第4話
お読みいただきありがとうございます。
もしかしたら、変更する部分があるかも知れません。
空気が何とも重たい中で、俺はゴブリンの村に行く道の間に色々な事を聞いた。
この時の頑張って聞いた俺の勇気ある行動を褒めて欲しい。
何故なら、この群れのリーダーだろうゴブリン以外は全員、アリーと特に俺から怯える様に距離を取っていたからだ。
何とも気まずい空気だった……。
アリーの行動はある意味正しかった。
しかし、それはゴブリン達にも言える事だ。
突然見知らぬ昆虫が自分達の村に来たら、それは警戒をするだろう。
森が荒れている状況の現在ではなおさらだ。
そして、いきなり襲い掛かってきて、身を守るためにそれを撃退したアリーも然り。
故に、この場の空気はどうしても居たたまれなかった。
しかし、少ないながらにも情報を得た。
まず一つめは、森が騒がしいのは何も人間達が来たからだけじゃないらしい。
どうやら南東の方で魔王なる存在が戦闘パーリィを開催しており、この森以外の魔物や魔獣達がそれに様々な影響を受けて、この森まで来たからである。
迷惑な事この上ない。
それで余計に森が混乱していたんだな。
魔王いたんだな……絶対会いたくない存在だ。
早く勇者に倒されないかな。
もちろん勇者いるよね? いなかったらもうこの世の終わりだ。
二つめは、俺に自覚はないがどうやら俺の身体から漏れ出ている“魔力”が強すぎる事だ。
なるほど。
それでゴブリン達は怯えてこうやって距離を取り、警戒をしているのだろう。
どうやってコントロール出来るのかはまだ今一分からない。
だが、“魔力”とは……ずいぶんと“刺激”してくれるじゃないか。
ついに異世界に来たぜ! という感覚が強くなってくるぜ。
何故なら、魔力があるなら“魔法”だってあるに違いない。
ふふふ……、やべーよ、まじっちょっべーよ。
だって魔法だぜ! 魔法!。
中二病患者、イタイ子、頭クルクルパー―――略してクルパーと様々な異名を持つこの俺が、決してお目にかかれないと言われた魔法がある世界に来たのだ!。
これは是が非でも使ってみたい!。
我が身に宿る究極最終超越神ゴッド・ベイオス・ハルマゲドンの残滓よ! 内なる力を解放し、煉獄の業火と黄昏の光を与え、哀れな愚者に刹那の雷と死と破壊の風を吹かせ―――ファイアーボール!。
みたいなイタイがカッコいい魔法呪文が公の場で“堂々”と出来る!。
もうイタイ子とは言わせない。
クルパーとも呼ばせない!。
俺の時代がついに来たんだ! と興奮していると、いつの間にか村に到着していた。
俺はエキサイティングに燃える心の絶叫を頑張って抑えて、ゴブリンの村を眺めた。
村というからどんな村なのか想像をしていたが、実際に見ると、えっ? と声が喉の奥から出かけて慌ててそれを呑み込む。
目の前に見える村の姿は、はっきりと言って村とは言えず、集落という方が適切だろう。
いや、集落という方も怪しい。
家など大層な建築物は一切なく、唯一それらしい建物の中に案内される。
屋根は藁みたいな草で作られ、壁は隙間だらけな上に所々歪んでいる。
大丈夫なのか? いきなり崩壊する事ないよな?。
暫くアリーと共に座って待っていると、先ほどここに案内してくれた群れのリーダーのゴブリンともう一人、この村? の村長とおぼしきゴブリンが入って来た。
リーダーゴブリンよりも背は低いがガッチリとしている。
まあ、それはあくまでゴブリンの中でだが。
向かい合う形で座った事により、村長らしきゴブリンの右腕だけが肘から先が無くなっているのに気がついた。
思わず息を呑む。
この森の騒動によって受けたものなのか。
とにかく、今は話をしよう。
「よく来られました、強き者よ。ワシはこの村の村長をしています。そして、こちらがこの村の戦士を束ね警備をしているワシの息子です。あまり大したもてなしも出来ない事を、許して欲しい」
この村の村長が隣にいるゴブリン―――息子と自分の紹介を丁寧な言葉で話す。
