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楽しんで、読んでいただけるような話になっていけるように一生懸命書いていきたいと思います。
感想等頂けると。文章の拙さや読みにくさ等を指摘頂けると、直せると思うので…頂けたら嬉しいです。
五人は、村で葬儀をした。
誰かが死んだわけではない。ならば、誰の弔いかといえば五人のものだ。
五人は、成功したとしても失敗したとしても魂はこの村に眠る。五人が、この村に帰ってくる気はないという決意の表れでもある。
村から出るとき、見送ったのは身内の数人だけだ。他の村人も本当は、見送りたかったのだが、革命関与したという証拠ということでバレてしまえば、村人の全員が、処刑されてしまう恐れだってある。
そのため、最低限の身内の者達で送ることとなった。
「アリス……ヘーベル。気を付けてね」
「お姉様こそ、どうかお元気で」
「メディカさん、必ず成功させて……お姉ちゃんと一緒に帰ってきます」
「う……うぅ……」
メディカの目から涙が零れ落ち、それを必死に隠そうとする。そんな姉の姿を見たアリスは、抱き締め安心させるように頭を撫でた。
「心配ないぜ、アリスとヘーベルには傷一つつけさせやしねぇよ」
「そうだぜ、メディカ。きっと、成功する。嬢ちゃん達は、任せな」
「ふむ、嫁に手出しなどさせんよ。それに嫁の姉君じゃ、精一杯守るから案ずるな」
「ありがとうございます」
涙を流しながら、三人に会釈をし。二人を頼みますと言って、三人と握手をかわした。
「うむ、じゃあ妹。私からお前への差し入れ」
「へっ? あ、あの?」
それは、黒く漆塗りされた手甲だ。元々着けていたものを外し、新しいものと変えてくれる。
「これは、私特製のもの。都じゃ、最新式の武器とかあるっていうし、頑丈でそれでいて軽くしたから。気負いせず、その拳振るいなさい」
「あ、ありがとうございます」
ブイッと表情を変えず、真顔のまま指を二本。顔の前につきだした。彼女からは、表情がまったく掴めなかったが目元にくまが見てとれる。寝ずに、ヘーベルの為に作ってくれた。その温かい気持ちを確かめるようにヘーベルは、拳を握る。
「それでは、いってきます」
ヘーベルと愉快な。いや、ヘーベルと悪を倒すために立ち上がった英雄が村を後にする。その後ろ姿を村人は静かに見送った。
●
都に、着くまでには三日かかった。三日の間は、順調に進み、無事都へとたどり着く。そこは、まるで箱庭だった。大きな塀に円形に囲まれ、その中からひときわ目立つ城が見える。王が住むには、十分な佇まいだった。
いざ入ろうと思ったが、問題があった。そこは、門で固く閉じられており、門の外には二人の門番が見える。
「あの、門番がいるんですけど………」
「あぁ、まさか門番がいるとはな」
「あのそんな前情報聞いてなかったんですけど……」
「いや、俺も都初めてだしさ。じいさんは、知ってたか。都のこと?」
「いいや。都には、一回出入りしたことがあったがこんな大きな塀などなかった」
皆、門と門番の存在に驚いているなか一人だけまったく驚いていないものがいた。それは、あのブラドだ。彼女は、元々この都住まいだ。知らぬわけがなかった。
「ふむ? もしや知らなかったのか?」
「はい、まさかこんな感じだとは……」
「仕方ないのう、ならあの門を通る方法があるが一つあるが教えてほしいかの?」
「何だよ、ドラゴンばぁさん教えぶっ!」
「こいつは、無視してください。ブラドさん、どうか教えてください」
余計な一言を言ったハバキの顔をアリスは、殴る。彼女の鋭いストレートを受け、ハバキはノックアウトした。そんなハバキを無視して話は進められた。
「なら、嫁よ。わたしに『ブラド様、大好きです』と言ってくれたら、教えてやらんでも」
「へっ?」
「だから、大好きと言ってくれたらと教えてやると言っておるのじゃ。どうだ、嫁よ。私に言えるか?」
「ブ、ブラドさん? そんな意地悪せずに素直に教えてくれても……」
「姉君は、黙っておれ。これは、私と嫁の問題じゃ。さぁ……どうする?」
(そんな恥ずかしいこと……言えるわけないだろ。だが、ここで言わなきゃ絶対に言わなそうだし……)
体をぷるぷると震わせ、顔を真っ赤にして言葉を紡ぐようにゆっくりとした口調で言った。
「ブラド様……大好きです。お願いですから……教えてください」
ぷるぷるとその小さな体を震わせ、恥ずかしそうに告白してくるヘーベルの姿にブラドは、萌えというものを感じた。
反対にヘーベルにとっては、前世の人生合わせても初めての告白を大切なアリスではなく、別の女性に捧げてしまったことで心の中で、血の涙を噴水のように流していた。
「では、私に付いてこい」
四人は、言われた通りに付いていくと門番が近づき、手に持った槍を構える。
「お前達、入国許可証はあるのか?」
「出さなければ、敵国の者としてこの場で排除する」
一人の者に近づき、首に腕を回して抱きついたブラドは耳元で吐息混じりの甘い声で語る。
「主は、長い時間の労働で溜まっておるのではないか? この門を開けてくれたら、夜の長い時間。私とこの娘二人が主の溜まったもの……全て吸いだそう……どうだ?」
「うっ……本当か……」
「本当じゃよ、ほらそんな甘い時間……過ごしたくないのか……?」
唾を絡めた舌が、唇を舐めて挑発する。ブラドのそんな姿大人の色香を見たアリスはすぐさま、ヘーベルの目を隠し。目を反らしていたヴォルフは、安全と判断し、ハバキの顔面に蹴りを繰り出しその視界を封じた。
「あの、どうかしたのですか?」
「お前ら……門を開けろ。俺の為に早く……」
「で、ですが?」
「いいから早くしろ!! この者達は、特別なんだ!! だからさっさと開けろー!!」
はいっと後ろで休んでいた者達も門を開けるのに助力し、門を開け放つ。ゆっくりと開いたその先からは、太陽の反射した目映い光が目に少し刺さる。
目を開けた時、ヘーベルは驚く。
視界に合ったのは、まるで――
「――現代……?」
目の前に広がっていたのは、自分達と同じ格好をしてはいるが、車などが走っている。建築物もコンクリートで固められており、現代の都会を思わせる。唯一、違うものといえばコンクリートで固められたその先に高く大きく広大な城があるのだ。
門を開けた先には、少しズレた現代が広がっていた。それは、前世と同じだが違う異世界特有の都会と言えるのかもしれない。
「嫁よ、驚いたか。ここが南の国の都である『スーサ』じゃ」
「これが……都」
都で暮らす人達が、道を歩く。人々は、様々な仕事や悩み、楽しみを抱えて生きているのが見てとれる。そんな明るく暗い世界を彼女はこれから戦火に変えようとしていた。