メディア情報研究部3
「ざーこざーこ! このクソども、お前ら揃いも揃って初心者殺ししか無ぇのかよ!」
戦いに、勝った。
勝ったら、煽る。
それが格闘ゲームのしきたりだ。
「メスガキかよ……」
鈴木! 黙れ!
俺はパンパンと手を叩く。
「はい、と言うワケで、今日から君たちは俺の奴隷って事でよろしく」
オタ共三人を床に座らせて、堂々と宣言。
コレで動画編集の人材を確保した。
……のだが。
「奴隷……」
「奴隷かぁ……」
「どうする? エッチな命令されたら」
しねぇよ!
トンでもねぇ色ボケだなコイツら。
しかも、なんか床に座ったままジワジワにじり寄ってくる。
「あの、僕たちナニをすれば……」
「とりあえず、足を舐めます!」
「やめろ! 僕のだぞ!」
お前のじゃねーから!
ってか、舐めるな! キモいわ!
金取るぞ! 美少女の足、無料で舐められると思うなよ。
「なに? 樹液でも出てんの?」
鈴木! 出てねーよ!
ってかお前ら見上げるな! パンツ見ようとしてんだろ!
と、ワチャワチャしてる時だった。
メディ研部長が動いた。
「あの、僕もやらせて貰って良いかな?」
「え? 部長も足を舐めたいの?」
「舐めんわ!」
部長、キレた。
……と言うワケでね。
Round1 Fight!
部長と対戦する事になった。
コレで勝ったら俺がメディ研の部長だ! って冗談で言ったらどうぞどうぞって扱いね。いや、要らんわこんな部活。
で、だ。
「どっせーい!」
画面上では俺のリンディちゃんが毛むくじゃらのオーガにハチャメチャに投げられていた。
パイルドライバーだからケツ丸出しのエッチな感じ。
敗因は明らか。
なまじ反射神経が良いモンだから、相手の攻撃を見てから何かしようと思ってしまった。
だが、どんなに反射神経が良くても反応出来ないモノもある。
あと、アレだ。
敵の突進技。
オーガにも突進技があって、馬鹿みたいに突っ込んで来るので当て身を取ろうとしたのだが。
「やっ!」
リンディちゃんが可愛い声でポーズをキメる。
だが、オーガは突っ込んで来ない。突っ込んでくるモーションだけ。
フェイント技だそうだ。
変なポーズで隙だらけのリンディちゃんにオーガが近付いて、また恥ずかしい投げを食らってしまった。
KO
で、はい、負けました。
部長はドヤ顔だ。
「ふふっ、反射神経はともかく攻略は素人。フェイントを織り交ぜて投げを主体に攻めればこんなモンだよ」
メガネをクイクイしながら滅茶苦茶早口でまくし立ててくる。
いや、俺は元々、お前と対戦する気も無かったからね。
それに、そのメガネどっから出したのよ。
イケメンをかなぐり捨てて、急に剥き出しのオタクをぶつけて来るな!
俺はオタクに優しいギャルとか目指してないから!
半端にお洒落メガネなのがムカつきを加速させる。こんなにブチ割りたいメガネは初めてだわ。
「ふぅ-」
深呼吸、深呼吸。
コイツに構ってる暇は無い。
もう、あと二日で記者会見だ。なるべくなら一本ぐらい動画を間に合わせたい。ゲームで遊んでるように見えて、一秒だって惜しいのだ。
ゲームで対戦したのだってコイツらを屈服させる儀式に過ぎない。
なんか、記者会見用の素材は大人が用意してくれるらしいから、こっちも出遅れたくないのである。
あ、そうそう。
ちなみに動画の権利を貰ったと言っても、米軍も自衛隊も動画の使用権は持っている。
営利目的で使えるのが俺だけってだけ。
と、そんなわけでだ。
俺はゴソゴソと書類を取り出した。
「はい、お前らコレにサインしろ」
「なにこれ?」
「めっちゃビッシリ書いてあるけど?」
「英語の書類もある。NDA? マジなやつ?」
床に正座したまま、三人は書類を読む。
あと、なんかメディ研の部長も読んでる。
おまえなんなんだよ。
「えー、三人には動画の編集をして貰います」
「ちょっと待って、ここに報酬は動画収益の0.1%って書いてあるんだけど?」
「金が出るだけありがたいと思え! この馬鹿共が」
いやね、逆にゼロだと法的な拘束力がなくなりそうだからね。
「いや、これ一千万稼いでも一万円なんだけど」
「ただ働きじゃん」
地味で苦しい動画編集のバイトと知って、三人組は不満そうだ。
しかし、お前らは世界で最初に俺の勇姿を確認出来る一般人だぞ! 光栄に思え!
