表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

佐藤麻里亜の悪徳コンサル日記

佐藤麻里亜の悪徳コンサル日記 ~売上=顧客数×単価×購買頻度(宇宙旅行ビジネスの目下の課題は『購買頻度が低いこと』)~

 オレの名前は佐藤麻里亜(マリア)顧客企業(クライアント)経営者(トップ・マネジメント)を相手に企業戦略の立案やら商品開発、マーケティング等の支援をする、いわゆる経営コンサルってのを生業にしている。今日は顧客企業(クライアント)であるスペースリフト社の目玉商品「宙間(スペース)浮遊(フライング)」の商品戦略を見直すため、これからシャトルに搭乗して宇宙に上がるところだ。


 シャトルと言っても大昔の、月面着陸を果たした宇宙飛行士が乗っていたような、いわゆる鉛直方向に大Gをかけて重力圏を脱する類のものを想像してもらっては困る。スペースリフト社のシャトルは、高高度までは通常のジェットエンジンで昇った後、ロケットブースターに点火して大気圏を離脱する方式を採用しているのだ。この方式の利点はひとつのシャトルを数十回の大気圏離脱/再突入に繰り返し利用できることで、使い捨ての宇宙ロケットに比して費用対効果(コスパ)が圧倒的に優れている。ちなみに、大気圏離脱時にはプロペラントタンクのみを切り離すことで、高価なエンジンを投棄する必要がなくなったこともコストダウンに資しているそうだ。


 あぁ、「麻里亜(マリア)」という名前の人物が「オレ」という一人称を使っていることに「男装女子」や「オレっ娘」を想像した輩がいたら申し訳ない。オレはノン気でノーマル-という表現は最近では適切ではないらしいが仕方がない-、LGBTQなどとは縁もゆかりも無い、所謂「身も心も」男だ。異常(アブ)なのはオレの性ではなく名の方、つまり「麻里亜(マリア)」という名前の方である。


 学の無かった親父は、長男(オレ)の命名時にはさぞ悩んだらしい。親父なりに「これからは外国人にも分かりやすい名前を付けるべきだ」と考え-これは学の無い親父にしては真っ当な考えだ-、「これからはスペイン語だ」と決めつけたらしい。後年、何故スペイン語なのか? と聞いたところ、親父は

「バチカンの偉いさんはスペイン語なんだ」

 と自慢げに宣ってみせたものだ。確かにオレが生まれた当時の教皇はカトリック史上初の新大陸出身者でありその母国語はスペイン語であったかもしれないが、バチカンを引き合いに出すのであればラテン語で命名すべきであろう。そこを質すと親父が言うには

「スペイン語は世界中で沢山の人が話しているからな」

 と言い出した。確かにそうだが、話者の多さで言えば中国語、英語、ヒンディー語、アラビア語なども視野に入れるべきであろう。そこのところを指摘すると

「いや、やっぱり世界中で有名な名前と言えばマリオとルイージだろ……」

 嫌な予感がしてきたオレは更に親父に突っ込んだ。

「ひょっとしてオレの名前は『マリオ』なのか?」

 もしオレに弟が生まれていれば、きっと(ソイツ)の名前は「ルイージ」だったに違いない……


 ついに観念した親父はオレに土下座して謝った。親父の説明によれば、オレの本当の名前は「魔理悪(マリオ)」のはずだった。実際、区役所に提出する出生届には「魔理悪(マリオ)」と書くつもりだったらしい。しかし残念なことに親父には学が無かった。漢字で「魔理悪」と書くべきところ、誤って「麻里亜」と書いてしまったのだ。「魔」からは「鬼」が抜け、「理」からは「王」が抜け、「悪」からは「心」が抜けた結果が「麻里亜」である。「悪魔の理(魔理悪)」から「鬼の王の心」が抜けたら「麻里亜(聖母)」になったのだから笑えない。


 学の無い親父は更に、致命的な過ちを犯した。すなわち「ふりがな」欄の記入である。お察しの通り「お」と「あ」を書き間違えたのである。流石にドン引きしたオレは親父を問い詰めた。出生届を受け取った窓口の人間は、これをそのまま受理したのか、と。そうであれば区役所に抗議してやるところである。親父は弁明した。

「そりゃ、区役所の人間には突っ返されたさ。『本当にコレでいいんですか?』ってな。けどよ……」

 当時、いわゆるキラキラネームなるものが流行っていたらしい。で実際に「悪魔ちゃん」とか名付けられた事例があって、裁判沙汰にまで発展したとか何とか。親父からすれば『本当にコレ(魔理悪)でいいんですか?(こんな悪魔みたいな名前で?)』と聞かれたつもりだったのだろう。

「『俺が付けた名前にとやかく言うんじゃねぇ』って、つい……な」

 無論、区役所の人は『本当にコレ(まりあ)でいいんですか?(男の子なのに?)』と聞いたつもりだったのだろう。そこを取り違えた親父が怒鳴り散らした結果、オレの名前は「麻里亜(マリア)」になったという訳だ。


