第1話【ゲーム世界?】
第壱章 第1話【ゲーム世界?】
「おぉ!!! 海か!!!」
強い日差しを受けて目を細めながらも周囲を見渡せば広大な海が正面に広がり、背後には未開拓の森がある。
「立地としては最高だな!」
晴れ晴れとした陽気と、同じように清々しい気持ちで彼、エイジは言う。そして、その後ろにいる3人の人影は明らかに困惑しているようだった。
「あ、あのマスター」
「うん?」
エイジはその声で振り返る。【シバリエ】では基本的にイベント系以外でNPCが自発的に話すことはない。NPCにステータスがあるとはいえこのゲームは国家シュミレーションがメインだったからだ。
しかし、豊富なイベントがあるため生きているかのように錯覚してしまうことも多々ある。そして、【シバリエ】同様これも開始イベントか何かかと思い耳を傾ける。
「我々は一体…」
しかし、エイジが求めていたものとは違い、彼女らは本当に困惑しているようだった。
まず、エイジに話しかけたのはエイジが初期段階にガチャで引いたSRキャラの翡翠の人狼と呼ばれる種族の女性で名をアイシャだ。アイシャは、銀色の長い髪と翡翠色のきれいな目を持ち、アニメキャラクターで言えばヒロインでも行けるであろう可愛さを持つ。しかし、こんな美女がSRで存在するためSR以上はこれ以上なのかとエイジは最初に思ってしまった。
そして、その彼女に横に佇むうちの一人は星天使のカミラだ。URの最高レア度のキャラで非常にお高かった。しかし、性能はUR内でもトップクラスだ。攻撃はもちろん支援キャラ最強とされ、回復、バフ・デバフを使いこなす。金髪爆乳の天使と言うよりも悪魔的な美女である。アイシャが高校生くらいだと思うとカミラは美魔女と呼ばれる30代くらいのフェロモンを出しまくっているタイプの女性だ。
そして、最後が古龍のドレアである。SSRキャラであるが、性能的にはURでもいいんじゃないかと言われる竜の生誕と呼ばれるイベント限定キャラだ。龍の姿と人の姿を持ち、龍の姿は消耗が激しい代わりに絶大な破壊力を持ち、人の姿では戦闘力はSR程度に下がるが様々な知識を持ち手先が器用なのだ。彼女は黒髪をポニーテイルにして姿は中学生程度の幼さである。
さて、そんな美女たちがそれぞれ困惑しているようで、イベントも進まない為エイジは困ってしまう。本来であれば開始イベントはここがどこで今の状況の説明などが入るはずなのだが…。
「えーと、とりあえず新天地で心機一転と言うことで」
エイジは言葉を絞りだして伝える。今までが逆だったが今回はこちらから振る形のイベントなのかと思って発言してみるが3人の反応はよろしくない。
イベントの進行方法がわからず悩んでしまうエイジだが、さすがにそろそろ活動したいと思いステータスを開く。
☆★☆★☆★☆
名前:エイジ
年齢:25歳
性別:男
種族:超越種
役職:転生者
加護:【創造神の加護】
スキル:【創造】
★☆★☆★☆★
エイジは見間違いかと思い一度ステータス画面を閉じてもう一度開き直す。
しかし、変わっておらずこれはどういうことだと混乱し始める。
「ゲームだよな?」
まず、おかしな点が複数存在する。ステータス画面を開くと設定、ステータス詳細、ログアウトがあるはずなのだ。しかし、ステータスを開いた瞬間詳細が表示され、設定もログアウトも選択できない。
そして、NPCが生きているような挙動。VR技術が発達したからこそ分かる不可能なレベルの技術。そして、ステータスに表示された転生者と、創造神の加護
「まぁ、やることは変わらないか」
頬をぱちんと叩き気合を入れたエイジは迷いを捨てて3人に向き直る。
「ここに俺たちの新たな帝国、【ザ・シエル】を建国する!」
3人に堂々と宣言する。3人とも驚きながらも喜色を浮かべる。そして、その宣言をした直後脳内にアナウンスのような声が響き渡った。
>転生者エイジが建国を宣言しました。役職が【ザ・シエル帝国皇帝】に変更されました。