アザとー式作文講座(テンプレを恐れることなかれ!)
ああ? どうした?
(´・ω・`)
ええ? 書いている話がテンプレなんじゃないかって不安? 相変わらずダメだなあ。
ヽ(`Д´メ)ノ
あああ、そんなに滾るなよ。ちょっとしたコツを教えてやるから。
ヽ( ´ ∇ ` )ノ
よしよし、酒でも飲みながら、ゆっくり話してやらあ。
小説を小説たらしめているもの、作文との大きな違いは『事件』が書かれているということだろう。
事件といっても、死体が出てきたり、崖の上に追い詰めたりする必要は何も無い。ここで言う事件とは、ありていに言えば『相違』のことである。
『相違』って何のことかって? ううん、まあ読んで字のごとくなんだけど……例えば、夏休みの宿題に朝顔の観察日記があったとしようや。アザとーはバリ文系だ。花は咲くものだし、成長もするだろうさ。但し、それが植物にとっての日常なのだから、心打たれたりはしない。
――お水をあげました。枯れていません。今日も花は咲きました。
ええ、臆面もなくこれを毎日書くタイプですよ、俺は。
几帳面な人ならば尺の一つも持ってきて計測するだろうよ。
――草丈36.4センチ。昨日よりも1センチ伸びている。
これが相違だ。
植物は毎日の生活を繰り返しているだけなのに、昨日とは明らかに違う点がある。芽吹いたばかりの若草ならば目に見えるほどの変化を見せるだろうが、常緑の大木なんかはちいっとばっかり厄介だろう。わさわさと茂った葉っぱは散ることなく、数メートルの背丈から見れば数センチの成長など見た目の変化にも入りゃあしない。
それでも、探せば必ず相違は存在する。
――姉さん、事件です。
手がやっと届くぐらいの高いところにある葉っぱ。そこに昨日まではなかった穴が開いているのです。
ああ? ちっとも事件じゃない?
いいんだよ。ごく普通の人生に大事件ってのは、そうそうに起こらねえんだからよ。これを大事件にしていくのがウデだろうよ。
まあ、それでは解かりにくいから、我々はドラマチックな事件を投入しようとする。その結果として主人公は異界に飛ばされたりするのだが、いいんじゃねえの~~と、俺なんかは思うわけよ。だって、それってきっかけとしての『事件』に過ぎないじゃん?
はあ……評価の上で? そこまでは俺の知ったこっちゃねえよ。
ともかく、空から親方に報告したくなるような女の子が降ってこようが、葉っぱ一枚にあなぽこが開いていようが、きっかけの出来事としては大差ないわけで……だってそれって、今までの状態との『相違』でしょ? しかも目に見える形の。
俺が書けって言ってるのは、そのきっかけによってさらに明らかになっていく、もしくは明らかになる相違よ。
よく解かんない? んんん、仕方ねぇな。じゃあさっきの葉っぱに戻るか。
――あれが何かの食痕なのは明らかだ。問題はその痕を与えた輩の正体っ!
滑らかな貴婦人を思わせる幹肌を慎み深く隠す肉厚の葉。艶と照りの強い肉厚の衣を裂く陵辱者と言えば、やつら以外に思いつかない。
……チャドクガ!!
放っておけば、お客様に被害が及ぶことなど目に見えている。
こうして、正義感の強い某ホテルマン……被らねぇようにフロント係にでもするか。
青井二郎(26)の奮闘が始まるのである。
気づかなかったことにしてしまうという手もある。そっとその場を離れ、本来の業務に戻れば済む話だ。だが彼は木に毛虫がいるということに気がついてしまったからこそ『昨日までの自分』に戻ることは出来ない。
昨日の彼との相違は生まれた。
ならば、そ知らぬ顔で仕事をしながらも常にその相違に囚われている姿を描けばいい。
――コトの後で大きくため息をつきながら離れる青井に、彼女は恨みがましい目を向ける。
「どうしたの? 今日は身が入ってないみたい」
「ああ」
額に垂れる情事の汗を拭ってやりながらも、青井の心はあの照葉と同じ、小さな傷を穿たれたままだった。
(ウ○コーワぐらいでは効かないだろう)
有事に備えて、ステロイド入りのかゆみ止めなども常備しておくべきだろうか。
いや、そんなことをすれば、あの木に毛虫がいることを知っていながら、黙っていたことが……バレる!
誰よ、「仕事じゃないじゃん!!」って言ったやつは? ツッコミありがとお~♡
ね♪ たいしたこと無い相違でも、それが『相違』だと明らかにするだけでドラマが生まれるでしょ?
ここで重要なのは相違というものの意味が観測者によって大きく異なってくるということを、きちんと自覚しろってこった。
朝顔に戻ろう。アザとーのように感覚重視のタイプは『成長している』ということが重要であって、具体的な数字を示されても『成長していることの裏づけ』でしかない。ところが、理数の人から見れば成長率を割り出すために数字そのものが大事かも知れないし、好事家であれば今後の手入れの指標としてその数字を見るかもしれない。
他にも、大人、子供、男、女、職業……視点を変えた観測者など無限に思いつくわけで。あなたが観測した相違が誰かと被る確率など低いわけで……しっかり相違を書くこと、それ以外に王道などないわけで……
もちろん、ビフォー・アフターな心境の相違や観察者の相違だけでなく、キャラクターの相違というのもある。青井クンを激熱血キャラに変えてみよう。
――俺はチーフに報告した。すぐに対策を講じるべきだと!
しかし、彼の答えは腐った畜獣のそれであった。
「そんな、たかだか葉っぱ一枚のことで騒ぎを起こすわけには行かないよ。業者を頼むにだって経費は必要なんだし。明らかに害虫が居るって言うなら別だけど」
ならば、この手で探し出すしかあるまい!
恥じらいの花を咲かせる山茶花に取り付き、喰らい、いいように弄ぶ毛虫どもを!
たとえ痒みに眠れぬ夜を明かすことになろうとも、あの木のこずえに悪鬼が住まう証拠を見つけ出すのだ。
『こうして完全武装した青井は、巨悪の塔へと挑むのであった』まる、っと……ああ、ごめん、書くのに夢中になってた!
ともかく、どこからどこまでも相違を追及しろってコトよ。相違こそが物語の本質よ。
ううん、いい具合に酔いも回ってきたし、まとめ~~~
テンプレなど恐れるに足らず。どんな設定を与えられても相違を見つけ出し、作り出すことが物語を紡ぐ……ですかな?
ただし、同じ観測者は二人と居ないが、同じ観測点に立つものは居るかもしれないわけで、被りって言うのは確率ゼロじゃないわけで……うん、これだけは言い訳ってやつだな。