若干痩せている村長の声は、息子さんよりもはっきりと聞き取れる口調で、流石は村長だと思った。
息子よりも知性は高いと見える。
「それで、この村に危害を加えないと息子から聞いたのですが、それは本当ですよね?」
村長が真剣な口調と眼差しで問いかけてくる。
どうやらここに来る最中に、先ほどこの村に危害を加えないと約束した事を息子さんから聞いているようだ。
そこをもう一度確認するようは、この村を預かっている者としての責任にも似た“何か”を感じさせる。
それは上に立つ者が放つ特有のオーラにも似ている。
「はい、確かに村に危害を加えないと約束をしました。但し、そちらが襲って来たのならその時は、己の身を守るために抵抗をさせてもらいます」
俺も力強く答える。
それと、襲われないように一応警告にも似た釘を刺しておく。
これはもし、襲われた時に身を守るために抵抗したとして、その時の正当性を示すための意味もある。
まあ、どこまで通用するかは分からないが。
それに村長は「分かりました。皆にも伝えておきます」と言った。
「それで、この村に何か用でもあるのですか?」
「いえ。特にないですよ」
どうやら村に来た事でここに用があると勘違いをさせてしまったようだ。
ただ付いてこいと言われるままに付いて来ただけなのに……、まあいいか。
せっかくだし、こうなったらこの世界について色々と情報を得よう。
「そう言えば、南東の方で魔王が暴れていると聞いたのですが?」
先ずは始めに脅威となる存在の情報だ。
いきなり森の中で出くわすなんて嫌だし、魔王について情報がないと対処が難しくなる。
その俺の言葉に村長は顔を曇らせ、息子さんに至っては顔をしかめている。
しまった! もしかして聞いてはいけない内容だった!?。
「確かに、魔王を名乗る者が、南東の方でその力を振るっていると聞きます。そのせいで、この森によそ者が来ている事も」
「チッ」
村長の暗い声で、ぽつりぽつりと話している中で、息子さんが苛立たしげに舌打ちをする。
「アイツノセイデ、同胞ハ死二、俺達ノ村ハ壊滅シタンダ」
息子さんが憎しみと激しい怒りの表情で怒鳴り声にも似た荒い口調で言う。
見たら分かるように、かなりお怒りになっているのが伺える。
「落ち着け。客人の前だぞ」
「親父ダッテソウダロ! ドレ程ノ同胞ガ死ンダ! 幾ツノ村ガ壊滅シタ! 親父モ分カッテルハズダ。ヨソ者二目ノ前デイイヨウニサレテ、俺達ハモウ終ワリダト!」
「落ち着け! この馬鹿者が! 場を弁えろ!」
そこで息子さんがはっとして口を閉じる。
場を弁えたからではない。
村長さんの目を見たからだ。
その時の目を見る事が出来なかったが、その瞳に映るのは何だったのか。
俺には分からなかった。
もしかしたら、俺の想像すら出来ない激しい激情なのか。
「申し訳ありません。息子の醜態をお見せしまして」
「いえ、元はと言えば俺がこんな事を聞いたのが悪いのです」
「そのような事はありません」
ゴブリン達の内部事情は想像よりもかなり悪いらしい。
これは長居は悪いな。
「それでは我々はこれで」
退出しようとして、突然外が騒がしくなった。
「何事だ?」
「見二行ッテ来ル」
村長の鋭い視線に息子さんが様子を見るため外に出ていく。
暫くして息子さんが顔色を変えて慌ただしく戻ってきた。
「大変ダ!」
「どうした? 落ち着いて話せ」
荒い呼吸をする息子さんを村長は宥める。
そして、息子さんはなおもまだ少し荒い息の中、焦燥感が籠った声で言う。
「敵襲ダ」
ざっと、村長の顔から血の気が引いて青ざめる。
「数は? どんな姿をしている?」
村長の冷静な声に息子さんは答える。
「分カラナイガ、俺達ヨリモ多イ。偵察カラ生キ延ビタ奴カラ聞ケバ、黄色ノデカイ猿ラシイ」
「よそ者か」
村長と息子さんのやり取りを眺めながら、俺は内心大量の冷や汗を流す。
えっ! 敵襲! いきなりですか!。
よそ者という事は魔王のせいで来た奴等だな。
ちきしょー! 魔王め、滅べばいいのに。
さて、どうしようか。
