コンビニ店員♀×大学生♂(後編)
ドンドンドンッ
携帯をもったままあれこれ考えていると玄関から叩く音が響いた。
「薔子ちゃん?いるなら出てきて?昨日のことは本当に悪かったって思ってる。お願いだから・・」
彼だ・・・同時に携帯も鳴り始めた。
しかし、マナーモードの為、控えめなバイブがなるだけだった。
どんな顔して会えばいいのかわからず私はベッドの上で携帯を持ったまま固まっていた。
しばらくすると彼は諦めたのか静かになった。
『今日は絶対に迎えに行くから 樹』
手元の携帯が再び鳴りメールだと確認し中を見るとそう表示された。
バイトを休みたい。
サボりなんてできるわけもなくいつも通り働いていた。
あと少しで彼がやってくる・・・
時計をチラチラと見ながら思うが一つ心配要素が・・・
なぜ今日に限っていつもの子でなく彼女が働いているのだろうか・・・
「どうしました?
さっきから私見られている気がするんですけど(笑)」
隣で在庫整理をしている川久保さん。
「川久保さんってかわいいですよね。」
ついポロッと出た私の言葉に目を大きくしてびっくりする川久保さん
「なっ・・・なにをいきなり」
顔を真っ赤にして焦っている。
やっぱりかわいいなぁ。
「彼氏も嬉しいわよねぇ~こんなにかわいいと・・・」
ふぅーとため息。
「・・私なんかよりも、オーナーや他の人に聞きましたよ。めっちゃラブラブな彼氏できたんですって??」
仕返しだぁ~と言わんばかりの笑顔
「・・・どうなんだろうね。私としてはやっと意識しだしたんだけどね・・・」
乾いた笑顔しか出ない私。
きっといままで黙っていただろうけど、さすがに本命と遊びの女ペアだと本命を選ぶでしょう。
そうなると私は確実に振られたことになる。
「相模さん?」
黙り込んでしまった私を心配して川久保さんが覗き込んできた。
「なんでもない。」
はっと我に返りニッコリと微笑む私
いけない、いけない。
川久保さんは何も知らないんだから、平然を装わなくちゃ
少し裏に行くからと裏に入り気持ちを切り換えようとする。
って、なんで私がこんなに気をきかせなきゃいけないのよ・・・
彼に対する怒りが沸々と沸き上がってきた。
店内に戻ると川久保さんはカウンターで楽しそうに話していた。
相手を後ろ姿でわかってしまう自分が悔しい。
「あっ、出てきた。」
川久保さんがそう言うと彼は振り向き、こっちにやってきた。
いつもと違って笑顔の変わりになぜかお怒りモードで・・・
「相模さん、もう時間すぎてますからいいですよ。」
かなり笑顔の川久保さん・・・
えっ?なんでそんなに笑顔なわけ?
そして、この人はなんでこんなに怒ってるわけ?
「荷物は?」
彼にそう言われ、私はロッカーに制服を入れ荷物を取り店内に戻った。
あれっ?いない・・・
キョロキョロと見回すと外で誰かと話していた。
恐る恐る、彼に近づくと彼と話していた男性が先に私に気付いた。
「中川、彼女?」
その人の言葉で彼はは振り向き頷いた。
「こんにちは。中川の自慢の彼女さん。昨日は、すみませんでした。俺らが引き止めたせいで・・・」
ペコペコと謝る男性
意味が分からない私はキョトンッとしたままつったっていた。
「長谷、勝手にべらべらしゃべるな川久保に昔のこといろいろ暴露すっぞ」
目の前にいる男性の足を蹴り機嫌悪そうに睨み言った。
「こわっ。はいはい、俺は中でおとなしく椿が終わるのを待っとくよ」
男性はそういい、店内に入っていった。
「・・・どっか場所変えて話さない?」
小さなため息を吐いた彼がぶっきらぼうに言った。
私はただ頷き彼の後についていった。
「あの、さっきの人は?」
私の記憶が正しければ、男性が待つと言っていた椿とは川久保さんの名前だ。
「俺の中学時代の悪友で川久保の現彼氏」
無表情のまま淡々としゃべる。
川久保さんの彼氏・・・
「・・中川くんと付き合ってるんじゃないんだ」
ふぅ~とため息を吐いた。
言葉に出しているつもりじゃなかった。
が、目の前の彼の驚く表情を見て口を両手で押さえた。
「ちょっと、待て。俺ら付き合ってるんだよな?」
訳が分からないといった感じに彼が言う。
私は素直に頷いた。
「意味分かんないし・・・」
めちゃめちゃ呆れた声を出す彼
「だって、昨日用事があるって彼氏との待ち合わせしていた川久保さんと一緒に出かけたし、夜も二人でいたし・・・」
語尾の方は泣いているせいでだんだん声が小さくなっていた。
コンビニ近くの公園にやってきて彼は私をベンチに座らせ、自分は私の前に中腰になった。
「確かに、川久保は彼氏待ちですけど、俺じゃないです。用事は、川久保と川久保の彼氏の長谷にあったから着いていっただけです。夜は・・・どこで見たか分かりませんけど、近くに長谷もいたはずですよ?」
さっきとは打って変わって落ち着きを取り戻した様子の彼
そういえばさっき俺らが引き止めたせいでって言ってた。
「・・川久保さんに殴られてた。」
グズッと鼻をすすり、私は言った。
「・・よりによってそこですか。」
口元を押さえ真っ赤になる彼
「言っておきますけど、話の内容とかしらないから。すぐに帰ったから」
なぜか私は慌ててそう言った。
「いや、出来れば聞いててほしかったようなそうじゃないような・・・」
目の前で思いっきり目を泳がす彼
「別にそのことを今、問いただすつもりはないけど。でもできれば、私が見るかもって考慮してくれても良かったんじゃない?」
彼に握られていた手に力が入ったのがわかった。
「自信がなかったんです。自分でもかなり強引に言ったのがわかっていたので、どうしても付き合ってもらってる感があって、素直に話したところで川久保に対して嫉妬やいてもらえなかったらどうしよう。って思ったら本気で凹んでしまいそうで・・・このままずるいままなんてイヤなんですけど、薔子ちゃんに拒否られてしまうと思うと怖くて・・・昨日だって、約束破って連絡とれなくて今朝家まで押し掛けて居留守使われて・・・さすがにキレちゃいましたけど、で「好きよ?確かに強引だったけど、たった1週間だけど気が付いたらあなたの存在が私の中で大きくなってた。自信がなかったのは私も一緒。付き合ってとは言われたけど、好きという言葉を聞いていなかったから。誤解してごめんなさい。昨日と今朝もごめんなさい。」
涙をふき、とびっきりの笑顔を彼に向けた。
「俺も、好きです。薔子ちゃんに先に言わせてごめんなさい。」
はにかんだ彼の笑顔
いつもの彼だ。
「キスしてもいいですか?」
なぜわざわざ聞くのだろうか・・意地悪したくなるじゃない。
「いやよ。」
彼の問いにさらりと返した私。
同時にしゅんっとなる彼
「その敬語、やめてくれる?約束できるならいいわよ。」
そう言って私は目の前にいる彼にキスをした。
不意をつかれ真っ赤になる彼・・・
かわいい。
彼に言うと不機嫌になりそうだから、言わないでおこう。