 そんなオレの名前ではあるが、今ではちっとは親父に感謝している。日本人の顧客企業(クライアント)であれば、初対面の時にこの「不幸な(?)」命名エピソードを披露すれば結構な確率で掴みはOKだ。そうでなくとも多くの場合、名前と顔を先方に覚えてもらえる。「それで結局マリアさんとお呼びする方が?それともマリオさん?」などと必ず聞かれるのには閉口するが、そういう時は「どちらでもお好きなように」と答えることにしている。この場合に困るのは名刺(ビジネスカード)に書かれているメールアドレスで、フォントサイズの小さい半角英字では「o」と「a」の区別がつきにくいのだ。念のため、同じドメインで「Mario@..」 と「Maria@...」の2つのアドレスを受信しているのだが、オレのことを「マリア」と認識している者と「マリオ」と認識している者の比率は、受信メールの傾向によれば概ね1:1というところだろうか。


********************


 シャトルが衛星軌道上に定位すると、船内の空気が一変した。まるで顧客達の興奮と緊張が伝わってくるようだ。


 民間宇宙旅行がビジネスとして誕生してから約40年。今では多くの企業がこの市場に参入しているが、2つの理由から、庶民が気楽に購買できるような商品としてこのビジネスが成熟する気配は今のところない。理由のひとつは、まだまだ圧倒的に価格が高いことである。最も価格の安い宇宙旅行ですら庶民の平均年収の10倍程度に価格設定(プライシング)されており、競争が激化しつつあるとは言え、今だ宇宙旅行は一部の富豪にだけ許された道楽の域を抜け出てはいない。そして2つ目の理由であるが、それは宇宙旅行には事前の座学(レクチャー)訓練(プラクティス)が必要とされていることである。無重力空間での体運動や、大気圏脱出/再突入時にかかる負荷(G)に備えた体力づくりなど、金を払ったらあとは参加当日の集合時間に間に合えばよいだけの海外旅行とは勝手が異なるのだ。そして、それすらも娯楽(レジャー)と捉えることのできる富豪とは異なり、庶民はその時間を労働に充てなければならないのである。「富豪」とは、単に金を持っている者を指す単語ではなく-それなら「金持ち」で充分だ-、時間を有り余らせている者に対してのみ使うべき用語であろう。


 ところで、商売(ビジネス)の基本である「売上」は、とある簡単な数式で表すことができる、というのがオレの自論だ。その数式とは『売上=顧客数×単価×購買頻度』である。客の数は多ければ多いほど、単価は高ければ高いほど、そして購買頻度が高ければ高いほど、売上は増える。そしてこの際、これらの3要素は掛け算で計算されることが重要である。どれか1つでもゼロであれば、他の要素がどれだけ好成績であっても売上はゼロのままである。そして宇宙旅行ビジネスの目下の課題は『購買頻度が低いこと』であった。


 考えてみて欲しい。「死ぬまでに1度は宇宙旅行をしてみたい」という潜在顧客はそれこそ、星の数ほどいる。しかし……だ。庶民の年収の10倍以上の金銭的コストをかけ、何カ月にも亘る事前準備に時間的コストをかけ、そうしてようやく宇宙に出たら、そこに滞在できる時間はわずか数時間。「地球は青かった」と使い古された感想を述べたが最後、あとは日常に帰還するだけの旅程である。大昔のパッケージツアーや大人気テーマパークのアトラクションでもここまで酷くはなかろう。しかも旅行の醍醐味のひとつとも言われる飲食は、そこには含まれないのである。厳密に言えば宇宙空間で宇宙食を提供(サービス)する商品(ツアー)もあるのだが、宇宙食など1度食べれば充分であろう。何しろ、この旅行の参加者達は常日頃、高級食材を惜しげもなく使い、一流シェフに調理させた料理をヴィンテージワインとマリアージュさせているような連中なのである。宇宙食に舌鼓を打つ、などということはまずあり得まい。かと言って、よもや年代物のボルドーをプラスティックのパックに詰めてストローで吸わせるなど、考えるだけでもおぞましい所業であろう? ローマ帝国の将軍であれば「来た、見た、勝った」と報告すれば後世に名を残せるであろうが、この時代の宇宙旅行とは「来た、見た、帰った」に過ぎない。令名を伝えたければ、そのカネと時間を別の方面に費やす方が、まだその可能性が高かろう。


 さてこんな旅行、アナタなら「また行きたい」と思うであろうか? そう、アナタの想像通り、この商品の購買頻度は極めて低い-1度経験すればもう充分-のである。こんなビジネスなどはお客様に想い出(Memory)を提供する旅行(Trip)などではなく、顧客に金銭(Money)を吐き出させる計略(Trap)の類であろう。そして、この課題を解決するためにスペースリフト社が投入した商品が「宙間(スペース)浮遊(フライング)」なのであった。


