3:コンビニ店員♀×大学生♂(前編)
その日、私は人生最大のミスをおかしてしまった。
その日、私はかなりハイテンションだった。
その日の私はかなりおかしかった。
そんなの自分でもわかっていた。
だから、なおのことムカつく・・・
「薔子ちゃん♪」
げっ、来たっ!?
「もうすぐ終わりですよね?一緒に帰りましょう」
とても嬉しそうにお店に入ってきた男
私は、わざとらしく彼に分かるように大きなため息をついた。
しかし彼は気にすることなく、待ってるね。と雑誌のコーナーに移動した。
「すっかり懐かれたわねぇー」
他人事のように奥からやってきたオーナーが元気だねぇーと言った。
「騒がしくてごめんなさい。」
私がそういうとそーゆー意味で言ったわけじゃないよ。とオーナー
じゃぁ?どーゆーつもりですか?
「ねぇー中川くん「樹って呼ばないと返事ししませんよ?せっかく付き合ってるんだし」
いつもの帰り道で最近、隣には彼がいる。
先週、バイト中にやってきた彼
「付き合ってくれませんか?」
御会計中に言われた一言。
機嫌のよかった私は、言葉の意味を考えもせずに、
「私でよければ」
と、笑顔で返してしまった。
気が付いたときは、すでに遅く、彼はとても喜び自己紹介をしてきた。
その無邪気な笑顔に私は逆らえず、不本意ながらも私たちは付き合うことになった。
「薔子ちゃん、明日休みですよね。どこかに行きませんか?」
隣でニコニコと嬉しそうに言っている彼
「休みの日は休みたいんだけど・・・」
決して優しくない口調で私は彼に言ったが、
「どこに行きたいです?映画?ショッピング?」
人の話聞いてないし。
なのに、なんでこう憎めないんだろう・・・
「買い物に付き合ってくれる?」
目の前ですごく嬉しそうな彼を見ると反論するのも、バカらしく感じてしまう。
あーぁ、私この笑顔に弱いんだな。
一人話している彼を見ながら茫然と考えていた。
「相模さん、時計見すぎ(笑)」
オーナーがクスクスと笑いながら私の行動を指摘した。
「見てないですよぉ~」
と、いいつつ目線を再び時計にやる。
「いつもこの時間にはくるのにね。」
誰がと言わずオーナーが言った。
でも私は素直になれず
「なんのことですか?品出しの準備しますね。」
奥に行き搬入されてきた商品を店内に移動させ陳列させる準備をした。
「久しぶりです。」
店内に現れた一人の女性。
「川久保さん、久しぶりね。時間と曜日が変わるとまったく会わないわね。」
バイトの川久保さんだ。
以前はよく同じシフトだったが、学校の関係でシフトが変わりまったくと言っていいほど会わなくなっていた。
「今日は、どうしたの?」
雑誌をパラパラとめくっている彼女
時折、気になるページで手を止め見入っている。
「約束の時間まで時間潰しです。」
かすかに彼女が照れたのがわかった。
彼氏待ちかぁ~
ってゆーか、中川くんどうしたんだろう。
時計を見て、いつもならこのくらいの時間に来てるのに・・・と無意識に思っていた。
昨日、私の買い物に付き合ってくれた彼
不覚にもとても楽しく時間が過ぎびっくりした。
昨日のことを思い出しながら品出しをしていると何名かお客さまがいらっしゃったのでカウンターに移動した。
そして並びだしたお客さまを応対していた。
会計をもう一人に任せ、私は袋詰めをしていた。
目の前のドリンク一本とチョコと抹茶の棒アイスを袋にいれた。
「薔子ちゃん、気が付いて下さいよ。」
いきなり名前を呼ばれ、ぱっとお客さまを見ると苦笑いをしている彼がいた。
来てくれた。
気が付くとそう思い、胸が高鳴っていた。
「今日はこないから平和だと思ったのに」
が、つい思ってもいないことを口にしてしまった。
会計も終わり、いつもの様に雑誌のところで時間を潰すと思っていた私。
「ちょっと用事があるから、終わり時間にきますね。」
そういって、彼は店から出ていった。
そして、私は無意識に彼の後を追い店を出ようと入り口に向かった時一気に後悔をした。
それは、目の前で楽しそうに話している彼と、先程まで店内にいた川久保さんが仲良さげに二人アイスを食べ歩き立ち去る姿だった。
「・・・」
言葉が出なかった。
二人は目の前にいるのに私には邪魔が出来なかった・・・
二人が去ってから2時間、彼は来るといっていたが私は仕事をとっくに上がっていた。
うそつき・・・
本当は大声を出して叫びたかった。
ところかまわず我慢している涙を流したかった。
私は、彼を待つことを止め家に帰ることにした。
彼と付き合い初めてまだ2週間。
かなり強引だったけど、たった1週間で隣に彼がいないことがこんなにも淋しいだなんて。
いつの間にか、私の隣に彼がいることが当たり前になっていた。
なんだかんだいって楽しかったんだよね。
今度会ったら、素直になろうかな。
でも、彼の隣は私じゃなくて川久保さんがお似合いだよね。
二人でどこに行ったんだろう。
まさか付き合ってるとか!?
だって、さっき川久保さん待ち合わせっぽかったし・・・
はっきりは聞いてないけど、相手は彼氏っぽかったし・・・
それによく考えれば、彼に付き合ってと言われたけど、好きだなんて一度も聞いてない。
本命はあっち?
私は、暇潰し?
・・・考えるの止めよう。
自分がバカみたいに感じてきた。
なんで私が彼のせいで一喜一憂しなきゃいけないのよ。
バチンッ・・・
帰り道、どこからか大きな音がした。
「もう一度言ってみなさいっ!!」
同時に女の人の声
興味本位で私は、誘われるように声のしたほうへ足を進めた。
さっき通り過ぎた曲がり角をそっと覗いた。
そこには、頬叩かれたのか手で頬を押さえている男と頬を叩き叫んだであろう女がいた。
「なんで・・・」
暗くてよく見えないが、確実にいえること・・・
それは、見間違いをするはずもない・・・迎えに来るはずだった彼がいた。
逃げるかのように踵を返し走り去った。
相手の女性は、川久保さんだった・・・
一体何がどうなっているかわからなくなってきた。
本当に川久保さんが本命なのだろうか・・・
私は、バタバタと部屋に入り今日の出来事を洗い流すかのように熱いシャワーを浴び寝た。
「・・・何時だろう。」
光が差し込み眩しさで目を覚ました私。
どうやら、昨日カーテンをキッチリと閉めず寝てしまった様子
手元にある携帯を取り、時間を見ると朝の9時を過ぎたところだった。
携帯ランプがピカピカと光っていることに気が付き携帯を開いた。
そこには、メールマークと不在着信のマークが・・・
誰からだろうと思うこともなく、私はまずメールを見ることにした。
そこには、彼から昨日迎えが遅くなってしまい結果一人で帰った私の安否を心配すると謝りの内容だった。
帰ったら連絡が欲しいという内容も表示されていた。
が、時刻を見るとすでに私が寝てしまった時間だった。
しかも、仕事終わりの状態のままなのでマナーモード・・・
気付くハズもない。
不在着信は3件あり、すべてメール以降の時間だった。
どうしよう。
連絡したほうがいいかな・・・