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14.音楽会

そうして、光陰矢の如し、というやつで、

時はあっという間に流れていった。

トキといえば学名がニッポニア ニッポン。

そんな名前だからって、日本の国鳥かと思うけど、日本の国鳥はキジ。鳴き声はケーンケン。


宗佑の頭の中は、変わらず塾で習ったり本で読んだり…日々の気づきやワクワクで常に満たされていた。ひとりでぽつんとなる時間は減ってきたし、クラスに馴染むとか友達と話をするとか、ずっと面談で母親が先生から言われる、という課題もだいぶ解決してきた気がしていた。



そんな自負の中で、宗佑は熱を出し、結局音楽会の子供発表日も家族発表日も両方を休むことになった。あの子と、あの子だけじゃなくて大勢で練習してきた特別楽器だったのに。何よりも、あの子をあの大きな木琴の前にひとりで立たせることになったことに。宗佑は悔しさを感じていた。



お母さんが、何度も部屋に宗佑の様子を見に来て、冷たい飲み物を持ってきてくれた。陽射しの中、カーテンをしめて、それでも漏れて届く光の中で眠る。宗佑は落ち着かなかった。



午後になると、タブレットが何度か続けてポンとなった。先生から、teamsのクラスルームに発表会の様子の写真や、本番の動画が送られてきていた。通知だけちらりとみて、開かずにタブレットを伏せた。


そこからぐっすりと昼寝をして、目を覚ました時にはもう夕方になっていた。びっしょりと汗をかいて、かわりにずいぶんと楽になったのを感じる。おでこでぬるくなった冷却シートを剥がして、ごくごくとぬるいスポーツドリンクを飲み干した。


なんで、今だったんだろうな。


今年なら、今までと違って楽しい音楽会になった気がした。演奏が終わって拍手の中、前髪に隠れずに前を向けそうな気がしたのに。お母さんが、この日のために用意してくれていた、ラルフローレンの青いボタンダウンシャツに紺色のロングパンツ。学年全員で上下それぞれ色指定されて揃えた衣装が、部屋の隅に用意されたままになっていた。僕の心だって、用意されたまま。こうやって間の悪い人生なのかな、とそう思った。



ずいぶん復調してきて、宗佑は夕飯までの間にお風呂をすませてきた。よく頭を泡立てて洗って、さっぱりとした流れで、閉じたままになっていたタブレットを開いた。本番の前の音出しの様子や、終わった後の集合写真だった。クラスみんなで集まって、ミヤの隣にスペースが空いて、後ろの黒板が見えていた。その黒板にいるのはパーカーを来た、いつかの僕だ。ふと気がついた。クラスの皆が、休んでしまった宗佑をイラストにして、集合写真にちゃんとスペースをあけてくれていた。ちゃんと、僕がいた。あの子が描いた僕がちゃんとクラスにいた。




ああ、ここにいたかったな。

本物の僕が良かった。

クラスの中に、僕の居場所があった。



友達付き合いなんてバカみたいなことにみんな振り回されてる、なんて思っていた自分が一番バカみたいだった。せっかくの音楽会に行けないことで気づくなんてさらにバカだ。ちゃんと全部全部行事に出て、それで気づけたら良かったのに。



この写真を、お母さんに見せたい気もするし、誰かに見せてしまうのがもったいない気もした。いい話みたいに誰かに口にされるのなんて絶対嫌なのに。でも、これ、僕なんだよって自慢したい気持ちが心の中で跳ねた。




結局、宗佑はこっそりお母さんに見せた。

わ、この目の細め方が宗佑よね、

お母さんは黒板の絵の部分を拡大して表示して、

スマホで写真を撮って保存していた。その声も少し、弾んでいる気がした。



めでたしめでたし。

5年の一大行事、運動会・音楽会・移動教室。

これで3分の2、終了。



だけど、本番の動画はひらけなかった。

みんなの演奏はきっと素晴らしいに違いないけど、そこには僕はいない。



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