表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

狐の嫁入り

作者: ノルン

続きもの、狐の婚礼の3話目です。お楽しみください。

第3話 嫁入りの同行


「たれか‼」

 花嫁に襲い掛かる黒い影に、俺は咄嗟に石を投げた。手頃な木の枝を手に、透析にひるんだ陰に襲い掛かる。

「人間じゃ‼」

「待て、花嫁様を助けてくれておるぞ‼」

 ざわめいた周囲には目もくれず、俺は影に容赦なく枝を打ち付けた。一応、剣道の段持ちの俺は、影をはじき返すと、地面に倒れた影に、もはや人の形をしていない行列の参加者が襲い掛かる。悲鳴を上げて、影は消えた。

 「ジンヤ、君強いね!」

 呑気にハリーは言うが、俺は冷や汗をかいていた。狐の嫁入りを見たものは、死ぬ。いまさらその恐怖で、背中が濡れる。

 花嫁行列の中から、振袖を着た女性がこちらに駆け寄ってくる。今までに見たことのないほどの美貌に、俺もハリーも思わず見惚れた。

「姉をお助けいただいて、ありがとうございます。」

 丁寧にお辞儀をすると、俺たちに微笑んだ。

「それにしても、なぜ人がこのような場所に?なるべく人に会わぬ経路を進んでいたと思うのですが?」

 美しい黒髪をさらりと揺らして、彼女が小首をかしげる。

「僕は、日本の伝承などを記事にするために、このあたりの人の話を聞いたりしているんだ。詳しい人がいるからと村を訪ねて回っていて…。」

 ハリーの顔が真っ赤になっている。確か、彼の好みの女性は、淑やかな大和撫子だったはずだ。目の前の彼女のような。

「俺はその案内役だ。まさか狐の嫁入りを見てしまうなんて思いもよらなかった。」

 そういった俺に、彼女は淑やかに微笑んだ。

「伝承のように死ぬのをご心配ですか?姉の恩人にそのようなことは致しませぬ。」

 その後ろに、いつの間にか中年の男女が立っている。

「娘をお助けいただき、ありがとうございます。」

「もしよろしければ、このままご同行いただき、できれば婚儀にもご参列いただけませんか?礼がしたいのです。」

 俺が断りの言葉を紡ぐ前に、

「ぜひ!狐の婚礼、見たいです!」

 とハリーが答えた。

 ため息をついた俺に、狐の化けた姿であろう3人がにこやかに俺たちを行列に導いた。

「本日はこの先の宿屋にて泊まる予定でございます。改めて、本人からも礼を言いたいということなので、是非とも。」

 父親のにこやかな言葉に、俺たちは行列に交じって歩き出した。

お楽しみいただけましたでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