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第5話

 明らかに盗賊よりも身なりのいい男たちに、少しだけ安堵し、構えを解いて腕を下ろした。冒険者? それとも、騎士? 騎士にしては、ゴロツキ感がある。もしもの時のために、サバイバルナイフは手に持ったままにしておいた。


「ここには魔物はいないはずだけど、何かあったのか?」


 困惑した表情で男たちは首を傾げた。


(えっ、いない⁉︎)


 驚いてる場合じゃない。状況をそのまま言うのは、危ない気がする。ほとんど知識ないし、騙される可能性もある。どこまで嘘を突き通せるか……。


 強張りそうになった顔をきゅっと引き戻して、平静を取り繕いながら、必死に頭をフル回転させて考える。そして、一直線に結ばれた口をおずおずと開けやや俯き加減になり、申し訳なさそうな表情をつくった。


「すみません、大声を出してしまって。名もない田舎から出稼ぎに国へ向かっていたのですが、何分方向音痴なもので、迷ってしまいまして。歩き慣れていない道なもので途中、身体のバランスを崩した際に右腕を脱臼してしまい、先ほど激痛に耐えながら無理矢理整復したところです」


 無知は隠しようがない、せめて異世界人であることは隠したい。


「そうか、無事なら良かった。だが坊主、方向音痴にしちゃあ度が過ぎねぇか? ここ国の側の林だぞ……」


「え、本当、ですか?」


「マジだよマジ、一人でここまで不安だっただろう。取り敢えず、広い道に出るからついて来いよ」


 男たちは、装備した剣に手をかけることもなく、背を向けると、茂みをかき分けて元来た道へと歩みを進める。


 やや警戒しつつ男たちに接近する事なく、一定の距離を保ちながら後へと続いた。腕は下ろしているが、ナイフはまだ握り締めたままだ。


 暫くの間、茂みをかき分けて行けば、茶色い地面が見えてきて、足をついた。


「ほれ、見てみろよ坊主!」


 男が指差す方向を見上げれば、そこには、都市を防衛するための白い城壁があった。壮大な規模とその光景に圧倒され、思わず一歩後退る。まるで、勝てない敵が立ち塞がった時のようだ。


 あんぐりとした表情で私はサバイバルナイフをしまった。ナイフをしまう直前、手が震えていることに気がつき、ナイフを仕舞って直ぐに掌で拳をつくって誤魔化した。


(本当に、異世界に来たんだ……)


 これも現実なんだ。ラノベやゲームのように楽天的に考えちゃいけない。


 隼人は男たちに悟られぬよう、小さく深呼吸し、静かに息を飲んだのだった。


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