 「宙間(スペース)浮遊(フライング)」」は文字通り、顧客に宇宙服を着せて船外宇宙遊泳を体験させるサービスである。従来の宇宙旅行では宇宙船の窓から月や地球を眺めることしかできなかった。しかも耐圧・耐熱面の要求仕様により、一般的にその窓は極めて小さく-縁日で売っている綿菓子の方が遥かに大きいくらいだ-設けられている。ここでもうひとつ、オレのとっておきの数式を紹介する。「利得>期待⇒満足」というのがその数式なのだが、この数式は裏を返すと「利得<期待⇒不満足」となる。もうお分かりの通り、従来の宇宙旅行は顧客の満足度が大変低かった-が故に購買頻度が低かった-。3年前にスペースリフト社からこの問題の解決依頼を受けたオレは、実際にサービスを体験した顧客へのインタビューを重ね、それらを分析した結果を新サービスとして提案(プレゼン)した。幸いにもこの提案はスペースリフト社に受け容れられ、それ以降はオレもハンズオンする形でサービス開発に協力してきたのだ。それがこの「宙間(スペース)浮遊(フライング)」である。この新商品は、そのサービスを受けた顧客の多くが地球に帰還しない前に次の予約(リザーブ)を申し込むほどの好評を博していた。


 サービスが軌道に乗って-あぁ、これはよくある比喩表現の方だ-から1年を迎える頃、スペースリフト社のセールス担当上級副社長ジャック・モンティー氏からオレはコンサル契約の継続-すなわち新たな依頼-を打診された。その内容は、宙間(スペース)浮遊(フライング)サービスのテコ入れである。そして「まずは実情をその目で確かめて欲しい」という彼の要望により、今日オレはこのシャトルに搭乗していたという訳だ。このサービスを提案したオレ自身、宇宙旅行は初めての経験-無論、しがないコンサルのオレには庶民の平均年収の10倍のサービスなど無縁だーである。そんなカネがありゃ今頃、コンサルなんて阿漕な商売(ビジネス)はしていないだろう。


 シャトルの自席で窓外を眺めるオレの隣に近寄ったモンティー上級副社長が、宙間(スペース)浮遊(フライング)を楽しむ顧客達を見ながら問いを発する。

「マリオ。彼らはあぁして、宙間(スペース)浮遊(フライング)という今までにない経験を楽しんでいます」

「あぁ、そうだな。ジャック」

 イタリア系アメリカ人の彼は、オレのことを『マリオ』と呼ぶ。名詞に性のあるイタリア語を扱う者にとっては、「o」と「a」の違いは重要事なのであろう。男のオレが彼にとって、『マリア』である筈が無かった。

「ですが……」

 ジャックが言いたいことはよく分かっている。

「還りの船内で彼らが次の予約(リザーブ)を入れる割合が下がっています……以前と比べて」


 宙間(スペース)浮遊(フライング)の投入後、スペースリフト社のサービスは一時期その購買頻度が向上していた。実際に宇宙空間に出て遊泳するという経験は顧客に新たな価値(ヴァリュー)を与えることに成功していたのだ。視界一杯に映る月をバッグにプロポーズしたり、亡くなった父親の遺灰を宇宙空間に散布したり、外宇宙に向けて元カレの貢物(想い出の品)に永遠の旅立ちを与えたり、船内にいては決して経験することのない、それは正しくカネには換えられない(プライスレスな)サービスであった。しかし、葬送も求婚も-元カレとの別離を除けば-人生においてそれほど多く経験するイベントではない。であるからこそ宙間(スペース)浮遊(フライング)が利用されるとも言え、であるからこそ宙間(スペース)浮遊(フライング)の購買頻度は低下していくのである。


 無論、オレとしてはこの状況は織り込み済みである。ビジネスとは、常にその先を計算するものなのだ。ひとつの商品、ひとつのサービスを開発し投入したらビジネスは安泰、などというものでは決してない。常にその商品を改良、改善し、時には全く新しい商品を投入する。ある意味、ビジネスとは人の業そのものであろう。『飽くなき探求心』、と言えば聞こえは良いがその実、それは『果てしない欲望』と同値である。より多くの売上、より多くの利益を追及することこそ、ビジネスの本質なのだ。であるからこそ優秀なコンサルは、常に先まで想定し、次の戦略を用意しておくものである。


 あぁ、ここでひとつ誤解を解いておきたい。その誤解とは、コンサルタントに要求される資質についてのことである。多くの人間がコンサルタントは問題解決能力に秀でている、と考えているがそれは違う。優秀なコンサルタントはみな、観察力(オブザベーション)営業力(セールス)価格設定(プライシング)に秀でているのだ。そして……コンサルタントに課題解決能力は、不要であるばかりか害悪でさえある。


 恋愛相談を例にとって説明しよう。アナタの友人が好きな相手-昔はこういう場合『好きな異性』と言えたらしいが、最近では性が複雑化し過ぎた結果、『好きな相手』という小学生の使うような語法(ワーディング)に頼らざるを得ないのが味気ない-に告白すべきか悩んでいるとする。相談されたアナタはどのような返事をするべきであろうか? 仮に、客観的に見て「告白することが正しい」状況であったとしよう。しかし友人がそれを望まぬのに告白するようアドバイスすればどうなるか? あるいは逆に、客観的に見て「告白することは正しくない」場合に、それでも友人は告白したいと考えている場合にはどうか? いずれの場合も、答は自明である。そう、既にお分かりの通り。アナタのアドバイスは、アナタの友人の望む回答-友人が最も快く感じる回答-であるべきである。そして、どのような結果が出たとしても、アナタはアナタの友人に寄り添うべきであり、その結果を以って友人から批難されることを回避することにのみ、アナタはその努力を傾けるべきである。逆にアナタが善かれと思って「正しい」ことをアドバイスしても、友人がそれを望まない限り、友人はそれを喜ばないであろう。どころかその友人は恐らく、二度とアナタに相談なんてしない。


