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メディア情報研究部

放課後。

鈴木が即行で帰ろうとするので、俺はベルトを掴んで引き留める。


「おい、鈴木。付き合えよ」

「なんだよやぶから棒に」


俺は椅子に座ったまま、宣言。


「カチコミだ」


すると、鈴木はこの世の終わりの様な顔をした。

またワケわからねー事言い始めたよ、って言いたげ。


「またワケわからねー事言い始めたよ」


本当に言うヤツがあるかよ。

以心伝心。

オマエの事大好きみたいじゃん、やめてよね。


「まぁ、聞け。俺には討たねばならぬ、仇がある」

「え、なに? ちなみにホントにシリアスな話? デモンズエデン事件絡みの」


鈴木サン?

流石に自意識過剰じゃないですか?


機密だらけのデモンズエデンに関して、お前に相談するはず無いだろ? 大体にして悩んだってしかたないからな。俺だっていつ死ぬの? ってレベルなんだから知った事かだよ。


そう言うと、鈴木は露骨に機嫌を悪くした。


「じゃあ、何なんだよ」

「俺の尊厳の問題だよ」

「あー、そう言う事ね」


VRギアを被って登校する変な男がよ、急にTSしてエルフの美少女になったんだ。

からかわれるに決まっている。

毎晩ナニやってんの? とか、男に欲情しちゃったりするの? とか。


「変なちょっかい掛けられたワケね。先生にでも言えば良くね?」

「いや、俺的に、そう言うのは良いんだよ」

「……良いんだ」


良いんだ芸やめろよ。

俺がこの前アンジェラにやったよ。


でも、ホント、良いんだよンなの。

向こうだって俺を男として今まで通り話すか、女の子として扱うか悩むのはしゃーない。


「そう言う場合、どうしてんだ?」

「いや、普通に聞き返すけど? お前こそ俺でシコってんじゃねーだろうなって」

「スゲェ事聞くね、シコってるって言われたらどうすんのよ?」

「妄想シコり代をせびるね」

「クソじゃん」


はい、シンプルな罵倒頂きました。


「やっぱ、おまえそんなんで傷付くようなタマじゃねーだろ。ってか生きるか死ぬかの問題なのにセクハラ気にしても仕方ないって言ってたのお前じゃねーか」

「そうなんだがな……そんな俺でもショックを受ける言葉があったんだ」

「マジかよ! そんな逸材が? ベスト・ラッパー賞でグラミー狙えるぜ」

「狙わせねぇよ。あいつら『VRギアを被った変な男が2クール目のテコ入れにTSエルフになってきた。あまりにも露骨だよね』とか言って来やがったんだよ」

「なるほどね、センスあるわ。グラミー賞はまだ?」

「来年に期待だな。……いや、実際ビビったね。メタ的に世界を俯瞰したディスり方ヤバすぎるだろ。俺の周りの事件をまるっとアニメみたいに片付けやがって。お前らもクソアニメの登場人物にしてやるからなって、俺は復讐を誓ったワケ」

「そのクソアニメに巻き込まれる俺のギャラはあんの?」

「そこに無いなら無いですね」


鈴木の苦情は華麗にスルー。

と、言うワケでね。


「おまえには立会人を頼みたい」

「あ、お断りします」

「ちなみに、断った場合、俺がおまえと付き合ってるって噂が流れます」

「いやー、しんどい。胸が一杯だわ。シコリ代払うから、この胸のシコリを払って欲しいね」

「なに? 俺のおっぱい触りたいの?」

「ンな事言ってねぇんだよなぁ」


俺は愚痴る鈴木を引っ張って、アイツらの根城に突撃した。


メディア情報処理研究部。通称、メディ研。

実態は、コンピューター研究部みたいなもんだ。


いや、もっと酷い。

だって、こいつら現代メディアと称して漫画を書いたりもしているからな。

早い話ただのオタサーなのだ。


「たのもー」


俺は元気一杯扉を開け、乗り込む。


「いや、マジで道場破りのノリなんよ」


鈴木の愚痴は無視。

すると、どうだ?


メディ研のやつら、コッチを見たまますっかり固まってやがる。

何十人と揃って、誰一人、ピクリとも動かねぇ。


「なんだ? 時間停止モノのAVか? 女の子だけが動けるの斬新過ぎるだろ」

「発想の飛躍がこえぇよ」

「解らんぞ? コイツら俺を洗脳する催眠アプリを作ってないとも限らない。そうなったらおまえの出番だぞ、鈴木」

「まさか俺、その為に呼ばれたワケ?」


万が一があるからな。

オタクはチャラ男に弱い。確定的に明らか。


そんな漫才をしていると、メディ研のヤツらがようやく再起動。

狭い教室がどっと沸きかえる。


「ええっ、まさか! アリスだ!」

「ホントだ! ホンモノ?」


偽物とか居るのかよ。怖いよ。

ってか、アリスってコードネームも知られているのか。

実際、コイツらの耳の早さは侮るなかれだな。


「あの……何の用かな」


ソコに現れたのが、多分二年の先輩だ。


なで肩でヒョロヒョロ、マッシュカットの大人しそうな男である。

最近のオタクは小綺麗で困るね。顔も整っているし、結構モテそうだ。


どうやらコイツが責任者。

おいおい、こう言うの困るだろ。

もっとぶん殴っても心が痛まないヤツを頼むよ。


女の子に殴って貰えるなんて一生に一度の思い出だゾ♥ って言えるぐらいのチーズ牛丼の擬人化で頼む。


仕方ないので、俺はかいつまんで事情を説明する。

すると、メディ研の部長である優男は……


「それは失礼だったね、後輩にはボクからもキツく言っておくし、今からでも謝らせるよ」


と、そんな事を言い始めるのだ。

その辺で手打ちねって。


だが、そんなモンで傷付いた俺の心は癒やされない。


「部長サン、悪いけどコッチはそんなんじゃ収まりがつきませんゼ」


俺は部長にスゴんでみせた。


「ええっ?」


固まる部長。一方で後ろから、声がする。


「当たり屋じゃん」

「黙れ!」


鈴木のツッコミ、キレが無いぞ!

そんなんじゃグラミーどころかM-1も制覇もままならない。つまり負けっぱなしって事になる。


「コッチは、アニメの露骨なテコ入れまで言われてるんですよ? このまま引き下がってしまったらクソアニメのクソヒロイン扱いを受け入れる事になる!!」

「そう言われても……」


困る部長にスゴむ俺。

ならねぇよ! って後ろのツッコミはスルー。


俺はメディ研の中心でパンパンと手を叩く。


「と、言うワケで、メディ研は今日で解散! 解散です! 全てのPCを献上し、我が軍門に下りなさい!」


そう宣言すると、メディ研の部長が困ったような表情で、言った。


「あの、その手のわがままヒロインが許されるのは平成中期までですよ?」


……なるほどね。


お前がグラミー賞だ。

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