化け物と呼ばないで
溶け落ちそうな意識を手繰り寄せ、マチルダは目を見張る。
風に揺れる焦げ茶色の毛。リズを睨みつける横顔。口元から覗く鋭い牙。
隠し続けて来た野獣の姿を露わにしたロルフが、マチルダの体をしっかりと抱きしめていた。
「駄目…駄目、戻って!」
必死で腕を伸ばし、野獣の顔を抱きしめた。少しでもその姿を隠そうと思ったのだが、残念ながらその願いも虚しくリズが叫んだ。
「化け物!」
悲鳴混じりのその声が、ロルフに向けて突き刺さる。遠慮なく放たれる水の槍がロルフに向かってくるが、ロルフが一吠えすると放たれた衝撃波によって全て霧散させられた。
「リズ。マチルダを傷付けたな」
低く唸るその声は、普段よりも冷たいように思えた。グルルと低く唸り、許さないと睨みつけるその姿に怯えたのか、リズはふるふると首を横に振る。
ラウエンシュタイン家の魔法使いは狼に姿を変える。いつか自分もそうなるんだと嬉しそうに話していた幼いロルフを知っているリズは、狼ではない化け物に姿を変えた事が信じられないのだ。
「狼になるって…言っていたじゃない!変身魔法は使えないって…!」
「変身は出来るさ。狼には成り損なったけどな」
「嘘!貴方はロルフじゃない!ロルフはどこ!」
目を見開き、信じないと駄々を捏ねるリズの姿を悲しそうな目で見つめ、ロルフは腕に抱いたマチルダの体をぎゅっと抱きしめた。
鼻先をマチルダの頬に寄せ、金色の瞳をじっと向ける。
まるで、縋りつくようなその視線がマチルダの胸を締め付けた。
「ごめんなさい…私のせいで」
寄せられた鼻先をそっと抱きしめ、マチルダは小さく詫びる。見せたくない、見られたくない姿を露わにしてまで、ロルフはマチルダを助けてくれた。
大切にされている事を喜びたいのだが、今は申し訳なくて詫びる事しか出来なかった。
「これが俺だよリズ。もう隠さない。マチルダが受け入れてくれたから」
「黙りなさい!」
錯乱したように叫ぶリズの胸元から吹き出す瘴気が勢いを増す。足元から湧き出た水が、再びマチルダに向かって伸びた。水はマチルダを抱いているロルフの体をも狙っているようで、真直ぐに向かってくるその勢いは先程よりも早く、水量も増している。
「違う…ロルフは狼になるの!私の王子様は狼よ、化け物なんかじゃないわ!」
頭を抱えて叫ぶリズの目が、しっかりと野獣の姿を捕らえて離さない。
体を捕らえようと向かってくる自ら逃れる為、ロルフは地面を蹴って宙へと飛び上がる。
その姿を見て声を上げたのはヘルメルだった。
「ラウエンシュタインの秘密は君か!ロルフ・ラウエンシュタイン!」
両腕を広げ、ケタケタと笑うヘルメルは素晴らしいと声を上げた。
宙へと延びる水を霧散させるロルフの姿は、友人面をしているコニーの目にもしっかりと映る。信じられないと口を半開きにし、動きを止めたコニーを見つけると、ロルフは細く鼻を鳴らし、地面へと着地する。
「コニー…」
「後で説明な」
そう言うと、コニーはにんまりと口元を緩ませて剣を握る。顔色が悪いのは、突然放り込まれた実践の場に緊張しているからなのだろう。すぐ傍に着地したロルフに怯える様子はなく、背中を預けて信頼しているように見えた。
「化け物だから変身魔法を使わなかったのか。ラウエンシュタイン家の子が入学してきたのに、一度も変身しないからおかしいと思ってたんだ」
数年前、リカートとナディアもバーフェン学園に在籍していた。その時の二人は遠慮なく変身魔法を使い、実技授業の時も狼の姿で戦っていた。それを知っているヘルメルは、何故同じ家出身のロルフが変身しないのか不思議に思っていたらしい。
