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  短大生♀×専門学生♂(後編)

 「そうだな、長谷も見ておくか?」

・・・はせ・・くん・・・

『俺、兄ちゃんみたいに美容師になる。』

学校帰りによく寄る美容室。

そこには、長谷くんの従兄弟のお兄さんがいていつも話を聞いたり、カットの様子を見たりしていた。

『じゃぁ、私が一番最初のお客様ね!!』

私は、夢を持っている彼がとても輝いて見えていた。

『ばーか、川久保は、客じゃないよ。でも、一番最初にきってやるよ』

なにげない二人の約束・・・・

私はすっかりそんな約束は忘れていた。

「椿ちゃん練習がてら人が見てるけどいい?」

トリップしていた私は元町さんの声で覚醒した。

そして、元町さんの後ろにいる彼を見た。

彼も今、気が付いた様子でかなり驚いていた。

「椿ちゃん?」

何も言わない私に再度声をかける元町さん

「かまいませんよ。」

にっこりと微笑み何事もなかったように私は雑誌に目をやった。

元町さんは、すぐに作業に移り ところどころ彼に説明をしながらカットを進めていった。


 彼が後ろにいると思うとすごく落ち着かない・・・

そうだ、雅さんに考えろっていわれいることがあったんだ。

《傷つくかもしれないのに、人が恋に向かっていくのはなぜ?》

あの頃の私はなんで長谷くんに告白した?

