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短編

愛し合ってしまった双子の兄妹

恋愛するのに血の繋がりは関係あるのか‥‥双子の兄妹が両想いになるまで‥‥



美波(みなみ)‥‥好きだよ。君を離すものか」

海斗(かいと)‥‥」



 僕は海斗。目の前にいる美波は、双子の妹。


 双子自体、珍しいようだが男女の双子は普通の兄妹のようである。

 そっくりとまではいかなくてもどことなく似ている、兄妹であれば普通はこんな関係になったりしない。


 そう普通は‥‥


 僕達の普通は世間で言う普通とは違うだろう。だって、僕達2人はお互いを愛してしまったのだから。

誰だってそう。何かのきっかけで恋に落ちる。それが例え兄妹であろうと関係ないことだ。


 小さい頃からいつも隣にいた美波。2人同時に喋り出したり、外出すれば別方向に走り出したりして、親も大変だったようだ。

 その後も活発だった僕とは違って、美波は幼稚園に入ると緊張したのかおとなしくなった。


 女の子はませているみたいで、小学生の時に美波に言われた言葉は忘れられない。

「あたし、海斗のことが好き」

 すごく嬉しかった。ただその時は単に兄妹だから好きなんだろうと思っていた。


 だけど、僕にも見つけられなかったのだ。美波以上に好きになれる人が。

 双子の妹だとわかっているのに、気持ちが抑えられない。そうなったきっかけは、高校生の時に同じクラスの友人に言われた一言であった。


「美波ちゃん、可愛いよね。海斗、美波ちゃんって家ではどんな感じ?」

 その後もやたらと美波の家での様子を聞かれる始末。高校生男子ってそんなものなのか? もちろん真面目で誠実な奴もいたが、何故だろう。美波に言い寄る奴は皆、汚らわしいと思ってしまう。

 きっとその頃からだ‥‥僕が美波を誰にも渡したくないと思ったのは。



※※※



 あたしは小さい頃から海斗が好きだった。双子の兄妹と言われても目の前にいる海斗は明るくて頼もしくて、それにすごく優しい。

 あたしとは違って友達も多いし、周りには海斗のことを好きな子だってそこそこいたんだから。


 女の子はね‥‥幼稚園児であっても小学生であっても誰かに恋をすることだってあるの。あたしだって本気だった。

「あたし、海斗のことが好き」

 でもきっと小学生の男子ってそこまで考えていないのよね、仕方のないことだけど。


 それでもあたしは海斗の側をなるべく離れないようにしていた。だって‥‥海斗がいない生活なんて考えられない。一緒にいることが当たり前だと思っているんだから。

 海斗にとっては‥‥あたしはただの双子の妹なの?

分かってる‥‥兄妹という関係、それが現実だということは。それでもどうしても‥‥海斗じゃなきゃダメなんだよ‥‥こんなにあたしと一緒にいてくれて、なおかつ気の合う人なんて他にいるわけないじゃないの‥‥



 高校ももちろん海斗と同じところを選んだ。そして高校2年ぐらいだろうか、あたしに「モテ期」というものがやって来た。

 何人かお試しで付き合ってみたけど‥‥どこか違うような気がする。

 そっか‥‥いつも海斗はあたしが言う前に色々と気づいてくれる。あたしが困っている時もすぐに手を差し伸べてくれる。

 これは双子のシンパシーというものだろうか。


 だから‥‥それが心地良いと思ってしまったあたしには、他の人を好きになることなんてできないんだ。とうとう気づいてしまった。あたしはもう海斗からは離れられないんだ‥‥

 そう思うと今すぐ海斗に会いたくて、会いたくて‥‥たまらなくなる。

 伝えたい‥‥小学生の時のようにもう一度海斗が好きだと。小学生の時よりももっと海斗のことが好きになったんだと。



※※※



 高校3年の頃だった。文化祭が終わり本格的な秋の季節である。僕は放課後、すっかり紅葉した木々が並ぶ中庭に美波を呼んだ。

「美波は好きな人いるの?」

「海斗‥‥それは‥‥あたしはその‥‥」

「僕以外に‥‥いる?」

 海斗に見つめられた美波。紅葉のように顔がほんのり紅く染まる。そして美波は思う。

 僕以外って‥‥あたしの気持ちを‥‥海斗はわかっているの?


「いないよ‥‥海斗以外に、好きになれる人なんて出来なかった。あたしには普通の恋愛ができないの? どうして‥‥」

「美波‥‥!」

 海斗が美波をぎゅっと抱き寄せた。

「僕だって、同じさ‥‥高校に入ってからなんだ。美波のことを気にかけている奴がたくさんいて、そこで初めて‥‥君が僕の側から離れていくのが怖くなった」

「そうなの‥‥?」

「僕もわからないよ‥‥どうして‥‥普通の恋愛ができないかなんて。でもこれだけは、この気持ちだけは確かなんだ」

「‥‥」



「美波‥‥好きだよ。君を離すものか」

「海斗‥‥」

 そこで初めて僕達は口付けを交わした。

 許されることではないかもしれない、そして世間から好奇の目に晒されるかもしれない。

 あとはもちろん‥‥結婚だってできない。


 だがそれでもいい。結婚なんて紙切れ1枚の繋がりだ。それよりも僕達は‥‥心の繋がりを大切にしたい。誰に何と言われようと、この気持ちは変わらない。

「海斗は‥‥高校に入ってからだと思うけど、あたしはもっと前から‥‥小学生の時に海斗に告白した時から、あなたのことを想ってたんだから。あなたのことを考えるたびに、どうしたらいいのか分からなくなったこともあった。だけどやっぱり‥‥自分の気持ちに嘘なんてつけない‥‥こんなあたしを許してくれる? 海斗‥‥」

あたしはずっとあなたを見てきたんだから‥‥


「美波、許すも何も‥‥僕達はこうなる運命だったんだよ。だからもうこのままでいいんだ‥‥美波のことは僕が一生守ってみせる」

「海斗‥‥あたしにも言わせて」

「ん?」

「海斗のことが好き‥‥!」


 そして再び僕達は抱き合って唇を重ねた。ずっと‥‥お互い離れられなくなるぐらいに。

 これまで一緒に過ごした時間を思い出すと、これまでの想いが一気に溢れ出す‥‥やっと2人で一つとなれた。そう思いながら‥‥




 終わり

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