 コンサルタントの仕事も同様であろう。客観的に正しい問題解決策を提示したとしても、それが受け容れられない提案であれば顧客企業(クライアント)との契約はそこで打ち切られる。例えば人事について相談を受けたコンサルのことを想像してみて欲しい。仮に「あの役員を切る」ことが正しい選択だとしても、そんなことは外部のオレなんかに指摘されるまでもなく、とっくに経営者(トップ・マネジメント)には分かっているのだ。ただ、それができないからこそ悩んでいるだけのことであり、分かっていてもできないことを指摘されることくらい他に、腹の立つ行為もあるまい。そして、できもしない、やりたくもない解決案を提案されても、顧客企業(クライアント)の成果は絶対に挙がらない。何故なら、その企業の運営はコンサルタントではなく、その企業の経営者(トップ・マネジメント)以下全役員社員が行うものなのだから。


 つまりコンサルタントの仕事とは、顧客企業(クライアント)が望む通りの回答を提案する、ただそれだけのことなのである。オレがコンサルに必要な資質に観察力(オブザベーション)を挙げる所以である。コンサルタントは神ではない。コンサルティングとは慈善事業ではない。オレはあくまで商売(ビジネス)として経営コンサルって奴をやってるのだ。先にも紹介した「顧客数×単価×購買頻度」の数式だが、ここでは「購買頻度」を「契約期間」と置き換えれば話が分かりやすい。わざわざ正しい解を示して顧客企業(クライアント)の不評を買う必要などないのだ。長く商売を続けるために必要なのは、顧客企業(クライアント)に気に入られることであり、そのための観察力(オブザベーション)営業力(セールス)なのだ。まぁ、価格設定(プライシング)については……またそのうち話すこともあろう。


 さて、スペースリフト社との契約を長く続けるための秘策は、実は最初に宙間(スペース)浮遊(フライング)提案(プレゼン)した時点で用意してあった。


「なぁ、ジャック……」

 顧客企業(クライアント)の上級副社長相手にファーストネームで呼び合える程度には、オレの営業力(セールス)も評価してもらってもいいと思う。

「顧客には、もっとスリリングでエキサイティングな顧客体験(UX)が必要だと思うのだが……」

 アメリカ人は、「スリリング」とか「エキサイティング」というワードに過剰に反応する傾向があることを、オレは過去の経験からよく知っている。確か「エレベータテスト」なんてのがあったような気がするが、要するに短いフレーズやセンテンスで相手の興味を引き、相手にもっと聞きたいと思わせる小手先技(テク)のことだったように記憶している。案の定、ジャックはこちらの話に乗ってきてくれた。

「おぉマリオ、エキサイティングな顧客体験(UX)はウェルカムですが、具体的にはどのような?」

 こういう時の回答はワンワードに限るもんだ。

宙間(スペース)車両(バギー)

 そう発した後オレは暫しの間沈黙を守り、ジャックの表情が変遷するのを楽しんだ。


 要するにオレの提案(プレゼン)内容は単純だ。ビーチリゾートなんかでよく見る水上バイクやビーチバギーのような1人乗りの軽量車両を想像してもらいたい。アレの宇宙版だと思ってもらえれば話が早い。まぁ、宇宙空間なのでタイヤは不要であるし、つまりは厳密に言えば車両(バギー)ではないのだが……

宙間(スペース)車両(バギー)! 確かにスリリングでエキサイティング、宙間(スペース)浮遊(フライング)を更にダイナミックにエンジョイできそうですね、マリオ!」

「そうだろ、ジャック!」

 ジャックは一発でこのアイディアの虜になってくれたようだ。あとは役員会議に諮るだけだが、ジャックのこの様子であれば、オレが下手な説明をするまでもなく、ジャックが役員達相手に熱弁を振るってくれることだろう。役員会議のプレゼンで重要なのは、ムービーや3DCGをメチャ盛りしたコンセプトヴィデオや、TVショーのMCも顔負けのグルーヴ感に溢れたプレゼンシナリオ……などでは断じてない。役員会議のプレゼンに必要なのは、社内のキーパーソン-この場合はジャックだ-の熱い魂(パッション)篤い言質(コミットメント)である。アナタもそうであろう? 企業CMの美しい映像と、親しい友人のたとたどしい口コミと、アナタはどちらを信用する? コンサルタントのプレゼンとは、所詮は企業CM-その本質は、この商品を買ってくださいというアピールだ-に過ぎないと理解すべきだ。そして……スペースリフト社が宙間(スペース)車両(バギー)を開発するために必要な資源を保有していることを、オレは既に確認してあった。今や彼らがこの提案(プレゼン)を退ける理由など見当たらない。


