アンジェラの学生生活
「ど、どう? 変じゃない?」
アンジェラは俺の前でクルリと一回転。
「変じゃない変じゃない。可愛いよ」
「そ、そう?」
顔を真っ赤に照れている。
可愛い。
アンジェラは俺の高校の制服を着ていた。あの派手可愛いやつ。
もちろん、俺と違って改造していない。スカートは短くないし、靴下も普通の長さだ。
だが、似合っている。
お嬢様のオーラってヤツかな。
ウチの制服ってこんなに可愛かったんだな、という気づき。
なんとも雰囲気がある。
品があるってこういう感じ。
コレ、並んでいたらスカート短い俺の制服が下品に見えないかな?
むしろ、ソッチが心配だ。
俺はジロジロと見て回る。
「な、なに?」
「いや、スタイル良いなって」
アンジェラは身長163cm。
アリスは157cmなので、俺よりちょっと上。
が、それ以上に『ある』のだ。
正直、気になるだろ。
「なぁ、胸、触って良い?」
「はぁ? そんなの……」
「いや、悪い、変な事言った」
「良いけど……」
良いんだ……
アンジェラは気が強い所がある。朽ちた教会で初めて会った時からそうだったが、基地内で親父のグレッグさんにツンツンしてる様子を良く見るからな。
一方で、最近俺には優しい。
と、言うか下手に出てくれる。
命懸けで救って貰ったんだから、失礼のないように、ってグレッグさんに言われてるっぽいんだよな。
アンジェラも、俺が戦う動画を見て感じ入ってる様子だった。
それにつけ込むみたいで気が引けるだろ、流石にさ。
元男として、女の子のフリしておっぱい触ろうなんて最低だ。
ココは目を瞑って固辞。
「いやいやいや……」
だけどチラリと横目にサイズを確認。
デカい。
……やっぱり気になるね。
ソレはソレ。コレはコレ。
「失礼……」
ちょっと確認。
「うおっ」
しっかりした重量感。
俺には無いモノだ。
「思ったより固いな」
「ブラジャー! しっかりしたのを付けてるから! 寄せて上げてるの」
「へぇー」
だからスタイルが良く見えるのか。
いや、俺が着るには足りないな。
「アリスも、ちゃんとしたブラジャーにした方がいいよ、スポーツブラでしょ? それ」
「あー、そうだな」
アンジェラのはワイヤーとか入ってるやつだ。
でも、俺の場合、サイズ的に要らないだろう?
「ずっと気になってた。スタイル気にするならちゃんとしたの着なよ」
「あー、うん」
やぶ蛇だわコレ。
ってか、ウェストも細いし、アンジェラはホントに綺麗。
アメリカ人がデブって言っても、上流階級のお嬢様はやっぱ違うな。
「そのスカートも短すぎだし、シャツもジャケットもブカブカじゃない!」
……ん?
スカートは解るよ?
でも、こちとらシャツもジャケットも無改造。
「え? タックとかダーツで絞らないの?」
はい、訳わからん単語が出て来たよー!
アンジェラさん、首を傾げていらっしゃる。
聞けば、おっぱいはでかく、ウエストは細いアンジェラ様は、ウェストに縫い目を入れて体にフィットさせているらしい。
「みんなやってるでしょ?」
やってねーよ!
やってるやつ見た事ねぇよ。
いや、どうなの? 助けて全国の女子高生!
俺がその女子高生だぁ!
って言うか、元々ジャケット横にダーツって縫い目はあるらしい。
そういった裁断でジャケットは立体感を作っているんだと。
だけど、オーダーじゃないから体型にピッタリは合わない。
寸胴な日本人向けに出来ているから、アンジェラにしてみれば特にウエストの絞りが足りない。
そこをアンジェラの体型に合わせて、もっと絞って縫い合わせるんだとか。
シャツは背中側にダーツを付けてスリムに見せるんだとか。
「き、器用だね。ンな事出来るんだ」
「私? 出来ないわよ」
「は?」
どうも、そういうのは親代わりのお手伝いさんが小さい頃からやってくれるらしい。既製品の服でも嫌味がない程度にカスタムしてくれるんだと。
そんな万能お手伝いさんをアメリカから呼び寄せて、今も一緒に暮らしてるらしい。
はい、皆さんに訂正があります。
『俺と違って改造していない。』
嘘でした。
誤解を与える表現で申し訳ない。
『俺と違ってプロがガッチリ改造している』コレが正しい表現ですね。国民の皆様は誤解のなきよう。
ふざけんじゃねーよ! 女子高生の誰もンな事やってねーよ。
どおりですらっとしてスタイル良くて、まるで別モノに見えるワケだよ。ホントに別モノじゃねーか。
俺が怒りをぶつければ、アンジェラは首を傾げる。
「でも、アニメの女の子ってみんなこんな感じじゃない?」
聞いていますか? 政治家のお歴々よ。
コレがクールジャパンの弊害だゾ♥
誰もピンクとか青の髪で通学してないし、乳袋はないし。スカートもあんなに短くないし、ニーハイソックスも穿いてない。
俺? 俺は良いの!
「えぇ? でも、私ずっとジャパンの制服に憧れてたのに。それに実際、この制服可愛いし」
「ウチの制服は特別派手なんよな、女子だけ特に」
多分、誰かの趣味。
いや、最近は女子の制服をウリにする高校も多いらしいからソレかもな。アニメっぽい感じはあるかもわからん。
言われてみれば、アンジェラの制服はアニメみたいに見える……コレが改造の成果か。
なんというか、元々派手な所を体型に合うようにピチっとするだけで印象がまるで違う。新作アニメの制服だよって言われても通りそうな『圧』がある。
なるほど、なるほどー?
「あの、アンジェラさん……」
「なによ?」
「私めの制服もその改造を施して頂く訳には?」
「改造っていうか直しだけど? 採寸が必要かな」
「あの、それでお願いします。出来ますでしょうか? お手すきだったらで宜しいので」
「……良いけど」
良いんだ。
正直ね。
ちょっと足りない気がしていたのだ。
ビジュアルにインパクトが。
これでパーフェクトアリスが完成する!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そんな事があったのが数日前の話。
ついに、俺の制服が完成した。
そして、アンジェラの編入も同時だった。
「アンジェラ・ナイセル、デス。ヨロシクオネガイシマス」
翻訳機を使わずに、日本語で挨拶。
ペコリとお辞儀。
ちゃんとしているなぁ。
……つまり、そうなのだ。
俺と同じ学校、同じ教室。
イレギュラーは固めた方が監視しやすいだろ?
だが、流石に二人目はね。
先生からもフォローが入る。
「あー、気が付いて居るだろうが、アンジェラもドリームフレーム事件の関係者だ。同じクラスだとなにかと騒がしくなる。嫌な場合は他のクラスに編入することも受け付ける。気軽に相談してくれ」
「モウシワケ、アリマセン」
アンジェラは頭を下げる。
俺も、タダ見てる訳にはいかないだろう。
「みんな、私達をよろしくネ♪」
なーんて、アンジェラと二人並んでポーズをキメちゃったりして。
教室からは黄色い悲鳴があがる。
女子人気も、ある。
これで他のクラスに行こうなんてヤツは居ないよなぁ?
「また変なのが増えたよ」
鈴木! 殺すぞ! 控えろ!
「だってお前、また制服改造してない? アンジェラまで“やってる”じゃん」
おまえ、目聡いな。ガチで風紀委員の才能がある。俺は気が付かなかったのに。
良いんだよ! 俺達は治外法権シスターズだから!!




