囚人
夜の部屋は静かで、窓の外では街灯が鈍い光を投げかけていた。
私は机にうずくまりながら、思いを文字に変えていった。
「子どもを産みたくない。」
書き出した言葉は、すぐに紙の上で重く沈んだ。
だが同時に、私はその拒絶の中に矛盾を感じる。
生まれるか、生まれないか。その有無を、自分の小さな意思で決めてしまうことに、妙な気が引けるのだ。
産まない選択は、無を選ぶことと同じなのだろうか。
けれど、その選択とは何もせずに自然に身を委ねることだ、とも思える。
もしそうなら、私は自然のままに従っているのだろうか。
だが、生き物としての本能は私を責める。
「増えることを拒むのは不自然だ」と。
けれど私は人間という枠組みから逃れることはできない。
結局、生まれた以上は考え、迷い、そして人間という壊す想像すらできない格子に囚われ続ける。
それが、人間の私に課せられた仕事なのだ。
私はペンを置き、紙に刻まれた言葉を見つめた。
それは答えではなく、ただ一つの仕事の記録のように思えた。