ってか、報酬にしたっておかしくは無い。
「一千万なんて小銭、たぶん億は稼げる動画だ。十万は保証してやるよ」
「マジで?」
「どんな動画なら一億なんて行くんだよ?」
「1再生1円なら一億再生だよ? どんなVTuberの歌モノでも難しいって」
「え? まさか?」
四人は一斉にコチラを見る。
どうやらどんな動画か気が付いたようだな。
「ああ、もちろん俺の動画だ!」
「エッチなヤツ?」
「ぶっ殺すぞ」
三人はともかく、部長も同じ事を思ったのか目を逸らす。
「違う! 俺が戦ってる所だよ。異界化したVRゲーム、デモンズエデンの世界でな」
「ええっ?」
いや、ソッチは知らんかったのか。
はたまた信じて無かったか。
まぁ、良いや。
「よし、お前ら契約書にサインしたらついて来い! あ、書類全部見てないだろうから端的に言うと、基地内で見た事は全部秘密ね、もし喋ったらガチで死ぬからヨロシク」
「は? ヤバすぎなんだけど!」
「マジ?」
「死ぬってホントなんですか?」
と、大慌てだ。
ちなみに、本当に死ぬ。
「闇バイトじゃん」
鈴木! 黙れ! 美少女に拉致されるなら幸せだろうが!
「美人局じゃん」
加減しろ! 俺もそうかな? と思ってたトコだよ。
「まぁ、安心しろ、動画編集なんてお前らは素人だろうからな。協力者がいる。そいつの元でみっちり修行を積んでくれ」
「えー!」
「アリスたんが手取り足取り教えてもくれないの?」
「詐欺だ! 闇美人局なんだけど!」
なんだよ闇美人局って、美人局がそもそも闇だよ。
あと、俺は動画なんかわからん。
と、ぶつくさ言うオタク共の首根っこを捕まえて、メディ研の部室から連れだそうとした時だった。
「ちょっと待ってくれ」
メディ研の部長が動いた。
くそっ! なし崩し的に拉致ろうとしたのに!
「あの、その、彼らの身の安全は大丈夫なのだろうか?」
「もちろん、キッチリメディ研の部員として恥ずかしくない動画編集スキルを身に付けて帰って来るぞ!」
俺はバッチリ太鼓判を押す。
ちなみに、メディ研に動画編集が必要かは知らない。
「なにせ、登録者50万人の実況配信者にお願いするからな。実践的なスキルが身につくし、ガンガンしごいて貰う」
まぁ、実践的なスキルって何だか解らんけど。
俺がそう言えば、メディ研部長は凄い勢いで食いついた。
「え? その人ってまさか……マキシミリアン?」
マジか、知ってるのか。
俺がポカンとしていると、メディ研部長はヒートアップ。
「マジ? マジでマキシミリアン? マキシに動画編集を教えて貰うワケ?」
「あ、ああ……」
俺が引いちゃうわ。
どんなテンションよ。グイグイ来るね。
なんか俺の手を握ってくるし。
「あの、足を舐めましょうか?」
「ソレはやめろ」
どんなテンションだよ。
オタク三人もポカンとしている。
「やっぱ、足から樹液出てない?」
鈴木! 氏ねっ!
と、待て待て
「いや、ぼく、大ファンでえーと」
なんか一人でハイテンションで飛び跳ねている。
「よしっ!」
ナニが良いんだよ。おい、やめろよ?
部長はハイテンションに部室の中を駆け回ると、教室の中央、机の上に乗ってパンパンと手を叩く。
へい! へい! とか手拍子してる。
いきなりキチゲェになっちまったよ。
「はい、注目! えー、皆さんにお知らせがあります」
嫌な予感しかしねぇよ。
オタク三人も、俺も、鈴木も、目も口もまん丸にして見守るしかない。
「と、言うワケで、メディ研は今日で解散ッ! 解散です! 全てのPCを献上し、アリス様の軍門に下りました!」
そう宣言し、俺の前に向き直る。
キリッとした顔で。
「コレで、良いですよね!」
「良いワケあるかぁ!」
言葉のアヤだ! 誰がこんなオタ共を全員面倒見るか!
クーリングオフ! クーリングオフじゃたわけ!
「お前が始めた物語だろ」
鈴木! 俺はこんなの始めてない! 俺はこんなの始めてない!!!