「化け物だから、変身しなかったんだね」
ニタニタと嫌な笑みを浮かべ、まだロルフを睨みつけているリズへと視線を向けるヘルメルが憎たらしい。
何度化け物と言えば気が済むのだろう。ロルフを愛していると言ったくせに、思っていた姿に変身しなかっただけで化け物と蔑むリズの考えている事も分からないし、良い実験動物を見つけたと楽しそうにしているヘルメルも気が知れない。
「化け物、化け物と…」
ふつふつと湧き上がる怒り。
ゆっくりとロルフの腕から降り、指に嵌めていた魔具を鞭へと変化させたマチルダは、苛立ちを発散させるように地面に鞭を叩きつけた。
「私の恋人よ。馬鹿にしないで」
叩きつけられた鞭の先から吹き出す炎。マチルダの赤い髪を巻き上げる熱風がリズのドレスの裾を焦がした。
「貴方が一番腹立たしいわ」
首をぐるりと回し、絶対に逃がさないと目を見開いたマチルダのその表情は、誰が見ても恐ろしいと思うだろう。
笑みを完全に消し去り、トンと踵で地面を軽く蹴る。マチルダの影から飛び出したルディが、迷うことなくリズの腕に噛み付いた。
「っ…!躾のなっていない獣ね!」
「躾しているから噛み付いているのよ、お馬鹿さん」
噛み付いたルディは頭を振り、リズの腕の肉を少しでも多く噛み千切ろうとする。主に指示された通りしっかりと傷を作ると、今度はあっさりと口を開いてリズから距離を取った。
ぼたぼたと流れ落ちる血液が、リズの水色のドレスを汚す。痛みに顔を歪めながら、リズは噛まれた腕を抑えてマチルダに向かって水の矢を放つ。
「私の恋人を化け物と呼んだわね」
放たれた矢を鞭で叩き落としながら、マチルダはゆっくりとリズに向かって歩く。
バチバチと地面に鞭の先が当たる度に生み出された炎が、リズの元へ向かって飛んでいく。
怪我をした腕を振り回し、生み出した水を向けるリズよりも、無傷で鞭を振り回すマチルダの方が魔法を発動させる速度は速い。徐々に距離を詰められるリズは、悔しそうな表情でじりじりと後ろに下がっていく。
「フロイデンタール、この子はまだ仕事があるんだ。あまり苛めないでおくれ」
「邪魔です」
宙から落ちて来たヘルメルがマチルダの眼前で笑う。掌大きく広げ、マチルダの顔面を掴みにかかったその手から吹き出した瘴気。
食らう事を覚悟した瞬間、マチルダの胸が何かに押され、ヘルメルから距離を取るように吹き飛んだ。
「おや」
マチルダとヘルメルの足元、地面からコニーが飛び出し、マチルダの胸を突き飛ばしたのだ。地面から飛び上がるコニーの体は、ルディの背中に跨っている。マチルダの代わりに顔面に瘴気を食らい、ぐらりと揺れた体は背中から地面に倒れ込む。
「お…っえ」
「ケーニッツさん!」
「あーあ、身代わりになって可哀想に」
眉尻を下げるヘルメルに見下ろされるコニーは、苦しそうにじたばたと地面で藻掻く。
マチルダの脳裏に、いつか森の中で見た変異する動物の姿が浮かぶ。コニーもあの時と同じように変化してしまうのだろうか。もしそうなったらどうしよう。
嫌な想像を振り払うように、マチルダは鞭を振るってコニーの手首を捕らえた。
「どなたか!」
「貰うわ!」
鞭を振り上げ、宙に放り投げたコニーの体をナディアが咥えて退避する。
こっちだと声を上げたクロヴィスの元へコニーを運ぶと、そのまま守るように立ちふさがり、低く唸りながらヘルメルを睨みつけた。
「はは…羽虫が多くて困るね。駆除しないと」
