7話 悪魔の子
時は法暦1503年4月10日、ここ、エタナリオ帝国の都ラーダオには、約500万人もの人々が住み、電車も通っている。
とは言っても、現実世界程の技術力は無く、自動車や携帯などの精密機械はまだない。
俺は今、ラーダオにある<セイバー>という人助けが仕事の組織にお世話になっていた。
「ライト!あんたまた勝手に依頼片付けたでしょ?あんたまだセイバーじゃないでしょーが!」
リン先輩のいつものお説教が来た、、、
まあ、先輩の言うとおり俺はまだセイバーにはなっていないから確かに依頼はやってはいけないのだが。
「でも先輩だって13才からやってたらしいじゃないですか?それと同じですよ」
俺がそう言うと、リン先輩は呆れ顔で俺に近寄って来て、頭にチョップをしてきた。
「たくっそんな話嘘に決まってんでしょ。
とにかく、あんたは15才になるまで修行やらしてなさい」
そう、セイバーには15才にならなければ加入することは出来ない。
セイバーについて少し説明すると、まずはランクが下からノーマル、ブロンズ、シルバー、ゴールド、クリスタルと5段階に分かれている。
勿論、ゴールドやクリスタルはかなり上位の実力者でコール大陸に、ゴールドは約40人、クリスタルは約20人しかいない。
このラーダオ支部には11人のセイバーがいて、その中でサイクス先輩とリン先輩がゴールドなのだ。他の先輩達はほとんどノーマルかブロンズで、リオン先輩もブロンズだ。
「ほら、分かったら返事しなさい!」
俺は小さく頷いた。
すると、先輩は急にニッコリ笑い頭撫でてきた。
俺はつい顔が赤くなってしまいすぐに先輩の手を払った。
「ふふふっ本当お子ちゃまね〜、お姉さんの撫で撫でで赤くなるなんて」
俺は恥ずかしくてずっと下を向いてしまった。当たり前だ、普通ならもう20代になっている歳なのに18才の女性に頭を撫でられるなんて、、、
「じゃあねライト、あんたが依頼やっちゃったから私たちは帰るわ。
リオン!帰るわよ!」
リン先輩がそう言うと奥からリオン先輩の返事が聞こえた。そして数分後2人は家に帰った。
セイバーの人達はみんな自分の家を持っているため、夜7:00ぐらいにはもう俺しかいないのだ。
そして今日もいつも通りみんな家に帰って行った。
「はあ〜、セイバー部署って1人だと本当つまらないな。
面倒いけど勉強でもするか、、、」
俺はこの世界での歴史や数学の勉強をした。
正直歴史の方は元の世界に戻ったら何の役にも立たない。だが数学はどうやら現実世界と同じようなので助かる。
それから約1時間が経つと、玄関のドアから音が聞こえた。
俺はドアにある覗き穴で外を見ると、何やら困っている顔をした30代くらいの女性が見えた。
俺はすぐにその人を中に入れてやった。
するとすぐに女性は言った。
「お願いです!夫と子供を助けて下さい!」
俺はとにかく一旦落ちつかせ、手短かに話を聞いた。
どうやら、夫は旅の商人で家族でラーダオに向かっていて、ラーダオの手前で魔獣に襲われたらしい。
「分かりました。とりあえずここで待っていてください」
そうして俺は父さんからの刀
「蒼電」(そうでん)を腰につけ出て行こうとすると、
「えっ!?待って、もしかしてあなたが行くの?」
俺はその言葉をいつも聞いている。だから俺はそう言われた時はいつもこう返事をする。
「先輩を呼びに行くんですよ」
すると、女性はホッとし、お願いしますという感じでお辞儀をした。
そして俺は現場に一直線に向かった。
勿論、先輩たちは呼びに行かない。とにかく俺は急いだ。
町の外に出て辺りを走ると、1人の男性と小さな男の子がイノシシのような魔獣に襲われていた。
男の子は既に気絶していて、男性も倒れていた。そこにトドメを刺そうと突進の準備をしている魔獣に向かって俺は蒼電を振り下げた。
すると、魔獣はすぐに体を俺に向け襲いかかってくる。しかしこの辺の魔獣はラガシアのと比べて、あまり強くない。
「魔獣も都会の方で育つとあまり強くないのか?」
俺はそう思い一気に終わらせようと、父の名無しであった流派「閃光蒼隼流」(せんこうそうしゅんりゅう)の一の太刀「電光」を繰り出した。
電光は単純に右から真横に切る技だが、武器に俺の闘気である蒼白い雷を流し込み追加ダメージを与える。
オマケに刀を振る速度がとてつも無く早くなるのだ。
その姿はまるで光のように速く、蒼白い隼をイメージさせるので流派の名前が閃光蒼隼流なのだ。
魔獣の方を見ると既に動けなくなっていた。
俺は倒れている2人のところへ行き、軽く手当をし、セイバー部署へ向かった。
「それにしても、大したケガが無くて良かった。」
俺はそう呟くと急に横から強い衝撃を受け飛ばされた。
幸い2人は無事だった。
「ぐぅ、一体なんなんだ?ラーダオまであと少しなのに、、、」
俺はさっき立っていた場所を見るとさっきのイノシシの魔獣が5体もいた。
正直驚いた。ラガシアの方の魔獣は強いが集団戦法などやらない。
「まったく、都会の魔獣は頭がいいな」
俺はすぐに立って刀を構えた。
そしてニヤリと笑い、閃光蒼隼流、特式二の太刀、
「落雷」を放った。
しかし、その雷の色は紅黒い方だったが俺は気づかなかった。
落雷は一定範囲に闘気の雷を落とすその名の通りの技だ。
そして俺はどっちかと言うと、1対1よりも、
1対複数の方が得意なのだ。
本当は閃光蒼隼流に落雷はないが、俺が作った技なので、特式という名前で使っている。
しかし、特式の技は全て雷系の技なので、正直使える人は少ない。
とにかく、俺はすぐに男性と男の子を担ぎ、セイバー部署へ向かった。
セイバー部署へ到着すると、いきなりグーパンチがとんできた。
俺はそれをなんとかかわして前を向くと、先輩達がいた。
「なんで皆さんいるんですか?」
とおれは尋ねると、先ほどの女性が喋った。
「カウンターに皆さんの電話番号が書かれた紙があったので、そこの固定電話で、、、
やっぱり、小さい子にお願いするのは心配だったので、、、」
「まあ、そういうことだ。確かにお前はいい働きをしたが、それでもまだセイバーじゃないんだから、ダメだ!」
サイクス先輩に怒られてしまっては、もう15才になるまで本当に依頼が出来ないなと思い、俺は黙った。
それからは、男性と男の子の回復をただ待った。
数時間後、2人は回復して一応状況整理などで、残って貰った。
3人の名前は夫がルイスさん
妻がアイナさん、男の子はアルス君と言うらしい。
俺たちも自己紹介をすると
男の子はやけに俺に怯えていた。
少しでも近づくと、母の後ろに隠れたりする。なんでだ?と思い聞いてみると急に泣き出した。5才だから仕方がないが、なんで俺の方を向いて泣くんだ。と思っていると。
「あの人の目、怖かった。赤くなってて、それに雷が赤と黒で、、、ぐすん」
俺はそれを聞いて驚いた。いや、この場にいる全員が驚いた。
まさか、紅黒い雷をまた出していたなんて、それに今度は目まで紅くなっていたのか?
その時からだった。エタナリオ帝国のセイバーには、悪魔の子がいると噂された。