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第一話 激ヤバ!五稜郭大結界決戦6

「これからお二人には、コンビを組んで仕事をしてもらうッっス」


「「……は?」」


 夜12時、討子と魂美は二人で声を揃えて弟子屈に詰め寄っていた。場所は町の外れ、周囲に人気はなく、切れかかった外灯が頼りなく3人を照らしていた。

「オイオイオイ、あーしは金になる仕事があるって聞いたから、わざわざ着てやったのによぉ、つまんねぇ冗談言ってんじゃねよ」

「確かに笑えない冗談だね、家だけじゃなくて仕事でもこのクソガキの世話しなきゃならんのかい」

「あーしも加齢臭まき散らすババアの介護はしたくねーんだけど」

 バチバチと火花を散らし合う二人。

「あははー、なんだすっかり仲良しじゃないっスかー」

 弟子屈が半笑いでそう言うと次の瞬間、鋭くとがった爪と、研ぎ澄まされた刃が彼の喉元に突きつけられた。

「二人とも息ピッタリっスねー。こりゃあベストコンビ間違いないっスよ」

 傍から見れば命の危機に瀕しているように見えるのだが、当人はそれを全く感じていないらしい。そんな彼の様子を見て、怒るのがバカバカしくなった二人は獲物を下げて、ジトッとした目つきで睨みつける。

「もっかい聞くが、なんでアタシがこのクソガキと一緒に悪霊退治をしなきゃいけないんだい?」

「あー、上からの命令なんっスよー。最近、悪霊たちの動きが異常なくらい活発化していて、未成年には原則、1級以上のエクソシストがつくようになってんっスよー」

「はぁ……そもそもこんなガキにお守りをつけるくらいなら、エクソシストの仕事なんかさせんじゃないよ」

「しょうがないじゃないっスかー、ギャルの手も借りたいくらいこの業界人手不足なんっスよー」

「オイ、失礼な言い方すんな」

 討子はイライラしながら魂美を指さして言う。

「あーしだってこの業界長いんだ! こんなババアの手なんざ借りなくても一人でやれるっつーの!」

「へー、ついこの前、ザコ相手に死にかけてたのはどこのどいつだったっけ?」

「あれは……っ、油断しただけで……!」

「それが甘いっつってんだよ。楽に稼げるバイトくらいに思ってんなら今すぐ辞めな」

「ッ……」

 それは、今までの罵り合いとは違う、真剣な言葉であったことを討子も感じ取り、その力強さに思わずたじろいでしまう。


「エクソシストとして戦うなら、覚悟は持った方がいい」


 学校で教師から言われた言葉を思い出す。覚悟を持ってこの仕事に臨んできたつもりであったが、いざ改めてその有無を問われると揺らいでしまう自分がいることに、討子は若干苛立つ。そして、そんな二人をなだめるように弟子屈が間に入ってきた。

「まぁまぁ二人とも、いったん落ち着いてくださいっス。魂美さんの心配ももっともっスけど」

「心配してなんかいない」

「はいはい……まぁともあれ後輩に経験を積ませることも重要なんっスよ。それに討子さんに覚悟があるかどうかは、これからの仕事ぶりで判断すればいいんじゃないっスか?」

 そう言って弟子屈はチラッと討子の方を見る。

「そ、そうよ! そんなに言うなら見せてあげる! あーしの覚悟ってやつを!」

 売り言葉に買い言葉のような形になってしまったが、討子は真っすぐ魂美を見てそう言い放った。

「よし、じゃあ仕事ぶりを見せるため、今回はコンビで仕事するってことでいいっスね! いやぁーよかったっス」

「チッ……なんだか乗せられたみたいでムカつくねぇ……。まぁいいわ」


 なんだかんだで一緒に仕事することになった討子と魂美。お互いにメンチを切り合ったり、中指を立てたりしているが、そんな二人を無視して弟子屈は説明を始める。


「今回の仕事は、この廃墟の調査です。最近、観光客が肝試しに来たりするんですけど、そこで幽霊の目撃情報があったり、ケガをする人も出てきているんで、ここに悪霊がいないか調査して、もしいればその除霊もするってカンジっス」