にっこりと微笑み、ヘルメルは胸元へ手をやる。何かを探す様に動かすが、指先に何も触れない事を不審に思い視線を胸元に下げた。
首元から垂れる皮紐。その先にあった筈の物が無くなっている事に気付き、ヘルメルの表情から笑みが消えた。
「笛…!」
何処だと視線を忙しなく動かすヘルメルがふと気付く。何かを摘まみ、こちらを見ているクロヴィスの姿に。
その指先に摘ままれているのは、探している小さな笛だった。
「返せ!」
「断る。我が友人が命がけで奪ってくれたのだから」
地面に倒れ身動きしないコニーの胸に手を当てながら、クロヴィスは摘まんだ笛を地面に落とす。カランと音を立てて落ちた笛は、シュレマーが剣先で貫き砕かれた。
「笛…笛が!」
「おや、大切な物だったかい?すまないね、新しい物を用意しよう」
砕かれた笛はサラサラと細かな砂へと姿を変える。風に吹かれ消えてしまった笛がもう元には戻らない事を察すると、ヘルメルはぶるぶると体を震わせた。
「ああ、クソ…!火竜!こいつら全員焼き殺せ!」
いくら喚こうが、火竜はぴくりとも動かない。ただじっと座り、大人しくしているだけの火竜の周りを、幼いドラゴンがパタパタと飛び回るだけだった。
「おや?火竜が命令を聞かないようだ。あの笛が必要だったのかな?」
「分かっていてやったな」
「勿論。あれは火竜の歯から作った笛だろう?よくドラゴンの使役法が分かったな」
使役法が分かっているからこそ、クロヴィスは笛を奪えとお供たちに指示していたのだ。コニーにも機会があれば奪えと指示していたおかげで、マチルダを庇うふりをしながら奪う事が出来た。
ただ、顔面に瘴気を叩き込まれてしまっては、もう動く事は出来そうにない。クロヴィスが浄化をしてはいるが、あまりに濃い瘴気はなかなか体から抜け切らない。
「笛はもう無いぞ。大人しく捕らえられた方が良いんじゃないか?」
「まさか。捕まったら死刑確実だからね」
「生き残れば王になれると?笑わせるな」
冷たく睨むクロヴィスの前で、ヘルメルはまだ足掻くつもりなのか両手を前に突き出した。噴き出す瘴気はじわじわとヘルメルの肌を黒く染めていくが、それを気にする事無く魔力を練り上げていく。
練り上げられた魔力は徐々に形を作り、やがて黒い剣のような形をとった。
「僕は王の長子。僕が正統な次期王だ」
王の座を狙う男の笑みに、クロヴィスとお供たちは冷ややかな視線を向ける。
その身に流れる血が王の血を引いていようとも、半分は身分の低い下働きの女の血。誰が正統な王位継承者だと認めるというのだろう。
「次期王は我が兄だ。頭を垂れろ、反逆者」
「首を差し出すのはお前だ」
剣を構えたクロヴィスは、コニーから離れてゆっくりとヘルメルに歩み寄る。
半分だけ血の繋がった兄弟は、互いに互いの存在を認めない。
母が違うだけで大切に慈しまれ育った弟。
存在するはずのなかった兄。
二人が仲良く手を取り合うなんて事は有り得ない未来なのだろう。
これ以上何も語ることは無いと、ヘルメルは握った魔力の剣をクロヴィスに向かって振り上げる。躊躇なく叩き込まれた剣を受け止め、クロヴィスは剣に魔力を流し込み応戦する。
若さ故なのか、ヘルメルよりもクロヴィスの方が動きは素早く、更に援護する様にシュレマーもヘルメルに向かって剣を振るう。
いつだったかクロヴィスが言っていた、「俺はロルフよりも強い」と言う言葉を思い出し、マチルダはヘルメルの相手を任せる事にした。下手に割り込むと邪魔になる気がしたのだ。
