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初仕事

現代知識は持ってて損なし。

無事に衛兵の適性テストに合格し、早速仕事を始めることになった僕だったのだが…

「いやー今日も平和だなぁ。」

「暇だなぁ。」

そもそも治安のいいこの村で犯罪が起こることなどほとんどないので治安維持はほとんど名目上やっているだけのものなのだが。

「ヤガパルドが出たぞ!」

たまに村の近くに現れるモンスターを狩るくらいしかすることがなかった。

最初はモンスターとの戦闘に不慣れだったが、気づかれる前に狙撃してしまえばいいことに気がついてからは、かなり簡単に仕事をこなせるようになってきた。

ほとんど何もしていないにも関わらずそこそこの給料がでてるのだから、こんなにうまい仕事はない。

だが、その考えも程なくして木っ端微塵に消し飛ぶこととなる。

衛兵としての仕事を始めて2週間ほど経ったある日、

「クロスさん、大変です!

『ニュートラル』がモンスターの襲撃を受けて壊滅的な被害を受けたとのことで、クロスさんにも応援をお願いしたいとのこと。」

『ニュートラル』というのは、僕達の住むアルカディアの隣にある街のことで、アルカディアよりも発展しており人口も多い。

「ニュートラルの兵士だけでどうにかならんのか?」

「ニュートラルの兵士は先の襲撃で被害を受けたらしく、今はクロスさんの戦力が欲しいとのことです。」

「そうか…シンジ、お前一人になるが仕事は問題無いか?」

「もう2週間も立つしだいたい覚えたよ。」

「なら問題ないな…じゃぁ俺はニュートラルまで行ってくる、戻ってくるまでしっかり仕事しとけよ。」

そう言うとクロスはギルドを飛び出していった。

「本当にクロスって頼りにされてんだね、この村のだけじゃなくて隣の町からも呼ばれるとは…」

「クロスさんは何でも引き受けてくれる優しい人ですから、みんな頼りにしてるんですよ。

でも、あんまりに何でも引き受けてしまうから、危険な仕事だって何の躊躇もなく引き受けてしまうんです。

みんな心配してるんですけど…クロスさんは昔から優しい人で、この街の衛兵をつとめていた彼のお父さんもこの村で一番頼りにされている人でした。

しかし、ある日近くの山に強力なモンスターが現れて、たびたびこの村を襲って来たんです。

クロスさんのお父さんは、自分が何とかすると言って1人で山の中に入っていきました。

次の日にはもうモンスターはいなくなっていましたが…クロスさんのお父さんは何時までたっても帰ってこなかったのです。

それから、クロスさんは自分がお父さんの代わりになろうと離れた街でしていた傭兵の仕事を辞めてこの村の衛兵になったんです。」

…まさかクロスにそんな過去があったとは…

「…僕にはクロスの代わりはできないけど、クロスがいない間くらいは、精一杯やってみるよ。」

「はい、お願いしますね。」

そして、次の日

「いやー助かった助かった、ありがとねシンジくん。」

「いえいえ大したことじゃありませんよ。」

村の巡回中に農家のおばちゃんに捕まった僕は荷物持ちの手伝いをさせられていた。

これは本当に衛兵の仕事なのかとも思ったが…やることもないので別にいいかとばかりにおばちゃんと話していた。

「はい、これ手伝ってくれたお礼ね。」

おばちゃんはそう言って幾つかの野菜を分けてくれた。

「いいんですか?」

「いいよいいよ持ってきな。」

「ありがとうございます。」

僕もこの村の人達とかなり馴染むことができるようになってきていた。

仕事が、終わったあと家に帰っていると突然声をかけられた。

「よおシンジ、突然だがちょっと俺の工房に寄ってけ。」

そう声をかけてきたのはこの村の武器職人見習いのシグネである。

「どうかしたのか?」

「いや、お前が欲しがってた物が準備できたからさ。」

「おっ、もうできたのか。早いな。」

そして僕はシグネの工房に向かった。

村の外れにある工房の内は様々な工具や材料が散らばっていた。

そして、ジグネはその中からとあるものを引っ張り出してきた。

「こんなに感じので良いか?」

「あぁ、最高だ。じゃぁ早速性能テストといこうか。」

シグネが取り出したのは、長い鉄の筒の端に持ち手と導火線のついたいわゆる火縄銃だった。

「それにしても銃か…こんなに簡単な構造で合理的な武器なんてあるんだな。」

ボウガンでは物足りず、銃が欲しいなと思った僕が僕が簡単な銃の仕組みを説明し、ダメ元でお願いしてみたら、シグネは一瞬で仕組みを理解し、わずか3日で完成させてきたのである。

早速性能テストをしようと遠くの的に狙いを定め、銃の引き金を引いた。

炸裂音と共に発射された弾丸は的として用意されていた木材を軽々と貫通し、奥に用意してあった鉄板にのめり込んだ。

「………キミはどれだけ火薬詰めたんだ?」

「詰めれば詰めるほど威力が出るんだろ?」

「まぁ良いか、精度も良好だしな、相手がヤガパルドだとすれば一撃で仕留められるだろう。」

この銃はただの火縄銃ではなく、様々な改良を施していた。

弾丸は5.56mmNATO弾を元に、雷管ではなく、紙に包んだ火薬に直接火をつけることで発砲し、また弾丸も後装式で、ライフリングもしっかりと掘ってある。

現代版火縄銃というコンセプトだ。

欠点があるとすれば、加工が非常に難しいため、シグネくらいしか作れる人がいないということぐらいだ。

「じゃぁ早速明日からこいつを使ってみますか。」

「面白いもん作らせてくれたお礼にその銃の代金はタダにしてやるよ。ただし、またいろいろ手伝ってもらうぜ。」

僕こと田中真次は近代兵器を手に入れた。

火力は正義だ。

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