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食べ物屋さんと不審者さん 《連載》  作者: サトウアラレ
二章 食べ物屋さんと不審者の星夜祭
9/16

星夜祭の後で

 朝になり、顔色の悪い兄様達にお茶を出し、無限の活力を持つ子供達にご飯を食べさせ、わあわあ言っていたら、その輪の中にグレイさんもいて私はホッとした。


 ホテルに泊まった義姉様達と子供達も集合し、みんなでロウソクの交換をした。


 そうやってのんびりしていたら、あっという間に兄様達、姉様達の帰る時間になった。



「もう、帰っちゃうのね。寂しくなるわ」



 私は店の前に出て、帰って行く皆を見つめると寂しくなった。



「またすぐに会いましょう。グレイ君も一緒にね」とリア姉様が言い、

「今度はうちにこいよ。グレイの商品持って来てくれ」とディー兄様が言い、

「式のドレスは一緒に選びましょうね。グレイ君の好きな色は何かしら?」とベラ姉様が言い、

「仲良くな。グレイ、妹を頼む」とルー兄様が言った。



「はい。皆さんも気を付けて」


 グレイさんが答え、私は恥ずかしいのと申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちでパンクしそうだった。


 義姉様達、義兄様達からも、「また会いましょう。元気でね」や、「連絡はこまめにくれ。心配だから」と挨拶を貰い、甥っ子、姪っ子も飛びついて来て「またねー」と言い、クッキーをまた口に入れていった。


 兄様達、姉様達と抱きしめ合った後、 嵐のような四家族は「じゃあな」と最後にルー兄様が言い帰って行った。


 グレイさんと二人きりになると今までの騒がしさが嘘のようで、食堂は広く、寒く感じた。



「グレイさん、奥に行きませんか?奥の方が温かいですし」



 リビングの方にグレイさんと移動をし、二人で椅子に座ったのだけれど、さっきまで大勢でわいわい言ってたのが嘘のように思える。


(兄様達、姉様達が帰って寂しいなんて、子供じゃないんだから)


 私は嵐の四家族を思い出しながらグレイさんに甘いミルクティーを入れ、ケーキの残りを二人で食べようとお皿に分けた。



「グレイさん、突然すみませんでした。兄様達、悪い人達ではないんですが。心配が過ぎるというか、私が心配をかけるのが悪いのかもしれないんですが。まさか、こんな事になるとは。せっかくの星夜祭でしたのに」



 私がケーキを差し出しながら言うと、ミルクティーをグレイさんは一口飲んでふにゃりと笑った。



「びっくりしたけど、楽しかったよ。大丈夫。お兄さん達、お姉さん達にも挨拶できたしね。それにこれからも星夜祭はあるよ」


「グレイさん。有難うございます。とはいっても疲れたでしょう。ここでゆっくりしていってもいいですし、帰られてもいいですが。眠くないですか?」


「ミアさんとせっかく一緒にいれるからね。ミアさんが疲れてないなら、ここにいてもいいかな?」


「はい。私も一緒がいいです」


 私は顔が赤くなりながらもコクンと頷いて答えた。


 グレイさんはニコリと垂れ目を下げながら笑うと、私の手を優しく握った。



「ようやく触れた」


(私だって、グレイさんに触れたかった)


グレイさんは、私をぎゅっと抱きしめ、ゆっくりと髪を撫でた。


 私はグレイさんの胸の中でドキドキしながらグレイさんを見つめると、グレイさんのこげ茶の目が優しく私を見ていた。


 グレイさんの顔がゆっくりと私に近づき、ミルクティーの匂いを感じた。


 ああ、キスされる。


 そう思って、私はそっと目をとじた。



「ねー。ミアねーちゃん、ちゅーするの?」



 食堂のドアの方から声が聞こえた。



「!!」


 びっくりして振り向くと、目をそらしていた兄様達、姉様達がいた。


「いや、忘れ物してな。すまん。続けてくれ」とルー兄様が言って、嵐の四家族は今度こそ本当に帰って行った。



「!!もう!!」



 私が顔を赤くすると、グレイさんは、ははは!!と笑い、


「じゃあ。遠慮なく」


 グレイさんは私をぎゅっと抱きしめ、


「ミアさん、これからも宜しく」と耳元で言い、チュッとキスをされた。



 これからも兄様達や姉様達には振り回されて行くのだけど、そこにグレイさんも巻き込まれていくのはまた別の話。




これにて二章完結です。

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