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体中が冷たくなり、まるで凍ってしまったように自分の体に力が全く入らない。

これが、死んだ時の感覚なのだとマトバは感じた。


彼は、暗い暗い洞窟の中の川を流れに身を任せてどこかに流されていく。それが、天国なのか地獄なのか彼には分からない。それは神が彼の人生を見つめて考えるのであって、彼の意思で決めれるものではないからだ。

(せめて……王女は、天国にいけるだろうか……)

頭の中では、王女の心配ばかりしていた。

自分の全てを賭けて、今まで守ってきた大切な人は彼自身の目の前で、その命を失った。

彼には、この大きな川ほどの悲しみが胸の中に溜まっていく。


川に流されていると、ふと目蓋まぶたに力が入り辛うじて目を開けることができた。彼の目に写るのはただ暗い闇ばかりだった。

こんなに暗い闇の中なのだから自分は、きっと地獄に行くのだろうと彼は思った。

だが、その時。川の水を掻き分けて一隻の小さな木でできた舟が近づいてくる。船頭には蛇の形状になっている。その舟は、彼の頭に回ると彼が流されるのを止める。

「へぇ~、これはまた綺麗な魂を持った人が流されちゃって」

舟から彼に話しかけたのは、ボロボロの衣服を身に纏った一人の女性だった。黒い髪に黒の瞳、そんな女性だった。

「さてと貴方を舟に揚げるのは、まずその記憶をみてからっと」

女性は、ボロボロの衣服の中に隠された素肌が見えてしまうのも気にせず屈み、額に手を乗せる。

その手は、とても冷たく死んでいるようだった。

女性は、数分手を置きながらふんふんと頷くと笑顔を見せてこう言った。

「貴方、悲しい最後だったわね。でも、大丈夫よ。その子は天国にちゃんと行ったから」

(そうか……。なら良かった……)

「良かったの? せめて、天国には一緒に~ってならないの?」

彼女は、心の声を聞き取り応答する。

(俺は、大切な人の為に。何百という人をこの手にかけた。それはどんな御託を並べても罪だ、俺には地獄が合っている)

「ふ~ん、だいたいの人間って一緒に行けるもんが普通だと思ってたりするんだけど……変わってる~」

女性は、少しばかり考えるとぽんっと手をつき。また笑顔で話しかけてくる。

「貴方、やり直したくない? あの女と結ばれるかは分からないけど。せめて側にいたくない?」

側にいたい。

彼は、すぐにそう思った。


「素直でよろしい! えっとじゃあ、やり直しさせてあげる」


ぐいっと体を舟に引き上げられる。するとさっきまで凍りついていたような体が、氷が溶けたように動かせる。

「さてとじゃあ貴方の名前は?」

「俺は、マトバ。君は……?」

「私、カロンっていうの。さてとそれじゃあ、彼女と同じ魂を持った世界を探すから」

そういうと櫂を川の中に入れて、目をつぶり川の水をかき混ぜる。

すると川の渦巻き、そこに一つの暗い穴が表れる。

「はい、ここね。さてここに入ったらやり直せるから」

「カロンさん、何で俺にこんなことを? こんなことして怒られない?」

「勿論、怒られるわ。でも前回、ハーデス様に縛ばられた時……少し幸福感を覚えちゃって……」

頬をほんのりと赤く染めて、腰をくねらせる。その話を、マトバは聞かなかったことにした。

「それに貴方の魂は綺麗、そんなに人を殺しておいて汚れないなんて……面白い人だなって。それだけよ」

ほら入った入ったと櫂で背中を叩き、無理矢理穴の中に入れようとする。

「あっ、いい忘れるとこだったけど。生まれ変わるからその鍛えた能力は引き継げたとしても、姿は変わっちゃうかも。犬とかになったらめんごー」

「いいですよ、こんな機会を与えてくれたんです。姿形なんて気にしませんから」

なら良かったとドーンと背後から強く叩き、穴の中にマトバを叩きこむ。マトバは、まっ逆さまに暗闇に落ちていき、徐々にその意識を暗闇に溶け込ませていった。

「頑張ってね、貴方がまたここに流されていないことを願うわ」

カロンは、櫂でどこかに舟を漕いでいった。

できるだけ毎日二話投稿を心がけていきたいと思っています。もし二話が無理でも、一話はなんとしても投稿をするように努力いたしますので……どうか温かい目で見ていただければと思います。

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