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先日は、投稿できず申し訳ありません。

安定した投稿を心がけていきたいと思いますので、これからも温かい目で見ていただければ…幸いです。

 


 狙撃手を追いかけて、四人は駆ける。その追撃に、スクーシナが黙っているはずもなく。その銃から何発も銃弾を放つ。その猛攻に、四人はなかなか彼女の元へとたどり着けない。彼女達が、動けない間にスーシナは場所を移すことを考え、他の狙撃ポイントを考える。

 

 見える先には、同じように高くそびえ立つビルが、幾つもある。

 その中で、今のビルよりは幾らか低いが、良い狙撃ポイントを見つけた。

 ニヤリと笑ったスクーシナは、ドラグノフについていた革の手提げを右肩に掛け、彼女は距離をとる。

 深呼吸し、息を整える。心を落ち着けているのだ、頭の中でのイメージを済ませて彼女はビルの先へと目を見据える。

 

 覚悟は決まった。

 

 彼女は、手を振り全速力で走る、走る、走る。

 心臓が早鐘を打つのを感じる、果たしてそれは息を多く取り入れてのことか。

 それとも、ここを跳べるかどうか緊張してのことか。

 一瞬、目を強くつぶり、目を開けた。


 跳んだ、いや飛んだ。


 彼女は、ビルから力強く跳ぶ。一瞬、空中で前に飛ぶが、彼女はシュトゥルムのように武道に精通し、気の運用ができるほどまで鍛えているわけではない。だが、彼女には文明の利器――魔術かがくがある。スクーシナは、指先で軽く左肩をトンッと弾くと、背中のドラグノフをすり抜けて、パラシュートが生えてくる。

 パラシュートをうまく使い、風を読み、目標のビルへと降り立つ。



「はぁ~、こわかった~。高所恐怖症の私にこんな怖いことさせないでよ~」



 ドラグノフを構える、彼女の目の色が変わる。

 そこにいるのは、あどけない今風の少女ではない。

 相手を確実に死に追いやる一匹の狩人がそこにいた。



 ブラド達は、動けずにいた。

 ビルからは、遠く未だ、たどり着きはしない。

 だが、その銃弾の嵐が止み、四人達は進む。



「くっそーー! 仲間たちの仇だぁぁぁぁぁ!」

「死んじまえぇぇぇぇぇぇ!!」



 数人の男達が、銃を構え打ち込んでくる。それに怯むことなく、アリスは突き進む。頬や腕、足を銃弾が掠めていく。傷口から血が流れるのも構わず、アリスは前に出る。



「妹はあんなに傷つついてまで、私達を行かせてくれた! 私が傷つくことを恐れて、前に出なかったらへーベルの意思が無駄になるっ!」

「馬鹿が、的になるじゃねえか! 俺が的になってやるよ!」



 アリスに続くようにハバキが、突き進む。

 軽やかに動く二人に敵はなかなか的がつけられない。二人は、敵の集団へと飛び込み、右半分をアリスが。左半分をハバキが斬り倒す。

 アリスの死角の暗闇から、白い閃光を上げた斧が振り下ろされる。



「アリス、危ねえ!!」

「くっ!!」



 反応がワンテンポ遅れてしまう、そして身の丈を超える斧の一撃。

 彼女は、それが自分の顔面に降りてくるのをただ見ているしかなかった。



「ぬぅんん!!」



 ヴォルフが、その一撃を止める。

 だが、それでも完璧には受け切れていない。ヴォルフの体から逸れた威力が、地面に伝わる。アスファルトにヒビを入れ、ヴォルフの体が沈む。



「あんれ~、可笑しいですな。女子おなごは、完璧に粉砕したつもりだったのですが。まさか、オオカミさんに止められるとは~」



全身鎧の男が、鎧の中で残念そうな顔をしたように思えた。腹が膨れそれに対して、ヴォルフはどこか辛そうに見える。それもその筈だ。この一撃に、全力を掛けて防いでいる。自分の許容できる力以上の力で押されているのだ。絶えることはできても、押し返すことはできない。

