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楽しんで頂けたら、幸いです。


ヘーベルが、目を開けるとそこは暗く明かりがささない部屋だった。部屋には、何もなく。自分の腕に蛇のように管が巻き付き、ヘーベルを拘束している。細やかな明かりが、彼女を照らす。

その時だ。目の前の壁が左右にスライドし、外から明かりとともに来訪者が現れる。



「よっ! 元気か?」

「貴様……」



嫌悪感のこもった瞳で、オーディンを睨む。その顔を見て、オーディンは笑みを浮かべた。



「おいおい、そんな顔するなって。俺の機転で、お前の仲間は助かったんだぜ? 感謝してくれよ」

「お前は、私の仲間を殺しただろうが!」

「お前だって、殺したろ? おあいこだ、おあいこ」

「くっ……」



ヘーベルは、自分を縛り付けている管を引き裂き、飛びかかろうとする。だが、管は更にヘーベルに絡みつき、桃のような膨らみへと絡まっていく。



「ちょっ! なっ!」

「やめとけ、それは無理に外そうとするともっと縛り付けようとする。お前の恥ずかしい格好が見られるから、俺はいいんだが」

「鼻血を垂らしながら、そんなこと言うな! 変態が!!」

「知らなかったのか、俺はド変態だ」

「キメ顔で……んっ……あっ……そんなこと」



管は、ヘーベルの動きを静止するように体中に絡み付いていく。ヘーベルは、それから逃れようとするが、その動きは反対に拘束をキツくしていってしまう。



「だから、動くなって。仕方ねぇな……」

「あっぐぁぁぁぁ!!」



オーディンが指をパチンと鳴らすと、管から電気が流れ出て、ヘーベルの体を内側と外側から傷つけていく。彼女は、その一撃を受け、ぐったりとし、力が抜け、管に手をぶら下げて、顔をうつ向かせる。



「やれやれ、やっと静かになったか」

「くっ……聞いていいか……?」

「ん? なんだ?」

「何で……私は……下着だけなんだ……?」

「そりゃ、お前。あの武具があったら、戦えちゃうだろ?」



彼女の武具は、外され、殆ど露出のある格好をしていた。膨らみを隠すように厚く巻かれたサラシに。下は、男らしくふんどしというとても異性に見せるべきではない格好となっている。



「変態!! 変態、変態、変態っっ!!」

「おいおいあまり誉めるなって興奮するだろ?」



ヘーベルは、その言葉を聞いて心の底から嫌悪感が表れ、彼にはとてつもない嫌悪感と自分の身の危険しか感じられなかった。



「何で、私を殺さなかった?」

「そりゃ、俺の嫁にするって決めたからだよ。最強の者の嫁は、それに習って強者であるべきだ。だから、お前は俺の嫁!!」

「とりあえず……一度死んでください。そしたら、考えます」

「ひどっ! 今の言葉は、俺の胸に突き刺さったもんね!」



オーディンは、膝をつき両手をついてうずくまる。今の一言に相当なショックを受けたのだということが分かる。

だが、すぐにむくりと立ち上がるとポケットからタバコを取りだし、火を点ける。



「ま、まぁ……俺は最強だから心も強いし気にしてねぇよ……うん」

「なら、足を震わせるな。負けた私が、ショックだから」

「震えてねぇよ、これはトイレを我慢してるだけだ」

「なら、さっさとトイレに行け!!」



ふぅ~と口から煙を天井に吐き出し、ヘーベルを見下ろす。ヘーベルは、そんなオーディンを睨み付ける。



「まぁいいさ。俺好みに調教すればいいだけだし」

「くっ………」



こつんこつんと足音を立てて、オーディンはヘーベルに近づき、顎を人差し指で上げると、顔を近づけてくる。オーディンが、何をしようとしてるのか悟ったヘーベルは、必死に顔をそらし抵抗しようとするが、しっかりと捉えられてしまう。