もちろん逃げる事も出来るが、そうしたら村長と息子さんを含めたこの村のゴブリン達はどうなるか?。
この村で見かけた女のゴブリンや子供のゴブリン達が頭に浮かぶ。
恐らく……いや、きっと悲惨な事になるのは容易に想像が出来る。
例えこの村にいるゴブリン達が束になって掛かっても、村長と息子さんの会話を聞くに絶望的なまでの未来しかないだろう。
俺と少なくとも息子さんを瞬時に無力化してゴブリンより強いアリーも、この世界でどのくらい通用する強さなのか分からない。
そもそも情報事態が少ない。
敵戦力は不明。どんな姿なのかも黄色くデカイ猿との事以外は分からない。それに最大の難点は、俺が出会った事も見たこともない未知の生物だ。
どんな姿か動き方をするのかまるっきり分からない。
想像すら出来ない。
逃げるのが最善の手だ。
それじゃあゴブリン達は? というと、それは無理だ。
村長と息子さんの会話からそれは無理だと分かった。
村長と息子さんを含めた男集は出来ても、女子供は無理との事だ。
さて、どうするか。
俺とアリーは逃げれる。
しかし、ゴブリン達は無理だ。
男集も女子供を守るために、あるいは逃がすために時間を稼ぐ意味で戦うだろう。
だが、逃げたところでその後は決して明るくないだろう。
逃げるのがこの場では最も適切な判断だ。
俺は一旦外に出た村長と息子さんの元に行く。
俺の異常なまで高い知覚能力のおかげで、村長と息子さんの会話は外に出てからも聞こえていたのだ。
「村長」
俺は村長と息子さんに歩み寄る。
俺の後ろにはもちろん、我が頼もしき近衛兵士のアリーが寄り添う様に付いてくる。
ていうか、何で何時も寄り添う様に付いてくるんだ? ぶっちゃけ凄い怖いんだけど。
俺とアリーに気づいた村長は慌てて口を開く。
「すみません客人。急な事が出来てしまい、誠に申し上げにくいのですが、急いでこの村から」
「分かっています」
村長が最後まで言うのを遮って俺は不敵に笑う。
もちろん、虫だから表情は出ないが。
「微力ながら我らも力を貸しましょう。アリーもそれでいいな?」
「言ウマデモゴザイマセン。王ノゴ意志ノママニ、ドコマデモ付キ従イマス」
「ありがとう、アリー」
「滅相モアリマセン。感謝ノ言葉ナゾオ止メ下サイ」
「客人!」
「ガッ!」
そこへ村長と息子さんが驚きの声が出る。
無理もないだろう。
俺達はつい先ほど初めて出会ったばかりの知人とも言えない他人だ。
そんな他人がいきなり自分達に力を貸すと言っているのだ。
この状況を把握している中でだ。
「何故です! どうしてワシらに力を貸すのです!」
理解出来ない、というような表情を村長と息子さんは浮かべる。
さらには、何か疑うような色も浮かべる。
その反応は当然だ。むしろ、何を考えているのか疑うのは当たり前だ。
しかし、実は俺自身が一番よく分からない。
何故自分がこのような行動に出たのか、どうして自分から危険な場所に身を投げるのか。
自分自身が一番よく分からない。
だが、唐突に“感じた”のだ。
“気に入らない”と。
上手く言葉に出来ないが、確かに“何か”を感じて、こういう“俺らしくない”行動にでたのだ。
正義感からくるものではない。
そもそも正義を語り英雄気取りをする気はない。
自分は正義だと、この行動は正しいと善人を名乗るつもりは毛頭ない。
実際、俺は善人じゃない。
ただの小心者だ。
たが、これは。
強いて言えば“本能”、なのだろうか。
よく分からない。自分の事なのに分からないが、どうしても“気に入らない”。
イライラしてくる、この衝動にも似た感情は何だ?。
胸の奥からジワジワと焼くように“何か”が込み上げてくる。
《パッシブスキル『集団防衛』『共存意識』『防衛本能』を会得しました》
「もちろんただと言うわけではないです。それ相応の見返りをもらいます」
「その見返りとは?」
村長が警戒の色を浮かべる。
俺はそれにゆっくりと答える。
「俺の配下に加わってもらう」
お読みいただきありがとうございました。