 えっ? 何故オレが初めからこのアイディアをスペースリフト社に提案しなかったのか、って? 疑問に思うのであれば説明してやる。理由はまぁ、2つだな。ひとつは宙間(スペース)浮遊(フライング)の後に宙間(スペース)車両(バギー)を採用してもらえれば、スペースリフト社との契約期間が長くなること。その方がオレにとっては収入が増えることを意味するのだから、この理由は当然であろう? そしてもうひとつの理由だが……いきなり宙間(スペース)車両(バギー)提案(プレゼン)したのでは、リスクが大きすぎて不採用(ボツ)と判断される可能性が高かったからだ。


 宙間(スペース)浮遊(フライング)提案(プレゼン)した時、彼らは多くの競合との差別化に悩んでいた。だから船外宇宙遊泳という商品をまずは提案して、この問題を解決した。この時、役員連中は船外サービスに危険を感じたではあろうが、差別化のためであれば背に腹は代えられまい。船外宇宙遊泳の安全性確保が、役員会議におけるこのサービスの重点確認事項になった。この時点において車両(バギー)は飛躍のし過ぎだ。ただでさえ船外活動にはリスクが伴う。それに加えて車両(バギー)まで投入しては、事故発生の確率を高めてしまうであろう。そう思われれば役員会議の採決は目に見えている。幸いにも宙間(スペース)浮遊(フライング)をサービスインし、これは大成功を収めることができた。まずは会社全体として船外サービスの提供に慣れ、その上で更なるアイディアを求められて初めて成立する提案(プレゼン)内容なのである、宙間(スペース)車両(バギー)とは……そして無論、オレはその先のことも既に考えている。


********************


 宙間(スペース)車両(バギー)は大成功であった。富豪達は世界各地の海港(ハーバー)に自前の船舶(ヨット)を係留させていることを自慢し合っていたが、今やその自慢の対象は、宇宙港(スペースポート)に駐機させてある自前の(マイ)宙間(スペース)車両(バギー)へと移っていた。そして、それぞれにカスタマイズした車両(バギー)の保管、メンテ契約は、スペースリフト社に新たなベースロード収益源を提供してくれることになった。現代貴族(富豪)達が競って自らの車両(バギー)に新しいカラーリングや装備の換装を注文(オーダー)した結果、スペースリフト社の売上の4割は、今や地上で揚げられるにまで成長したのである。ということはつまり、コストやリスクの低い-儲かる-収益源をスペースリフト社が手に入れたことを、それは意味していた。


 更に宙間(スペース)車両(バギー)のサービスインから3年後、スペースリフト社は宙間(スペース)狩猟(ハンティング)という新しい商品を市場に投入した。宙間(スペース)車両(バギー)はただ宇宙空間を自由に疾走するだけのサービスであったが、新商品の宙間(スペース)狩猟(ハンティング)はこれに、シューティングの要素を追加したのだ。宇宙空間を疾走しながら、車両(バギー)に装備した宇宙光線銃(スペースガン)を使って標的(ターゲット)を射撃する体験は、宙間(スペース)車両(バギー)に新たな興奮を追加した。無論、顧客の購買頻度はかつてないほどに高まり、今やスペースリフト社は民間宇宙旅行市場におけるトップシェアを占めるにまで成長した。


「サトウ先生」

 オレはジャック・モンティー社長-宙間(スペース)狩猟(ハンティング)の成功により、彼は今や3人いるスペースリフト社の社長の1人にまで昇進していた-から契約延長の打診を受けていた。

「ジャック、オレなんかに先生なんて敬称は不要だが……」

 ジャック、と相変わらずファーストネームで呼ぶオレに対し、ジャックはオレのことを姓で呼ぶようになっていた。

「いや、サトウ先生。我々は貴方に大変感謝しております。ついては先生には契約延長の上で、また新たな……」

 また新たな利益……商売(ビジネス)とは全く業の深いものであるらしい。そろそろ潮時であろう。そう思ったオレはひとつジャックにアドバイスしてやることにした。

「ジャック、そろそろ潮時だ。今のうちにスペースリフト社を売却しろ。それがオレからできる最後の提案(プレゼン)だ」


 オレが潮時だ、なんて言うのには理由がある。顧客企業(クライアント)がオレのことを「先生」と呼ぶようになったら、もうその契約はおしまいだというのがオレの自論だ。思い出してもみろ、顧客に「先生」などと呼ばれる職業の類を。教師に聖職者、医者に弁護士、政治家と……あとはマフィアの用心棒か? いずれもロクな商売(ビジネス)じゃぁない。これらの商売(ビジネス)に共通するキーワードは『人の不幸は密の味』、要するにこれらは人の不幸に付け込む商売だってことを、オレは学生時代に経営学の教授から教わっていた。本当は、教師なんざぁいてもいなくても、伸びる生徒は伸びるし、伸びない生徒は伸びない。聖職者なんざぁいなくても、救われる者は自ら救われる。そう言えば確かオレが生まれた頃だったと聞いているが、世界中で大変な疫病が蔓延したそうだ。その話を聞いた時にオレは、オレの自論の正しさを証明した想いがしたもんだ。何しろ、それまで散々『病魔退散』『病気平癒』などと宣わってお札やお守りを阿漕な価格で販売していた寺院どもが、本当に疫病が蔓延したその際には「感染予防のため当寺院には参拝しないように」などと触れたらしい。寺院に参拝しても病魔は退散しない、と彼ら自らが公言したようなもんだぜ、これは……


