるから」
鞭をパシィンパシィンと地面に叩きつけると舌で唇をペロリと舐めて、ヒュンと男二人に振られた。
その夜、男の甘美な悲鳴が響き、それを聞いていたある者から噂が広まり。そして、遂には怪談となり気持ち悪がった女性達がその明かりが少ない暗い道を通ることはなくなったという。
●
ドアをノックされ、ハバキは覗き穴から覗き、相手が誰であるかを確認する。覗き穴から見えたのは、ブラドの姿だった。
「姐さん!!」
「おっ、元気にしておったか?」
「ブラドさん!!」
「姉君も少し会わない間に……凛々しさが増したのではないか?」
三人が再会を喜んでいると、後ろからキューがゆっくりと歩いてくる。その目は、どこか不機嫌そうに感じる。
「ふむ、お主も人の姿を取るようになったか。しかも、そんな幼子に」
「こ、これは!! ご主人様が……好んだ姿を取っただけで。私の趣味では」
「あらあら、残念。私好みの男の子がいない……。まぁ、いいんだけど」
ドアの影から、スクルドが現れ、少し残念そうに頭を抱えて、ため息をつく。
「あの、この人は? エルフに見えるんですが」
「あぁ、こやつは」
「私、スクルド!! ヘイロンの友達で~す。よろしくね」
「とこういった奴じゃが、これでもエルフの王じゃ」
よろしくねとスクルドは再度言うと、手を握りブンブンと力強く回し、キューに近づく。
「あら、貴方は麒麟さんなのね」
「はい。ご主人様から頂いた名は、キューと申します。どうぞ、お見知り置きを」
「キューちゃんね、よろしくね~!」
キューの体を子供のように脇に手を添えて、持ち上げる。キューは、抵抗する間もなくいきなり持ち上げられ驚く。
「は~い。高い、高~い」
「ス、スクルド様!?」
「ぷっ、赤子のようで。似合っておるぞ」
「なっ!? い、今笑いましたね!!」
「いや、笑ってなどおらぬよ……ぷぷっ」
「スクルド様、降ろしてください。どうやら、ブラド様は身分の差を弁えていないようなので」
瞳にまったく光がない暗い瞳で、ブラドを見つめる。だが、どうやら幼い男の子はいないためなのか。代わりに幼い女の子を愛でたいようで、スクルドは一向に離そうとせず、その顔は満足気だ。
だが、その頭をスルリとドア影から現れた人物に頭をたまたま近くに置いてあったステンレス製のおぼんで頭を叩かれる。
「った~!!」
「お止めください、スクルド様。麒麟様も困っております、こんな所でも自分の性癖を出さないでください」
「で、でもキューちゃんは女の子だから。ショタとは関係なく、小さな女の子を愛でるのは母性本能がくすぐられて」
「ショタだろうとロリだろうと。スクルド様が、やられると犯罪の匂いがします」
「ひ、ひどっ!! 私のことを犯罪者予備軍みたいに言って!! ふん、いいもんね。私は、怒りました」
ベッドにポフンと飛び込むと毛布にくるまり、全身をおおう。アルバは、それをどこから出したのか縄でくくりつけ簀巻きにする。
「ふんぐぐ~!!」
「申し訳ございません、皆様。女王様のはしたない姿を見せてしまい」
「いや、あの……。それはいいんですけど……。女王様大丈夫っすか?」
「お気になさらず、このような事日常茶飯事ですから。スクルド様も慣れてございます」
「えっと、でも。動きが鈍くなってきているんですけど……呼吸できないんじゃ……」
一瞬、息を確認しようと耳を近づけると、気配に気づいたのかスクルドは、暴れはじめる。
「大丈夫なようですので、お気になさらないでください。あっ、自己紹介が遅れました。アルバと申します」
「ハバキです。こいつは、アリスです」
「よろしくお願いします」
「ふむ、それじゃ作戦会議といくかの」
「ふむぐぐ~!!」
スクルドを除く四人は、作戦会議を始めようと中央のテーブルを囲むようにイスに座る。ブラドは、紙を取り出し、そこには簡単な絵が描かれている。
「パレードの様子は、定例通りならこのように行われるらしいのじゃ」
「なるほど……。でも、兵士は?」
「それもしっかり用意しておるのじゃ」
「はい、黒龍様から言われましたとおり。兵は、バラバラになって潜入しておりますので、安心してください」
「分かりました。ですが、作戦は?」
ふっふっふとブラドは、笑うと高らかに宣言する。
「ハサミ打ち作戦じゃ!! 原始的ではあるがの」
「そのような作戦で、本当に倒せるんですか?」
「まぁ、なんとかなるじゃろ。それに……絶対にどんな作戦だろうと失敗するわけにはいかないのじゃ
」
その目には、決意が見える。拳を握る姿に、みんなが立ち上がり、ブラドを見つめる。
「もちろん、ヘーベルを助けましょう」
「ご主人様を必ず助けます」
「絶対に妹を助ける…!!」
「感謝する。みな」
「ですけど……ブラド様の話だと、オーディンという人外並みの強さの奴がいるとお聞きしましたが」
その時、簀巻きの毛布が燃えあがり、スクルドが脱出する。青白い炎は、スクルドの身を焼くことはなく平然と立ち上がる。
「けほけほっ。それなら、大丈夫!! 一人で勝てないなら……二人一緒に戦えばいいじゃない」
「スクルド様、何を?」
「問題は、ヘイロンとキューちゃんが彼女のことをどれだけ想っているか……それだけ」
「ふむ? どういうことかの?」
スクルドは、ニカッと笑い、偉ぶるように両手を腰に回した。
「二人とも……その子に食べられるかもしれないけど……覚悟ある? 大丈夫?」




