8話 恐怖?
、、、まさか無意識にあの力が出ていたなんて、俺はこれからどうなるんだ、、、
「ポロッ」
「あんた、なんで泣いてるのよ」
俺は聞き慣れた人の声を聞いて目が覚めた。
そうか、俺は寝ていたのか。
俺は一度体を伸ばしてからリン先輩の方を見た。
するとリン先輩は俺の顔をジッと見て、少しホッとしていた。
どうやらずっと心配していてくれたようだ。
リン先輩と俺は親子の様な感じだからなのだろうか。
先輩は少し間を置いてあの力の事を聞いてきた。
「ライト、あの力に関して何かわからないの?私はまだ見たことが無いけど、雷獄事件の事を考えると、、、」
知るわけが無い、そもそも俺の世界では体から闘気は出せないからだ。
雷獄事件については、俺の故郷ラガシアでの両国の謎の消滅事件のことだ。何でも地獄の様な雷だったからそういう名前になったらしい。
その原因は俺なのだが、、、
お互い黙っていると、部屋のドアが空き、リオン先輩が入ってきた。
「よかった、意外と元気そうだね」
リオン先輩のその言葉に俺は返事をした。
先輩の顔を見ると何か言いたそうな顔をしていた。
そしてリオン先輩はいきなり驚くことを言ってきた。
「突然で悪いんだけど、俺と練習試合をしてくれないか?」
俺はその言葉の意味が分からなかったが、リオン先輩は無意味なことは言わない。何か考えがあるはずだ。
俺はスッと立ち、先輩にお願いをした。
俺は準備が終わり、リオン先輩の方を見ると先輩は円形の機械を弄くっていた。
あれは武装許可が出ている組織には1人に1つ持っている「クルセイダー」というものだ。
クルセイダーの機能を知った時はかなり驚いた。
なぜならこの世界に魔法があることは知っていたが、まさかそのクルセイダーという機械が魔法を発動するからだ。
クルセイダーの見た目はガラパゴスケータイとそっくりで蓋を開けると、中にスクリーンがある。
そのスクリーンには回路が映っている。
最初は回路のほぼ全ての丸いスロットにロックがかかっていて、低ランク魔法のスロットしか使えない。
ロックを解除するには魔法をどんどん使うしかない。
使えば使うほどクルセイダーにスキルポイントが増えそのポイントで解除することができる。
そしてクルセイダーにはもう一つの効果がある。
ゲームなどでよく見るステータスの向上もできるのだ。
ステータス向上も回路を解除していくことで強くなっていく。
と、クルセイダーはすごく高性能の機械なのだ。
「なんでこんなの作れるのに、車とか携帯がまだできていないんだ?」
と俺はつい呟いてしまった。
ただ、、、俺は先輩が持っているのはクルセイダーだけということに疑問を持った。
なぜならクルセイダーは魔法を発動する時、約7秒の膠着時間がある。確かにこれも回路を解除していけば、5秒まで下げられるが、俺にとっては5秒でも正直勝てる。
「一体何を考えているんだ?」
それに、急に手合わせしようって何を考えているんだ。
まあいい、とにかく集中だ。リオン先輩の戦い方も見れるいい機会だ。
「さて、お互い準備できたわね。それじゃ、、、、、、始め!」
リン先輩の声とともに俺は刀があたる位置まで距離を詰める。
やはり先輩はクルセイダーしか持っていない様で、魔法の準備をしていた。
よし、このまま決める!
俺がそう思った瞬間、先輩が俺の目の前で消えた。いや消えてはいないが、一瞬そう思わせるほどのスピードで右に回避したのだ。
俺は驚いた。別に回避したことに驚いたわけではない。俺が驚いたのはリオン先輩が既に魔法を発動していたことだ。
魔法は攻撃魔法ではなく補助魔法の「クイック」
自分の動くスピードを上げる魔法だ。
ありえない!俺がそう思っていると先輩は再びクルセイダーを起動させた。
俺は警戒したが何も起きない。なんだ?
すると先輩はさらに速く動ける様になっていた。
またクイックか、、、
このスピードだと俺の刀は絶対に当たらない。
俺は諦めようとした。しかし、リオン先輩の言葉を聞いて俺は驚いた。
「ライト、あの力を使うんだ。ただ怖れてはいけない。なんとかコントロールしようとするんだ。」
俺は迷った。ラガシアの時の様にまた自分は全てを破壊するのではないかと、、、
「ライト、リオンの言葉を信じなさい。そして自分を信じなさい。
あんたは弱くないし、悪魔でもなんでもないわ!」
リン先輩の言葉を聞いて俺は静かにあの力を解放しようと精神を集中させた。
そうだ、あの二人は普通に強いから俺がもしも暴走したとしても何とかしてくれる。
だから、絶対使いこなして見せる。
すると俺の体から紅黒い電気がほとばしる。
その時、俺は一瞬取り込まれそうになった。
だがリオン先輩は心を穏やかにする魔法。
「リラクス」を発動してくれ、なんとか意識は保てていた。
ここからは俺がこの力を制御するんだ!
俺は心の中で悪魔のような力をなんとか制御しようと自我を保とうとする。
しかし、やはり恐怖で負けそうになる。
「くっ!やはり駄目なのか?」
俺はこんな恐怖今まで一度も味わった事がない。
そう思った時、俺は現実での山崎隼弥の事を思い出した。
"そういえば、中学の時もこんな想いをしたな〜、俺は別に虐められていた訳じゃなかったけど、誰も俺の事を見てくれない。わかってくれない。
俺は裏切らなくても裏切られる。
そういう立ち位置の人間だったからな、、、
あの時は本当に辛かったな〜、こんな恐怖よりも全然怖かった。
だから"
数秒うつむき、沈黙の時間になった。
そして俺は前を向いた時、周りの景色は赤く見え、体からは完全に紅黒い電気が迸り、髪は白くなっていた。
リン先輩とリオン先輩は警戒していた。
だが、俺がニッコリ笑い2人に語りかけると、ようやくホッとした。
俺はこの力をついに使いこなすことができるようになったのだ。