 で、結局のところジャックがオレのことを「先生」と呼ぶようになったということは、それはつまりは、彼がオレのことを阿漕な売主(先生)と看做すようになった、ってことの証拠だ。オレが「潮時」と評する所以である。だからオレは、これだけは慈善事業(ヴォランティア)のつもりでジャックに言ってやった。会社を売却する手順に早急に取り掛かれ、と。オレだって、ジャックとは永い付き合いだ。恩義だって感じてはいるし、できればジャックが不幸な目に逢う様は見たくない。しかしジャックの反応は……まぁ、オレの予想通りではあった。


「マリオ!」

 おっと、ジャックは急にファーストネームで呼ぶようになったが無論、それは好意からではない。むしろ、それとは真逆の感情によるものであることを、今やアナタも理解しているであろう?

「何をそんなに怒る必要がある、モンティー社長?」

 暫しの間をおいて、少しく冷静になったジャックが再び口を開いた。

「……サトウ先生……突然声を荒げたことをお詫び申し上げます。しかし先生とは長い付き合いになりますが、その間我々は、お互いに果実を分け合い利益をエンジョイする仲であった、と確信しています。ところが何故、先生は急に会社を売れ、などと……私には解りませんし、会社を売却することなどあり得ません。スペースリフトは今急成長中で、これから更に大きな利益が期待できるのです」

 ジャックの言うことは尤もであったが、オレは一言だけ、こう答えた。

「ジャックのためだ……」

 しかし、ジャックに真意が伝わることはなかった。

「マリオ、貴方との契約は今月末を以って打ち切ります。スペースリフト社はこれから益々拡大します。我々は、これからも同じ夢を見ることのできる友人(パートナー)と共に仕事をすることを望みますが、貴方はもはや、我々の友人(パートナー)では居られないらしい……個人的には……大変残念ですが……」

 ジャックは本当にいい奴だ、とオレも個人的には思う。しかし、オレにもそれ以上を説明する義理はなかった。何しろコンサルティング契約はスペースリフト社との間に締結しているものであって、ジャック・モンティー氏個人とのものではないのだから。こうして、オレは顧客企業(クライアント)をひとつ失った。


 ジャックの言うことは、一面では正しいのだ。スペースリフト社は今拡大中。そんな会社を今売却するなど考えられない。しかし、彼は商売(ビジネス)の基本を忘れている。商売(ビジネス)の基本は、ある単純な定理に基づく簡単なものなのだ。その定理とは、『自分の信じていない価値を他人には信じさせろ』……


 生産者から100円で仕入れたリンゴを、需要家に120円で販売する、という単純な商売を考えてみよう。貨幣の原則によれば、貨幣は誰にとっても等価である-はず(べき)-である-尤も、行動経済学はその原則に疑義(ダウト)を唱えてはいるが-。この原則は、生産者にとってこのリンゴは100円の価値しかない一方、需要家にとっては120円の価値があることを意味している。そこまではいい。オレもその通りだと思う。


 さて、オレはこの生産者から100円でリンゴを仕入れる訳であるが、それはつまり、オレはこのリンゴには100円の価値しか見出していないことを意味している。生産者だって高く売れるのであれば値を吊り上げたかろう? しかしオレは100円しか払わない。オレはこのリンゴの価値は100円だ、と見做しているからだ。一方で、需要家には120円で売る。オレはこのリンゴには100円の価値しかないと考えているのに……? そう、差額の20円-いわゆる利益-とは、オレがオレ自身は信じていない価値を他人に信じさせた結果として生じたものなのである-ここで、輸送や保管のコストを言いだすのは野暮ってもんだ。オレは利益の話をしているんだからな-。オレには、生産者から120円で仕入れる選択肢も、需要家に100円で販売する選択肢もあるが、オレはそれらを選ばない。100円で仕入れて120円で販売し、20円の利益を取るのが商売(ビジネス)だ。オレは、あらゆる商売(ビジネス)がこの原則に従っていることを知っているし、つまりは、商売(ビジネス)で大儲けする奴ほど詐欺師としての能力が高いと思っているのだ、オレは。


 あぁ、オレは敬虔な信者(Catholic)でもなければ無神論者(Communist)でもない。正月には初詣に行き夏祭りでは盆踊りを楽しんで、秋祭りでは焼きそばを喰らって年末にはチキンに舌鼓を打つ。親父は死んで仏になり-幸いまだピンピンしているが-、愛の誓は十字架の前で行う-不幸なことにオレは独身貴族の身だが-であろう。つまり、ごくごく普通の-という表現は最近では適切ではないらしいが仕方がない-日本人なのである、オレは。だからオレは決して、商売(ビジネス)を薄汚いものと見做してこれを忌避しているわけではないのだ。そうではないが同時に普通の日本人として、自分が周りの多くの存在に活かされているということも知っているから、商売(ビジネス)とはそういうものだということを常に心の片隅に置くようにしている、というに過ぎない。


