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とあるぼっちのものがたり第2話

冗談だけど。この学園は漫画か小説か、はたまた誰かの妄想の中なんだろうか。右を見れば美少女、左を向けば美少年、

とまでは言わないが、それにしたって美形が多いのは確かだしその上限も高い。

それは別にいいんだ。問題は、――――――――――――何で僕はそうじゃないんだ!!ってことだよ。


せめて平凡で没個性な顔でもいいじゃないか。エロゲー主人公はそれでもモテるんだし。

でも、『個性的で残念な顔』ってなんだよ!もうブサイクっていえよ!

やたらいまは『残念すぎる』キャラが流行っているけども、顔が残念なやつはまだいないよ。



エロゲーといえばなんだか周りの奴らにそれっぽいのが多すぎるんだとね。

筆頭は姫宮遥。あの顔のつくりで『男』なんておかしいだろ。

髪を伸ばしただけで女子校潜入なんて楽勝だし、処女(乙女)達にお姉様なんていわれて恋されるレベルじゃないか。

何だよあれ。男の娘とかイケメンだとかいう話じゃないだろ。JK。

性別『姫宮遥』だよ。


後は、3年の御鎚先輩。御鎚神社の跡取り息子で、修行中の身。メガネ系美男子ってもう少女漫画の世界じゃないか。

血がつながっていない妹がいるなんて、エロゲーかよ。いや、でも愛さんに実の弟がいることも考えると、

次期頭首の義兄と、血のつながった弟に揺れる『愛』……なんてやっぱ少女マンガじゃないか。

どうして女は、二人の男に攻められるのが好きなんだ。浮気じゃないか。しかもその二人は毎回イケメンなんだ。

結局、『ただし、イケメンに限る』ってか、畜生っ。


後は衒賎の奴も一応顔だけはいいからな。頭と股の緩い女たちが蜜による蝶のようによって来るんだ。

きっと最後は骨までしゃぶり尽くされて夜の蝶にされちゃうんだ。まぁビッチたちの事なんかどうでもいいんだけどね。

しかし、七海さんといい鈴廣さんといい愛さんといい、ホントに可愛い人たちはアイツには全然靡いてないな。ざまあみろ。

全くアイツみたいな軽薄なやつらのどこがいいんだよ。畜生、糞衒せ――――――――

「おいなんか呼んだかよ、うんこくん。」

「いっ、いやなんでもないよ。呼んでない呼んでない。」

「っち、そうかよ。もし悪口とか言ってたらぶっとばすかんな?」

「だから言ってないんだってば。」

「まあいいけどな。……んっ?………なんて本読んでんだよ、お前。」

「かっ返せっ、返してよ。」

「ん~~なになに?『非モテのあなたへ、モテる男になる5つの方法?』」

教室中が爆笑の渦に包まれる。衒賎は自分が引き起こした大爆笑に気をよくしてさらに喋る。

「こんな本買う暇があったら金溜めて整形して来いよっ」

再び教室中が大爆笑する。

しかしその喧噪の中に混じらぬ者達もいた。姫宮遥とヒロインズだ。

気に食わないのか衒賎は姫宮遥に話しかける。

「モテるといえば姫宮君、君からもモテの秘訣を教えてやってくれよ。可哀そうなモテたい御手洗にさ。」

姫宮遥は、さして考える様子もなく必要最小限に、

「興味が無い。」

彼は全く関心が無いようだった。それは、『何』に対しての興味なのか。

「少しだけでいいからさ」

衒賎絢塗はもう一度姫宮遥に言う。姫宮遥は少し考えて、

「……人生やり直せば、…いいんじゃないかな。………本当にどうでもいいんだ、ごめん。」

愛の反対は無関心だという。その冷たさは、氷の針のように御手洗憧大の心を貫いた。



泣くのを必死にこらえてその休み時間を終えた。4時限目が終わり昼休みになる。昼休み、友達がいない奴が行くところは大きく分けて3つある。

一つ目は夢の中、勿論寝たふりだっていい。少なくとも話す友達もいないことが露呈せずに済む。

二つ目は保険の先生の所。先生はお仕事なのでちゃんとお話し相手になってくれる。

三つ目は図書室だ。友達がいないため喋『れ』ないのではなく図書室だから喋『ら』ないという言い訳もたつ。

体育会系がいないのもいい。何より友達の代わりに本が話し相手になってくれる。本はぼっちも拒否しない。



御手洗憧大が図書室に行くと、そこには誰もいなかった。

「なんだ、一番乗りか」

そういって奥の方に行くと誰かが片付けずにいったのか、先程は何もないと思っていたのに、

いつの間にかそこに同じタイトルの白い本と、黒い本の2冊があった。


白い本は表表紙に2本の剣が交差し、黒い本は何か節めいた細い腕のようなものが交差していた。

少年はそのうちの一冊を中ほどから開くと意識を失った。

……、もう一つの本を選べば違った未来があったのかもしれない。だがそれはIFの世界。

この日、誰にも気づかれずにこの世界から少年は完全に消失した。

開かれた本がぴらぴらと風に捲られ一番上のタイトルが書かれたページになる。


その本の名は『とある ほしのものがたり』。タイトルの下には表紙と同じ節めいた腕が描かれている。

少年は『黒い』本を開いたのだ。

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