#003双穴水鏡山に眠る呪物、本物の【鑑石】を発見!?
前の記事で書いた通り、鏡石神社を調査していた折、とある家の蔵から鑑石を探す重要な手がかりを入手した。
それは、村で話すは禁忌とされていた神社と寺のお家騒動を子や孫に伝え聞かせるのに、消えた鏡石神社の位置を絵で示していたのか、鏡石神社と鑑石寺との位置関係を図解する墨絵なのだ。
そこに描かれている中に鑑石の位置を示す重要な手かがりを見付け、あの教団施設内に在る鑑石が別物である事を我々は確信した。
先ずは墨絵を見てもらおう!
お気付きだろうか?
この墨絵は鏡石神社と鑑石寺の位置関係を示しており、二つを別け隔てるように流れる川が鑑見川で間違いないだろう。
そこで注目すべきが井戸の位置だ!
神社と寺の中央を流れる川の左上に位置する井戸が、滝のように水が溢れ出る水源よりも下に在る。
それが何を意味するのか、お分かりだろうか?
ここに描かれている井戸とは、先日警察の報道発表で坑道崩落の原因の火元とされた【堀内家の古井戸】で間違いない。
堀内家の古井戸は、双見湖観光船の鑑見港から登山道を行き、裾野東の中腹に走る作業林道を北へ少し行った辺りに在り、それより北の教団施設よりも高い所に位置する。
詰まり水源地が井戸より上なら、間違いなく教団施設の中に鑑石は無いという話だ。
では水源地は何処かと双穴水鏡山の航空写真を睨み見ていて気が付き、現在の地図を開き凡そに重ね合わせてみた。
すると水鏡峠の双見湖展望駐車場|(槍水町)の位置が地形からしても、焼失した鏡石神社の在った場所に思えてならず、一応に仮定して他を探ってみた処、教団施設の鑑石寺と古井戸の位置は絵に重ね見てもこの三点は間違いないように見えるのだ。
鏡石神社から三角測量とまでは言わずも、位置関係に照らし合わせれば肝心な水源地は何処なのかに、もう一つの展望駐車場|(鑑石市)が北の山頂近くにあるが、絵と重ね見るもしっくり来ない。
参考までに、水鏡峠開通前の整備林道が載っている地図を横にし、色々と書き記してみたものを以下に置く。
西
南 → 北
東
薄い黒線は現在の水鏡峠
茶線は尾根
黒地に赤丸は峠の展望駐車場
白地に青丸は堀内家の古井戸
赤の楕円は教団施設|(元の鑑石寺)
特筆すべきは黄丸で記した部分!
ここは先日の坑道崩落以前から尾根が陥没していた立入禁止の危険区域なのだが、絵と地図の位置関係を見れば一目瞭然だった。
ここが鏡石と共に宮司が身を投じた水源地であり、鑑石で塞ぎ住職が身を投じ封じた場所で間違いないのだ!
だが元々陥没していて砕けた岩や窪みに長年の腐葉土類が被さるだけの尾根は、何時何処が崩れるかも判らず立入禁止の危険区域とされており、水鏡峠もそこを迂回して敷かれている上、先日の崩落で調査は疎か撮影も厳しいのが現状だ。
とはいえ、陥没地が江戸より前の坑道跡だとすれば、安土・桃山時代かそれより後か前かは判らずとも、江戸後期の世にはココが水源地となっていた可能性は想像に難しくない。
掘削当初に尾根で試掘に露頭掘りをしてみて山の地質鉱石を確認し、それを置き捨て山の横から掘って坑道を拡げて行く中で、換気坑や内部に溜まる水を吐き出す排水坑道の必要に、坑道の拡がりに合わせ換気坑や排水坑道も増やされる。
そうした坑道からの排水を都へ運搬する水路に利用していたと思われ、江戸中期の古文書に銀鉱山だった名残か間歩(坑道)の痕跡が残っていたと記されている事からも、双見湖より南東に流れる麻布川の由来は間歩だとも云われている。
協力をいただいた加々見先生の調べ知る処では、おそらく採掘していた銀は、奴隷商人でもある葡萄牙との交易で、鉄砲を入手する為の資金として織田信長へ献上されていたものではないかと推測されている。
本能寺の変により信長は倒れたが、銀鉱山の位置を他の者に知らせぬ為にと、坑道の出入り口を塞ぎこれを隠した可能性も多分にあり、それらの話は他の地にも多くある。
TVで何処かのコピーライターが指揮を取り群馬の赤城の方を掘削して話題にもなった徳川の埋蔵金もそうだが、山梨県甲州市と北都留郡丹波山村の境にある銚子滝と地元で呼ばれるがその筋の者には最恐と名高い有名な心霊スポット花魁淵の云われにもある通り、武田の金山の在り処を漏らさぬようにとそれを知る花魁や坊主を抹殺までして隠すのは戦国の世の常でもある。
また、鑑石の名は城壁を指す事もあり、銀鉱山がその城主の物だと示しているようにも思える事から、銀鉱山の誇示と隠蔽に山への信仰と鑑石に纏わるお家騒動が複雑に絡み合った事自体、銀鉱山を隠蔽する為の策のようでも有る。
仮に策だとすれば、銀鉱山の入口を知る者は皆殺さね兼ねず、話すを禁忌とされた神社と寺のお家騒動もまた、村の者が子や孫に聞かせ伝える為の話だったとすれば、蔵に残されていたあの墨絵が示しているのが鑑石であり、実は銀鉱山の入口を記しているものではないだろうか。
詰まる話が本物の鑑石の場所とは、陥没して立入禁止の危険区域に指定されているこの尾根である事は間違いないのである!!
それを確信した途端に不可解な事が多分にあると気付かされる。
次は、壊れた尾根の鑑石と、カルト教団の施設内に在ると噂される鑑石の謎についてを記す事にする。
ライター:Kタナカ
地域文化資料記事作成協力:加々見 温子
著書:地域言語で探る地政史シリーズ『銀鉱に揺れた鑑石村』
■編集後記
一応までに、墨絵・地図の画像やラストの参考書等はネタなので探しても出ません。
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