 思えば、コンサルティングなんてのは詐欺の最たるものであろう。オレは、自分自身に経営者としての能力を全く認めていない。そりゃ当然だろう。もしオレにその才があれば、オレは会社経営者になっているべきだ。オレは、オレに経営の才が無いことを知っているがゆえに、経営者ではなく経営コンサルって奴をやっている。一方でオレは、オレの顧客企業(クライアント)にはオレの経営の能力を信じさせる努力をしているのだ。顧客企業(クライアント)だって、オレに能力が無いと思えばオレと契約は結ばないであろうから、これはまぁ仕方が無い。120円で売ったリンゴにはオレも100円-すなわち売価の83%程度-の価値を認めているが、オレの受け取るギャラのうち、オレ自身が認めている価値はどれくらいの割合を占めることであろうか。オレが、オレ自身を「悪徳コンサル」と自称する所以である。


 えっ、コンサル会社の経営者もいるではないか、って? あぁ、あんなのは日雇人夫-ってのもダメなのか、最近は……他にどう言えばいいというのだろう?-の手配師に過ぎない。仕事がありゃ札束で人の頬を叩き、仕事がなくなりゃ首にするだけのことだ。だからあぁいう会社は、5年以上在籍する社員なんぞほぼいない。能力がありゃ独立するし、なければ追い出される。日雇人夫の手配師の方が追い出さないだけまだまし、ってだけのことだ。


 で、スペースリフト社の話に戻る。オレが「ジャックは商売(ビジネス)の基本を忘れている」と言うには理由がある。それは会社の(コーポレート)価値(ヴァリュー)のことだ。確かに会社の業績は昇り調子だ。無論その企業価値-要は株価だ-も急上昇しているが、であるからこそ今が売り時なのである。最も多くの利益を生み出すタイミングとは、相手が価値を過大評価する-しかも勝手に-瞬間のことである。どんな商売(ビジネス)でも-あるいは企業価値でも-、急上昇した後には必ずその上昇カーブが鈍化し、最終的には下降する。諸行無常、これは避けられない運命なのだ。そして、カーブが鈍化してからではもう遅い。相手もそろそろ気づいているのだ。この商売(ビジネス)は潮時だ、と。だから最大の利益を得るためには、その価格-これは微分値に過ぎない-の最高値ではなく、その上昇率-これが利益を示す本当の指数だ-の最高値で手放すべきなのだ。


 お気づきの通り。これは、どんな商売(ビジネス)にも共通の普通法則である。曰く「昇り調子の時に売れ」。そんなことは誰でも知っているが、実は誰にもそれができない。「まだ上がる、まだ上がる」という人の業が、それをさせないのだ。だからオレは、商売(ビジネス)の本当の基本は「潮時を知る方法を知る」ことだと思っている。そして、まぁオレの場合それは、顧客企業(クライアント)がオレのことを「先生」と呼ぶ時である、という訳だ。


 尤も……オレがスペースリフト社の売却をジャックに勧めたのには、他にも理由があった。


********************


 スペースリフト社とのコンサル契約解除から1年。久々にスペースリフト社の話題が新聞の1面-電子配信される現代ではトップニュースというべきであろうが、未だに『1面』という表現が常用されるのは、大手メディア企業の陰謀(ノスタルジー)だとオレは信じている-に載った。そこには『スペースシャトル社一斉家宅捜査 幹部ら数名逮捕』との大見出しの後に、『人権侵害および事故隠蔽の疑い』との小見出しが続いていた。オレには、それ以上その記事の詳細を閲覧する必要は無かった。


 宙間(スペース)狩猟(ハンティング)は当初、参加者の着用する宇宙用ヘルメットの内面に投影される拡張現実(AR)映像の標的(ターゲット)を指向するものであった。宇宙空間で、星々の間を疾走しながら標的(ターゲット)を撃つ趣向は、現代貴族(富豪)達の嗜好を大いに満足させることに成功したのである。しかし……直にそれにも慣れて(飽きて)くる。宇宙空間での体験とは言え所詮は拡張現実(AR)。顧客が次に望むものは本物の、そして機械制御されていない生身の標的。


 キツネ狩り(FoxHunting)に飽きた中世貴族達が次に何を狩猟の標的としたか? 思い出せばアナタにも容易にその結末が想像できるであろう。そう、宙間(スペース)狩猟(ハンティング)サービスの最新バージョンは宇宙人(エイリアン)狩猟(ハンティング)。尤も、宇宙人など実際にはいないのだからその最新の標的は……現代貴族(富豪)達は宇宙空間を逃げ惑う人間を(Man)射撃(Hunting)するようになったのだ。無論、本当に人を殺すわけではなかろうが、しかし倫理的観点からこれは、スペースリフト社と常連顧客の間だけの秘密とされたことであったろう。そして、射撃対象となった人間の来歴や彼らがどのような扱いを受けていたのか、あるいは発生したであろう不慮の事故がどのように隠蔽されたことか、これらも容易に想像がつく。