たしか自信なんてなかった・・・ただ、好きだったから。

ううん、違う私どこかで自信があったんだ。

だから、告白して振られて勝手に傷ついて・・・

私、最低じゃない・・・

彼はなにも悪くないのに・・・

そう思い鏡越しでこっそり彼を見た。

鏡越しの彼は真剣に元町さんの話を聞き、手元を見ていた。

あの頃とかわってない・・・

私は彼の真剣さが好きだった。

・・・好きなんだ。

今も・・・・だから、彼とは付き合いたくなかった。

嫌われたくなかったんだ。

霞の言ったことは当たっていた。

まだ、好きだから彼のことを他の人たちと同じように付き合うなんて・・・

女々しいな・・・

傷ついても私は彼が好きだ。

雅さんが言いたかったのはこういうことなのだろうか・・・

傷つくかもしれない・・・でも、それでもきっと好きの気持ちが大きいから人は恋に向かっていく。

それに恋をしたいしたくない関係なく恋は 予想外にやってくる。

雅さんもそうだったのかな・・・


 「椿ちゃん、終わったよ。」

はっと我に戻ると 手鏡を持っている元町さんがいた。

「気に入らないところがあったらいってね。」

そういって、長谷くんには帰っていいといい、奥にいった。

気に入らないところなんて見当たらないんですけど・・・

鏡を見て自分の髪型を見る。

いままで、伸ばしてきた髪。

本当に毛先を揃える程度だったので、新鮮な感じだ。

長さは変わっていないが、サイドをナナメにカットされており心なしか全体的に頭が軽くなった気がする。

「椿ちゃん今、雅くんがこっちに来ているらしいから待っててね。」

と奥からほうきをてに現れた元町さん

「豪さん、俺がやりますから他のを片付けてください。」

横から、元町さんのほうきを取り上げ 掃除を始めた長谷くん

「ありがとう。椿ちゃん気に入らないところない?」

私は 元町さんの言葉にブンブンと首を振った。

「あはは、首痛めるよ。雅くんにいってくれたらまたきってあげるよ。むしろ、こっちからお願いするかも(笑)」

そういって、はやさやら櫛やらを片付ける元町さん


 「豪さん♪」

お店のドアが開き 女の人の声がした。

「花梨もしかして待っててくれたの?」

片付けの手を止めて元町さんはその女の人のところに駆け寄った。

「あっ、椿 かわいい。ねぇ、兄さんかわいくない?」

彼女の後ろからやってきた霞と雅さん

「へぇーかわいいじゃ・・・」

雅さんは、私の隣で 掃除をしている彼を見て止まった。

「兄さんどうしたの?」

急に言葉を止めた雅さんを不思議に思う霞

「豪さん掃除終わりましたのでお先に失礼します。」

長谷くんはそういい奥へと下がっていった。

「椿さっきの答えわかったか?」

私の傍にやってきた雅さん

私は小さく頷いた。

「私、やっぱり彼のことまだ好きみたい。彼のことキライになれない。」

そういうと、頭をポンポンと撫でてくれた。

「なんの話しているの?」

霞を初め元町さんや彼女さんもきょとんっとしている。

霞の問いにシカトし雅さんが言った。

「豪さん奥にいってもいい?」

雅さんは元町さんにそういい俺も一緒でいいならと雅さんを連れて行った。


 「椿?」

心配そうに霞が近寄ってきた。

「彼なの・・・」

私はそれだけを言った。

霞はそれだけでわかったようで店の奥に視線を向けた。


 「椿お前こいつに送っていってもらえ。俺はいまから霞をつれていかなきゃいけないからな。」

しばらくすると雅さんが叫びながらやってきた。

その後ろから荷物を持った元町さんと長谷くん・・・

「がんばってね、椿」

とんっと背中を押してくれた霞

「それでは、お先に失礼します。」

私は長谷くんについて一緒にお店を出た。

「家、変わってない?」

店を出ると自転車を取ってきた長谷くんが聞いてきた。

「うん。」

一体何を話せばいいのかわからず黙りこんでします私。

「荷物、持つよ。」

そういって、自分の荷物は自転車の前カゴに私の教科書の入ったバッグは肩にからった。

「ありがとう。・・・・・・本当に美容師になったんだね。」

私は 思い出したかのように言った。

「もちろん。って、まだ学校も卒業してないし免許もまだだからな。今からって感じかな。しかし、びっくりしたよ、川久保がいるから。」

昔と変わっていない笑顔

「偶然よ、元町さんがカットモデル探しているって言われてきただけだから」

なんだか冷めた口調になってしまう。

「なぁ・・・今、好きな人いるのか?」

いきなりの質問で私は歩いていた足を止めてしまった。

「黙ってるってことは、肯定として考えるぞ?」

私が足を止めたことに気がついた彼も少し前のほうで足を止めた。

私は黙ったまま再び歩き始めた。

「なんで、好きな人がいるのに誰とでも付き合うとか馬鹿なことしてるんだよ。」

私が彼を追い越しそうになったとき腕を引っ張られた。

「傷つけたくなかったのよ。告白してくれるのに・・・そのお返しがごめんなさいだったら傷つくでしょう?」

聞こえるか聞こえないか 小さな声で私は言った。

「じゃぁ、なんで、俺が言った時・・「あなたは・・・・嫌われたくなかったから・・・私は・・・傷つけないように付き合って、わがままばかりいって困らせて嫌われるように仕向けてた。卑怯だってわかっているけど、それしか思いつかなかったの。」

興奮して気がついたら泣き叫んでいる自分がいた。

私の腕を引っ張っている彼の手に少し力が入った。

「・・・それって、俺のせいか?」

しばらくして彼が口を開いた。

「違っ!!私が勝手に傷ついただけ長谷くんはなにも悪くない!!」

いままで彼の顔がまともに見れなかった・・・でも、私は 決心したかのように彼の顔を真正面から見た。

「・・・確かに長谷くんのせいにしていた自分もいた。でも、気がついたの。そうじゃないってことに・・・本当にごめんなさい。」

頬をつたる一筋の涙

「そんなこと気にしなくていい。あの頃、俺も悪かったんだ。本当は、あの頃お前のこと好きだった。でも・・・・中川覚えているか?あいつもお前のことが好きだったんだ。俺はそのことを知っていたから 自分の気持ちを言えなかったんだ。俺こそ、ごめん・・・」

5年越しに知った事実・・・今さら、知ったところでなにも変わらない・・・・大切なのは 今の気持ちだ。

「川久保たのむからもう誰かれかまわず付き合うのは止めて欲しい。好きな奴がいるならなおの事・・・」

どうしてこの人ここまで真剣に私のことを考えてくれているのだろうか・・・

「わかってる。回りのみんなにも心配させちゃったしね。」

私の言葉にほっとしたのか 私の腕から手を離す長谷くん


 「ねぇ、長谷くん?」

自転車を押し再び歩き出した長谷くんに向かって叫んだ。

「私、まだあなたのこと好きなの。別に付き合ってとかいうつもりはないわ。ただ、私の気持ちを知って欲しかったの。」

彼が振り向く前に 言った。

「だから、連絡先教えてもらえる?」

なにも言わない彼

もう友達にも戻れないのかな・・・

「ちょっと、待てさっきの・・・雅さんとかいう奴が好きなんじゃないのか??」

いきなり立ち止まり振り返り叫んだ彼

「・・・・雅さん?友達のお兄さんで ちょっと相談してただけだけど?私も雅さんもお互いに兄妹としか思ってないわよ?」

きょとんっといきなり出てきた名前に驚く 私

「じゃ、俺諦めなくていいのか?」

ぼそっと言う彼

「なにを?」

彼は一体何が言いたいのだろうか?

私は彼が好きだといったのに・・・

「お前をだよ!!」

つかつかと私の前まで歩いてきた。

「こんなこと言えたぎりじゃないけど、俺のこと好きならなんで断ったんだよ。」

拗ねたように言う彼

「・・・・あの時は、まだ好きだって自覚してなかったし長谷くんの言い方にムカついたから・・・それと、さっきも言ったけど 嫌われたくなかったから・・・それよりも、付き合って欲しいっていわれても気持ちがないような気がしたから・・・」

私は素直にあの時のことを言った。

「俺たち、バカみたいじゃんか・・・」

はぁーとため息をつく長谷くん

「たぶんバカみたいじゃなくてバカなんじゃないの?」

クスクスと笑う私

「川久保改めて言うけど、俺と付き合ってくれますか?」


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