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第6話

「それよりも、随分と荷物が少ねぇ。よくここまで来れたもんだ……」


 男のひとりが頭頂から足先まで私を見てきた。おまえ、本当にその格好で来たのか? みたいな顔を向けてくる。


「はい、そうなんですよ。父からは、『おまえの足なら一日もかからねぇよ』と言われて、いざ家を出てみれば、一向に国らしきものが見えなくて。通りすがりに荷馬車を引いている人がいたので聞いてみれば、馬車でも五日はかかると言われました」


「で、きみ今日で何日目?」


「あちこち歩き続けていたので時間の感覚は正確にわからないのですが、体感としては三日くらいですかね?」


 へへへ、と気の抜けた顔で私は頬をかいた。


「「「三日⁉︎」」」


「はい。あくまでも体感ですので、実際には五日以上経ってるかもしれませんが。でも、脚力には自信があります!」


 設定は、脚力の凄い"一度決めたら一直線"なわんこ系アホ少年。取り敢えずニコニコして、元気良く質問に答えてゆけば、設定通りの少年だと印象付くに違いない。いや、そうなってくれないと困る。非常に。


「坊主は身分証とか持ってるか?」


「持ってないです。国自体入るの、今回がはじめてなので。でも、身分証って必要なんですか? ステータス見た方が早いでしょうに……」


「ステータスは案外、簡単に魔法で改ざん出来るから信用ならないんだよ。でも、身分証っていうのは、役所から身分証用の手帳が発行されて、ギルドなどの公的機関に就いた際は身分証用の手帳に職業情報が追加で記載されるんだ。

 例えば、もし手帳にとある冒険者ギルドに登録したと偽る内容を書き込めば、そのギルドに情報が自動的に届いて知らされるようになっている。内容を確認したギルドが偽りであると判断すれば、その人は罪に問われるというわけさ。

 因みに身分証には罪歴も記載されるし、一度書かれた内容は、間違いの情報を除き、削除されることはないんだ」


(見せるのは身分証だけか。ステータスの改ざんが可能なら、後々性別と名前と異世界人も隠せるか?)


「へぇ、凄いですね。じゃあ、ステータスを確認するような機会は一切ないんですか?」


「あるぞ。入国審査と、あとはそうだな、規模の大きな商会や冒険者ギルドだと、高位の鑑定士がいて、ステータスの偽造を見破って犯罪防止をしているな」


(ヤバイ。もう、速攻でバレるやつ。嘘の設定、意味ないじゃん)


「それで、俺の場合はどうすればいいですか? 身分証ないと入っちゃいけないんですよね?」


「いや、はじめて入国する奴も少なくねぇから心配すんな。そこの正面入り口近くに、小っさい役所があっから、そこで身分証の発行と入国審査を受けて来るといい」


(マジか……)


 引き攣りそうになった頬を顔面の筋肉でどうにか抑え込み、男が説明しながら指差す方向へ視線を移せば、城壁に埋め込まれた窓口があった。


「ご丁寧に、有難う御座います!」


 腰を折って礼を告げて、隼人は窓口へと向かった。


 ちらりと顔だけを振り向かせると、先程の男たちは門の前に綺麗な間隔を空けて佇んでいた。


(衛兵だったのか……)


 ゴロツキ感があったので、冒険者かと思っていたが、今更ながらに門番をしている衛兵であったことを知り、内心驚く隼人であった。


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