「んで……その廃墟っていうのがコレ……ね……」

 そう言った討子の目の前には、ボロボロになったレストランがあった。サーカスのように派手で黄色を基調としたインパクトのある外見、印象的なピエロの看板、そしてどこか古臭さを感じさせる内装、そうここは……


「ラッピじゃん……!」


 函館が誇る、ご当地バーガーショップ『ラッキーピエロ』であった。その歴史は古く、1987年6月に創業しており、道外には出店せず地元に密着した店づくりが最大の特徴である。道南地区に限った話になってしまうが、店舗数は大手チェーン店を超えており、函館市民にしてみれば知らない人はいない、まさしく「故郷の味」と言うべき存在である。

 特筆すべきはそのメニューの幅広さであり、バーガーショップと言いながらカレー、焼きそば、オムライス、果てはのり弁など様々な料理を取り扱っている。また、メインであるハンバーガーはもちろん絶品で、看板メニューである『チャイニーズチキンバーガー』は、一度食べたら忘れられない、むしろ定期的に食べたくなる中毒性を持っており、このバーガーを食べるためだけに、函館を訪れる人も多い。

 そんなラッキーピエロの廃墟を調査するのが今回の二人の任務、かと思われたのだが……

「いえ、ここはラッキーピエロじゃないんっスよ」

「え、いやこの店のカンジはどう見ても……」

「看板をよく見てください」

 討子は暗くてよく見えなかったので、スマホのライトで看板のあたりを照らして見る。

「ん~~? えっと……ハッピー……ピエロ?」

「そう、ここはラッキーピエロのパチモン、ハッピーピエロなんっスよ!!」

「……なんてしょうもない……」

「確かに……言われてから改めて見ると、店の外装やピエロのキャラクターも若干違うねぇ……」

「てか思いっきりパクリじゃん、大丈夫なの? コレ」

「大丈夫じゃないから潰れたんっスよ。パクリで訴えられ、そもそも立地が悪いから人も来ず、味も大して美味しくないかったらしいっスよ」

「そりゃそうか……にしては店、デカいくない……?」

 そう、討子の言う通りこのハッピーピエロは、ただのパクリバーガーショップとは思えないほどの大きさだったのだ。駐車場は何百台も停められる広さがあり、建物自体も外見を見ただけでも数百人は入れそうである。

「どっかの金持ちが金にモノ言わせて作ったらしいんっスけど、店の広さだけは本家を超えていたみたいッスね」

「そりゃ観光客が面白半分で肝試しに来るわけね」

「SNSやネットでは、店が倒産したときに自殺した店長が、ピエロの人形に乗り移って、肝試しに来た観光客を殺してハンバーガーの材料にしてるって噂が流れるみたいっスね」

「またB級ホラー映画みたいな設定……ま、いいわ。じゃあさっさと片付けてくるわね」

「あ、ちょっと、討子さんー? 待って……ってまた先に行っちゃった」

 討子は弟子屈の言葉を聞かずにさっさと、建物の中へ入っていってしまった。

「魂美さーん、討子さんのことお願いできます?」

「はぁ……一回死にかけたらから少しはビビるかと思ったんだけど、根性だけはあるみたいだね……ま、アイツが死んでもアタシにゃ関係ない」

「えー、お願いしますよー。ここでもし討子さんに何かあったら、俺だけじゃなくてコンビの魂美さんの責任にもなるっスよ」

「誰がコンビだよったく……でも、さっき言ってたような噂が流れてるんだったら、今のクソガキの手には余るか……まったく面倒だね」

 面倒くさそうにそう言うと、魂美は刀を腰にぶら下げて建物へ向かう。


「そんじゃ、悪霊殺しといくか」

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