 ジャックはあの時スペースリフト社を売却していれば……かつての友人としては多少なりとも心が傷む。商売の普通法則「昇り調子の時に売れ」を、ジャックは守ることができなかった。あの時オレがもっと『潮時を知る方法を知る』ことについてジャックに教えていればあるいは、と思わないでもないが、そういう時オレは、コンサルタントに必須の資質を想い出すようにしている。コンサルタントに必要なのは問題解決能力ではなく観察力(オブザベーション)営業力(セールス)。例え客観的には正しい提案をしていたとしても……やはり結果は同じであったろう。


 オレが、オレ自信を悪徳コンサルと自称する所以である。

 1か月くらい前のある日、私は夢の中で宇宙遊泳を楽しんでいました。周りには同じツアーの参加者と思しき多くの宇宙服がいて、それぞれが思い思いの方角に向けて泳いで(漂って?)いるようでした。そして、私も他の参加者同様、視界一杯に広がる地球に向けてクロールで泳いでいたのです。無論、空気も水も無い訳ですから手足をジタバタさせても前には進まないのですが、それがとても楽しかったことを今でも覚えています。


 しばらくすると宇宙船に帰還するようガイドさんから促され、手に持ったガス噴射装置を使って地球を後にしました。地球や月や、その他、宇宙空間に煌めく数多の星々と比すれば、私が還るべき船はあまりに小さく、暗く、肉眼で発見できるような代物ではなかったのですが、私の被る宇宙用ヘルメットの内面は、無限遠の焦点距離で様々な情報が投影される、いわゆるARディスプレイになっていました。ガイドさんからの帰還命令と同時に私のヘルメットには宇宙船がターゲット表示され、そのお陰で私は容易に目的地にたどり着くことができたのです。最初、このガス噴射装置を素人の私は使いこなせるものであるのか、誤ってあらぬ方向へ跳んでいってしまうのではないか、と大変不安に感じていたのですが、それは全くの杞憂にすぎませんでした。船から発信されるビーコンを受信した私のガス噴射装置は-それはエアガンのような形をしていました-、恐らくは内蔵されたジャイロセンサ等と連動して、適切な方角に適切な時間の噴射を行ってくれたのです。


 ……と、そんな夢から覚めた私が最初に思ったことは「何故、こんな夢を見たのか?」。夢占いでも検索しようかとも考えたのですが、その次のアイディアの閃きは、私をスマホではなく、更なる空想の世界に導きました。このネタを小説にアレンジするにはどうしたらよいのだろう?


 ということで、最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。


 今回はじめて、1人称視点で小説を書くことにトライしてみました。まぁ、他の文体に慣れている訳でもないのですが、第三者視点(ビジネス文書の多くはそうだと思います)で書くことの方が多い私には、とても新鮮な試みでした。SF世界のガジェットを使って、経営コンサルというお仕事モノを書いてみたのですが、みなさまにはどんな印象でしたか?


 ビジネスや経営という部分については、いつも思っていることを、ちょっとだけ悪気を込めて書いてみました。もしよろしければ感想などをお寄せ頂けると大変嬉しいです。我ながら主人公の名前に関するギミックは気に入っているのですが、どうでしょう? そうは言ってもありがちな設定だったでしょうか? 『悪徳コンサル』を自称しながらその理由が実は割と純粋なものだった、というのは「タイトル詐欺?」と思わないでもないのですが、まぁ、私は偽悪趣味なんだと思います。だって、「善は善」と言い切ることに、未だに恥ずかしさを覚えたりするのですから。「善ならざるものこれ悪とは限らず、悪ならざるものまた善とは限らず」くらいの感じでしょうか。


 実は、最初はショートショートみたいな感じにしたかったのですが、『麻里亜』の件だけで長くなってしまった-自分のセンスの無さを痛感しました-ので、短編小説に路線変更することにしました。一方で、当時から-今もですが-別の長編小説を書き続けていて、先にそちらを上げてしまいたかったため、こちらは構想だけで止めていました。で、気づいたら早1か月以上……折角のお正月なので松の間に書き上げてしまおう、と思い直して完成させたのがこのお話です。短編に路線変更した時点で本当は3万文字くらいにしたいと思ったのですが、これも見込み違いでその半分くらいになってしまいました。まぁ、自分が1日に書ける文字数だけは段々見込みがついてきました。そりゃ、初めから3万文字は無理です、って!


 気が向いたらまた、佐藤麻里亜君に新たなSF世界のガジェットとネタを用意してあげたいと思います。「シリーズ管理」ってボタンも押してみたいし……価格設定のお話には全く触れませんでしたし、営業力にもまだまだネタがあります。そうそう、本当に、生きていく上で一番難しいことは、自分で自分に値段をつけること、だと思っています。私は今だにできません……佐藤麻里亜君が悪徳コンサルを自称する所以ですね。



 それから、先にも申し上げましたが、現在長編小説を書いているところです。


「フレミングの法則」

https://ncode.syosetu.com/n6406hf/


 フレミングという名前の20歳の女性パイロットが主人公です。航空宇宙軍の士官学校候補学生なのですが、他国との戦争に巻き込まれていきます。前半は学園生活を中心に、中盤からは戦闘シーンなども織り交ぜながらお話が展開されていきます。あと5、6話で完結する予定なのですが、よろしければどうぞこちらにもお立ち寄り頂ければありがたいです。


 それでは、本当に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