息がかかるほどの距離を感じると、ヘーベルはたまらず目を瞑る。

その目には、うっすらと涙を浮かべていた。



「オーディン様!! ここにいらっしゃいましたか!! パレードの警備の会議に参加してください」

「ちっ……いいとこだったのによ。分かった、今いく」



オーディンは、ヘーベルを置いてその部屋から出ていく。出る寸前、軽く振り返ったオーディンはにこやかな顔をして手を小さく振った。

ヘーベルの残された部屋には、また申し訳程度の照明が一つ。

緊張の抜けたヘーベルは、涙を流した。



(良かった、良かったよ。男となんで絶対嫌だ!! くそっ、次に会った男は必ず殴ろう)



静かな闘志をヘーベルは、燃やした。





「さて、どうするかの」



大切な仲間を失い、ヘーベルを奪われた三人は無事逃げ切ることができ、オーディンの言った通りに追手もお尋ね者になることもなかった。

部屋のベッドで、傷ついた体を癒しているハバキ。ホテルの壁に頭をつき、静かに壁を殴っているアリス。壁に寄りかかって、どうするかを考えているブラド。

三者三様、皆違ったリアクションを取っている。だが、皆。胸の中では、ヘーベルを救いだしたいという気持ちは同じだった。



「くっ……ヘーベル……」

「姉君よ、壁など殴っても仕方ないじゃろ。それよりも兵士を集めることが先決じゃ」

「兵士ったって、どうやって集めるんだ?」

「私の古い付き合いの者がいての。そやつにお願いをしにいこうと思う」

「それは、誰なんですか?」

「ふっふっ、それは見てのお楽しみじゃ。姉君達は、どうする?」



ヘーベルを助けたい。それを実現するために、今、アリス自身が何をすべきか考えた。



「私は、腕を磨きます。強くならないと……あの銃を使う子には勝てない気がするんです」

「なら、おれも手伝うぜ」



ハバキは、ベッドから体を起こす。

その体には、まだ癒しきれていない傷が残る。

「大丈夫なのか、ハバキよ」

「大丈夫だ。ほとんどの傷は、アリスに癒して貰ったしよ。これくらいは、かすり傷だぜ」

「すまない……お姉様のように綺麗に消せればいいんだけど……」

「気にするなって」



アリスの頭にポンッと手を置き、軽く撫でる。アリスは、少し頬を染める。その恥ずかしそうにする様子は、とても愛らしく可愛いものに思える。



「ふむ。それでは、各々……む? キューは、どこにいった?」

「えっ、さっきまであのテーブルに」



そのテーブルには、何もいない。

上がっているのは、白紙の紙、一枚だけだ。



「まぁ、そのうち出てくんだろ。仕方ない、とりあえず俺ら三人。動こうぜ」

「ふむ、そうだな」

「キューちゃん……。心配だけど……そうよね。早く動きましょう」

「それでは、残り三日間。各々、頑張るとするかの!!」



三人は、手を取り合い。三日後のパレードの日を目指して、各々の動きを見せて始めた。必ず、ヘーベルを取り戻すために。彼女の願いである王を打倒するために。





「はぁ……はぁ……」

ヘーベルは、深呼吸を繰り返していた。

力を極限まで抜き、脱力する。

体の中に気を溜めて、腹から気を血液のように体中へ流す。体中から、熱を放出する。

不意に、二つの膨らみに熱を感じ、目を開けるとそこには魔法陣が描かれていた。その光景に、ヘーベルに既視感があった。

それを確かにするように、ヘーベルの前にキューが現れた。



「キュー!!」

「助けに来てくれたの? キューちゃん!?」

「キューキュー!!」



ポンッと煙から現れたのは、シカのような角が生え、白の和服に身を包んだ男だ。中肉中背、鼻が高く白い肌をした美形の男だった。



「なっ……」

「御主人様、お迎えに参りました。まったく……このように縛り付けて」

「男……」



縛っていた管を力ずくで引きちぎり、助け出すとキューはヘーベルへと抱きつく。



「御主人様~!」

「お前、男だったのかぁぁ!!」



とりあえずキューに罪はないが、キューは頭突きという制裁をヘーベルから受けることとなった。

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