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食べ物屋さんと不審者さん 《連載》  作者: サトウアラレ
三章 食べ物屋さんと素敵な不審者さん
12/16

冒険者ライセンス

朝の忙しい時間を終え、グレイさんも仕事に行き、昼の仕込みを終えると私はクローゼットの中をがさごそとひっかきまわしていた。



「確か、この辺に置いたと・・・。あ、あった!」


大きな布のバッグをクローゼットから引っ張り出すとうっすら積もった埃を払った。


キラキラと埃を飛ばしながらバッグを開けると、油紙に包まれた冒険者セットが出て来た。


「よかった。まだ使えるわね」


バッグから取り出して確認したのは、キャンベリーからメルポリに来る時に買った、冒険者セット。


短いとはいえ、一人旅、何が起こるか分からないと、兄、姉から安全な恰好で行けと簡易防具を旅人の服の下に着せられたのだ。


それに身分証明書の代わりに持たされた冒険者カード。


今、私のランクはルーキーの一つ上のEランク。新人研修を受けて、決められたクエストをクリアすればなれるEランク。最下位ランクだけれど、お店を開いてすぐは自分でハーブや、キノコ、果物を採取に行く事も多かった。なんせ、お金が無く、お客さんも来ず、食べる物に困っていたのだ。


兄様達のおかげで助かった。あの頃は自給自足だったもの。


ここ一年は冒険者ギルドにカードの更新をしただけだったが、南の森であれば私でも行ける。


うん、お店を一日閉めてゴールデンベリーの採取に行こう。


もしゴールデンベリーがなくても、今の時期なら、ホワイトシナモンスティックや、ブッシュナッツが採れるだろう。


考えているとワクワクしてきた。



「よし!雑貨屋とギルドに行こう!」



私はすぐに食べ物屋を出ると近くの雑貨屋に行って、傷薬と包帯、ポーション等を買い足した。



「ミアちゃん、珍しいね?怪我でもしたのかい?」


「いいえ、久しぶりに採取に行こうかと思って。南の森のゴールデンベリーを」


「ああ。皆行ってるね。気をつけていっておいで。でも、店は?どうするんだい?」


「明後日、行こうかなって。天気もいいみたいだし。明日、お客さんにお店を一日閉める事を伝えようかなと」


「明後日だね。分かったよ」



雑貨屋を出て、ギルドに行った。



「こんにちは」


「ミアさん、こんにちは。更新の時期ではないですよね?何かお困りですか?」


「いいえ、依頼ではなくて、南の森に行こうかと。私でも達成できそうな依頼ってありまますかね?」


「ミアさんが?ええっと、ミアさんのランクはEですよね。うーん、南の森なら・・・。無理はいけませんし。ランクを上げる目的もないですよね?それなら・・・、霜降り草十本からの依頼はどうですか?根までの採取で、面倒ですが、簡単です。細かい仕事を嫌がる冒険者が多いので、ミアさんにはお勧めですよ。森の奥まで行かなくてもいいですし、安全かと。後はうーん、採取依頼がいいですよね?」


「ええ。討伐は無理です。剣も弓も使えませんから。光玉で安全な所まで逃げるが、私の戦い方ですから」


「ふふ。ミアさんの武器は包丁とお玉ですもんね。あ、ゴールデンベリーが見つかれば採ってきてくれませんか?」


「私、自分で欲しいのですが」


「ええ、そうですよね。ミアさんなら。でも、少しでもギルドに卸して頂けるとポイントが付きます。ポイントが付くと、カード更新の時に更新料が安くなりますよ」


「え、少しでもいいですか?」


「はい、少しでいいですよ」


受付のお姉さんはふふっと笑いながら、クエストの手続きを済ませてくれた。


これで、明後日の朝一番に南の森に出かけて、霜降り草とゴールデンベリーを採取出来ればバッチリだ。おまけに色々採れれば嬉しいけれど。


受付を終わらせた後、護身用のナイフを研いで貰ってロープとスコップを新たに買うと食べ物屋に戻った。


店に戻ると、お昼の時間が迫っていて、お客さんが店の前で待っていた。



「ごめんなさい!すぐに開けます!」


「ミアちゃん、今日は出かけてたんだね。いやいや、寒いから助かった」



お客さんにそう言われて、ストーブの中の灰にうもらせていた熾を起こすと急いで薪を足して空気を送ると火を強くした。



「すみません、今、温めますから。お昼はシチューですよ。お湯が沸いたら、すぐにお茶を出しましょうか?」


「有難い。外は寒かった。ミアちゃん、それ、二人前ね。それにしても、南の森は人が多かったなあ」


「ミアちゃん、俺のお茶は甘くしてくれる?ルーキー達が多いのはゴールデンベリーのせいさ。まだ、見つかってないんだって」


「だから、新米達が多かったのか。キョロキョロしたばかりの奴ばかりだったなあ」


「懐かしいな、大体の奴が一度は探しに行くだろ」



お客さんの声に返事をしながら、急いでシチューを温め直した。



「ゆっくりでいいよ。ミアちゃん」


「すぐに温めますから。ゴールデンベリー、まだ見つからないんですね」


「ああ、ミアちゃんも欲しいんだろう?」


「ええ、明後日、私も南の森に採取に行きます。だから明後日は一日、お店を閉めますね」


「ええ!!ミアちゃん、南の森に?大丈夫かい?」



驚くお客さんに私は冒険者ライセンスを見せた。



「ちゃんと、ライセンス、持ってるんですよ。ここに来たばかりの時は、緑の平原と南の森には良く行きました」


「Eランクで威張られても不安しかないなあ・・・。緑の平原って街を一歩出た所だし。Eランクだと、街中の雑用が多いんじゃないか?まあ、南の森なら、今は人も多いからなあ。ミアちゃん、気をつけて行けよ?グレイには言ったのか?」


「いいえ、まだ。今日の夜にグレイさんには伝えようかなって。あ、お湯が沸きましたね」」



保温していたお湯はすぐに沸騰し出し、お客さんにお茶を出した。



「ミアちゃん、グレイにはちゃんと伝えてな。そうかあ、明後日はミアちゃんの飯食べれないのか。明日の夜に弁当買えるかな?」


「翌朝の分ですか?うーん、それならキッシュなんかどうですかね?冷めても美味しいように、味はちょっと濃い目に作りましょうか。それとパウンドケーキとかはどうですか?」


「お、いいね。きっと、俺以外にも欲しがる奴いると思うよ。冬だと腐る心配も無くていいなあ」


「冬でも、腐る時は腐りますから、お弁当も早めに食べて下さいね。でも、冬限定でお弁当を夜に販売するのもアリかなあ」


話していると、店も鍋も温まり、お客さんにシチューとパンにボア肉のジャム添えにマッシュポテトを添えた。


それから来るお客さんには同じように南の森に行く為、店を休む事を話すと、皆から異常に心配をされたが、何度も冒険者ライセンスをちゃんと見せて、ギルドの依頼も受けたと、ちゃんと説明をした。だが、皆の心配は無くなる事は無かった。


夜になっても、同じ様に皆に説明をした。明後日の休みを伝え、明日の夜にお弁当を販売する事を伝えると注文が思いのほか多く入った。


明日は忙しくなるぞ、と材料を頭の中で確認していると、カランっと勢いよくドアが開き、グレイさんが走り込んで来た。



「ミアさん!冒険者になったって何??」


ブックマーク、☆有難うございます!励みになります。

本日、もう一話、夕方までに投稿致します。

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