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とあるほしのものがたりSHIT!!第5話

気づけば彼は海岸にいた。ゴゴゴカイ(どうるい)達の群れの中に。

うわぁ、気持ち悪いヌメヌメする。コイツらキモいよっ。この世界で最初に思ったことは

『気持ち悪い』だった。しかし傍から見れば文字通り彼も同類である。

彼は異界にきても元の世界と名に一つ変われなかった。新しい自分?自分リスタート?

結局本質が変わらなければ同じでしょ。駄目なやつは何をやっても駄目。至言である。






ボッチが嫌だとか結婚したいとか言ったけど無理無理無理無理。いや、ハーレム欲しいとか思ったけども、

コイツらが全員メスだとしても無理無理無理無理。

コイツらムリ。―――――そう思っていたのは満ちてきた海の中、

干上がった干潟の生活を繰り替えして数ヶ月も無かったのではないか。数週間、下手したら数日間。

なんとなく馴れ合えるようになってきた。


<『仲間を呼ぶ』を手に入れました。周囲の同族かつ友好度の低くないモンスターを呼び寄せることができます。>

『仲間を呼ぶ』。それはやっぱりザコモンスターがとる数の力。それはザコ力の象徴。僕は質を上げたいんだよ。

何でわかんないかな。くそっ。



とにかくわからないが肉体に精神が引きずられたいい例なのかなんだか、ゴカイ達の見分けがつくようになってきた。


まず太いのが デブ 通称デーブ

足が長くてふさふさした感じのをのを ア●ランス 通称アデ

特徴が無いのを モブ 通称モーブ

柔らかそうなのを 柔らか 通称ヤワ

ひょろひょろしたのを ヒョロ 通称ヒョロ

泳ぎがうまいのを スイマー 通称サイマー

ザコっぽいのを ザコ 通称ザーコ

ボスっぽいのを ボス 通称ボースと呼ぶことにした。

他にももっといる。でもめんどくさいからここまでにしよう。

結構バカにしているけどゴカイたちはホントに馬鹿なんだ。そもそも考えているかどうかも怪しいけどね。





自分より劣るものや反撃できないものには偉そうにする。それが御手洗憧大、もといシットという男であった。

あるとき黄色い横縞の魚(能力で確認したところ『ストライピーフィッシュ』というらしい。)

の群れに襲われた。さっそくボースが食われた。ボースは群れの中では一番強かったはず。それが一瞬で……。


………ホントにどんだけ弱いんだよ僕たち(ゴゴゴカイ)は。

これが主人公らしい主人公だったら、あの魚をやっつけて成長するんだろうけど、冗談じゃない。

僕が勝てるわけないじゃないか。死ぬのはごめんだ。

やられたボースの仇を討つためでも何でもなく自分が生き残るために本能に従い食い残されたボースの切れ端を食う。

精々それが限界だ。ここでわかったことがある。ここで他にゴゴゴカイが倒せるモンスターなんてそういないんだ。

自分(ゴゴゴカイ)より弱いものがいないとか、僕にどうやって生き延びろっていうんだっ!

そもそも生き延びることなんて期待されてないんだろうな。くそっ。


この世界で生き残るためには強くならなくては。殺して食って腹を満たして生き延びて強くならなくては。

しかし、はたして僕が勝てる相手がいるんだろうか?なにせ他のどのモンスターに遭っても一方的に食われるだけのゴゴゴカイだけじゃないか。

僕が唯一倒せる可能性があるのは同じ最弱クラスモンスター―――――――――ゴゴゴカイだけだったんだ。


どうせあいつらは馬鹿だから仲間が仲間に殺されても気づかないし、思考も感情もないんだろう。

だから僕は仲間を殺す。近くにいたザーコを殺す。理由は弱い僕よりももっと弱いからだ。

僕は巻き付いて身体を固めた後ザーコの首を噛む。大した抵抗もしない。そうさやっぱりコイツらは殺されそうになっても助けも呼ばないし、

仲間を助けようともしない。死体になったものの体をおこぼれにあずかるだけ。悲しみも怒りも感じない。ただ繁殖力が高いだけのザコモンスターだ。


だから、……だからザーコの目が、失望と諦めと驚愕と、哀しみを帯びているような気がしても、僕が罪悪感を感じる必要はないんだ。

僕をゴゴゴカイにした奴と僕より弱いザーコが悪いんだ。だから僕は悪くないんだ。




僕がこの世界で初めて奪った命は同じ群れの仲間だった。

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