 だが、この中でこの怪力に対応できるのは、ブラドとヴォルフ自身。

 アリスやハバキでは、怪力があるわけではなく二人は対応できない。

 ヴォルフは、苦しいながらも笑って、アリス達に言う。



「ここは、ワシに任せて先に行け。怪力には怪力だ、嬢ちゃんが繋いでくれた道。今度は、ワシが繋げよう。アリス、ハバキ、そして黒龍よ。頼んだぞ」

「いや、そやつは私が」

「あんたは、あの狙撃手をなんとかしてくれ。こういう雑魚は、男に任せて。本丸はあんたみたいな力のあるやつが叩くべきだ」



 三人の足元をバチュンと銃弾が掠めていく。

 どうやら、狙撃の準備が整ったようだ。




「いけぇ!! 若者よ、未来を掴んで来い。ワシ達が行ったことが、明日に未来に生き残るように。せめて、その傷跡を残してこい」




 銃弾が足元を掠めて、ヴォルフに近づけない。そんな状況で、ハバキは奥歯を噛み締めて言った。

「じいさん……すまねえな。そんな奴、俺でも倒せるが、じいさんに譲ってやるよ。だから必ず、追ってこいよ」

「待て、ハバキ!! くっ、頼みます……」

 


 二人は、ビルの隙間を駆けていった。

 ブラドは、無言でヴォルフを見つめるとヴォルフは、平気そうに笑って見せた。その顔を見て、安心したのかブラドも二人の影を追いかけていった。



「あっれ~、大丈夫なの? オオカミさん、本当は辛いんじゃないの~?」

「なら少しは、力を緩めてくれないか。耐えるのもなかなか疲れて、このままじゃ潰れそうなんだ」

「だっめ~、だってさ。オオカミさん、潰れるとこみたいもん~。ぶちっといっちゃって~」

「ちっ、悪趣味な若造め」



 メイスを捨てて、後ろに後ずさりその一撃からなんとか逃れる。

 だが、代償としてメイス二本は、裁断されてしまった。

 ヴォルフに残された武器は、残りの手足のみ。

 明らかに多勢に無勢だった。



「ふん、ワシも終わりかの。だが、最後に……人の物を壊す悪餓鬼にお灸をすえてから老兵として去るとするか」

「オオカミさん、もっと遊んでよ~」



 ブンブンと斧を振り回すその光景は、確かにまだ幾ばくもいかない年の子が、ガラガラを振り回している姿に似ている。そんな可愛げのある子供とは違って、こちらの者は鎧を身に纏った自分で善悪を判断できる大人ではあるのだが。



「来い、若造。ワシが、ちゃんと教育してやる」

「教育~? オオカミさんは、悪者だって昔から決まってるんだよ~」



 自分の鎧を脱ぎ捨ててヴォルフは、この無謀とも言える戦いに挑む。

 背中に背負っているのは、仲間の命。

 その両肩に背負っているのは、自分と関わりの深かった村人の命。

 負けられるわけがなかった。

 負ける道など、ヴォルフになかった。



「若造、私を殺せるものなら殺してみろっっっっ!!!!」



 ヴォルフは、人を辞め。獣、狼として肉を食らう獣として鎧の男へと飛び込んでいった。 



「オオカミさん~~!」



ブンッと斧が振られ、それをよけ、顔へと向かい、頭の鎧を剥がす。そこから、現れた顔はダルマのような丸顔のぷっくりとは、違うぶくっと腫れたタラコ唇の男だった。



「うわぁ~! 僕の返して~!」

「ふんっっ!!」




地面を蹴り、飛び上がるとその顔面を蹴りあげ、肩を掴み、クルリと回転すると、もう一度蹴りを入れ、男の両方の頬が腫れる。



「いったー!! オオカミさん、痛いよ~!! やっぱりそんなオオカミさんは…捻り潰す」



ニタァと笑うその顔に、ヴォルフは怯えず、口の中の牙を露にし、反対に威嚇する。

ヴォルフは、距離を取り、男を囲むようにヴォルフは円上に駆け、男の死角から何度も顔面狙って飛び込み、爪で切り裂く。



「くそっ! くそっ!」



男は、その動きに混乱したかのように思えた。

だが、それは違った。



「なん~てね!」

「くっ!!」



ブオンと風切り音を立てて、真っ直ぐにヴォルフに向かって振られた。

一瞬の空白が起き、プシャァと暗闇に赤黒い液体が空に向かって吹き出し、アスファルトにかかった。

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