第12話! 炎の鳥!ファイアー・イーグル!
「これが別件の人命救助用に開発した次世代型垂直離陸機『ファイアー・イーグル』さ!!」
いつもの格納庫にて綾川博士がそう自慢げに語る。
そこには確かに鷲を象ったであろう巨大な航空機が駐留してあった。
「空中からの消火作業や上空からの救助者の捜索や火元の探索や監視を行うのが主な任務でね。本来なら格納部分には消火ミサイルやら物資を積めるのだけど、今は対艦・対地・対空ミサイルを搭載して運用が予定されているんだ。まぁその消火ミサイルはウチが開発しているから規格自体は合うんだけどね」
えらく早口で語る綾川博士。
「いつになくノリノリですね。博士」
結城はそう言う。
「まあそもそもこのファイアーイーグルはウチで、いや、君のお父さんの三方ヶ原 暢博士が設計したものなんだ」
「親父の!?」
結城は驚く。
そう言えば父親の事は、最初に向風博士が「申し訳が立たない」と言ったっきり話題にならず、結城本人も昔行方不明になったという記憶しかない。
「結城の親父さん、ここで働いてたのか」
「そうですよ? その道では有名な博士で、今のロボット工学の第一人者とも言える人なのに」
健斗も同様に驚くが、ヴィオラは「え、知らなかったんですか」と言わんばかりに驚いた様子で説明をする。
「ファイアー・イーグルを初めとする画一的なロボットの設計の数々。そして今のクォーリードラゴンへと繋がるペンドラニウムの理論や発見を多く発表した、わし自慢の弟子だ」
そうひょっこり出てくる向風博士、最近彼は出てくるのを見計らっている様子であった。
「でも、結局動力の関係で形になるのは暢博士の行方不明後だったりする……」
「奴の行方不明になった原因の初期型のペンドラニウム炉の暴走が、ペンドラニウム炉の安定化と実用化、そして小型化に繋がる大発見に繋がるとは、あまりにも皮肉すぎる……」
「科学の進歩は犠牲の上に成り立っているを体現してみせた人でした……」
綾川博士と向風博士とヴィオラがうんうんと頷いて見せる。
『ちょっとちょっと!私が来たのに何お通夜みたいになってるの!!?』
確かにファイアー・イーグルの紹介な筈が、何故か結城の父親の話になり、そして行方不明の話になってしまって通夜のようなしんみりとした空気になっていたが、それを切り裂くような声が響く。
「おお、ボルケー。調子はいいようだな」
向風博士がそう言ってみせる。
「どこだ?」
結城が周りを見回すも、それらしき人物はいない。
『ここだよ。よっと』
そう言うとファイアーイーグルのコックピットがプシューと音と蒸気をあげて開くと、一人の女性が飛び出してくる。
『私はボルケー。ファイアー・イーグルのパイロットだよ』
ストンと床に着地するボルケー。
赤い長髪がゆさりと動くが、さらに目を引くのがその容貌であった。
「機械の身体!?」
「サイボーグ!?」
結城と健斗が同時に驚く。
「そうだよ。ヴォルケーはサイボーグなんだよ」
「これも暢の設計……を私がいい感じに仕上げたのだ。いい仕事をしたわい」
綾川博士と向風博士がそう説明をする。
『ちょっと博士の趣味が前面に出てる身体だけど、大体いい仕事だよ』
そう言って柔軟体操を始めるヴォルケー。控えめな胸が強調されるが、控えめだから安全である。
「博士の趣味ねぇ……俺はあった方がいいんだがな」
「健斗。それは言わない方がいい」
健斗がそう小さく言うと結城はそっと修正を促す。
『今日はファイアー・イーグルの換装って聞いたけど、どれくらい掛かる?』
「そうだね、まぁ半日もあれば全部終わるけど、お目当ての装備のPEエリアドームスフィアはすぐにでもできるよ」
「換装と言っても攻撃用のミサイルを積んで管制システムをそれ用に合わせるだけだ。まぁそれが一番難しいのだが」
綾川博士と向風博士がそう説明を行う。
『それにしても、まさかこのファイアー・イーグルに攻撃用の兵器を積むとはね……』
「うむ、私も救助用に設計し直したというのに、このような状況になって苦々しく思うよ」
ヴォルケーがそう悲しそうな顔で言うと、向風博士も残念そうに答える。
≪緊急事態発生!緊急事態発生!市街地にジュライハー出現!!各要員は持ち場へ急行せよ!!繰り返す……≫
その時、施設内にけたたましく警報がなり、そうアナウンスが響く。
「ジュライハー!!」
「クォーリードラゴンで出るぞ!!」
「そういう事で!ヴォルケーさん、また後で!!」
そう言って結城、健斗、ヴィオラはクォーリーマシンに向かって走っていくのであった。
『あー向風博士。その新兵器のPEエリアドームスフィアの換装ってできるかい?』
「うむ、まぁくっつけるだけだからな。早速やってみるか」
「ぶっつけ本番だけど大丈夫かい?」
『まぁ伊達にサイボーグやってないからな。あたしに任せなよ』
不敵に笑うボルケー。
『それに市街地だって? そうなるとあいつらが出てくるかもね』
「うむ、あの二機の改造も控えているのだがな」
「まだ秘匿するつもりだったけど、政府もこの状況下で公開に踏み切るみたいだし、頃合いだねぇ。楽しみだねぇ」
「ふふふふ。公開の暁には、世界はペンドラニウムエネルギーの有用性を認めざるを得なくなるだろう」
「楽しみだねぇ……!!」
ボルケーの言葉に、悪役のような事を言いだす二人の博士。その姿は本当に悪の科学者そのものである。
『うん、まぁとりあえず、換装頼むよ?』
華麗に流すボルケーは、そのままファイアーイーグルに飛び乗った。
「はい、そんな訳で換装作業急いで!」
「うむ、ここは私に任せて綾川はオペレーション室へ行くのだ」
「あ、じゃあお願いします」
そんな訳で綾川博士はオペレーション室と呼ばれるモニター室へ急ぐのであった。
続く