代わりに、腕を抑えながらヘルメルの援護をしようとしているリズの制圧に集中する事にした。長く伸ばした鞭を振り上げ、腕の傷を気遣うだとか、痛まないようにだとか、そういう事を一切考えずにリズの体に巻き付けた。
「男爵家の娘如きが…!」
忌々しいとマチルダを睨むリズの体は、鞭によってぎちぎちと締め上げられる。ルディに噛みつかれた腕が相当痛むのか、表情を歪めて小さく呻いた。
「死なない程度にしておきますからね」
にっこりと微笑むと、マチルダは更に魔力を流し込む。
炎魔法と相性の良いマチルダの魔力は、直接流し込まれると熱を帯びている。魔具を伝い体に流し込まれた魔力の熱が、リズの肌をじりじりと焼いた。
腕の傷が焼けているのだろう。悲鳴を上げ藻掻くリズは、殺意を籠めた視線をマチルダに向ける。胸元から吹き出した瘴気が鞭のようにしなりながらマチルダを狙う。
向かってくる黒い鞭。それを叩き落とす野獣。マチルダの前に飛び込み、リズの攻撃から身を挺して守っているのだ。
向かってくる瘴気を叩き落とし、咆哮を上げ、一気に距離を詰め、そのままの勢いでリズの体を押し倒す。
「ひ…っ」
「俺のだ。傷つける事は許さない」
低く唸るように威圧するロルフの金色の瞳が、リズの真っ青な瞳を射抜く。
昔は優しく微笑んでくれた筈のロルフが、異形の獣となって睨みつけている。この状況が受け入れられず、リズは押し倒されたままゆるゆると首を横に振った。
「ロルフじゃ、ないわ」
絞り出した声は震えていた。ぽろぽろと流れる涙が目尻を伝って地面へ落ちた。
体を押さえつけている野獣の手がぶるぶると震え、体の上で天に向けて吠えるその姿が恐ろしくて堪らなかった。
いつか二人で夢見た事。
美しき狼になって、二人で一緒に王宮術師になるという夢。それは、ロルフが野獣に姿を変えた事で叶わなくなった。
「マディ!そこから離れなさい!」
ふいに、ナディアが叫ぶ。
天に向かって吠えていたロルフが、リズの体を押さえつけたまま魔力を放出したのだ。避ける事も出来ずに直に魔力を食らったリズは動かない。マチルダのいる方向からでは、生きているのか死んでいるのかも分からない。
ただ一つ分かるのは、リズの体を捕らえていた鞭が形を保てずキラキラと輝く粒子に姿を変えた事。そして、修理しなければ使えないのか、いくら魔力を注いでも指輪から姿を変えない事。
「ロルフ!変身を解け!」
ロルフの様子がおかしい事に気が付いたオスカーが叫ぶ。その声に反応したナディアとリカートが野獣に向かって飛び掛かるが、二頭の狼は腕を振るわれただけで吹き飛ばされた。
「もう!こんな時に…」
ぶるぶると頭を振ったナディアが苛立ちながら唸る。リカートも面倒な事になったと思っているようで、低く喉を鳴らして唸っていた。
所謂時間切れというやつなのだろう。
野獣に姿を変え、時間が経つと理性の無い獣になってしまうと前に言っていた。その時間が来てしまったのならば、今マチルダに出来るのはロルフに声を掛け続け、落ち着かせる事だ。
無理にでも飛び掛かり、耳元で名前を呼べば良いのだろうが、今のロルフは殺気立っている。
リズが動かなくなった事に満足しているようだが、細く鼻を鳴らし、きょろきょろと周囲を見回しながら次の獲物を探しているように見えた。
金色の瞳が、じっと動かない火竜の姿を捕らえた。何か考えているのか、首を傾げながら火竜の体を観察し、ゆっくりと体を伏せた。
待って、と声をかける事も出来なかった。目の前に居た筈の野獣は、あっという間に火竜の体に飛びついていたのだ。
噛み付き、肉を噛み千切り、爪を突き立て引き千切る。それを何度も繰り返しているロルフは、以前の言葉通り理性のない獣だった。
「ああ!火竜が!」
クロヴィスと剣を交え続けていたヘルメルが、火竜の体を千切っているロルフに気付いて叫んだ。どうにかして止めようと瘴気を放つが、それはすぐさま狼たちによって阻まれる。
「邪魔なんだよ!」
苛々と怒鳴るヘルメルが、更に瘴気を溢れさせ、狼に向かって放つ。
火竜の笛を破壊され、リズを行動不能にされ、計画通りに進まない事に苛立っているのだ。
溢れさせた瘴気をぶちまけ、火竜の元へ向かおうとするヘルメルの足が止まる。
クロヴィスが投げつけた剣が、ヘルメルの背中に突き刺さっているのだ。
それだけではない。ロルフの元へ向かわせまいと、炎の壁を生み出したマチルダも立ちはだかっているのだ。
「あー…はは、邪魔だなあ…最初に殺しておくべきだったかも」
重みでずるりと抜けた剣が地面へ落ちる。痛みに声を漏らしたヘルメルは紫色の瞳でじっとりとマチルダを睨みつけた。
学園で見ていたヘルメルは、いつだって穏やかで、優しく微笑む人気の先生だった。
今のヘルメルは体のあちこちに傷を作り、血走った目であちこちを睨みつけ、胸元から瘴気を吹き出させている。
「ピュイ!」
マチルダの頭上で、幼いドラゴンが甲高く鳴いた。火竜の体を千切るロルフの周りを飛び回っているのだが、ロルフは幼いドラゴンには興味を示さない。ただひたすらに、火竜の体を噛み砕き、引き千切る事だけを繰り返していた。
すぐにでも引き剥がしたいのか、ヘルメルはマチルダを無視して直接ロルフに向かって瘴気を放つ。だが、それはマチルダの炎であっさりと弾かれ、ロルフに届く事は無い。
「私の夫になる人よ。傷つける事は許さない」
マチルダが生み出している炎が勢いを増した。真っ赤な髪を巻き上げ、赤々と燃える炎は美しい。体を傷付けるロルフを引き剥がそうと暴れる火竜の腕が、飛び回っている幼いドラゴンを炎の中に叩きつけた。
地面に叩きつけられた体を起こし、ぶるぶると頭を振るドラゴンは、マチルダの炎の中で小さく鳴いた。ぱくぱくと口を動かすと、今度は炎から出てマチルダの元へと擦り寄った。
「キュイ」
「大丈夫、おチビちゃん?」
鼻先を摺り寄せるドラゴンの頭を撫でながら、マチルダはじっとヘルメルを睨みつける。
どう動いたとしても、炎で焼き尽くす自信があった。
クロヴィスが体力を削ったのか、ヘルメルの動きは鈍い。それだけでなく、胸元から吹き出す瘴気に侵されているのか、酷く顔色が悪く、肌のあちこちが黒ずんでいた。
「お前は次の火竜になるんだ。こっちへおいで」
ヘルメルが世話をしてくれていた事を理解しているのか、ドラゴンは小首を傾げてキュウと声を漏らす。おいでと手を差し出すヘルメルと、鼻先を撫でるマチルダを交互に見つめ、困ったように首を傾げた。
「貴方のお母様に酷い事をしたのよ。行かなくて良いわ」
伝わるかは分からなかった。それでも、母を殺め、生ける屍にした張本人の元へ行かせたくないと、マチルダはそっとドラゴンの頭を抱きしめる。
寂しそうに鼻を鳴らしたドラゴンは、静かに目を閉じて鼻先を寄せた。
炎の壁の向こうで、火竜の体が崩れ始める。その姿を見せぬよう、マチルダはしっかりと抱きしめたドラゴンの目を塞いでやる事しか出来なかった。
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